フォロワーファンタジー ー小豆味ー   作:ニャル太郎

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「あそこが彼が誘拐された場所か」

東雲()が連れ去られたであろう洞窟を見つけたライウェー。

「……行けと言われたものの、トウホウは他者に扱ってもらわなければ何もできないただの無機物」

どうしたものかと頭を悩ませ数秒。

「悩んでいても仕方ないだろう」

洞窟に入っていこうとした、その時。

「そこの坊や」

背後から艶やかな女性の声、そして聞きなれた言語。

東雲()が話す日本語に間違いない、安心し協力を頼もうと後ろを振り返る。


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身長は百六十センチ後半でやや細身。

ブロンドのセミロングの髪をサイドテールでまとめており、瞳はエメラルドグリーンで切れ長のツリ目。とんがりとした耳が特徴。

服装はインナーにノースリーブのアンダーシャツ、アウターに丈の短いレザージャケットを装備し、ボトムスはホットパンツに黒タイツを装着。

シューズはロングブーツ。

腰にナイフをぶら下げているあたり、いかにもファンタジーにいそうな冒険者の身なり。

特質すべきは腰に斜めに掛けられているドライバー、バックルは円柱型でシンプルながら、中央に歪な五芒星の中心に目とその瞳から燃える炎が描かれたエンブレムが彫られていた。

その横にバイクのハンドルの様な物が左右に取り付けられている簡素なもので、全体的に黒を基調としたカラーリングとなっている。

どう見たって日本人じゃない、転生者(ライダー)だ。

(真っ白な主もだが、転生したら皆(ガワ)が変わるのだろうか)

稼働中の思考を止めるように女性は話しかけてきた。

「もしかして一人で入ろうとした?」

「……まあそうだが」

「あら、ここウェアウルフの巣だってことを知ってて?」

「もちろん。ある……兄が中に連れて行かれてしまったのでな」

主従関係(武器と使用者)と答えるとあらぬ誤解を与えそうだったので無難な返事を返す。

「────へぇそうなんだぁ」

にっこりとライウェーに微笑みかけ、洞窟の入り口付近まで近づき女性は聞き耳を立てた。

「君は? 見たところ冒険者っぽいが」

「冒険者っぽいじゃなくて冒険者よ」と振り向き「知らない?ティレン・レーカ・クーネロイスって名前」

「少し待ってくれ、確認する」

ライウェーは目を瞑り止めていた思考を稼働させた。

〈 [検索ワード] [フォロワー] 〉

〈 [180ポイント] [ラット] [鯔副世塩] [Aireal] [苦瓜] 〉

頭の中に東雲()のフォロワーの名前が流れ出す、以前どんな人だったか聞いた際に勝手に記録した。もちろんまだ会っていないフォロワーの記録もある。

しかしどれほど調べて“ティレン・レーカ・クーネロイ”というフォロワーは出てこなかった。

「すまないがトウホウの記録にはどこにも入っていなかった」

「そう、なら仕方ないわね」

落ち込む素振りも見せずティレンは洞窟の中を進んでいく。どうやら見張りはいなかった模様。

ライウェーもその後を追うように歩いていった。

「あら、待ってていいのに」

そんなにお兄さんのことが心配なの?とにっこりと笑う。

「彼に死なれるとまずいのでな」

間違ったことは言っていないはずなのにキョトンとされ、またニコニコ顔に戻った。

「それに、早く彼を連れ戻さなければ手遅れになるからな」

「……それってどういう」

不意にティレンの足が止まる、表情は一瞬にして険しくなった。

「どういうって、単に死んでもおかしくない大怪我を負っているからとしか」

「な、なんでそれ早く言わないの!?」

ティレンは声は荒げ、その額から脂汗が滲み出た。

「聞かれなかったからとしか言えないのだが」

「言わないとわかんないよ!?」

聞いてこないのが悪いという顔でティレンを見た後、そのまま歩き始めた。

「ほら行くぞ、時間は待ってくれないのだからな」

「……はぁ、そうね」

落ち着きを取り戻したのか声色は戻り、ライウェーの後を追う。



救世主、あるいは

しばらく薄暗くじめじめとした洞窟を進む。

 

