フォロワーファンタジー ー小豆味ー   作:ニャル太郎

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戦犯かましたのだーれだ

「逃げろ!!!」

 

ニャル太郎が叫ぶ。

 

同時に東雲を担ぎ上げバイク(シノタロス)に跨り、ハンドルを捻った。その隙にライウェーは長方形の姿へと変形し東雲のパーカーのポケットへと身を忍ばせた。

 

あかつきマリアもルカに跨り、手綱を引く。

 

逃げる獲物を追うようにヒドラが四人に向かって噛み付いてくる。

 

ガチンッ、と音をたて空っぽの口が閉じられる。素早さでは馬とバイクでは勝てなかった模様。

 

間一髪のところで丸呑みバッドエンドは逃れた一同は整備されていない道を駆けていく。

 

「ヒドラのこと忘れるって、大丈夫かよあんた!?」

 

「マジでごめん! 私結構脳筋だから!」

 

「肝心なところたーまに忘れるもんね君」

 

「起きてんのかよ!?」「起きてたの?!」

 

「こんだけうるさければ誰だって起きるっての、ッ」

 

不機嫌そうな声でそう返し、吐血をした。

 

「テメェ! 何人の背中で吐血してんだ! 洗うのクソめんどくせえんだぞ!」

 

「うるせえ文句言うなら前見とけ」

 

口元の血を拭き、対象を見る。

 

距離はすでに二十メートル離れている、追いかけてくる様子はない。

 

ヒドラ、ギリシア神話に出てくる怪物。体長三十メートルほどの大型モンスター、スピードはそれほど速くないはず。

 

振り切れるのは容易なことだろう。

 

──もし相手が飛び道具などを持っていなければ。

 

「……あ?」

 

ヒドラがゆっくりと口を開いていく。

 

今までの経験上、東雲は何か来る事はすぐに予測できた。

 

「避けろ! なんかしてくるぞ!」

 

すぐさまニャル太郎がハンドルを右に回す。

 

その掛け声を合図にしたかのようにヒドラが紫色の液体を吐く。

 

瞬時に避け、ことなきを得る、が。

 

「ゥ、ッ!」

 

ニャル太郎も重傷者なのを忘れてはいけない。

 

今になって先の戦闘の疲れと痛みが襲い、ハンドル操作を見誤り転倒。

 

そのまま地面と衝突、することはなかった。

 

即座にバイクからライダーの姿へと変えたシノタロスが二人を受け止めて、どこからともなくいつものハンマーを取り出し構える。

 

「下がっていてくださいまし、ワタクシがカタをつけます」

 

そう言うと地面を蹴り出し、一直線にヒドラに突撃していく。

 

「まてシノタロス! 一人で突っ走るな!」

 

ニャル太郎が立ち上がり追いかけようと走り出すとしたのを東雲がスカートを引っ張った。

 

「オワァ!?」

 

引っ張られた影響でバランスを崩しそのまま転倒。

 

「何すんだこのバカ!」

 

「紫のやつ、多分毒」

 

「は?」

 

振り向いてみると紫色の液体に触れていた木々や草木が徐々に枯れ、最終的には塵へと成り果てた。

 

「……まじか」

 

「ヒドラの毒ってのは人間が吸ったら簡単に死ぬもんだからね、ライダー状態だとわからんけど迂闊に近寄らない方がいい」

 

「懸命な判断ね」

 

後ろの方から無傷のあかつきマリアが現れる、しかしその近くにルカの姿はない。

 

「お! あかつ、むぐ!?」

 

「布でもいいから口と鼻を塞いで、死ぬわよ」

 

言われた通りに東雲とニャル太郎は口と鼻を塞ぎ、あることに気がつく。

 

「……そういやルカちゃんは?」

 

「先に逃したわ、指笛を鳴らせばいつでもくるから安心して」

 

「そっか、ならよかった」

 

心底安心したかのように胸を撫で下ろした。

 

その安心を砕くようにあかつきマリアが口を開く。

 

「それで、どうするのアレ。正直、あの子一人じゃもたないわ」

 

