フォロワーファンタジー ー小豆味ー   作:ニャル太郎

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腹が減っては戦はできぬ

「そういえばさっきから気になってたんですけど、東雲さんとニャル太郎さんって同じ人じゃなかったんですね」

 

「「え、同一人物だけど」」

 

「あぁ、ですよね」

 

一瞬の静寂が訪れる。

 

「いやいやなんで二人もいるんです!?」

 

静寂を破るようにポイントがツッコミを入れる。

 

「なんか転生した影響で分裂しちゃったみたい」

 

「なんですかその転生バグみたいなの」

 

「「さあ?」」

 

お互いの顔を見つめ、同時に肩をすくめる。

 

「まっ、今のところ困ったところないから問題ないよ」

 

「問題はないけど、オレが妹扱いされるバグ早く修正しろよ」

 

「それは運営に問い合わせてくださーい」

 

「どうりで兄妹の匂いがしないと思ったら、そういうことでしたの」

 

「いやお前も兄妹判定してたのかよ!」

 

「……そういえばシノタロスってなんです?」

 

「ボクとニャル太郎の同時変身で生まれてきた奇跡の産物(イマジン)

 

「あぁ〜、なるほど」

 

「そこは納得すんのか!?」

 

「ほらドライバーもらってるので、そういうのものありなのかなって」

 

「何お前のとこの知り合い、状況によって臨機応変に対応できるスキルでも持ってんのか」

 

「そういうの多いよ、多分」

 

「あぁ、そう」とニャル太郎は諦めた顔をした。

 

「そういえば転生してきたって言ってたけど、いつ頃なんです?」

 

「ええと、四ヶ月前くらいですね」

 

「結構前だった……」

 

「いやあびっくりしましたよ、起きたら知らない街にいて」

 

「街?森じゃなくて?」

 

「私は街で起きましたね、その後はクトゥルフの館っていうところで生活してましたけど」

 

「え?クトゥルフの館!?」

 

「はい、そこでこの“ライドプランター”をもらったんですよ」と植木鉢のモチーフのドライバーを見せてきた。

 

「ドライバーくれた人って、リチャードって名前だったりしない?」

 

「そうですそうです!いやあ優しい人で助かりました」

 

「だよねー!あれ、でも昨日館にいなかったよね?」

 

「え?あぁ、一ヶ月前にお店出して今はそこに住んでますよ」

 

「えぇ!?」

 

「つい出しちゃいました」

 

「出しちゃいましたって、行動力の塊じゃないですか」

 

「いやぁそれほどでも」と恥ずかしそうに頬を掻いた。

 

「……もしかしてお店って、エネミーの食材を使った食堂だったりします?」

 

「あ!そうなんですよ!」

 

『エネミー』と『食堂』の単語が出た途端、興奮気味に話し始めるポイント。

 

「知ってますか!?ドラゴンの喉の肉ってほんとに美味しいんですよ!」

 

「そうなの!?食べたい!食べてみたーい!」

 

『食』の単語が出ると思考回路が五歳児に戻る東雲。

 

「そうと決まれば、解体しましょう!」

 

「手伝います!ほらニャル太郎も手伝って」

 

「いや待て、なんでそうなる」

 

「解体した方が持ち運びが楽なんですよ、それに鱗や皮はリチャードさんに頼めば換金してくれます」

 

「ドラゴンって食べてもよし素材を売ってもよしの無駄のない生き物だったのか〜!」

 

「そうなんですよ〜!」ととドラゴンの腹を掻っ捌き始める。

 

勢いよく血が吹き出し、ポイントと東雲にかかる。

 

しかし気にせずポイントは解体を続ける。

 

「うへぇ、ドラゴンの血って浴びても大丈夫なんですかね」

 

「大丈夫ですよ、あぁでも喉の部分は熱いので気をつけてください」

 

「あ、は〜い」と解体の手伝い始める。

 

目の前でドラゴンの解体ショーが行われているのを眺めてるニャル太郎とシノタロス。

 

「あいつら焼けばなんでも食えるって思ってんのか?」

 

「ドラゴンさん、どんな味なのか楽しみですわ!」

 

「いや普通は食わねえからな?」

 

「えっ!?そうなんですの!?」

 

「そうだぞ」

 

