[24日まで一時休止]うたわれるもの 真白の願い   作:ハラダ

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今回も特に、文量が短いです。あとシリアスが続きます。
そして……ハクさんがめちゃくちゃ気弱になってます。目も当てられないほどです。

後、すみません。本日も一話のみの投稿となります……
あまりにも忙しすぎて感想もメッセージもいただけているのに返すことが出来ないレベルです。
……土砂崩れ、実家、呼び出しで察していただけると助かります。
ちなみに家族はピンピンしてます……元気です。

それでは、どうぞ。



61 逃避

 

「ウコンの方ではどうなんだ、ネコネは」

 

「……何ら変わりはねぇよ。いつも通り……つっていいのかは分からねぇが」

 

暗闇の中、蝋燭の灯る部屋で自分とウコンは盃を酌み交わしていた。

 

「……すまん、ウコン」

 

「いや、アンちゃんだけが悪ぃワケじゃねえさ。俺も……アイツに何も言ってやれねえかったからな」

 

数日前に、ネコネか突然……自分の事を兄と呼んだ。

 

理由は分からない……分かりたくもないが、もしかすれば自分が以前兄だったことを、何らかの理由で思い出した、またはそう感じたのかもしれない。

 

そして自分が兄と呼ばれることを否定したために……ネコネは翌日から『何も変わらない』ネコネになってしまった。

 

本当に何も変わらないのだ。

 

翌日には何事も無かったかのように自分へと刺々しい態度で話しかけてきては、ウコン……そしてオシュトルには大好きな兄として、クオンは心から慕うような姉として接している。

 

「……自分のせい……だろうな」

 

盃の中の酒を一気に煽り、自分はそう零した。

しかし……ウコンは自分を責めてはくれない。

 

「それは違えって前から言ってるぜ、アンちゃん」

 

ネコネの一件、そのすぐ後。

 

彼女が部屋に戻り、そして自分たちも何も言わずに詰所へと戻った。

ルルティエやアトゥイ、そして戻ってきたキウルが自分達の様子を見て心配していたが、クオンやウコンは自分とネコネが少し喧嘩したとしか言わなかった。

 

自分が何かを言おうとしても、それはクオンによって止められる。

 

『……私達は、何も聞かないかな』

 

そう言って、この話は終わりだと言わんばかりにクオンもウコンも何も聞いてこない。

……つまり、クオンもウコンもネコネと同じ……少しでも何か自分との記憶があると言っているようなものだ。

 

しかし……これで良かったのかもしれないと、自分は思っている。

 

ネコネはこれで自分を兄と呼ぶことは無いだろう。やがて時間が経てば、胸のざわめきも治まるかもしれない。

それにウコンやクオンが何かを知っていたとして、今更それを掘り返してどうなる?

 

自分はハク。オシュトルと呼ばれる事も……『マシロ』と呼ばれることもない、ただのハクなんだ。

 

以前、あの戦乱が起きてしまった理由は大きく二つある。

 

帝が崩御したことにより、以前よりライコウが抱いていた大義が動き出したこと。

 

そして……皇女さんが何者かに毒を飲まされ、オシュトルがその犯人として冤罪をかけられたこと。

 

それらの原因の中心になりうるであろう『ウォシス』さえ止めれば、まず戦乱が起きることはない。

兄貴の寿命もまだ残っているはずだ。自分に同胞達の解放を引き継ぐためにも、まだ死ねないと言っていたからな。

 

その間に、兄貴に色々と話をすればいい。

 

この國は帝の庇護が強すぎる。護られるだけでは何も出来ない赤子のようになってしまって、もし兄貴が死んだ後はどうなるのか不安を抱く奴もいるんだと。

 

そして皇女さんを聖上として崇めることに異議がある者も少なくはない。

 

だからこそ、教える必要がある。

この國がどのような國なのか、他國とは何が違うのか。

そして、民がどのように暮らし、なぜ皇女さんという存在が居るのか。

それを知ってもらわなければならない。

 

後はウォシス……奴だが……

 

「……アンちゃん」

 

「っ……な、なんだ?」

 

「いや、急に何も言わず渋い顔し始めたからよ……ほれ、盃が乾いてんぜ」

 