三十メートル先でシノタロスがヒドラと戦闘、状況はシノタロスが劣勢。

 

「ンなこたぁわかってんだよ」

 

頭を掻きむしり焦りの表情を見せた、もちろんこんなことをしても意味はないことはわかっているのに。

 

「けど、変身できねえ奴らがいても足手まといだろ」

 

「あら、そんなことないわよ?」

 

「アァ?」

 

「変身できないなら、しない方法で狩りをするのよ」

 

「……できんのか?」

 

「ええ、これでも冒険者なんだから罠の一つや二つくらい作れ──」

 

激しい轟音が森中に響く、シノタロスがヒドラの長い首に叩きつけたれた音だった。

 

ヒドラは痛がる様子を見せることもなく首をあげ四人の方へと目を向ける、その瞬間。

 

「イッテェですわね! もう怒りましたわ!」

 

ブチキレた様子のシノタロスが地中から飛び出し、重い一撃を食らわせた。

 

その一撃でヒドラが一瞬怯み、よろめく。

 

「今が攻めどきですわ!」

 

ハンマーを持ち直し、間合いを詰め畳み掛ける。

 

九つの首が襲いかかるも全てかわしていき、的確に頭に叩き込む。

 

「! シノタロス!」

 

「うお、ちょ、何して」

 

チャンスだと感じたニャル太郎はパーカーのポケットからライウェーを取り出し、投げた。

 

「文句はあとで受け付けるからな!」

 

〈 全く、乱 〉

 

返答は聞こえなかった。

 

投げられたライウェーはシノタロスの元まで特に問題なく投擲され、キャッチと同時に姿を変える。

 

〈 ハ ル バ ー ド 〉

 

「なるほど! これなら一瞬でカタをつけられますわ!」

 

「そのままぶった斬れ!」

 

「もちろんですわ!」

 

ヒドラ(こいつ)を狩るのはここしかない、と全身が叫ぶ。

 

全意識を集中、狙うは全ての首(一点)

 

地面が抉れるほど強く蹴り上げハルバード(ライウェー)を振りかぶる。

 

「ヤァァァァァ!!!!」

 

真っ直ぐに、一直線に、全ての首(・・・・)を斬り落とした。

 

そこらに首が落ち残骸だけが残る。

 

「──やりましたわ! 勝利勝利! ですわ!」

 

〈 ふむ 〉

 

その場でくるくると舞うシノタロスと何か引っかかるライウェー。

 

「ったく、危ねえんだから」と溜息を漏らしながら微笑みながら「なんとかなったな」と二人の方に振り向いた。

 

「何してんだこのバカ!!!」「何やってんの!?」

 

投げられた言葉は思ったより辛辣な言葉ことに驚きの表情を見せる。

 

「いや、大抵の生き物は首斬ったら死ぬだろ」

 

「大抵はな! でも例外もあるんだよこのドアホ!」

 

「君ヒドラ知らないの!?」

 

「え、ヒドラってあれだろ、首斬ったら──」

 

そこで何かを思い出すかのように顔が真っ青になるニャル太郎。

 

「あー、まあ、なんとかなるんじゃねえかな! ハハッ!」

 

もはやどうにでもなれという乾いた笑いを漏らす。

 

「……君ってたまーにこういうことするよね」

 

「やめて、ボクを見ながら言わないで」

 

もう何も聞きたくないと言わんばかりに耳を塞ぐ。

 

しかし現実は非情で、すぐさまヒドラに異変が起きる。

 

切断部分から新たな肉と骨が形成されていく。

 

ゆっくりと確実に形を作り、全ての首が再生した。

 

その数、十七本。

 

「あら? 首が増えてますわね」

 

〈 あぁ嫌な予感が当たった 〉

 

ようやく事態に気がついたシノタロスとやれやれと溜息を漏らすライウェー。

 

「……どうすんだこれ」

 

「先に言っとくけど首増えたら私の罠作戦使えないからね」

 

「はい戦犯かました、後で罰ゲームな」

 

ある意味、詰み状態に陥った一同。

 

それを喜ぶかのように、生まれ変わったヒドラが咆哮を上げた。

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