フォロワーファンタジー ー小豆味ー   作:ニャル太郎

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ただの古い知り合い

衝突と轟音、流星の如く降り注ぐエネルギー弾が東雲を襲う。

 

「ノータイムでそれ撃つのズルだぞばか!」

 

「仕方ないじゃない、そういう固有能力なんだから」

 

東雲を追うように手を向け、銃を撃つような仕草をする。

 

そこから再び無数のエネルギー弾が放たれた。

 

「おっと!?」

 

躱すのがやっとな東雲は岩陰に隠れ、思わず舌打ちをする。

 

「クッソあの女ァ! ネチネチちまちま撃ちまくりやがって」

 

「隠れてるだけじゃ、攻撃できないわよ!」

 

指を鳴らすと彼女の頭上に二つの光の球が形成、狙いは物陰に隠れている人物。

 

閃輝一条(ステラ・ラクリマ)!」

 

二つのレーザーが放たれ岩は溶けるがそこに、東雲はいなかった。

 

「もらったぁ!」

 

放ったと同時に高くジャンプ、上からの追撃で一気に攻める手に出たのだ。

 

(あれくらいのビームなら、二、三発もらっても……!)

 

直撃まであと三秒、二秒、一秒────

 

断煌決蹴(フルゴル・ラブリュス)!」

 

唐突に視界が揺れ、意識が飛ぶ。

 

暗闇に落下する感覚襲ってきた、はずだった。

 

迅煌決蹴(フルゴル・ファルクス)!」

 

腹部に激痛が走り、蹴られた勢いで壁に叩きつけられる。

 

「……ハァア……」

 

どうやら真正面からティレンのサマーソルトキックを受け、洞窟の天井に叩きつけられて落下しているところに別のキックで蹴られたようだ。

 

断煌決蹴(フルゴル・ラブリュス)はサマーソルトの後に衝撃波を放つキック、 迅煌決蹴(フルゴル・ファルクス)はカウンターローリングソバットキックってところかしら」

 

ティレンの右脚の炉心が淡く光り、やがて消えていった。

 

「……ご解説どーも」

 

ゆっくりと立ち上がり、体制を整える。

 

深呼吸をし、右手を構えた。

 

「おっと、そうはさせないわよ!」

 

ティレンも右手を上げると数十本のエネルギー弾が形成され、放出。

 

真っ直ぐと東雲に飛んでいき、直撃する。

 

「────ッ!」

 

舌を噛み無理やり現実に意識を引きずり戻し、右手を放つ。

 

「えっ嘘!?」

 

弾丸の如く飛んだ右手はティレンの右肩に直撃し、一瞬よろめく。

 

(いや浅い、ほとんど攻撃入ってねえわあれ)

 

東雲の読み通り、ティレンは「今何かした?」と言う顔を向けてきた。

 

「まさか腕が飛んでくるなんてね、流石にびっくりした」

 

「あぁこれ頭の外れますよ、ほら」

 

「……えぇ」

 

やや引かれた気がするが、今は触れないでおこうと頭を戻す。

 

「……それどうなってるの?」

 

「どうって言われても、自分の体の部位が外れるって能力としか言えないんだけど」

 

「え、それ、大丈夫なの?」

 

「え、片耳聞こえないけど」

 

「ダメじゃん!」

 

「そうだね、ダメだね」

 

あははー、と笑ったのち地面を蹴りあげ一瞬にしてティレンとの間合いを詰める。

 

「ッ!」

 

ティレンは間一髪のところで避けた、がそこに攻撃が来ることはなかった。

 

「な、えっ」

 

東雲は殴る直前で右腕を外し、一回目の攻撃を敢えて外す事により二回目の攻撃を叩き込みやすくした。つまるところ──

 

「フェイントか!」

 

気づきはしたものの躱すことは難しいと判断し、受け身の体勢を取る。

 

そのまま吹き飛ばされ、壁に激突。

 

「この私にフェイントなんて、やるじゃない」

 

「うわ直前で気づいたのかよ、さすがフェイント勢」

 

「実際にされるの初めてなんだけどね」

 

ティレンは背中と壁を引っぺがし、周りを見渡した。

 

所々に大きなヒビ、パラパラと落ちる土埃、近くで観戦中のライウェー

 