食への認識の違いの会話をしていた。

 

「ところでこれ、どうやって持ち運ぶんです?」

 

解体し終えて、割と重要なことに今気がついた東雲はポイントに質問をする。

 

「あぁ、こういう時はですね」

 

ドライバーを握り「召喚、ライドバギー」とつぶやく。

 

地面に大きな花のような魔法陣が光ると、魔法陣からバギーが出てきた。

 

バギーと表現されてるが大きさは軍用のバギーほどである。

 

「私のバギーです、これに食材を乗せてください、って」

 

開いた口が塞がらない三人を見て困惑するポイント。

 

「どうしました?」

 

「どうしましたじゃないよ!?いきなり知らない機能見せられてびっくりしてるんだけど!?」

 

「あれ、この機能知らなかったんですか?」

 

「初耳だよ!?」

 

「そうだったんですね、でも全部のドライバーに搭載されてるようですけど」

 

「じゃあもしかしてボクのも試したら出てくるのかな」

 

東雲は“クラウドドライバー”を持ち上げた。

 

「召喚!クラウドバイク!」

 

何も起こらなかった。

 

「あれ?召喚!クラウドストライカー!マシンクラウダー!じゃあ爆走雲煙飛動!」

 

しかし何も起こらなかった。

 

「なんも起こらない、故障?」

 

「それはないと思いますけど」

 

「街に戻ったらリチャードのやつに聞けばいいだろ」

 

不満げな顔しつつも東雲はドライバーをしまった。

 

その隣で「大丈夫ですわ!元気出してくださいまし!」とシノタロスが慰めていた。

 

「さて、早く積んで私のキッチンに運びましょう」

 

「あ、そうだった、ほらニャル太郎も手伝って」

 

「はいはい、わかったって」

 

三人がバギーに食材を乗せてる時、シノタロスというと。

 

「?」

 

森の方に目を向けた。

 

「……この匂い、御三方と同じ匂いですわ」

 

暗い森の先をずっと見ていた。

 

もしかしたら転生した人がいるのかもしれない、と一歩足を踏み出した。

 

「どしたのーシノタロスー」

 

「置いてくぞー」

 

「はっ、なんでもないですわー!」

 

気のせいでしたわ、と思いシノタロスはバギーに向かった。

 

一方、森の中にいた人物は。

 

「気づかれちゃったかな?まあ、そろそろ接触しときたかったし丁度いいかもね」

 

バイクに跨りエンジンを入れ、街の方へと走り去った。

 

・ー・ー・

 

「ここです、私のお店」

 

看板に“エネミー食堂”と書かれた一軒の目の前にバギーを止めた。

 

そこから三件離れた場所にクトゥルフの館が見える。

 

「……なんであの時気付かなかったんだろうな」

 

「流石に夜だったし、見えなかっただけじゃね?」

 

「あー……」

 

こんなに大きく書かれてるのに見落とすなんてことあんのか?、とニャル太郎は心の中で思った。

 

「さあ、運んじゃいましょうか」

 

「運ぼ運ぼー」

 

中に入ると西部劇に出てきそうな酒場のような内装だった。

 

「おー!ぽくていいねー!」

 

「いやあ改装するの大変でしたよ」

 

「一人で改装したんですの?」

 

「そうですよ、木材集めるの大変でした」

 

(本来はこの内装が正しいんだよな、あの館がおかしいだけで)

 

「どしたニャル太郎、ぼけっとして」

 

「いや、なんでもねえ」

 

全部の食材をキッチンに運び終えて、改めてその量を確認する。

 

「多いねぇ」

 

「ドラゴン二体分ですからね」

 

「流石にこれ全部食うわけじゃないよな」

 

「ボク、いける気がする」

 

「やめてください、割と貴重部位もあるんですから」

 

「そっかぁ」と肩を落とした。

 

「それじゃあご飯作っちゃいますね、食堂の方で待っててもらえますか?」

 

「はーい」

 

「じゃあ今後の会議でもするか」

 

「賛成ですわ〜!」

 

三人が食堂に行ったのを見送ったポイント。

 

「さて」

 

エプロンをつけ、大きな肉の塊を見た。

 

昼頃に食べるちょうどいい肉料理はなんだろうかと、ポイントは考えた。

 