「あっ……ああ……」

 

今考えるべきはネコネのことだ。戦乱のことは後でいいだろう。

しかし……

 

「……なあウコン、自分はどうすればいいんだろうな」

 

「あ?」

 

ネコネの発言について、ウルゥルとサラァナにも話を聞いた。

あの二人も、何故か自分と過ごした記憶を持っており、彼女達なら何かわかるだろうかと思っていたから……なんだが。

 

『イミフ』

 

『申し訳ございません主様。私達も詳細については分かりかねます』

 

彼女達もまた、分からないと口を揃えた。

正直、あの双子が分からないのならお手上げ状態だ。自分にもわかるはずがない。

 

ただ……あの双子もまた、何かを隠しているように見えた。

命令をすれば答えてくれるだろう。しかし、ウルゥルとサラァナが、主である自分に言えないことを無理やり聞いてしまうのは……あまり気が乗らないのだ。

 

……違うな。きっと自分は、怖いのだろう。

真実を知り、何らかの原因でまたこの日常から離れることになる可能性もある。

 

もう自分は……二度とあのような別離を繰り返さないと決めたはずなのに。

 

そのためにライコウや兄貴に、未来を知っているからと手回ししているのに、いざ自分へと真実が突きつけられるような出来事を忌避している。情けない話だ、本当に。

 

「……アンちゃんよ。今はただ、待つしかねえんじゃねえのかい?」

 

「ウコン?」

 

ウコンは盃を傾けると、適当な摘みを口に放り込んでそう言った。

 

「ネコネはアンちゃんを何故か兄と呼び、感情を爆発させちまったが……今は何も変わらない、いつも通りに接してきているんだろう?」

 

「いつも通りって……お前」

 

「もちろん、今のネコネが何らかの我慢をしているってこたぁ分かってるぜ?だがな、ネコネ本人がそうするって決めたんだ」

 

「それは……」

 

「ネコネにとって今回の話は、色々と負担になっていたはずだ。その原因はもちろん、アンちゃんだけではなく俺にもある……だからこそ、せっかくネコネがそう決めたんなら俺達が掻き乱すようなことをしちゃいけねぇ。違うか?」

 

「……そう、だな」

 

「……都合のいい事を口走ってるってのは俺も自覚してるぜ。だが今は時間を置くしか無えだろうよ。ネコネの為にも、俺やネェちゃんのためにも……そして、アンちゃん。お前さんのためにもだ」

 

ウコンはそう言うと、この話は終わりだと言わんばかりに酒を徳利ごと傾け、中の酒を飲み干し、立ち上がって襖へと歩いていく。

 

「帰るのか?」

 

「おうよ。明日は色々と大事な仕事があるからな」

 

「そうか……すまなかったな」

 

自分が頭を下げると、ウコンは気まずそうに笑った。

 

「アンちゃんよ、あんま気にするこたぁねえぜ。俺も、クオンのネェちゃんも、アンちゃんが何か言えねえことがあるってのは分かってるからな」

 

「……ああ、すまん」

 

ウコンの優しさに、自分の中にある罪悪感は更に増していった。

それでも情けない自分は、何も言うことは出来ない。

 

それが……予想もしていない変化を起こす可能性があると、恐怖してしまったから。

 

自分だけて、何とかすればいいんだ。

そうすればきっとまた……暖かな日常を過ごせるようになるだろう。

 

 

『……兄さま』

 

 

ネコネがそう呼ぶ声が頭に響く。

それをかき消すように、自分も徳利の中の酒を流し込んだ。

 

 

その後、自分のせいで何もかもがおかしくなってしまうとも知らずに。

 




ウコン……気を使いすぎですね。
あまりハクの記憶を刺激しすぎると暴走する可能性があると思っているようですが……それ以外にも何かありそうです。

今話のタイトルは『逃避』

色々な人物が、色々な理由で現実から目を背けています。
こういう展開になると妄想したのは自分ですが、やはり書いていると自分でも首を傾げてしまいますね。もっとこうしてよ……!とか。
ただ、うたわれシリーズに出てくるキャラクターって、ヒトの感情の機微が強く描かれている作品なので、こういう弱さもあるでしょう。いや、あって欲しい。
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