その言葉を聞いた瞬間、東雲の脳裏にやたら色気があっていい声で話すラスボスが浮かび、思わずのその名を叫びそうになったがニャル太郎がその口を塞いだ。
「で、なんて?」
そしてニャル太郎はあまりの意味不明さに、思わず聞き返した。
「ですから、こちらの”クラウドドライバー”と”カオスドライバー”をもらっていただきたいのです」
リチャードがアタッシュケースが開けると、中に二つのドライバーが入っていた。
一つは全体は銀色に塗装され中心に白い桜が歯車のように二つ並べられており、レバーは三段式で血塗れの塗装が施されている。
もう一つはてらてらと黒光したベルトに星座がいくつも並べられており、なんとも宇宙チックな見た目で中心の砂時計がレバーの役割をしている。
「そのドライバーってあの、光る!鳴る!DXなんちゃら〜!ってやつでいいんですよね?」
ニャル太郎の手を剥がし、興奮気味に東雲は聞いた。
こいつの中ではドライバーと言ったら仮面ライダーの変身アイテムしか思いつかないのだ。
「ええ、そうですよ」
「うはぁ〜!聞いたニャル太郎!?ドライバーだよ!?ベルトだよ!?」
「そんな玩具如きに興奮しなくても」
「ベルトは玩具じゃねえ!!!!!!!!ロマンだ!!!!!!!!」
「うるさっ……」と耳を塞ぐニャル太郎。
ニコニコとその状況を耳を塞ぎながら眺めるリチャード。
「で、なんでこんなもんをオレたちに?」
後ろでドライバーを舐め回すように見る
「貰っただけでタダ飯と寝床用意します、なーんて都合のいい話じゃねえんだろ」
「察しが良くて助かります、優秀な妹さんですね」
「ちげぇよ」
どちらかと言えば姉、と脱線しそうになる。
「で、何すればいいんだ?」
「ただ、こちらの頼み事を聞いてほしいのです」
それだけか?と疑いの目を向ける。
「成果によっては、ドライバーの強化、お部屋のグレードアップ等々、様々な報酬を用意してます」
確かにこちらとしては悪くない話だ、なのだが。
「お前に利益がねえじゃねえか」
その点がどうも引っかかった。
「私は貴方達にこのドライバーを使ってもらうだけでいいのです」
その台詞が怪しいんだよ、と言っても無意味か。
「どうでしょうか?」
「はぁ、悪いがオレは──」
「やります!!!」
そこには”クラウドドライバー”を大事そうに抱える東雲が立っていた。
「せっかくこんな凄いもの貰ったので!もちろんやります!」
「よーし、ちょっとこっち来い」
「よく考えてみろよ、怪しすぎるだろ」
「そうかなぁ、ご飯くれるし部屋貸してくれる、それもタダだよ?願ったり叶ったりじゃん」
あぁこいつ一度信頼すると最後まで信用してしまうやつだったと、ニャル太郎は思い出し頭を掻いた。
「でもなぁ……」
「ねぇニャル太郎、もしかしてリチャードさん怖いの?」
「んなわけねえし!!!あんなかりんとう野郎全然怖くねえから!!!」
「わかったわかった、耳元で大声出さないでよ」
お前が言うか、というツッコミをいれる元気もなかった。
「はぁ、なんかあったらお前のせいにするからな」
「はいはい、どーぞご勝手に」
もうあとはこいつに任せようと、ニャル太郎は近くのソファに倒れ込む。
「お話は終わったようですね」
「はい!先程の話、是非やらせていただきます!」
「そう言っていだけると思いました」と言ってリチャードはカウンターの上に紙を二枚置いた。
「こちら契約書です、お二人の名前を書いてください」
「はーい、ニャル太郎ー!」
「なにィ……」
「名前書いてだって」
「もう勝手に書いてくれ……」
「だそうです」
「本人の許可をもらっているのであれば、問題ないですよ」
東雲は言われた契約書に”東雲の幻想屋”と”ニャル太郎”と書き込んだ。
書き込んだ瞬間、契約書は青く燃えて無くなった。
「えっ」
「あぁ契約成立したと言う証拠ですので、ご安心を」
「わ、わかりました」