「……これくらい暴れたら……」

 

何かを呟いた後ティレンが走り出す、それ反応するように東雲も走る。

 

二人は衝突することなくすれ違い、ティレンがライウェーを連れて出口へと駆け出した。

 

「ってオイコラ誘拐してんじゃねえぞ!」

 

「こんなところで観戦させてるからよぉ!」

 

「一緒に走り出すなら言ってくれ、測定の準備をしたのに」

 

「あら、ごめんなさい?」

 

それだけ言うとティレンは瞬く間に東雲と距離をあけた。

 

「んな!? スピードは同じくらいじゃねえのかよ!」

 

なんとか食らいつこうと追いかけるが差は広がるばかり。

 

「クッソ! 待てゴラァ! ライウェーくんを離せェ!」

 

「あら、ならお望み通りに!」

 

洞窟を出るのと同時にライウェーを投げ飛ばし、東雲に向かって両手をを構える。

 

「貴方なら、これくらい避けれるわよね?」

 

構えた手から光が集結し出す。

 

放射熱線(アニマ・フルグラティオー)!」

 

その言葉の意味を理解をしたところでもう遅い。

 

溜め込まれた光は一瞬にして放たれ東雲を覆い尽くした、それと同時に洞窟の入り口が崩れ落ちる。

 

あっという間に洞窟は土砂になり、普通の生き物であれば圧死は確実だろう。

 

「……まっ、こんなものかしら」

 

マントが風に靡く。

 

一息つき、ティレンはライウェーの方を向いた。

 

「こいつは驚いた、手加減をしないタイプの人だったか」

 

「手加減なんてしたら楽しくないでしょ? それにあの子、手加減されるの嫌な子だから」

 

「なるほど」

 

それだけ呟くとライウェーは服についた汚れを落とした。

 

「貴方の方こそ、お兄さんがボコボコにされて悔しくないのかしら?」

 

「悔しいか、考えたことがないな」

 

「あら、そうなの」

 

「そうとも」

 

あぁそうだ、と口元を手で隠す仕草をし、少しだけ笑った。

 

「ところで君、彼のことをどこまで知っているのかな?」

 

「それはもう、長い付き合いだからそれなりに知っているわ」

 

「そこではない」

 

予想外の問いにティレンは一瞬の戸惑いを見せた。

 

「あぁそうだな、言い方が悪かった。彼の能力をどこまで知っているかな?」

 

「それって、どういう──」

 

突然、ティレンの足元に直径一メートル半の穴が出現。それと同時にロケットのように左手が彼女の顎を殴った。

 

何が起きたかすぐに理解はできはしたが、足場がなくなったことで体制を崩し回避ができずにそのまま攻撃を受けて、後方に吹き飛んだ。

 

「全く、いつからボクの能力が自分自身の部位を外せるだけだと思っていたワケ?」

 

黒いライダー、東雲が呆れたように呟いた。

 

「無機物分解、君のもう一つの固有能力だったな」

 

「そうそう、まあほぼ使うことないから分からなくて当然なんだけど」

 

ビームが放たれたと同時に即座に手を地面につけ、分解。

 

そのまま片耳でティレンの位置を予測し、分解パンチしながら飛び出た。

 

「君らしいな」

 

「そいつはどうも」

 

他愛もない会話を済ませ、ティレンの方を向く。

 

「それで、いつまで寝てるんですか奥さん?」

 

倒れているティレンに向かって、優しみのかけらもない言葉を投げつける。

 

「アンタの場合倒れてからが本番でしょ、それともいい加減そっち(・・・)の名で呼んだほうがいいかな?」

 

それに反応するかのようにゆっくりと、彼女は起き上がった。

 

「──あ゛ぁ゛──第二ラウンドだ」

 

ゴッッッ、と地面を蹴り上げる音が響く。もう目の前までティレンが迫っていた。

 

天高く踵をあげ、そのまま撃墜。

 

「ッ!」

 

間一髪のところで躱し、バックステップで距離を空ける。

 

(やべー本気にさせちまったよ、勝てるビジョンが全く浮かばねー)

 

経験も知識も立ち回りも何もかも東雲の上、勝ち目があるのかさえ不明。

 

「……冷静になってみれば、今のボク戦っちゃダメな身体だったわ」

 

