撫子に襲っているのが、月に一度訪れる、女の子の日。
とはいえ、撫子のソレは特段強く、行儀も悪い。
ひと月ふた月来ないこともあれば、
予定を繰り上げて来ることもある。
ともあれ、月の物だと分かれば、手馴れたもの。
お姉ちゃんは、床に寝そべっている、撫子を優しく抱き起こすと、
そのままベッドへと座らせる。
撫子が学習机近くを指差すと、そちらに顔を向けてから、
すぐに心配の二文字を顔に貼り付けながら、
お腹をさすってくれる。
「今日は休む?」
「うん…お姉ちゃん…
撫子…今日はね…きちゃってね…
女の子の日…だから…」
「わかった。今日は、お姉ちゃんが、
撫子をたくさん、助けないと!」
姉に着替えを取ってもらってから、後ろを向いてもらう。
サニタリーショーツへと履き替えるところを、
姉にマジマジと見られても、姉の薬子だけに見られるなら、
妹の撫子は別に気にしない。
不幸中の幸い、今回は着ていた、
下着に落ちない血痕がついていないのが救い。
人より重たいことの数少ない利点として、
本格的に来る前から痛みが来るので、察知が早い。
マイナスに対して、プラスが少なすぎるけれど、
何年も付き合っていると仕方ないと諦めがついた。
下着を替えた後は、手伝ってもらいながら制服に着替える。
制服の下には、腹巻き…更にはその内側に温熱シートを忍ばせる。
対症療法だとしても、なにもしないのとは大違い。
姉の手を借りながら、階段を降りなんとか洗面所へ。
お手洗いに入り、小用を終えてから、
いつもお世話になっている『多い日用』と銘打たれた、
生理用ナプキンをラップから取り出し、クロッチ部分にあてがい、
羽を二枚合わせになっている布の中に織り込んでズレないようにする。
鞄の中のポーチには確か替えのナプキンが入っていたし、
それから、おくすり手帳も一緒に入っていた。
運の悪さとは重なるもので、かかりつけの産婦人科は午前休診。
ため息と共にショーツを引き上げ、
スカートを穿いて立ち上がり、『小』の方向にレバーを捻った。
扉を開けて手を洗う。洗面台の鏡に映る自分の表情は、
なんとも重たい。最低限だけを済ませると撫子はリビングへ。
「撫子、これ。何もないよりかは、いいと思うわよ」
リビングで、姉から手渡されたのは、
半分が優しさで出来た小麦粉を練って固めたようなお薬。
「ありがと、お姉ちゃん」
優しさに気を使うのであれば、
その優しさを全部効き目に回して欲しいというのは、
ワガママなのだろうか。
そんな、撫子の念を察知したのか、台所に桃子が向かうのだった。