雫が落ちると反響しながら奥へ奥へ、二人を案内するかのように吸い込まれいった。

 

「かなり広い洞窟ようだな」

 

「そうだね、長いこと使ってた形跡がちらほら」

 

ほらここ、とウェアウルフの形跡を見つけていく。伊達に冒険者をやっていないようだ。

 

「そういえば、坊やの名前聞き忘れてたわ」

 

「あぁそうだったな、トウホウはライウェーだ。よろしく」

 

「こちらこそよろしくね」

 

握手をし、先を進もうとするが。

 

「……あー、ええと」

 

「何かしら?」

 

「いつまで手を繋いでいるんだ? それに……」

 

妙に触り方がくすぐったく背中がゾワゾワする感覚に陥る。

 

「いつウェアウルフが出てきてもおかしくないでしょ? だからこうして手を繋いだ方が安全かなって」

 

「結構だ、もしもの場合に動けなかったら元も子もない」と言い手を離す。

 

「え〜そうかなぁ?」

 

「トウホウはある程度動けるから問題はない、それにここは広いから手分けして探した方がいいだろう」

 

「う〜ん、それはオススメできないかな」

 

表情は変わらず、彼女は口を開く。

 

「君のお兄さんを誘拐したの上級のウェアウルフなんだ、知能も高いし攻撃力も高い。背後から襲われたら危ないよ」

 

その瞬間、何かがティレンの背後から黒い影が現れ、彼女に襲い掛かろうとした。

 

声を上げる暇もなくそれは振り下げられ──

 

「──こんな風にッ!」

 

黒く太い丸太のようなものが切断された。

 

ようやくしてそれがなんなのか理解する、毛のはえた白銀の腕だ。

 

ティレンの背後に全長二メートルの白銀のウェアウルフが棍棒を振り下げようとしていたのを彼女が目にも止まらぬナイフ捌きで切断。

 

白銀のウェアウルフはうめき声を上げながらもう片方の腕で仕留めようと立ち上がる。

 

「遅いッ!」

 

すぐさま持っていたナイフを持ち替え首を切断。

 

数秒の静寂の後、ゆっくりと定位置からずれていき首はそのまま落下していった。

 

「ほらね?」

 

頬につく返り血が似合わないほどに涼しい笑顔をライウェー向けた。

 

「動きに無駄がない、もっと磨けばより早く動けるだろうな」

 

「あらほんと?」

 

「首を切るのはそれなりに力が必要と思うのだが」

 

「コツよコツ、掴んだらスパスパキレるわよ」

 

「……一つ聞きたいのだが前世は何を?」

 

「何って、ただの物書きだけど」

 

物書きがそんな動きできるかというツッコミをするか否か考えるが、ティレンによってすぐに遮断される。

 

「急ぎましょ、さっきので何匹かこっちに気がついたみたい」

 

後ろの方から数匹の赤い眼が見えた。動きが遅いのか、あるいは恐怖を煽るためにわざとゆっくり来ているのかは不明だが着実に近づいてきている。

 

「走るよ!」

 

掛け声と共に地面を蹴る、同時に追手も走り出す。

 

「まるで追い込み漁ね」

 

「なるほど、こちらが餌に釣られてきた魚ということか」

 

「そうね、でも追い込んだ魚が鮫だってことにまだ気がついていないみたい」

 

ちょっと上手いこと言ったという雰囲気を無視して走り続けるとひらけた場所に出た。

 

長い年月を得てウェアウルフ(彼ら)が掘った食糧保管庫らしく、至る所に赤いシミが飛び散っている。

 

奥にゆらゆらと揺れる松明の炎に照らされる東雲が寝かされていた。

 

「あ、兄上!」

 

咄嗟に主と呼びそうになったのをなんとか誤魔化し東雲に近づく。直後、死角からウェアウルフが飛び出しその鋭い爪を振り下ろしてきた。

 

すぐにガードをするが軽傷で済むかどうか、とそんな心配はすぐになくなる。

 

振り下ろされた爪はピタリと止まり、糸が切れた人形のように倒れた。

 

「危ない危ない、かわいい男の子の顔が傷つくとこだった」

 

アタシは好きだけどねとウィンクし、二十体の白銀ウェアウルフの前に立ち塞がる。

 

