[24日まで一時休止]うたわれるもの 真白の願い   作:ハラダ

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9 不調

 

気まずい夜が明け、翌日。

目が覚めて身体を起こすと、いつの間にかクオンの布団は空っぽになっていた。

 

「まだ朝早いというのに、流石はクオンだな」

 

そう言って、自分も身体を起こし、布団を畳む。顔を洗って、クオンがどこにいるのかを探さないとな。

 

昨日の夜、あれほど恐ろしい空間はなかった。

 

何故か自分が風呂に入っていたら音がして、まさか賊かと思いきやクオンで、こっちはすぐに迎え撃つために素っ裸で特攻し、見事クオンにクリティカルヒットしてしまった。

そのため、部屋の中では隅で縮こまったクオンが黒いオーラを出しながらブツブツと呟き、話しかければ悲鳴をあげながら威嚇される始末。

寝る時に布団の距離は部屋と部屋の端。少しでも物音を立てれば即座に飛び上がる。

 

もう一度言おう。あれほど恐ろしい空間は無かった。

 

そんなことを思い出しながら部屋を出て、外の井戸へと向かう。まだ早朝のためか景色は青く薄暗い。そして井戸から引き上げた水はとても冷たかった。

 

その後、少し散歩してみたがクオンは見つからず……部屋に戻ると、一枚の書き置きがあった。

 

『食堂に居ます』

 

一言だけかよ。というか、自分がもし文字が読めなかったらどうするんだ。

実際、昔のこの時期の自分は文字も読めない書けない役に立たないの穀潰しであった。しかしクオンやネコネ、ルルティエに教えてもらい、何とか覚えることが出来たのだ。

今は流石に書けるし読めるし少しは役に立つだろうが。

 

「……行くか」

 

食堂に着いた瞬間、あまりのことに絶句した。

真っ青な顔をし、目元の隈は酷く、力無く手を振る少女の姿を見たからだ。

 

「おいおい……大丈夫か?」

 

「……うん、だ、大丈夫」

 

ここまでショックを受けるとは思わなかったぞ。流石に昨日今日見知った相手の裸を見るのは、クオンでも耐えられなかったようだ。

 

「それじゃあ、ご飯食べよっか……」

 

「あ、ああ……」

 

終始無言。

ここはどこぞの武家屋敷か!とでもツッコミたくなるほど、静寂の中で食事の音だけが聞こえる。

そしてクオンといえば大食いだが、そのクオンがアマムに包むのは大匙一杯分ほど。チマチマと小動物のように元気なく食している。

こ、これはまずい。何とかしないと。

 

「あっ……あー、クオン?」

 

「……何、かな」

 

「その、えっと……きょっ、今日はどんな仕事だ?それが楽しみで仕方が無くてな………無くて……な」

 

ダメだ。

完全に消沈している。心ここに在らず。ついにはアマムニィが口ではなく鼻へと押しやられている。

 

「ほ、ほらクオン!これ、これ食べろ」

 

そう言って、クオン特製の大盛りアマムニィ三枚包みを急いで作り手渡す。

がしかし……

 

「ううん……いらない」

 

「なっ!?」

 

「……お腹……空いてない」

 

「おかみさぁぁん!!今すぐに医者を呼んでくれ!!クオンが狂ってしまったんです!!!女将さぁぁん!!」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

自分が女将さんにSOSを叫んだことで、クオンは少し調子を取り戻した。

しかしあまりにも疲れが酷いため、クオンを部屋で休ませ自分は一人女将さんか仕事を受けていた。

 

「大丈夫なのかい?」

 

「ええ、アマムの粉引きですよね」

 

「そうだけど……さっきも言ったけど、壊れちまってるんだよ」

 

「大丈夫ですから。じゃあ、行ってきますね」

 

そう言って、旅籠屋から外に出る。

アマムの粉引きについては、昔に受けた仕事でもあるため大丈夫だろう。

しかし、どうにも同じ出来事を繰り返すというのは不思議な感覚だ。常にデジャヴが続くというか、まるでゲームでもしてるみたいで……。

 

色々と考えていると、いつの間にか粉引き用の臼がある水車の小屋に到着した。

中に入ると、前に見た後継と変わらないーー二つの臼に色々と絡繰が設置されてはいるが、最近動かされた様子はなかった。

 

「さて、と……」

 

確か、この絡繰は外の水車の回転が棒に伝わって、それが歯車で変換されて動く仕組みだったはずだ。

と、いうことは……あった。壊れた歯車がそのままはめ込まれている。これじゃあ動かないだろう。

そして……もう一つの絡繰に歯車を発見。それをこっちにはめれば……。

 

「っし、出来た出来た。後はこれを解けば」

 

ガゴン!

 

「よし、動いたな。これで今日の仕事は終わり……というわけにもいかないんだよな」

 

昔の自分なら、ここできっと喜びながら悠々とサボりに入っただろう。

しかし、その時どうなったのか……自分は忘れていない。

いつクオンが戻ってくるかビクビクしながら、戻ってきた時には回すふりをして、最終的に振り回され尻尾で頭を絞られ……うぐっ、痛みが。

 

「こういう時は、素直にクオンへ報告しに行くか」

 

いや、待てよ。

あの時はクオンが様子を見に来ていたが、今のクオンは旅籠屋で休んでいるはずだ。

ここから旅籠屋まで戻って、クオンと女将さんに報告して、またここに戻ってくる……それよりも、ここで全てのアマムを粉にして、それから報告しに行けばいいんじゃないか?

 

「よし、そうしよう」

 

根本的に、人間は変わらないのだ。

サボりじゃないよ?見張りだよ?

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

結局、アマムの粉を挽き終わってもクオンは様子を見に来なかった。

なのでとりあえず全ての袋を納めて、旅籠屋へと一人戻る。

 

「ん?」

 

しかしそこで気づいた。

この状況、確か覚えがある。

それに旅籠屋の前、ヒトが集まっていて、その中心には……

 

「ッ……!!」

 

あれは、間違いない。

そうだ、過去に戻ったんだから、アイツらもいるだろう。

 

「マロ……!ウコン……!」

 

それは死してこの世を去り、自分を引き止めてくれた親友。

その二人が、そこにいた。

 

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