[24日まで一時休止]うたわれるもの 真白の願い 作:ハラダ
数話ほど話が出来たので、本日はもう少し投稿します。
ただ、誤字脱字があるかもしれませんので、ご了承ください。
報告していただけるととても助かります。
……もちろん、自分でも修正します。すみません。
「ふぁ〜……あ……ふぅ……」
大きな欠伸をしながら、グッと背伸びをする。
オシュトルとの一件から、数日が経ったその日。
「……あぁ、もうそんな時期か」
白楼閣では女子衆が走り回り、外はざわざわと騒がしい。
「すみません〜!どいて下さ〜い」
「おっと」
廊下を出て様子を見てみようとするも、荷を持って廊下を行き交っている女子衆さんにぶつかりそうになった。
「こんな朝から……あぁ、観光客が来てるのか」
「ハク、どうかしたの?」
そのこえにふりかえると、クオンが不思議そうにこちらを見つめていた。
「ああ、クオンか……」
「そろそろ顔でも洗ってサッパリした方がいいんじゃない?今日は慌ただしくなると思うから」
「そうだな……今日は、晴れ晴れしい『聖誕祭』ってやつだもんな」
「うん。そのおかげで、もう外はヒトで溢れかえってるよ」
クオンはしゅるりと尻尾を揺らして、少し呆れたように笑った。
「どこもかしこもヒトだらけで、朝の買い出しも大変だったんだから」
「それは大変だったな……」
自分が呼ばれなくて良かった、なんて思ってないぞ?
「……ハク、顔に出てるかな」
「うっ……」
なぜ分かるんだ……。
クオンの呆れた視線を避けながら、急いで話を変える。
「そ、そういえば……相変わらず皇女さんは人気者だな。他國からも来てるんだろう?」
「……うん、そうだね。帝はもちろんのこと、ヤマトの皇女殿下の噂も色々と他國まで聞こえてくるから」
「……噂?」
自分が首を傾げると、クオンは顎に人差し指を当てながら思い出すように語った。
「確か噂じゃ……まだお若いけど、とても聡明でまるで大輪の花のように艶やかな御方だって聞くかな」
「な……なんだって?」
……とても聡明?大輪の花?艶やか?
とても我儘で生意気、笑顔だけは向日葵、ちっこい子供の間違いじゃないのか?
「もしかして興味ある?」
自分がその噂とやらに眉を寄せていると、クオンが少し含むような笑みを浮かべた。
「い、いや?……まあ、まったく関心が無いって訳でもないけどな」
もちろん皇女さんとはまた再会したいと思っているが、またあの我儘姫さんの相手をすると考えたら……うぅ、面倒臭いな。
「それよりも、祭りとなればいろんな出し物が出るだろうから、そっちの方が楽しみだな」
「あはは、ハクは子供っぽいね」
「……尻尾、嬉しそうだな」
自分を揶揄う様にそういったクオンへ、ユルユルと上機嫌に揺れている尻尾を指摘することで反撃する。
すると動揺したのか、少し顔を赤くして、急いで尻尾を押さえるクオン。
「うぐ……こほん!ま、まあ、せっかくだし一緒について行こっか?」
「ん、何だって?」
「皇女殿下が神輿に乗って都を行幸してるって話だし」
誤魔化そうとしているのか、クオンはそう捲し立てるように言うと、こちらの手をグイグイと引っ張っていく。
……まあ、クオンが楽しめるなら、それでもいいか。
「判った判った。せめて顔くらい洗わせてくれ。流石にこれで外に出るとまずいだろ」
「早くしてね」
「ああ……」
そう言って身だしなみを整えようとして、ふと気づいた。
今日はルルティエもアトゥイも見ていない。
ルルティエは朝、自分の部屋に挨拶をしに来てくれるし、アトゥイは……この時間帯に見ることは無いな。
「そういえば、ルルティエとアトゥイはもう出たのか?」
「うん……二人とも、それぞれ國の名代として来ているから、参内してご挨拶とかお勤めとかしてるはずだよ?」
