単発物ですが例にもよって反響が良かったら続けます。
「今時レコードなんて珍しいですね」
「なかなか味があるものですよ。どうです?一曲」
東京にある古びた楽器店「forte」にやってきた女性客に、同居人である女「
「コラッ!お客さんが買ってくれるらしいんだからしゃんとしなさい、カケル!」
「あ、悪い。えーと、1200円になります」
ボーっとしてたら怒鳴られた。珍しくレコード盤なんてのを買う客らしい。レコードプレイヤーはあるのかと気になって聞いたら、彼氏が趣味にしてるからおみやげらしい。なるほどねえ。
「いい趣味してますね、彼氏さん。貴方にお似合いです」
「えっ、そうですかね?ハハハッ…」
適当におだてると、心底嬉しいとでもいうようなメロディーが聞こえた。いい音だ、純粋な人なんだろうな。とかのほほんとしてたら後頭部を殴られた。痛い。
「うちの馬鹿がすみません……こちらをどうぞ。またのご来店をお待ちしています!」
カナデが一礼して、女性客は笑顔でお辞儀してから外に出て行ったのを確認、件の同居人を睨み付ける。
「なんだよ!いきなり殴るな!」
「どうせまた心の音色を聞いてたんでしょ!言っとくけどセクハラだからねそれ!」
「聞こえるもんはしょうがないだろ!お前、そのやれやれしょうがないなあみたいな音色ヤメロオ!」
俺は他人の心の音色、と呼ぶメロディーが聞こえる特異体質だ。何を考えているのか大体分かる読心能力みたいなものなので、それを知っているカナデからは白い目で見られている。そのままお小言を続けようとしていたカナデだったが、顔をしかめると耳を押さえた。…来たか。
「っ、また…!」
「奴等か。どこに出た?」
「ここから西に1キロ、金属で黒板をひっかいたみたいな嫌な音…あいつだ」
「わかった、行ってくる!」
レジ席の裏からバックルを取り出し、懐に掌大の円錐状のアイテムが入ってることを確認すると店から飛び出し、傍らに駐輪している、タイヤがレコード盤みたいな柄になっててレコードプレイヤーを彷彿とさせるバイク「マシンシングラー」に搭乗してアクセル全開で飛び出す。事件が起きた影響か渋滞に引っ掛かりながらもカナデに言われた地点まで来ると、そいつはいた。
「聞こえるぞ、恐怖の音色。もっと響かせろ、悲鳴を!」
そこにいたのは、分かりやすい怪物だった。歪んだCDを束ねた様な凸凹の煌めく頭部をしていて、全身に重ねたCDを模した円形の装甲を付けている、重装甲の怪人。手にした先端がCDを模しているハルバードを振り上げて、周りの人間を怯えさせていたかと思うと車を破壊されたのだろう…さっきのお客さんに目を付けたのか半壊した車の中から引きずり出していた光景があった。
「ほう、よい絶望の音色だ。心地よい。よし、お前に決めたぞ。我らが尖兵…ノイザーとなれ!」
そう言って怪人は取りだした、俺の持つ物とよく似た漆黒の円錐状…というより小さなドリルを取りだすと女性客の胸に突き刺し、半時計回りに回すと俺の聞いたメロディーを逆再生したかの様な不協和音が鳴り響き、音符が刻まれた五線譜の様な物が引きずり出された。
「音色反転。この者の歴史の音楽、アカシックレコードよ。打ち込みしコード「恐竜」に染まれ、
そして五線譜はドリルに吸い込まれるようにして女性客の胸に吸い込まれていき、その体が紫色に光り輝き異形の姿「ノイザー」へと生まれ変わった。全身紫色の異形。頭部はティラノサウルスの頭部で口の中に赤く輝く目が見え、胴体はトリケラトプスの様に角が胸から生え、その中央には歪んだ五線譜が渦を巻いたように刻まれている。背中からはプテラノドンの様な翼が生え、腕はブラキオサウルスの様に太く強靭、足はラプトルなのか獣脚類のそれで、腰からはアンキロサウルスの尻尾が生えている。明らかに以前のノイザーより強力な怪人であった。
