撫子が目を覚ますと、異常な倦怠感に悩まされていた。
「うぅぅ…」
唸り声をあげる。
周期と体調的に、気分が和らいだり、
マシになったりすることは、欠片だってありはしない。
このまま動きたくはない。
寝たい、一心だった。
その痛みが、去ろうとするまでは、異常に時間がかかる。
時刻は朝の七時半。すぐ手が届く範囲に、ペットボトルの水と、
小物類だとかを詰め込んだポーチを置いてあった。
緩慢な動きでそれを手に取り、
中をごそごそと探る。すぐにそれを掴み取った。
ピルケースの中を見て、思わず固まる。
「ま、さか…」
ベッドからズルり。なんとか、這い出て、学習机の引き出しを勢いよく開く。
がさり。そして、『処方箋』と大きく書かれた文字と、
その下に真っ白な袋をひっくり返す。
カサリと音を立ててきたのは、薬…の抜け殻だけ。
「…最悪」
自分の考えの甘さ。先回りどころか、空回り…なんてことだ…
「あぁ…」
言葉ですらない唸り声が止まらないのは、ただでさえ、最悪な気分が、
その更に下まで落ちて行ったから。
床に落ちてから、更に抉ってめり込んでいる。
底の底まで落ちた気持ちは、億劫どころか、
こんな痛みと気分の悪さで、一体何を学べるというのか。
ズン、と下腹部を中心に鎮座しうるのは、
いっそ子宮から卵巣まで全部が溶けた鉛で満たされているかのようで。
僅かに残る理性が、痛み止めを飲めばと囁いてくれるけれど、
ピルケースの中に一緒にいれていたので最後。
肝心のケースの中は、痛み止めが入る余地もなし。
唯一の救いは、まだ、比較的…本当に、比較的に痛みが軽いことだけ。
頭痛はすれど、猛烈な吐き気は襲ってきてはいない。
この後、悪化しないとも言い難いけれど、今ならば手を打てる。
好転しないとはいえ、動かないといけない。
姉に頼むしかない。撫子は、そう考えるのだった。
「も、桃子お姉ちゃん…」
「撫子!ど、どうしたの!?」
と、タイミングよく、姉の桃子がやって来た。
もちろん、妹の撫子が倒れているので、
妹を愛してやまない、桃子が無関心な訳が無い。
むしろ、かなり心配していた。
「撫子ね…きちゃったんだ…」
「えっ!?たたたた、大変だ!
お姉ちゃんが、看病してあげるね!」
「ありがとう…桃子お姉ちゃん…大好き…」
桃子は倒れた撫子の身体を持ち上げて、
ベッドに寝かせるのだった。
「撫子…大丈夫!?」
「うぅ…撫子…きちゃった…」
「どどど、どうしよう!?」
「撫子を…助けて!」
「よーし!お姉ちゃんに、まっかせなさい!」
と、桃子は気合を入れるのだった。いつもよりも。