[24日まで一時休止]うたわれるもの 真白の願い 作:ハラダ
私のせい、かもしれない。
故郷から旅に出て、やっと出会えた存在。
遺跡の中で、大いなる父が創りし遺物に眠っていた男を無理やり起こしてしまったから。
意識が無くて、外には大雪も降っているのに薄着で。
放っておけないから。気になったから。話してみたいから。
そんな我儘で、彼を連れてきてしまった。
「……もう大丈夫、かな」
彼が起きてから、まだ十数分しか経っていない。なのに、色々なことが起こりすぎて、まだ私の頭はついてきていない。
最初に目覚めて、声をかけたら……まず泣き始めた。
そして、その男は突然……私の名前を呼んだ。
『クオ……ン……』
分からない。私はまだ、自分の名前を彼に伝えていない。それにどうして、私を見た瞬間に泣き始めたのかな。
……そんなに私の顔は怖い?これでもお母様達に、可愛い、美しいって褒めて貰えたのに。
そして、何度か名前を呼んですぐに彼は暴れ始めた。あまりの悲鳴に、耳が壊れるかと思ったくらいに。
暴れないように抑えても止まらず、一度眠らせるために鎮痛薬を飲ませたら何とか落ち着いた。
だけど……。
「……ぅ……あぁっ……」
眠っているのに、まるでうなされるような……そんな風に見えるかな。痛みに耐えて、何かから逃げるように。
「大丈夫……大丈夫だから……」
彼の額に布を当て、汗を拭き取る。
その時に彼の頭を優しく撫でてあげると、ピタリと震えが止まるのだ。
「……やっぱり、起こしちゃいけなかったかな」
後悔。
大いなる父の遺物によって彼は生かされていた。もしそうなら、彼はあの遺物で眠らないといけない身体だったのかもしれない。
大いなる父は私達にとって崇められる存在。そんな存在に出会えたことで舞い上がって、勝手をしてしまった。
いつも母さまや姉さま達に怒られているのに。
「でも、どうして私の名前を……?」
私の名前はクオン。トゥスクルで生まれて、お母様やお姉様、お父様達から沢山の愛を貰って育った。
彼がもし、トゥスクルのヒトなら……私の名前が分かるのかもしれない。
けれど、彼は大いなる父。遺跡に眠り続けていた。遺物から出した時はとても冷たくて、外に出た形跡もなかった。
「……分からない、かな」
とりあえず、考えるのは後だ。今は彼を休ませて、私は私のやるべき事をやらなきゃ。
目が覚めたら……きっとお腹を空かせてるかな。これまでずっと眠っていたなら、消化のいい粥でも作るとして……。
「お水、汲んでこなきゃ」
天幕から外に出る前に、彼の頭をもう一度撫でる。今は安らかに眠っているし、すぐに帰ってこれば大丈夫、なはず。
「行ってくるね。急いで帰ってくるから、ゆっくり休んでて」
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天幕から少し歩いた先に、川が流れている。凍っていなくてよかった。今いるクジュウリのシシリ州にある山は、雪に包まれた真っ白な大地で、息を吐くと白くなるほど寒い。
手に持っていた桶を川に浸け、水を汲む。少し指が水に触れるだけで痛みが走った。
「……ううっ、冷たい」
二つの桶に水を汲み終え、天幕へと急ぎ足で戻る。
もし目が覚めているなら、謝った方がいいかもしれない。
とても戸惑っていたし、私が無理に起こしたこともちゃんと言わなきゃ……嫌われないといいけど。
天幕の前に着き、片方の桶を地面に置いて入口の幕を捲る。
「……えっ!?」
先程まで寝ていた場所に、彼はいなかった。