私の妹が天使すぎる!   作:アッシュクフォルダー

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第十七話 撫子の重たい女の子の日

桃子は撫子に問いかける。

 

「撫子、朝ごはん、食べる?」

 

「ううん」

 

首を横に。本当は食べた方が良いのだろうけれど、

どうにも食欲が出ない。

 

「豆乳でココア淹れてあげるから、

薬はそれを飲んでから、飲んでね」

 

「ありがとう…お姉ちゃん…」

 

同性という事もあるが、女の子日でも、

姉の桃子の方が軽く、妹の撫子の方が重い。

 

本当に頼りになる。リビングの椅子に座って、ため息一つ。

 

「…私も、ちょっとくらいは、撫子の分も、

引き受けられたら良かったのに」

 

そう言ってくれるのは、撫子が始めて月の物が来てから、

ずっと繰り返された言葉。

 

「ううん…大丈夫だから…うぅ…」

 

「撫子!もうちょっとしたら、お姉ちゃんが、

そっちに行くから!」

 

「お姉ちゃん…」

 

倉谷…というか、母方の血筋はどうにも、

月の物が軽いか重いかの両極端になりがちなのだとか。

 

姉妹だというのに、姉の薬子は少し軽いが、

妹の撫子は、この有様だった。

 

温かい豆乳ココアをちびちびと飲む。砂糖はあまり入っていない、

純ココアだけれども、豆乳自体の甘みが合わさって飲みやすい。

 

「なんとか、なる…かな」

 

ぼそり、呟いたのは、若干の不安。

 

撫子のそれは、月経困難症という線引きの中に入ってしまうほど。

普段はピルと痛み止めを併用することでコントロールしている。

だから、多少のつらさだるさはある物の、

生活に問題はなかった。

 

ココアを飲み終わり、いつの間にか机に置いてくれていた常温の水で、

分けて貰った痛み止めを流し込む。

普段とは違い、対応は心許ない。お腹を温めたり、

豆乳ココアを飲んで気持ち楽になったりしたから、

寝起きよりかはマシにはなった。

相対的に、痛みも悪心も軽めなのだから、

一日ならなんとかなるだろう、と心を決めた。

 

そんな、倉谷撫子の一日が始まろうとしていた。

 

「はぁ…」

 

なんとか午前を乗り切った撫子から、

盛大な溜め息が漏れる。

痛み止めのお陰だが、

血が足りないのか、いつも以上の眠気。

 

撫子が立ち上がった。その瞬間。

 

「あっ」

 

慣れ親しんだ不快感が下腹部、股座に満ちる。

脱力して、腰を下ろしそうになるけれど、

更に不快感の追い討ちが来るのが、

わかっていたので、なんとか堪えた。

 

「撫子、どうかしたの?」

 

「お姉ちゃん、トイレに行ってくるね」

 

「うん、大丈夫?」

 

「大丈夫だよ…」

 

察してくれたので、苦笑いを返す。どうにも、今日は調子が出ない。

 

 

トイレの中に入り、ショーツを下げると、そこは凄惨な絵図。

経血をたっぷりと吸って赤く染まったナプキン。

赤黒い塊が、ついていた。

 

「撫子…死ぬの…?」

 

そんなことは無いし、別に初めてでも無い。

そう頭では分かっていても、子宮という内臓から、

こんなにも出血していた。

ついでというか、流れでショーツに血がついていないかを確認する。

今では減ったけれど、生理が来るようになったばかりの頃は、

幾つものショーツに、二度と落ちないような、

血痕をつけたのは良い思い出では無い。

 

先ほど、立ち上がった時の感覚的に、

もしや、とは思ったけれど、

ナプキンを手早く折りたたみ、くるっと丸める。

そして、そのままポイ。新しいのに取り替えた。

 

「撫子、午後からだけど、産婦人科に行く?」

 

「うん…」

 

「じゃあ、お姉ちゃんが、おんぶしてあげるからね」

 

「ありがとう…お姉ちゃん…」

 

「撫子は、お姉ちゃんの大切な妹だから」

 

トイレから出た後、撫子は、

薬子におんぶされながら、かかりつけの産婦人科に行った。

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