燃えて無くなったから証拠もなにもないのでは、とツッコもうとしたがまあいいかと流した。
「それとこちらドライバーの説明書になります、私は部屋の鍵を取ってまいりますので、少々お待ちを」
そう告げてリチャードは奥へと歩いていった。
待ってる間、東雲はもうひとつのドライバーに目を向けた。
「ねぇニャル太郎ー!」
「なんだよ」
「これ、いらないの?」
「あ?いらね」
「え〜せっかく貰ったんだから、ちゃんと使わなきゃダメだよ〜」
「そんな得体の知れないもの、なんで持たなきゃいけないんだよ」
「得体の知らないって……こんなかっこいいのにぃ……」と“カオスドライバー”を高らかに持ち上げる。
「そうかァ?」
「そうだよ!まぁボクのドライバーの方がかっこいいもんねー!」と自慢げに“クラウドドライバー”を見せつけた。
「……雲の要素どこだよ」
「ボクが好きな要素詰め込まれてるからいいんだよ」
「しっかし“カオスドライバー”ももっとヤバそうな見た目かと思ったら、意外とオシャレなんだな」
「なんだ、やっぱ気に入ってんじゃん」
「ば、ばっか!違うし!」
「もう〜欲しいんだったらそう言えばいいのに〜」
”カオスドライバー”をニャル太郎の腰に乗せた瞬間、ベルトが腰に巻きついた。
〈カオス〜……ドライバー!〉
「おぉ!光った!鳴った!」
「ゲェ!?お前勝手につけるなよ!」
ソファーから飛び起きてベルトを外そうとする。
「外れねえ、なんだこれ」
「なにしてんのさ、ってほんとだ取れない」
「おい一生このままとかじゃねえよな!?」
「そんなことはにと思うけど」
「ドライバーをいじっても外れねえ、どうなってんだ」
カウンター上に置かれた説明書を読み進めた。
説明書を読むと“注意!一度つけてしまうと変身解除まで外れません!”と書かれていた
「クソッタレェ!!!」とニャル太郎は説明書を投げ捨てた。
「ちょっとー!投げないでよー!」
投げ捨てたられた説明書を拾い、東雲は読み直していく。
“自分らしく変身!と叫ぶ“
“クラウドドライバーならレバーを左に引く!“
“カオスドライバーなら砂時計を逆さにしよう!”と書かれているだけだった。
「裏技で実は外せるとか書いてない?」
「ない!ズルできないって」
「チッ、マジか」
「おやおや、もう装着したのですね」とそこにリチャードが戻ってきた。
「おい、これどうにか外せねえのか」
「説明書に書いてありますが」
「じゃなくて、他の方法でだよ」
「他の方法の場合だと生命活動を停止しなければならないのですが、よろしいですか?」
「結構でーす、変身しまーす」
ニャル太郎はもうヤケクソだと、砂時計に手をかけた。
「あぁ、でしたら地下の方にご案内します、そこはトレーニング室でもあるので」
「へえー!すげー!」
「まじでどうなってんだこの施設……」
2人はリチャードに案内され地下室へと向かった。
・ー・ー・
地下室は体育館並みに広い、光源はないはずなのに何故か明るかった。
「これトレーニング室……?ボクこの光景どっかで見たことある……主に日曜日の朝……」
「それ以上はやめろ」
「ここでしたら近隣住民の迷惑にならないので、存分に変身できますよ」
「ほんと!?やったー!」
その瞬間東雲は“クラウドドライバー”を腰に装着した。
〈クラウドドライバー!!!〉
「ニャル太郎、変身しよ!」
「はいはい、ええとこの砂時計を逆にするのか」
「ちゃんと変身って言わなきゃだめだからな」
「わかってるって」
ニャル太郎は東雲の隣に立ち、深呼吸をし息を合わせる。
レバーを左に倒した瞬間、和風ホラーのような待機音が流れ始めた。
砂時計を逆向きにした瞬間、コズミックホラーのような待機音が流れ始めた。
「変身!」「変身ッ!」
レバーを引く東雲、砂時計の砂が全部下に落ちたニャル太郎。
2人が輝き出す。
和風ホラーの待機音は戦闘態勢に入ったかのような音楽が鳴る。
コズミックホラーの待機音は何かに気づいたかのような不気味な音楽が鳴る。
