[24日まで一時休止]うたわれるもの 真白の願い 作:ハラダ
ココポとルルティエ。その出会いに感動を覚えていたのもつかの間。
目の前に闇が広がった。
「ふぎゃっ!?」
顔にはモサモサと柔らかい心地。しかしあまりの重さに息が……息がッ!
「あっ!ココポ!だめっ!」
「ホロロロ〜!!」
久しぶりに会えたのは嬉しいが、そんなに身体を揺らさないでくれっ!
空気が……食った朝飯がっ……!!
「ンンンー!!!!」
クオンに必死に助けを求め、手を伸ばす。
しかし……
「へぇ……ハクって、懐かれやすいのかな?」
いやいやいや、そんなことを言ってる場合じゃ……!
「珍しいんです……ココポ……誰かに懐くことがなくて」
いやルルティエさん!?あのっ!止めてっ!
「ホロロ〜……」
「ンンン!ンンン!」
クオンの名前を呼ぶ。
すると、誰かが手を掴んで引っ張り出してくれた。
「うぷぁっ!た、助かった……」
羽毛まみれの状態で、自分は呼吸を整えーー
「ホロロー!!!」
まずいッ!
飛び上がったココポの身体を避ける。
地面に着いたココポは、一度首を傾げる。がすぐにこちらに気づき、突進。
「ちょっ、待てっ!!」
即座に身を翻し、全速力で集落中を駆け回る。
背後からはドスドスと重い足音、土煙。そして……
「ホロー!ホロー!」
ココポの嬉声。
「と、止まってココポっ!だめっ、お願い……」
「ホロロ〜!!」
ルルティエの小さく消え入りそうな声が届く訳もなく。
ココポはひたすら、ニコニコと自分を追いかけてきている。
「ハッ!」
あれは……ウコン!
「後はルルティエ様が……ん?アンちゃ…………おい、ちょっ、まっ!?」
「ウコン防壁ッ!」
部下と確認でもしていたのだろう。そのウコンの背後に咄嗟に周り、どこかで聞いたかもしれない技名を叫ぶ。
「ホロロッ!!」
「グハッ……!!」
しかし、役に立たない壁だった。
ウコンはココポに回し蹴りを食らい、吹き飛ぶ。
そして、防壁の無くなった自分を見て……
「……ホロロッ、ロルルル〜!」
その大きな身体で、大きな翼を広げ飛び上がった。
「ちょっ、ぬおぉぉぉぉ!???……グヘェッ!」
目の前にはまた、暗闇が広がった。
「ホロロロロロ〜……」
しかし、先程よりは顔に重みがない。
なんとかして、ココポの身体からモゾモゾと顔を出す。
「ぷはぁっ!」
「ごめんなさい……ごめんなさい……ほんとうにごめんなさい……」
ココポから急いで降りてひたすら頭を下げ続ける、ルルティエ。
「い、いや……それはいいから、ココポをっ……!」
苦じいよぉ……。
「は、はい、ごめんなさい……ほ、ほらココポ、立って。迷惑をかけちゃだめ……」
「ホロロッ?」
「だからね、どいてあげて欲しいの……」
「ロ〜!」
ワッサワッサと体を揺らし、翼をバサバサ。
自分の内臓が右へ左へ動かされているのがよく分かる。
「ち、ちがうの、踊ってじゃなくて……ほら、どいてあげて……」
グイグイとルルティエがココポを押すが……動く気配なし。
「ごめんなさい……駄目でした」
「あ、諦めないでくれ!」
「は、はい!……よいしょ……えいっ……ふんっ……」
「ホロロ〜」
うん、全く動かない。
どうする……このままじゃ窒息はせずとも、自分はココポが動くまで一切この状態だ。
それに血が止まっているというか……あれ?下半身冷たくない?
「仕方がない!手を引っ張ってくれ!」
「えっ!?でも……」
ルルティエはあたふたと狼狽える。その様子はとても可愛らしいが、その余韻に浸れるほどの余裕は自分にはない。
「頼む、ココポが動かないんだろ!?」
「わ、判りました!」
顔を真っ赤にしながら、それでも自分の必死に懇願する声に折れたのだろう。
すぐに自分の手を取り、引っ張りはじめ……ん?待て。
確か、自分の記憶が正しければ……
「あ、やっぱりいいーー」
「えいっ!!」
ぶちぶちぶちぶちッーー!!
「ほぎゃーーッ!?」
「ん〜〜!!」
ミチミチミチーー!!
「だだだだだだッ!ルルティ……エッ!!」
痛みに耐えきれず、手を握りしめ名前を叫ぶ。
「えっ……!?」
すると、ルルティエの手が直ぐに離れた。自分の手はそのまま落下し、地面に叩きつけられる。
「おい……アンちゃんよ……?」
その時、ウコンが腹を抑えながらやってきた。
ルルティエはウコンの目の前まで走り、頭を下げる。
「ウコンさま……先程は」
しかし、ウコンはそれを手で制する。
「いえ、全部この男のせいで姫様のせいではございやせん。気にしねぇでください」
「あっ……はい……」
いや、ルルティエも素直に返事をするんじゃない。
というかウコン!なんで放置してるんだ!
「た、助けてくれウコン!力加減は優しく……いや、それかココポを……!!」
「……ああ、先に紹介するぜ?」
ウコンはふいっと自分からルルティエに目線をつけ、示すように手を差し出す。
「この御方はルルティエ様。ここクジュウリのーー」
「おいウコンッ……!!」
「……ここクジュウリの皇であり、八柱将オーゼン殿の末姫様だ」
ウコンの紹介に、ルルティエはペコリとこちらにお辞儀をする。
「ルルティエ様、こいつはハク。帝都まで一緒に行くことになりましたんで、お見知り置き頼んますぜ……後、出来るだけ近づかねぇでくだせい」
「なっ……!」
ウコン……後で覚えてろよ……!
「ル、ルルティエ……です……ハクさま……ですよね?」
「あ?ああ……」
「あの……先程……私の名前……」
まずい。
つい、反射的に呼んでしまったが……まだこの時はルルティエと知り合ったばかりだ。
ココポはいいとして、流石に姫様を呼び捨てしたのは不味かったか?
「い、いや……それは……」
「ああ、姫様。あっしが先に教えといたんですぜ」
ウコン?
「そ、そうなんですか……」
「ただ……ちょいと暴れすぎですがね」
チラリとこちらを見て、ニコッと笑うウコン。
なんだか知らんが、助けてくれたみたいだ……!
……というかこっちも助けてくれよ!ココポから出してくれ!
それからなぜルルティエが来たのか、そして荷車に積まれたのは帝の献上品など、聞いてもいないことを長々とココポの下敷きになったまま聞かされ……その後ウコンに助けられるかと思いきや、ココポの遊び相手(準備の邪魔をされないように)をしてくれと放置された。
そして、やっとクオンに助けられ……出られた頃には下半身の感覚がほとんど無くなっていた。