「から揚げ……しゃぶしゃぶ……ハンバーグ……」

 

どれもピンと来ない。

 

調味料棚を開け何があるかを確認する。

 

「塩と黒胡椒、か」

 

他のものも見てみるが、やはり肉といったらこの二つになる。

 

「よし、決めた」

 

今日お昼ご飯はこれで行こう。

 

手を洗い、フライパンと鍋を用意する。

 

ドラゴンの肩の部分(サーロイン)を四人分取り出す。

 

全体に塩をふり、黒胡椒もふる。

 

フライパンに油をひき、予熱をする。

 

「その間に、ジャガイモとにんじんを切る」

 

鍋に水を入れ沸かす、沸けたら野菜を入れて三十分ほど沸かす。

 

「よし、メイン焼いていきますか」

 

肉を入れ、焼く。

 

香ばしい匂いと食欲をそそる音がキッチンを埋める。

 

「二十秒ずつ裏返しながら、あちち」

 

火傷に気をつけながら、いい色になったら取り出して冷ます。

 

これを三回繰り返す。

 

「おっと、にんじん取り出さなきゃ」

 

にんじんは少し早めに鍋から取り出す。

 

大体二十分くらいが目安、その方が甘みが引き立つ。

 

全部の肉を焼いて、皿に食材を盛り付ける。

 

「何か足りないな……」

 

棚から玉ねぎと小麦粉とバターを取り出し、先ほどまで肉を焼いていたフライパンに入れ色付くまで炒める。

 

「味は、よし」

 

肉にデミグラスソースをかける。

 

「完成!我ながらいい出来だ」

 

食堂に食事を運ぶ。

 

正午ぴったり、贅沢なランチタイムがはじまる。

 

「本日のメニューはドラゴンのサーロインステーキでございます」

 

「ほあぁ……」

 

「キラキラしていますわぁ……!」

 

「ほんとにドラゴンかってくらいめちゃくちゃいい香りじゃねえか」

 

「ふふっ、どうぞ召し上がれ」

 

「いただきまーす!」「いただきますわ!」「いただきます、と」

 

一口(ぱくりっ)

 

「ん〜!ほろほろと溶ける〜!でもしっかり肉の味がして美味しい〜!」

 

「こんな美味しいご飯、ワタクシ初めて食べましたわ〜!」

 

「このデミグラスソースがいい味出して、最高だな」

 

「いやあこっちにきてからメキメキ料理スキルがあげた甲斐ありました」

 

「さすがですポイントさん!」

 

「あっという間に無くなっちゃいましたわ」

 

「早いな、もう少しゆっくり食べればいいのに」

 

「美味しいとついね〜」

 

美味しいランチ楽しみながらお昼を過ごした一同。

 

ふと東雲があること思い出し話始める。

 

「あ、聞いてよポイントさん」

 

「ん?どしたんですか?」

 

「バイク召喚できなかった件なんだけどさ、リチャードさんに聞いてもわからなかったみたい」

 

「そもそも、なんでバギーが召喚できたんだ?」

 

「あぁこれ、どうやら転生者だけが使える召喚システムなんです」

 

ポイントは自身の持っているドライバー、“ライドプランター”を机に置いた。

 

「その転生者の記憶を勝手に読み取って便利そうな乗り物を出す、っていうシステムなんですよね」

 

「えっボク転生者なのに、なんで反応しなかったんだろ」

 

「おそらくだが」とニャル太郎が東雲を指差す。

 

「オレとお前で分裂してるから、記憶が読み取れねんじゃねーか?」

 

「それだー!!!」

 

「うるせっ……」と耳を塞ぐニャル太郎。

 

「じゃあボクとニャル太郎が合体したら記憶読み取れるのかな」

 

「どうやって合体すんだよ」

 

「潰して混ぜたらどうです?」といかついハンマーを取り出した。

 

「急にこの子恐ろしいこと言い出した……」

 

「シノタロスは善意の塊だから悪気はないんだよ……」

 

「オレらが死ぬからやめてくれ……」

 

「わかりましたわ……」とハンマーをしまった。

 

「そもそも、この時代でバイクやバギーなどは怪しまれますからね」

 

「それもそうかぁ……」

 