まあいいか、と流しティレンを見る。同じくティレンもこちらを見つめた。

 

二人のライダーが向き合い、同時に駆け出し同時に飛ぶ。

 

東雲は右にレバーを倒し、愉快なBGMと愉快な男性の声が響いたのち右脚が外れる。

 

ティレンは右ハンドルを捻り、三秒ほどのチャージをした後右脚の炉心が淡く光出す。

 

〈ディサセンブル!フィニーッシュ!〉

 

轟煌決蹴(フルゴル・グラディウス)!」

 

二つの光が衝突、眩い閃光が森を包む。

 

「ッ、ウゥ!!!」

 

「ハァアアアア!!!」

 

やがて激しい轟音が鳴り響き、両者はその衝撃で跳ね飛ばされる。

 

ティレンは慣れた様子で受け身を取り、すぐさま立ち上がった。

 

東雲は先の戦いの影響もあり、受け身を取る気力さえ残っておらず地面に叩きつけられる。

 

うめき声をも、立ち上がる力もなくそのまま仰向けで空を見る。

 

「どう?楽しめたかしら?」

 

ティレンが話しかけるが返事はない、まるで屍のようだ。

 

「流石に満身創痍の人間に割と本気でやったのは悪いと思ってるわ、でも手加減されると貴方怒るでしょ?」

 

倒れている東雲にゆっくりと近づいていく。

 

「でも楽しかったわ、久々にこんなに戦えたし」

 

空を見たまま、全く動かない。

 

「ありが────え?」

 

そこにいるのは動かない()のないライダーだけだった。

 

「──え、もしかして頭飛ばしちゃった? え? どうしようこのタイミングで変身解けたらどうなるの? え? ちょ? え?」

 

遭遇したこともない状況に混乱を隠せないまま、その場であたふたしだすティレン。

 

「ちょっと! しっかりして!? ねえ!?」

 

頭のないライダーに向かったところで返事が返ってくるわけでもない。

 

「と、とにかく頭を探そう! まだどっかに落ち──」

 

不意に後頭部に鈍痛が走る。

 

殴られた、というより落ちてきた物にぶつかったと言う感触に近い。

 

だが空には岩どころか鳥も飛んでいなかった。

 

「い、わ?」

 

落ちてきた()を見た、いや岩だと思っていたのは探していた()だ。

 

「そう、いうこと、か」

 

理解したのと同時にティレンの変身が解け、意識は闇へ引き摺り込まれた。

 

すぐ真横には東雲の頭が転がり、はぁ、とため息を漏らす。

 

「大体なぁ、満身創痍の人間がほぼ無傷の人間に勝てるわけないだろいい加減にしろ」

 

聞こえないはずの文句を投げ飛ばし、ころころと頭を転がし身体に近づく。

 

「よいしょっと、あぁやっぱ身体は限界かぁ」

 

頭をくっつけた直後、ピクリとも動かなくなってしまった。

 

「お見事」

 

木の後ろで見ていたライウェーが声をかける。

 

「そいつはどーも」

 

「彼女も見事、かなり戦闘に手慣れていたな」

 

「まああの人割と戦える人なので、元マフィアだし」

 

「……まふぃあ?」

 

「うん、マフィア」

 

服装がね、と敢えて口にはせずに変身を解く。

 

心地よい風が頬を撫でる、視界には青い空が広がっていた。

 

「……」

 

ふわりと長いスカートのようなものが視界に入る。

 

「……ライウェーくん」

 

「なんだ?」

 

「見覚えのあるスカートが視界に入ってきて最悪パンツが見えそうで助けてほしいんだけど」

 

「ラッキースケベじゃないかおめでとう」

 

「いやちょっと助けてよやだよニャル太郎のパンツなんか見ても嬉しくないよ」

 

視界がスカートから見覚えの顔、とは少し違った顔が目に入った。

 

服装はメイド服。白髪ツインールに橙色のメッシュ、おまけの狐耳。目は橙色。ぷくっと頬を膨らませて怒っているようだ。

 

「……パンツは見てないので」

 

「そこじゃありませんわ」

 

「……はい」

 

「全く、どうしてこうも貴方は傷だらけの状態で戦うんですの」

 

「守らねばと感じたので」

 

「何から?」

 

「ん」

 