「ふむ。ダイナソーノイザーといったところか。中々強そうなのが出来たではないか」
「ふざけんな、うちの客になにしやがるセロ・ドゥエス!」
変貌の間に一般人が全員逃げたのを確認すると俺はバイクをつけて、奴…顔なじみの幹部怪人「セロ・ドゥエス」に指を突きつける。すると歪んだ顔をこちらに向けて驚いたような動きをするセロ・ドゥエス。
「随分と遅かったな?我々の存在を感知できる女がいる癖して」
「生憎とお前のせいで渋滞に引っ掻かってな。…待っててくれ、アンタを絶対彼氏の元に戻してやるから」
《レコードライバー!》
ダイナソーノイザーを一瞥し、俺はレコードプレイヤーの様な、中心に円形のくぼみが開いているバックル「レコードライバー」を取り出し腰に付けると五線譜が飛び出してベルトとなり装着。懐から取り出した奴等のそれとよく似たドリル「レコードリル【シング】」を取り出し、レコード針を模してるレバーを上げてくぼみに装填してレバーを下ろす。
《レッツ・ミュージック!》
そしてバックルの右側面を叩くとレコードリルが回り出してクラシックの音楽と共に音声が鳴り響くと足元にレコード盤が出現して回り出し、俺は一回転しながらステップを踏み、ベルトを叩いて鳴らしていくとそのたびに合いの手が上がり、その言葉を叫ぶ。
《ヘイ!ヘイ!ヘイヘイ!ヘンシーン!》
「変身!」
すると足元のレコード盤がエネルギー体となって上昇。俺の身体に装甲が装着されていき、変身が完了した。
《シング!シング!シーング!》
四分音符を模したアンテナが目立つ赤い複眼。白の五線譜が四肢に、指まで通った黒い全身スーツ。胴体は交差した五線譜が盛り上がっているような形状の鎧になっている。仮面ライダーシング。それが今の俺の名だ。
「さあ、レッツ!パーリータイムだ!」
《ヘイ!ヘイ!ヘイヘイヘイ!》
バックルの左側面の三つあるスイッチのうち上から二番目を押し込み、翼を広げて空を舞うダイナソーノイザーの振るった尻尾の一撃を避けつつ右側面を五回リズムよく叩く。するとレコードリルは高速で回転しだして、早送りのクラシックが鳴り響く。
《アップテン・ポゥ!》
そのまま着地し、振るわれる両腕のアームハンマー。しかし既にそこに俺はいない。奴らの一挙手一投足がスローモーションで見えるほどのスピードで、俺は動いていた。
「速く!速く!行くぜ、行くぜ、行くぜ!」
高速で周りを動き回り、拳や蹴りを全身に叩き込んでいく。そしてレコードリルの曲が終わり、高速移動も解ける。なら次だ。もう一回左側面の上から二番目のスイッチを押しこみ、今度は遅いテンポで右側面を五回叩きながらダイナソーノイザーの攻撃をあしらっていく。
《ヘーイ…ヘーイ…ヘイヘイヘーイ…》
「おそーく、行くぜ!」
《ロー・テンポゥ……》
するとレコードリルの曲が遅くなると同時に俺の拳が遅くなり、さらにダイナソーノイザーの攻撃が届く速度も遅くなる。遅くなればなるほど、力を込められる。即ち、このまま解き放てば…!
「オラァア!」
「ガアァアア!?」
俺の拳がスローモーションでティラノサウルスの横っ面に叩き込まれ、同時にもう一度左側面の上から二番目のスイッチを押し込むと曲が止まり、感じる時間が元に戻り、凄まじい衝撃がダイナソーノイザーを頭部から吹き飛ばし、樹木に叩きつける。よしっ、今のうちに…!