「流石にこの人数相手じゃ、もう生身はキツいかな」

 

腰に斜めに掛けていたドライバーのバックルを水平に回転させ、一息つく。

 

「ライウェーくん、危ないから隠れててね」

 

バックルの歪な五芒星の中心に目とその瞳から燃える炎が描かれたエンブレムが発光し、両手を置く。

 

ハンドルを捻るのと同時に、お決まりのあの台詞を叫ぶ。

 

「変身!」

 

心臓の鼓動音とモーターの甲高い回転音が洞窟内に響き渡る。

 

ティレンの姿が光の粒子に変換され、瞬く間にその姿が再構築された。

 

 

【挿絵表示】

 

 

頭部はV字のアンテナとサファイアブルーのデュアルアイ。

 

額に深紅の単眼が三つ逆三角形に配置されており、口部はマスク型、全体的に白色の兜を想起。

 

全体的に装甲部分は白色、スーツ地は黒色とモノトーンで整えられており、胸部のキャノピー型の装甲はクリア素材のサファイアブルー。左右下部にある排熱口が特徴的で、中央にはキャノピーの様な楕円形の装甲。その内側で何やら炎が揺らめいている。

 

「さぁ、まとめて掛かってきなさい!」

 

その言葉に反応するかのように一斉にティレンに襲い始めた。先ほどの煽るような遅い動きではなく確実に仕留めるか狼の如く速く駆ける。

 

いくつもの赤い瞳が彼女を捉え隕石の如く降り注ぐが、それはすぐさま血の雨に変換された。

 

光弾斉射(インベル・ルプス)!」

 

瞬間、彼女の背後から無数の光が放たれ全てのウェアウルフの頭を撃ち抜く。

 

洞窟内というのに流血と無数の雨が降る、しかしそれはすぐに止んだ。

 

「あら?意外と拍子抜けね」

 

付着した血液を拭き取り、背伸びをしながら人質の元に歩き始める。

 

「っと、油断してるなんて思った?」

 

背後にいるウェアウルフに向かって呟く、相手も気づかれてると思っていなかったのか一瞬身体を止める。

 

──その瞬間を彼女は逃さなかった。

 

素早く振り返りウェアウルフの両腕を掴む。

 

肉を抉るかのように、骨を折るのように、血管を潰すかのように、その両腕を千切るかのように、強く掴む。

 

掴まれたウェアウルフは振り解こうと腕を上げようとしたが、上がらない(・・・・・)ことに気がつく。

 

「細身だからってあんまり甘く見ない方が、いいよ?」

 

囁くように告げたのと同時に腕を引き千切る、ウェアウルフは汚い悲鳴をあげながら床に転がりのたうち回った。

 

「なるほど、非変身時の素早さを犠牲にする代わりに筋力が大幅上がっているということか」

 

物陰に隠れていたライウェーがボソッと呟く。

 

「筋力だけじゃないのよ?」

 

地面を軽く蹴った、それだけなのに一瞬にして天井に到達。

 

「あっやっべ、足刺さった!」

 

加減を間違えたのか片足が天井に突き刺さる。

 

その隙を逃さんとばかりに残りのウェアウルフが無数の牙を向け、ティレンに飛びかかった。

 

「やばいやばいまってまって!」

 

刺さっていない片足を強く踏み込み、もう片方の足を抜く。

 

「抜けろ!抜けろって!」

 

スポン、と情けない擬音が聞こえてくるかのようにあっさり抜けそのまま落下。

 

「ウソォー!?」

 

落下していくティレンを追いかけるようにウェアウルフ達は天井を蹴り、一瞬にして差を詰めた。

 

噛まれれば変身は解け、めでたくウェアウルフ(犬の餌)

 

「────なーんてね」

 

こんな好機(チャンス)を逃すわけにはいかない。

 

全員の位置を確認、そして照準を固定。

 

落下しながら正確な照準を固定するのは至難の業、だが。

 

あの人(・・・)出来るだから、理論上()にも出来るはずなんだよなぁ!」

 

ティレン(■■■■■■■)には造作のないこと。

 

閃輝一条(ステラ・ラクリマ)!!!」

 

数秒のチャージが終わった途端、亜光速に近い弾速でレーザーが放たれその頭蓋骨を撃ち抜いていった。

 