黒い甲冑のような鎧を身に纏い、顔の部分は鬼の仮面に覆われている。
白い鎧に身を纏い、猫耳を模様した兜をかぶっている。
〈仮面ライダークラウゥゥゥド!〉
〈仮面ライダァ、カオス!!!〉
お決まりの名乗りがキマると辺りは静かになった。
「……今のなんだ」
「スッゲー!!!ほんとに変身できた!!!」
東雲は自分のライダースーツを舐め回すように見始めた。
「これがライダースーツか、着心地はいいけど」
なんで猫耳なんだよ、とニャル太郎は心の中で突っ込んだ。
「お二人とも、とてもお似合いですよ」
「えへへ、それほどでも」
「んで、これで変身解除したら取れると」
「え〜せっかくなら何できるか探ろうよ〜」とレバーを右に倒したり左に倒したりしていた。
「そんなの明日でもい──」
突然視界にノイズが走った。
何が起きたか理解ができず、周りを見渡す。
異常はない、なんだ気のせいか、と安心して肩を落とした。
次の瞬間。
「ウェ〜イ!スカートめくり〜!」
「なっ!?」
腰布をふわっと捲られた。
「ななな、何してんだこの馬鹿!」と蹴りを入れようとしたが再びノイズが走った。
「──あ?」
夢か?幻覚か?一体何が起きた?
頭の中で思考を巡らせても何もわからない。
だが後ろに気配を感じた。
「オラァッッッ!!!!」
その気配の正体に向かって回し蹴りを入れた。
「ガッッッ!?」
「なんで蹴るんだよ!まだ何もしてないだろ!」
「今捲ろうとしただろ」
「えっなんでわかったの!?」
「なんでって、なんでだ?」とリチャードの方を見た。
「貴方のスーツに備わっている固有能力のようなものです」
「固有能力だァ?」
「はい、貴方の場合は未来予知ですね」
「なるほどねぇ」と頭を掻いた。
「貴方の危機に反応して自動的に発動したようですね」
「へぇ、便利なもので」
「……ニャル太郎にとって捲られることって危機的だったのか」
「もう1発欲しいか?」
「いらないよ、はぁ〜ボクの固有能力なんだろな〜!」
よいせっと起き上がった時、ゴトンッと何か重い物が落ちる音が聞こえた。
「……え」
東雲は見上げてた、自分の体を。
「は、はわ、わぁぁぁ!?!?」
「どうし、え?」
「取れた!?取れちゃった!?どうしようボク、えっ生きてる???」
「アイコンみたいになってんぞ!」
「リチャードさん!これも固有能力みたいなやつ!?」
頭を持ち運びながら走ってきた。
「そうですよ、貴方のは分解ですね」
「分解?」
「ええ、ただ自身の体と無機物しか分解ができませんよ」
「なーんだ、そういうことなんだ」
「いや理解するなよ、怖いだろ」
「慣れだよ、慣れ」と自分の頭を体にくっつけた。
そんなイカれた状態に慣れてたまるか、とニャル太郎は思っていた。
「しかし無事作動して良かったです」
「その言い方だと反応しない場合もあるのか?」
「ドライバーにも相性というものが存在するのですよ」
「ふぅん、相性ねぇ」
「見て見てニャル太郎!」と右手をあげて左手でレバを倒し「ロケットパンチ!」と叫んだ。
右手はロケットの如く飛んでいき、壁に突き刺さる。
レバーを真ん中に戻すと、どういう原理なのか不明だが右手は戻ってきてくっついた。
「どう!?」
「いや……どうと言われてもなぁ……」
正直もう疲れたから休みたい、とニャル太郎は思っていた。
「うーん、安直すぎかなぁ」
「そういうことじゃねえんだけどな」
「ワタクシは素敵と思いますわ!」
突然知らない女の子の声が響き渡った。
「そうでしょうそうでしょう!」
「え、今の誰」
「何が?今のニャル太郎じゃないの?」
「オレはこんな声高くねえよ」
「確かに、じゃあリチャードさん?」
「ふふ、そんなわけないですよ」
「えっじゃあ……」
声が聞こえた方へと目線を向ける。
そこにいたのは上半身と下半身が逆になっている狐の姿を模したイマジンだった。
「あ、こ、こんにちはですの」