「で? なんでこうなってんだ?」
ようやく目を覚ましたニャル太郎が状況説明を求めた。
「ワ、ワタクシはただ進歩どうですかと聞いただけですの……」
「単に手当をしただけだが?」
「……なるほどな」
その後ろでなぜメンタルと体がボロボロの二人がお互いに手当し合っているのかようやく理解した。
その光景を見て思わずため息を漏らし、口を開く。
「あのなぁ、むやみやたらに他人の進歩なんて聞くもんじゃねえぞ」
「でもニャル太郎さんはいつもしてるって東雲さんから聞きましたわ!」
「オレの場合は面白半分できてるわけじゃねえんだよ」
「失礼ですわ! ワタクシ達が面白半分で聞いているとでも!?」
「シノタロスは真面目に聞いていたぞ」
「お前は?」
「実験したかった、とても興味深い」
「素直でよろしい」
はぁ、とため息を漏らす。
「まあ人間好奇心にゃあ勝てないからね」
そう腑抜けた声で東雲は言う。
果たしてライウェーは人間という扱いでいいのかというツッコミをしようか悩むが、これ以上ややこしくするのも面倒だと判断しそのまま黙るニャル太郎。
「はい、できた。これで少しは楽になると思うけど」
「おーあかつきさんありがとー」
そうこうしている内に手当が終わり、東雲が立ち上がる。
「ゲボッ」
その瞬間、東雲が吐血。全身に痛みが走り出し、地面に膝をついた。
「……マジか」
「マジかじゃないけど!? なんでそんな冷静なの!?」
「もう何度目かの吐血でね、流石に慣れてくるともう感覚とか無くなってくるんだよ」
「それもう致命傷じゃない!? でもってなんで君達はそんな平然としていられるの!?」
「いや、慣れたというか」
「慣れてしまえば特に問題ないですわよ」
「いつものことらしいからな」
「えぇ……」
「まあこれくらいどうってこと、ゴボッ」
それなりの量の吐血をするも東雲は平気そうに顔をあげ、
「無理」
そのまま倒れた。
「ダメじゃん!!!」
「そりゃあな、やべーのと戦った後にアンタとの戦闘だったからな」
「先言ってよ!」
あかつきマリアが駆け寄り、すぐさま容態を確認する。
「これ大丈夫なの!?」
「息してるか?」
「一応は……」
「じゃあ大丈夫ですわ」
「多分寝たら治るぞ」
「そんなドラクエ方式で人間治らないから! もっと心配しなさいよ!」
「そう言われてもなぁ、気がついたらなんか怪我してるんだもんこいつ」
「気がついたらって、ちゃんと見てなきゃ。この子無理するタイプなんだから」
「知ってる」「知ってますわ」「知っている」
「……そう」
思わず溜息が出てしまったあかつきマリアだが、すぐさま気持ちを切り替え東雲の身体を起こす。
「とりあえず街に運ぶわ、貴方達足はある?」
「お、出番だシノタロス」
「おまかせを!」
どこからともなくバケックスドライバーを取り出しいつものポーズを決め、バイクの形に姿を変えた。
「……今更言うのもあれだけど、世界観とか考えたことないの?」
「安心しろ、そのうち鉄の竜とか出てくるぞ」
「え、何。戦隊とか出てくるの?」
「それは知らん」
そっかぁ、と肩を起こし
「そういや、あかつきさんの足は?」
「あぁ私の? ちょっと待っててね」
そう言うと指笛を鳴らした。
数秒の間木々の揺れる音だけが響き、遠くの方で蹄の音が聞こえ出す。
草木を蹴散らしながら現れたのは、芦毛の馬。しかし屈強な体に白く塗装された鎖帷子を装備している。
「この子がいるからね」
「ワタクシこの馬知ってますわ! ゴ──」
ごつん、とライウェーがエンジン部分を軽く叩く。
「なぜ叩くんですの!?」
「すまん、つい手が滑ってな」
「あら、この子
可愛いでしょ? とルカの頭を撫でくりまわし出す。
「
がつん、と今度は軽く足でエンジン部分を蹴った。
「ひどいですわライウェーさん!」
「おっとすまない、今度は足が滑った」
「それ地味に痛いんですのよ!?」
ぷんすかとエンジン部分から煙を吹かしながら怒りを露わにする。
「ふふ、名前はルカよ。大人しい性格の子なの」
「そしたらどちらとも当てはまりませんわね」
「シノタロスはさっきからなんの話をしてんだ」
「芦毛の伝説をご存じではないですの!?」
「すまん、わからんしお前なんでそんなに詳しいんだよ」
「はて、なんででしょう?」
お前もわかんねえのかよ、とツッコミを入れる前にライウェーが口を開いた。
「そういえば、君」
「ん? 何かしら」
「ふと気になったのだが、どうしてこんな森に?」
「あぁ、それは──」
そこで言葉は止まった。
何かを思い出したかのように顔面が青くなっていき、落胆したように膝をつく。
「……忘れてた……」
手で顔を覆い隠し、そんなことを呟いた。
「え? 何を?」
「ここにきた理由、完全に忘れてた」
「……は?」
その直後、大きな地響きが起き鳥達が何かから逃げるように飛び去っていく。
「……一応聞きたんだけどよ」
「なにかしら」
「あれ、何?」
「……ええと、私の記憶が正しければ」
木々を薙ぎ倒し、
赤い鱗を身に纏い三十メートルほどの大きさ、口からは鋭い牙を見せながらこちらを睨み付けた。
「ヒドラ、かな」
「……なるほどな」
ヒドラと呼ばれたその怪物は天高く咆哮しだす。