[24日まで一時休止]うたわれるもの 真白の願い 作:ハラダ
ライコウとの話も終わり、ウルゥル、サラァナと共に自分はオシュトルの待っている聖廟の門前へと到着した。
「……ハク」
「すまんオシュトル、結構待たせた」
「いや、某は良いのだ。それよりもハク、ライコウ殿との話は終わったのか」
「……ああ、万事恙無くってやつだな」
今回でやれることはやった。正直奴が何か考えを変えたようには見えなかったが……これがいい方向へ進んでくれると今は信じるしかないのだ。
「そういえばライコウが、美味い菓子や茶を振舞ってくれたんだ」
そう言って、自分は布に包んだ菓子や茶葉をオシュトルに渡した。
「ハク、其方……」
何だか菓子を持つオシュトルに、苦い顔をされている気もするが……アイツがくれると言ったのだ。貰っておいて損は無いし、何よりこれはネコネ達も喜ぶだろう。
「んじゃ、帰るか」
「……ああ、そうであるな」
何かオシュトルは他にも言いたいことがあるようだが、それは帰ってからでもいいだろう。
とりあえず今日はこれで……って、待て待て。
「……ウルゥル、サラァナの事……どう説明すればいいんだ?」
「そのままを伝えれば良いのではないか?」
「いや、そのままって……」
皇女さんを助けた礼として、帝から双子の少女達を貰いました……なんて、そのまま伝えていいのか?
もちろん、自分としてはウルゥルとサラァナをまた迎えられたのは嬉しい。
しかしそれは、自分が二人と過ごした記憶を持っているからであり、クオン達に女性陣にとっては、突然仲間が女の子二人を貰って侍らせているだけだ。
そして、この二人は勘違いをされる言い方ばかりをよくする。正確には全て本心なのだが、些か少女が口に出して良いものか悩む言葉ばかり。
結局、何が言いたいのかというと……そのまま伝えれば自分の評価は確実に下がるであろうということだ。
ネコネ……はどうせ汚物を見る目を向けられるとして、アトゥイは特に何も思わんだろう。恋に生きる乙女だからな。
しかしクオン、そしてルルティエは……ああ、最低と罵られ冷たい眼差しを向けられる未来がはっきりと見えた。
チラリ、と未だに自分の腕にベッタリと抱き着いている双子を見る。
「なに?」
「御用ですか、主様」
絶対何か言われるだろうな、畜生。
「そうだ」
いいことを思いついた。
このウルゥルとサラァナは、帝から褒美として受け取った。それは変わらない。
ただ……褒美の目的を変えればいいんじゃないか?
例えばそうだな……市井の暮らしを学ばせ、教育面で二人を抱えることになった。というのはどうだろう。
「完璧じゃないか……!」
少し格好や言動があれだが、そういう風に矯正する的なあれで話せば、きっとアイツらも分かってくれるだろう。
一応、あの発言や行動は彼女達の個性と言っても過言ではないので、別に何かをしようと思っているわけじゃない。
ただ仲間からの見方を少し変えるだけだ。それだけ。
「……ハク、まだ帰らぬのか?」
オシュトルもどうやらご丁寧に自分の考えが纏まるのを、待っててくれていたようだ。
お前はやっぱり、良き親友だ……オシュトル。
「ああ、今……出陣るぞ」
自分はこれからの策に無駄な気合を入れて、オシュトルの元へと向かったのだった。
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オシュトルと共に門を出ると、やはりというか予想していたというか、そこにはクオンやルルティエ、アトゥイがいた。
ネコネは……どうやらいないようだ。あとキウルも。
仕事は確か休みだったんだが……もしかすれば、二人でどこか逢い引きでもしてるのかもしれんな。
「おかえり、ハク。ご褒美ってどんなのだった?帝から直々にって、どんなスゴいご褒美かな? 」
こちらに最初に気づいたのはクオンだ。
好奇心に満ち溢れた笑みを浮かべ、こちらへと駆け寄ってきた。
その後ろを、ルルティエとアトゥイもついてくる。
「帝直々というからには、宝石や茶器みたいな……ありきたりな……」