「お姫様ってのも大変だな……」
「そ、そうだね」
……そこで苦い顔を浮かべるか、トゥスクル皇女さん。
まあ、家族に黙って國を出たんだ。
色々と考えることもあるだろうが……しかし、クオンが旅をしていなければきっと自分は死んでいただろう。
だから自分は責める気も追求する気も無い。
しかしルルティエとアトゥイが出てるってことは、エンナカムイの皇子であるキウルと右近衛大将の補佐であるネコネも居ないのか。
みんなと見物に行けないのは残念だが、久しぶりにクオンと二人きりなんだ。楽しむことにしよう。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「うへぇ……」
クオンと大通りに出ると、既に通りは人垣が出来上がっていた。
こんなにもヒトが溢れている理由としては、今か今かと皇女さんが来るのを待っているからである。
「この辺、今日は特に混んでいるかな」
クオンも少し眉を寄せながら、苦い笑みを浮かべている。
「なぁ、クオン」
「どうかした?」
「やっぱりここじゃなくて、他の所に行かないか?あまりの人混みに眩暈がしてきた」
頭、頭、頭。
歩く度にヒトとぶつかりそうになり、足を踏まれ背中を押され……ちょっと酔ってしまった。
「こんな人混みじゃ、ご尊顔以前に神輿すら見えなくないか?」
「ちょっと……場所を見誤ったかも」
そうこうしているうちに、遠くからひときわ大きな歓声が聞こえてくる。どうやら、自分たちのすぐ近くまで来たようだ。
しかし……見える気がしない。
「どうする?このままここに居ても、目の前のオッサンの後頭部を拝むだけでお仕舞いだぞ」
その時、ふと思い出す。
自分が以前、こんな状態になった時にどこへ向かったのかを。
「そういえばクオン。皇女さん……皇女殿下の御列は都をぐるっと回って、聖廟に行くよな?」
「たぶん、そうだと思うけど……例年通りだと、そこで神輿から降りて集まったヒトたちに向かって手を振るみたいだね」
よし、間違っていなかった。
自分は手をポンと叩くと、クオンの手をとって歩き出す。
「ちょっ、ハク!?」
「だったらそっちに先回りして、そこで待った方がいいはずだ。行くぞクオン」
「そ、そうだけど、都をゆっくり回ってるから聖廟に到着するのは……」
手を引かれながら歩いているせいか、クオンの声は上擦っているようだった。
しかし自分は足を止めずに、前を向いたまま話し続ける。
「大分時間がある、だろ?だが、あの辺りはここよりも広いし、まだヒトも集まりきってないだろう」
それに……
「せっかく祭りに来たんだ。少しくらいは皇女殿下のご尊顔も見たいんでな」
そう言って振り返りながら笑うと、クオンは小さく目を見開き、クスッと笑った。
「……あははっ、そうだね。せっかく見に来たんだし、そうしよっか」
掴んでいたクオンの手が、こちらの手をギュッと握り返してくる。
「あ、それと……」
「ん?」
「時間が掛かるなら……屋台を回って食い物を沢山買っておかないとな」
「……もう」
もう一度振り返って、次は揶揄いを交えながらそう言うと、クオンは苦笑した。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
しばらくして……自分とクオンは先程会話したように、屋台を回って食べ物や飲み物を買い、食べ歩きながら聖廟の近くへとやってきた。
この辺りは楼閣の側の大通りより広く、御列の到着がまだ先なせいか、場所にはまだまだ余裕がある。
「この辺りでいいんじゃないか?」
「そうだね」
うまく前の方に陣取り、まだ残っていた屋台の食べ物を口にしながら御列が来るのを待ち構えた。
「……ん?」
ふと、皇女さん達が到着するであろう聖廟前辺りに目を凝らす。