肩を落とすも腑に落ちない顔をする東雲。

 

「あ、でも免許とか持ってないから乗ったら違反になるかな」

 

「ならないでしょう」

 

「なんの心配してんだお前」

 

「いやなんか、そういうの気になっちゃうんだよね〜」

 

「あ、それとさ、二回目の変身に悪影響を及ぼすって言ってたけど」

 

「あれちょっと語弊だったんですけど、変身解除してまたすぐ変身しちゃうと体が変化に追いつけなくて倒れることがあるんですよ」

 

「そうだったのか」

 

「特に東雲さんのような人体に関係する固有能力の場合は、どこかしらの器官に異常をきたす場合があるので気をつけてくださいね」

 

「……うん、わかった」

 

なんとなく東雲は右耳を触った。

 

「その説明、説明書には書かれてなかったんだけど」

 

「裏面に書いてありましたよ」

 

「書いてあったか?」

 

「え?読んでないからわかんない」

 

「いや読んどけよ」とため息をつく。

 

「まあ大丈夫ですよ、東雲さん徹夜してもへっちゃらですし」

 

「そうね」

 

「徹夜は体を壊しますから、あんまりしないほうがいいですわ」

 

「あはは、もうしないしない」とにへらっと笑う。

 

「さて、飯食ったし色々知れたし戻るか」

 

「そうだねぇ」

 

「美味しいご飯、ありがとうございましたわ!」

 

「いいんですよ、あっそれと」

 

ポイントは大きめの麻袋を渡してきた。

 

「これは?」

 

「ドラゴンの素材が入ってますので、リチャードさんに換金してもらってください」

 

「こんなにたくさん……ありがとうございます……!!!」

 

「食材のお礼です、普段こんなに手に入らないので」

 

「あ、ありがたくいただきます」と深々く頭を下げた。

 

「鱗も焼いたら食べれるのでしょうか」

 

「硬いのでお勧めしませんよ」

 

「そうですわよね……」

 

「なんでも焼いたら食えるわけじゃねえんだぞ」

 

「はいぃ……」

 

「じゃあ、また食べにきますね!」

 

「はい、またのお越しをお待ちしてま〜す」

 

ポイントは手を振り三人を見送った。

 

「ほんとに美味しかった〜」

 

「また食べたいですわ〜」

 

「そうだな、こういうのも悪くないな」

 

「てかボクら、何気に異世界生活馴染んじゃったよね」

 

「この状況馴染んだっていうのか?」

 

「人生はノリがいい方が楽しいと言いますわ!」

 

「そうかァ?」

 

「そうだよ!人生楽しんだもん勝ちだよ!」

 

「はぁ」と短くため息をつく。

 

「あ、ポイントさんにお金払ってない、食い逃げしちゃった」

 

「換金したあと持って行こうぜ」

 

「何か食材も送りましょう!」

 

「野菜とかがいいかな」

 

「それがいいな、それとよ」

 

「ん?」

 

「服」

 

忘れてはいけないことに東雲は血を浴びており、さながら殺人鬼のような姿になっていた。

 

「ほんとだ、全然気が付かなかった」

 

「ポイントさんはエプロンで隠れたので気がつきませんでしたわ」

 

「普通気づくんだよ……」

 

「まあいいじゃん」

 

「よかぁねんだよ、周りの人引いてんだよ」

 

街の人たちは目を合わせずにそさくさと歩いていた。

 

「普通じゃない?」

 

「嘘だろお前」

 

「流石に血の匂いで鼻がもげそうですわ」

 

「え、そんなに臭う?」

 

「臭う以前の問題だけどな」

 

「戻ったらシャワー浴びよ……あっでもお金払わなくちゃ……」

 

「オレがあとで持ってく、お前なんか換金分全部私そうだし」

 

「そ、そんなわけ」

 

「図星な顔してますわ」

 

「う、うるせ〜〜〜い」

 

東雲は走り出した。

 

「これ全部換金してボクはポイントさんに払うんだー!」

 

「全部はやめろー!」

 

「せめて半分、いえ三文の二にしましょうー!」

 

「やめたれー!」

 

三人は走った、館を目指して、はたまたどうなるかわからない明日を目指して。

 

そして、ドタバタで平和的な一日は幕を閉じた。

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