倒れているティレンに向かって指を差す。

 

「……ひ、人様に向かってライダーで戦ったんですかこの外道!」

 

「そんな言わなくても、ちゃんと相手もライダーだし」

 

「え、ライダー同士の戦いって、ほぼ無意味なのでは?」

 

「やめろ! 多方面に喧嘩を売るんじゃない! 単純にフォロワー同士のお戯れだよ! 深夜テンションで話したらいつの間にか性癖暴露大会になっただけだよ!」

 

「……フォロワー同士で戦ってもあまり意味がないのでは」

 

「まあ戦うんだったらTLだけにしてほしいとは思うけども、いや今そこはいいの」

 

よいしょ、と上半身だけを起こす。

 

「ところであの人生きてるよね?」

 

「生きてますわ、さっきパスタぁって言ってましたわ」

 

「じゃあ大丈夫だ」

 

倒れたまま寝言を言ってるティレンのところまで行き、鼻を掴んだ。

 

「ッ、はぁ!? ちょっと何!?」

 

「おはようございます」

 

「あ、おはようございます……」

 

しばしの沈黙、気まずい空気が流れる。

 

「あ、じゃあこのタイミングで紹介するね」

 

「「「このタイミングで!?」」」

 

「え、ここしかないかなって」

 

「絶妙というか、なんというか」

 

「もう少し雰囲気を作ってからの方がいいと思いますわ」

 

「え、別にいいけど多分後三分くらいでボク気絶するよ」

 

「ウルトラマンじゃないんだから……」

 

「うるせい」

 

咳払いをし、改めて紹介した。

 

「この人はあかつきマリアさん、ボクの古い知り合いです」

 

「ども〜」

 

「古い知り合いか、ん? まて名前が違うぞ」

 

「あぁさっきの偽名よ、この世界に馴染しやすくなるために名乗っていたの」

 

「この人型から入るタイプの人だから」

 

「ほう、それで偽名を、っとあった」

 

「何がですの?」

 

「君のフォロワーの中にあかつきマリアという人物がいるか検索して見つけたところだ」

 

「何その機能知らない」

 

「言ってないからな、なるほど物書きか」

 

「ええ、まあ最近はちょっと……」

 

「物書きさんなんですのね!」

 

「ま、まあ」

 

嬉しいのか照れているのか頬を赤らめるティレン、もといあかつきマリア。

 

「微笑ましいな」

 

「確かに、そうかもしれない」

 

でもあの人中身男の人なんだよなぁ、と喉から出かかったの堪えた。

 

「あ! ワタクシ物書きさんにあったら一度やって見たかったことがありますの!」

 

「あら、何かしら?」

 

なんでもいいわよ、と胸を張りシノタロスを見る。

 

ぱぁと顔が明るくなり、嬉しそうに口を開く。

 

「進歩、どうですか!」と悪意のない満面の笑みでそう聞いた。

 

その台詞を聞いたあかつきマリアは顔面が蒼白になり、再び意識を失う。

 

「ど、どうしたんですの!?」

 

「……意識を失っただけだ」

 

「そ、そんな!? ワタクシ何もしていませんわ!」

 

「……時に言葉は人を傷つけるからな、ほらこのように」

 

ライウェーが目線を向けると、口から血を吐き今にも死にそうな東雲が倒れていた。

 

「あぁー!? 東雲さーん!」

 

シノタロスが東雲とあかつきマリアの元へと右往左往し、「どうしましょう〜!」と頭を抱える。

 

「いっそ埋めます?」

 

「まてまてまて、手当てすればいいだろう」

 

「は! そうでしたわ!」

 

ワタクシってばついうっかり、と呟き二人に近づいた。

 

「……進歩を聞いてるだけなのに、あんな反応をするのは不思議だな」

 

今度別の物書きで試すか、とその後ろで良からぬことを考えていたライウェー。

 

「ライウェーさーん!」

 

「あぁ、今行く。ところで君手当ては?」

 

「やったことないですが、多分なんとかなりますわ!」

 

「奇遇だな、トウホウもだ」

 

気が合うねと嬉しそうに笑い、二人の物書きの手当てとメンタルケアを始めていく。

 

なお十分後、二人の物書きの悲痛な叫びによってニャル太郎が目が覚ました。

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