そこには御列を迎えるためか、聖廟の前に居並ぶひときわ威圧的な雰囲気を醸し出す奴等がいた。
そう……『八柱将』の連中だ。
「ッ……!」
「ハク?」
つい、動揺で食べ物を落としそうになったのを、すんでのところでクオンが受け止める。
そしてこちらに心配気な表情を浮かべた。
「どうしたの、ハク?」
つい、言葉が零れた。
「あの……連中は……」
動揺している自分の視線の先に、クオンも視線を向ける。
そして、自分が聞いてきたと思ったのか、奴等の説明を始めた。
「……あれは八柱将だね。この聖誕祭で、八柱将勢揃いってことかな」
「……ああ」
知っているさ。よく……知っている。
ーー剛腕のヴライ。
ーー聖賢のライコウ。
ーー溟海のソヤンケクル。
ーー楽土のオーゼン。
ーー調弦のトキフサ。
ーー影光のウォシス。
ーー七光……のデコポンポ。
ーー鎮守のムネチカ。
知っている。
ルルティエの父であるオーゼン、アトゥイの父であるソヤンケクル……そして皇女さんを護り通したムネチカ以外は。
皆、自分達の敵となった連中だ。
ヴライは皇女さんがヤマトの頂点に立つべきではないと、彼女を殺そうとした。
ライコウはヤマトを真の國とするため、他の八柱将を率いて策を弄した。
……ウォシス。
お前は、今も思っているんだろうな。
自分が両親……兄貴とホノカさんに愛されていないと。
兄貴の弟である自分が見つかったことで、後継者となれず見捨てられたと。
以前、お前に言ったな。
『お前は、仲間達と出会わなかった自分だ』と。
今も、自分はそう思っている。
あの孤独を経験した自分なら、今はお前の気持ちも分からなくはない。
それでもウォシス……お前は許されないことをしたんだ。
今度こそ……止めてみせる。
「……って、ハク。ちゃんと聞いてる?」
クオンに肩を叩かれ、意識をその場へと戻す。
「あ、ああ……すごい連中なんだな」
「うん。このヤマトを支える八本の柱。文字通り、國の中核を……あっ!来たよ!」
クオンが少し険しい顔をしながら話していると、遠くから煌びやかな御列が姿を現し、周囲から地を揺らすような歓声が上がった。
自分達の所からは護衛の兵に隠れてよく見えないが、神輿のまえを守るように歩いているのは……ムネチカだ。
さらに神輿の左右には、それぞれオシュトルや……ミカヅチもついている。
「ミカヅチ……」
「あれが左近衛大将……すごい迫力だね」
「……そうだな」
神輿は自分達の前を通り過ぎ、八柱将を始めとする重鎮達が整列する前で下ろされた。
久しぶりに、皇女さんの姿を見れる……そう思い、無意識に身を乗り出して神輿の方へ目を凝らす。
「あぁ……」
煌びやかな装束と顔を隠すための飾られた薄布を見て、自分は懐かしさに心を動かされた。
顔は薄布によって隠されているが、自分達と行動を共にした……間違いなく、あれは皇女さんだ。
皇女さんは見守る民の方へ振り返り手を掲げた。
すると、それに応えるかの様に民の歓声が大きくなる。
「……頑張ってるな」
「え……?」
この群衆と居並ぶ八柱将を初めとする重鎮達の視線を、恐れることなく堂々と受け止めている皇女さんに、つい呟いてしまった。
「いや、あんなに小さいのに凄いと思ってな」
「そ、そう……だね」
……トゥスクル皇女、そこで揺らぐんじゃない。
そんなクオンを見ているうちに、皇女さんは家臣団を引き連れ聖廟へと向かってしまった。
「……クオン」
「何?」
「今日は誘ってくれてありがとうな」
自分がそう言って微笑むと、クオンは驚いたのか一瞬固まったが、すぐに優しい笑みを浮かべた。
「こちらこそ、かな……それじゃ、帰ろっか」
「……ああ、帰るか」
そして、出店に寄りながら自分達の……白楼閣へと帰るのだった。