六花が口を開く。
「お祭り騒ぎに水を差すのは気が引けます。
これが私…いや、私たちの仕事ですから」
「えぇ、そうですね、六花」
「糸川警部」
「はい」
「どこか、他の場所で飛び降りた、
百田さんを誰かが運んできた。
と、見るべきでしょうか?」
「えぇ、でも、それはないんですよ。
死体を移動させたら、必ず痕跡が残りますから、
死斑や死後硬直の具合で、
今ではかなり正確になっているんです」
「今は…か」
「?」
「百田さんの今はどうだったんですか?」
「はい、ベテランと言えば、
聞こえはいいですが、体の故障も多かったようで、
勇退を勧められた時は、非常に嫌がっていた素振りを、
見せていたようで、(死ぬときはマウントで)
という、一点張りですからね」
「死ぬときはマウントで死にたい…」
「インタビューの発言ですから、
脚色されている可能性もありますし、
自殺…と疑われる、もっともの要因になっています」
「ふむ、自殺説、意外と濃厚ですか?」
「成績が伸び悩んでいたのは事実ですが、
遺書はありませんし、あくまで世間がというか、
マスコミがというか、自殺じゃないのに、
そう思われたら、嫌でしょうに。
いくら、名誉の死と語られても…」
「名誉の死…か」
「え?それって、どういう?」
「仁奈!キャッチボールしたい!
気分転換に!」
「も~う…六花ったら…」
「あのね、仁奈、私、始球式の経験があるの!」
「んな訳あるか!」
と、仁奈は六花に、ボールを投げつけた。
六花はキャッチした後、投げ返す。
「ようやく、私を振り回す、六花に…
って、六花?」
六花が倒れていた!
「大丈夫?」
「こんなところで、私が死なれたら、
ファンが泣くし、幻想でしかない」
「何が言いたいの?」
「マウンドの上で死にたい。
という、彼の発言を真に受けた、熱烈なファンが、
彼の望みを叶えてあげた線。
つまり、殺人というケース」
熱烈なファン。確かに想定するべき容疑者だ。
熱烈どころか、熱狂的なファンが、
成績を落としていた、百田良太郎を見るに堪えず。
「ただ、そんな人間が、そばにいたら、
何となく、思い浮かびますが…」
「六花、何かわかる?って、六花!?」
六花は網をよじ登っていた!
「危ない!降りて!」
「私はボルダリングが得意です!
忘れちゃったけど!」
ボールを取った直後、六花は落ちた!
それを仁奈が六花をキャッチした。
しかし、六花は気絶してしまい、
記憶がリセットされてしまう!
「六花!」
「おはようございます」
「大丈夫…って、言ってられないか、
記憶がリセットされたし」
「はい、意識はクリアされています」
「…意識があって良かった…
ということは、やっぱり…」
「貴女は誰ですか?」
「白井仁奈。後で詳細を教えます」
「ねぇ、もしかして、私、始球式に呼ばれたんですか?」
「違う」
仁奈は六花に、事件の経緯を伝えるが…
「何を言っているのですか?
バックネットによじ登った訳ないでしょう?
適当なことを言わないでください。
そして、この人は?」
「糸川警部です」
「後、六花、前も後ろも、土まみれよ」
「あっ、失礼」
事件は、まだまだ続く。