六花はこの事件をひょっとすると、第三者の事件だと思ってたりして、
自殺じゃないなら、事故?
いや、遺書があるから、それは通常なら考えられないはずだが。
遺書は脅迫するなり、騙すなり書かせて、
だとすると、漫画の影響も見せかけのもの。
作為的出来過ぎ?近藤さんが感じた、違和感の正体はそれ…?
「初めまして。郷田司です」
漫画家の郷田先生が、白井仁奈たちの前に現れた。
「初めまして。白井仁奈です」
「初めまして、探偵の浅野六花です」
「遅れてすみません。郷田先生の担当の村上です。
ご依頼の件ですが、近藤さんが言っていた、違和感の正体です」
「少し待ってください」
「えっ?」
「近藤さんが何と言ったか、知りませんが…
俺は、もういいと思っています」
「えっ?」
「投げやりに聞こえるかもしれませんが、
どうせもう引退するから、探偵の依頼は本来必要なかった」
「先生!その話はまだ…!」
「皆さんには、申し訳ないと思っていますが、
でも、俺は責任を取らないといけないんですよ。
俺の漫画を読んだ読者が自殺未遂を起こした。
のうのうと、これから続けれるとは思えれない!」
(意思が強いお方ですね)
と、仁奈は思った。
(ただ、どうしてだろうか…苦渋の決断ではあるものの、
いっそ、楽になったという、雰囲気があるように見える…)
「郷田先生の作品の最新作を読みました。
最高ですね!漫画という媒体で、将来に向けた諦念という、
テーマに挑戦して、そして実際に成功している!
内容も、さることながら、そんな作者の姿勢を、
心から尊敬しています!子供から大人まで楽しめる内容です!」
「そ、それは…ありがとうございます…六花さん…」
六花が先生をベタ褒めした。
「あの続きが読めないなんて、残念です…
読者たちはガッカリするんでしょうね。
ショックを受けた読者の中で、間違いなく、死者は出ます。
その場合は、どう責任を取りますか?」
(言い方がヤバいわね…)
と、仁奈は思った。
「そ、それは…」
先生は悩んでいた。
「間違いなく、ありえる話です。
読者がすんなり受け入れてくれる訳が無い。
ただ、ご自身の影響力もがんがるべきですね」
「影響力を考えたら…か…
もっと、早く考えるべきでした。
俺自体、マンガや小説が好きで、作家になった。
そして、漫画を描き始めた。
読者に与える影響は間違いなく大きい。
これは、猛省するべき案件だ!」
「もし、私が先生の立場だったら、
仮の話になりますが、知ら無い振りはしません。
ちゃんと知って、そして、その体験を、
次回作にいかすべきです」
と、六花が論する。
「だから、先生。私と仁奈の話を聞いてください」
先生は私たちの話を聞いてくれるようだ。