浅野六花の体質は、人と違う。ハッキリ言って。
「私も記憶が一日でリセットされるので、
仁奈の顔も名前も忘れているでしょう」
「えぇ。でも、貴女は頼りになるパートナーよ。
記憶じゃ、語る事が出来ない位には」
「一日、死んでいるようなものです」
「何度も生まれ変わっているようで、ラッキーですからね!
仁奈と何度もキスしても、ファーストキスですから」
「ちょっと!六花!からかわないでちょうだい!」
「でも、仁奈といて、私はいつも新鮮です」
「そうですか。遺言少女の件ですが、
中等部でのトラブルがあって、死のうとした可能性が高いですね…
クラスでも浮ていたようですし。なるほどね…
真の理由を隠すために、マンガを巻き添えにしたと…
そうなると、郷田先生がとばっちりです」
「動機以前に、彼女の性格を知る人は、家族の中ですらいません。
語られる程の彼女の人格を知らないでしょう。
ただ、図書委員の人からの証言によると、
興味深い情報を持っていました」
「図書委員なら、何か知っているかもしれないわね」
「それって、結局、本の影響ですよね?
そして、本の貸し出しにも法則性があった」
六花が言うには、新しい小説と古い小説。
私小説にはファンタジーを、
SFとビジネス書を、
ライトノベルと一緒に純文学を、
そして、どう考えても、返却日ギリギリまで読むのに、
時間がかかりそうな程の量を借りていた。
「それって、つまり、フェイクをかけていた…?」
「レズの本と百合の本を、一緒に借りるとか?」
「なんか、違うようで、そうじゃないようで…」
仁奈は思った。遺言少女の本性が何だったのかと…
家を訪ねたが、入院しているので、
武神大学付属病院へと向かった。
看護師曰く、こう語る。
「入院当初から、家族が一度もお見舞いに来ていません」
「えっ?」
「とにかく行きましょう」
「えぇ」
三井愛美ちゃんの家庭環境も問題があるようだと、
私は感じた。
仁奈は思い出す。自身が探偵になったのは、
祖父と父の影響だと。
曾祖父の代からの探偵一家、白井家。
曾祖父、祖父、父も、
怪盗キッドと何度も対決していた。
それも、初代・怪盗キッドとである。
そして、曽孫で孫で娘の仁奈は、二代目・怪盗キッドを、
六花と一緒に、この手で捕まえる事である。
それが、白井仁奈の生きている使命である。
話を戻すと、三井愛美ちゃんの顔が、
一瞬見えた気がする…
その影も見えるようになった、どうしてだろうか?
実際にはまだ、その影さえ、見えていないはずなのに…
私と六花は、入院部屋のドアの前まで来ているのだった。