……が、そこでクオンが急に立ちどまり、後ろに身を引いて眉間に皺を寄せた。
「それは……何かな」
クオンの指した先には、自分……というより、この腕にくっついているウルゥルとサラァナ。
やはり驚くのは仕方ない。自分だって以前は、何が何だか分からず流されるまま受け取っていたんだ。
だが、今の自分はちょっとばかし違うぞ。こんな状況も、ちょちょいのちょいと上手くこなしてみせるさ。
自分は驚愕し立ち止まったクオン、そして後ろに続くルルティエやアトゥイに笑顔を向ける。
「やぁ、待っててくれたのか。クオン、ルルティエ、アトゥイ」
第一印象は大事だ。自分は清廉潔白で何も不純なことを考えていない教育係のお兄さん。そう思わせることが大事なのだ。
ここは、爽やかな笑みを……
「うわっ……」
「ハク……さま……?」
「……気持ち悪いぇ」
……ど、どうやらあまり良い手ではなかったようだな。
しかしここで折れるような自分じゃない。どれほど辛くても、自分はあの戦乱を生き抜いてきたんだ。
「よく聞いてくれ……実は、この二人が帝から直々に賜ったご褒美なんだ」
「このコ達が……」
「ご……褒美……?」
「はぇ……」
これだけ聞くと色々まずい勘違いをされそうだが……
「驚きだよな。自分も驚いたさ、帝から突然……この二人を褒美として与えよう。そして……」
ここで、策を実行するッ!!
「市井の暮らしを学ばせ、数多の経験をさせてやって欲しいと言われてしまったんだ。ああ、びっくりだよな」
「違う」
「この度、主様の肉人形となりましたウルゥルとサラァナです。お見知り置きを」
……ほぇ?
今、この子達……なんて言った?
ダメだろう。そんな、こと言ったら……
「「「…………」」」
か、完全に……クオン達は引いている。
しかしウルゥルとサラァナはそんなのお構いなく、衝撃的自己紹介をそのまま続けた。
「おはようから、お休みまで」
「床にお風呂に御不浄まで、すべてわたし達がお世話致します」
「存在理由」
「主様のすべてを受け入れる。あんなコトやそんなコト、具体的には○○や△△を□□して☆☆や※※して差し上げる」
「「その為に、私達は存在します」」
…………はい、自己紹介ありがとうございました。
「うひひひ、いつの間にか酒池肉林なんて……おにーさんもすみにおけないぇ」
な、なんだ。最後の辺り……何故か寒気がしたぞ。
アトゥイはこういうとは気にしないと思っていたんだが……いや、まさかな……弁解しておこう。
「ち、違うぞ!これは、この二人が勝手に……」
「誓い」
「既に、私達は主様と永久の誓いを結んでいます」
ま、待て……それは違っ……
「運命」
「遥かなる輪廻の中で、主様のお傍に再び仕えることが叶いました」
「長かった」
「引き裂かれそうな想いを抱えていた私達に、主様から愛を頂けたのです」
…………ああ、そうか。
この二人も、自分と過ごした記憶があるんだろうな。
そして自分が強制的に彼女たちを皇女さんの元へと送ったことを根に持っていたんだろうな。
だから、今回は手段を選ばないと……そういうことなんだろうな。
「……そっか、じゃあ仕方ないね」
ク、クオン?
そんなあらぬ方向に視線を向けるんじゃなくて、ちゃんとこっちを見て言って欲しいんだが……
「し、信じてますから……」
ハッ!ルルティエは自分を……
「ハクさまが……そのような方ではないって……し……信じてますから……ぐすっ……」
ルルティエさん。
それはもう、自分のことをそう思っていると言っているようなものでは……?
「どうした?」
「主様、顔色が優れません。いかがなさいましたか?」
「は、はは……ははは……」
結局、自分の策は完全に失敗した。
というか、変に誤魔化そうとしたせいで……更に評価は地へと堕ちてしまったのだ。
「拭く」
「汗をお吹きします。どうかそのままで……」
後に、門前の警邏は語った。
何故か羨ましい光景のはずなのに、真っ白になってしまっているその男を見て、つい同情してしまった……と。