流星の如く暗闇を照らし、鮮血の雨を降らしていく。そして止む。




「……なぜ転生者は、こう無理をするんだ」

「……確率の結果ですので」

てへっと首を傾げ、身体を起こす。

「ところでライウェーくん怪我は?お兄さんの容態は?」

「どちらも問題ない」

東雲の頬を突っつきながらもう一度生きていることを確認する。

「仲良いいのね〜」

「まあ、それなりには」

ライウェーは立ち上がりティレンの方を向く。

「すまない、あ……兄を助けてくれて」

「いいのよ、困った時はお互い様だもんね」

ところでこの子起きないの?という返答にしばらくは起きないなと返した。

「かなり深い傷だからな、しばらく安静に休める場所探さなければ」

「休める場所ねぇ」

しばらくライウェーを舐め回すようにぐるりとその一周を回るティレン。

仮面(マスク)で隠され、表情はわからないがなんとなく悪そうな表情は感じた。

「……いいところあるんだよねぇ」

「本当か? もしよろしければ是非教えていただきたい」

「いいけど無料(タダ)とは、言わせないでね?」

おっとそうきたかぁとアホ毛が揺れる。

生憎金銭のものは持ち合わせていない、強いて言えばあの愉快なバニー姿のニャル太郎(もう一人の主)くらいだ。

「難しいな、分割でだめか?」

「だーめ」

「そうか」

仕方あるまいか、と肩を落とす。

「でも」と同じくらいの目線までしゃがみこちらをじっと見つめるティレン。

「イイコトしたら、教えてあげてもいいんだけどなぁ」

頬杖をつきながら楽しそうにそう答えた。

何一つとして読めない意図の言葉に困惑が隠せない発言に思わず溜息を漏す。

東雲()が聞いたらどうなるのか見れないのが残念、という気持ちになりながらその回答をする。

「悪いが────」

ザリ、と地面を踏む音が聞こえた、本来するはずのない方から。

ゆっくりと振り向き、それを確認する。

百八十センチの男性が満身創痍の状態て立ち上がっていた。

「あら、おはよう〜」

「起きていたのか!?」

返事はない、また喉が潰れているのかと思った次の瞬間。

東雲が地面を蹴り上げる、舞い散る塵芥が落ちる前より速く。

標的は──ティレンだ。

拳を下から上へ押し上げ、ティレンの顎を掠める。

驚くこともせずに彼女はバックステップでこちらとの距離をあけた。

しばしの静寂と睨み合い。

「お目覚めは良くなさそうね」

ティレンがそう言うが、当の本人は何も言わなかった。

「────、」

静かに息を吐き再び構えた。

背中越しでも感じるその殺気と言い知れぬ怒りが彼を包む。

ここまで素で怒りを露わにしているのは初めてだ。

(洗脳でもされたか? いやそれだとしてもこの殺気はなんだ)

「────久しぶりですねぇ」

不意にそんなことを呟き出す。

「ふふっ、ええ。本当に」

本当に知り合いのようだが長らく会っていないせいで、ティレンはそっけない返しをした。

「でもそんなに怒らなくても、私は手を出すつもりなかったのよ?」

「……本音は?」

「あら、そんなこと聞いてどうするの?」

ティレンは口元に手を隠す仕草をし、はぐらかした。

「別に、返答次第でぶちのめすだけですが?」

どこからともなくドライバーを取り出し腰に装着する。

「へぇ、そう」

どことなく嬉しそうに笑い、手を広げ高らかに宣言した。

「もちろんするつもりだったわよー!!!」

よっしゃブチのめす(変身)!!!」

怒りののままに変身した東雲は黒い甲冑のような姿でティレンと対峙。

ノータイムにも程がある、止める隙を作ってほしかった。

「対ライダー戦初めてだから、少し緊張しちゃうわね」

「こっちはライダーよりもタチ悪いのと戦ってきてんだぜ」

お互いを睨み合い、出方を伺う。

ひりついた空間で、全く動かない両者。

数十秒の沈黙ののち、両者が同時に打ち破った。

「覚悟しやがれ精通ババア!!!」「かかって来な膝舐めヘソ警察!!!」
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