「こいつでとどめだ!」
《ガッキ・ウェポン!1!ソードランペット!》
「させん!」
左側面の一番下のスイッチを押しこみ、一回右側面を叩くとレコードリルからトランペットに燃える刀身がついた武器「ソードランペット」が飛び出して握りとどめを刺そうとすると、セロ・ドゥエスがハルバードを手に阻んできた。
「ちいっ!黙って静観しとけよクソ野郎!」
「毎度毎度帰った後に倒されては困るのでな!ここで死んでもらおう!」
「んなもん…!」
《スピードテン・ポゥ!》
全身からCDの様な光の円盤を飛ばすセロ・ドゥエスの攻撃を、ソードランペットのマウスピース型のつまみを回して炎の勢いを増すことで高速で振るうことができるモードにして斬り払い、そのまま加速した斬撃をセロ・ドゥエスに浴びせ、そのまま突き刺して突き飛ばす。
「グアアアッ!?」
「そこで待ってろ!まずはあの人を助ける!」
《フィニッシュテン・ポゥ!》
セロ・ドゥエスが腹部にソードランペットが突き刺さって地面に転がったのを確認すると、左側面の一番上のスイッチを押し込み、レコードリルの曲調が終盤に切り替わり盛り上げていくのと同時に足元に出現したレコード盤型のエネルギーが渦を巻き、高速回転すると俺もそのまま回転、勢いのままに跳躍して右足を突き出し、飛び蹴りの体勢を取る。
「こいつが最終楽章だ!」
《ヘイ!アウトロ・ブレイク!》
そして右側面を叩き、回転した勢いのまま急降下。ブラキオの腕を振り上げて迎撃しようとしたダイナソーノイザーにドリルキックを叩き込み、レコードリルのメロディーをその内部に響かせ刻み込む。
「ガアアアアア!?」
ダイナソーノイザーは爆散し、その後から元の姿に戻った女性客が崩れ落ちたので、慌てて受け止めた。すると何かが落ちた音が聞こえ、振り向くとそこにはソードランペットを引き抜いた怪我が痛々しいセロ・ドゥエスがいた。
「ノイザーを倒したどころかこの俺に深手を負わせるとは……いいだろう。次に邪魔してきたときは覚悟しろ、貴様の悲鳴を聞かせてもらう。さらばだ」
「待て!…くそっ、また逃がしたか。今回はすぐ逃げなかったからついでに倒そうと思ったんだけどな…」
そのままセロ・ドゥエスは複数のCDに分裂して空を飛んで逃げて行き、一息ついた俺はレコードライバーのレバーを上げてレコードリルを外し、レバーを戻すと変身が解除される。とりあえず女性客を近くのベンチに寝かし、俺はマシンシングラーに搭乗して帰路につくことにした。
一ヶ月前、俺が初変身した時からの仲ともいえるセロ・ドゥエスと、奴の所属する組織「スタジオノイズ」。奴等は人間には必ず存在する
わからないことだらけだが、俺を頼りにしてくれたアイツの為にも、俺は仮面ライダーシングとして奴等と戦い続ける。そう決めたんだ。
とりあえずキャラ紹介と用語紹介。
・曲尾翔/仮面ライダーシング
今作の主人公にして楽器店「forte」の店長。他人の心の音色を聞くことができる特殊体質で、ある程度心を読むことができる。楽器は好きだが楽曲には詳しくない楽器マニア。ひょんなことから出会ったカナデの願いを受けて仮面ライダーシングへと変身してスタジオノイズとの戦いに明け暮れる。
・空見奏
今作のヒロイン。レコードライバーとレコードリル【シング】を持ってマシンシングラーを駆ってスタジオノイズから逃げ出した、自分の名前以外の記憶を失くした少女。普段はforteの看板娘として働いているが、スタジオノイズが出現するとその特殊な「嫌な音」を感じ取ることができる。副業として別の仕事もしてたりする。
・セロ・ドゥエス
スタジオノイズの幹部怪人。現場に出てノイザーを作る自称「スカウトマン」。翔とは初変身時からの仲。悲鳴を聞くことが大好き。CDを模したハルバードを手に暴れる武闘派幹部。複数のCDに分裂して移動することができる。カナデ曰く、金属で黒板をひっかいたみたいな嫌な音。モチーフはCD。名前の由来は頭文字CDとドSから。
・ダイナソーノイザー
forteの女性客にセロ・ドゥエスが「恐竜」のレコードリルを埋め込んだことで生まれた怪人。モチーフはオーズ・プトティラコンボ。
・レコードライバー
仮面ライダーシングに変身するために用いるバックル。腰に付けると五線譜が伸びてベルトになる。レコード針の様なレバーと、左側面に付けられた三つのスイッチが特徴。一番上は必殺技、二番目はテンポ変更、三番目はガッキウェポン召喚に用いる。右側面をリズムよく叩くことで真価を発揮する。
・レコードリル
シングの変身に用いる【シング】シリーズと、スタジオノイズが人間に埋め込む【ノイズ】シリーズの二種類がある。断面がレコードの様になっている小型のドリル。モデルはグレンラガンのコアドリル。
・マシンシングラー
シングの相棒のスーパーマシン。レコードプレイヤーを模したバイク。変形ギミックがある。
・ガッキウェポン
その名の通り、楽器を用いた武器。レコードライバー左側面の一番下のスイッチを押し込み、右側面を叩いた回数で出現する武器が変わる。
・ソードランペット
右側面を一回叩くことで出現するガッキウェポン。炎属性を有しており、金属程度なら融解できる。マウスピース型のつまみを回すことで「スピードテン・ポゥ!」を発動でき、炎の勢いで高速で斬り払うことが可能。レコードリルを装填できるくぼみがある。
・スタジオノイズ
地球に録音された音楽「ガイアコード」が刻まれたレコードリルに録音した「
・ノイザー
スタジオノイズが生み出す怪人。全ての人間に存在している
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