翌日。とある高層ビルの社長室で、この部屋の主である大手レコード会社【
「一応、言い訳は聞くよ?」
《「いいや。今回はこちらが全面的に悪い。部下の非礼をお詫びしよう」》
その内容はガゼッド・ブーデ発案、仮面ライダーノイズが実行した、スタジオノイズにとって不利益でしかない歌音を社長の座から引きずり下ろすという旨の内容について。スタジオノイズの社長はシルエットのみで声も
「部下の非礼、ね。貴方の差し金じゃなくて?」
《「いいや。ドラグーンノイザーと言う有望な歌手を邪魔されたのは確かに憤っていたが、あれは部下の独断だ。大切な取引先の社長を排除するわけないだろう」》
「……ま、そういう事にしとく。次の取引は、私達に有利な物にしといて」
《「当然だ。重ね重ねお詫びする」》
「お詫びついでに、顔を見せて欲しいんだけど?」
《「それは勘弁願いたい。表の顔もあるのでね」》
カノンの提案に苦笑するスタジオノイズ社長。未だにその顔を見たこともないカノンは不機嫌になりながらも続ける。
「そういえば、シングの彼は完全に折れちゃったよ。貴方が出向くの、早すぎたんじゃない?レコードライバーを使えるのは彼だけ。例の計画だって……」
《「ああ、失敗したなとは思ってるよ。あの時はそれよりも重要なことがあった」》
「仮面ライダーノイズに変身してる子の事?」
《「その通りだ。私の何よりも大事なタスクの一つだ。しかしシングは確かに邪魔者だが、同時にレコードライバーを扱える唯一の人間でもある。あの曲を完成してもらうまで折れるのは困るのだが」》
「自分で折ったくせに……」
《「そこでだ。報酬を払うから彼に渡してほしいものがある。実物は後で送る」》
そう言ってデスクと一体化しているピアノの様な形状のキーボードを操作し、あるデータを転送してきたスタジオノイズの社長に首を傾げるカノン。
「何これ?レコードリル?」
《「君は特撮を見ないのか?いわゆる強化アイテムという奴だよ。ラスボスからもらうタイプは珍しいかな?」》
「……まあ良いよ。私から渡すんだから、報酬は弾んでね」
《「いいとも。可能な限り応えよう」》
相変らず思惑がわからない不気味な奴だな、と口には出さずに嘆息するカノンをよそに、スタジオノイズの社長は何が楽しいのか嗤っていた。
―――――「じゃ、これ。後よろしく。次来る時まで、ウチの傘下に入るの考えといてくれると、嬉しいな」
そう言われて律調歌音に引き渡されたカケルは、あの日以来落ち込んでいる。ここ数日、スタジオノイズも適当な“歌手”が見つからないのか新しいノイザーは現れないが、カケルが元気になるためにも出てきてほしいと思うのは、自分勝手だろうか。こんなこと話したらきっとカケルに怒られるな。
「カケル、大丈夫…?」
「……俺は、俺を頼ってくれたお前のために、音楽で人々を苦しめるスタジオノイズを倒すために、戦ってきた」
「うん、そうだね。記憶喪失の私の頼みを、あなたは聞いてくれた」
扉越しに尋ねると、そんな声が聞こえてきて頷く。こんな得体のしれない私の頼みを聞いてくれて、死ぬかもしれない戦いに身を投じてくれた。カケルは優しい人だ。
「……俺は、嬉しかったんだ。他人の心の音色を聴けるこの体質のせいで婆ちゃん以外の、それこそ親父やお袋も含めた人間に忌み嫌われていた俺を頼ってくれたのが……俺の、こんな体質が誰かの役に立てるんだって嬉しかったんだ」
「……そうだったんだ」
初めて聞いた、カケルの過去。レコードライバーを使える資格だったから私は特に気にしてなかったけど、普通の人々からしたら心が読めるなんて気持ち悪いと思うのは当たり前か。カケルが本当にいい人だから、両親からも嫌われているなんて考えもしなかった。
「でも俺は、スタジオノイズの社長に……魔王ノイザーに手も足も出なかった。仮面ライダーノイズにも、律調歌音の助けがなければ勝つことができなかった……スタジオノイズを倒すことなんて夢物語なんだと思い知らされたよ。俺は、弱い」
「そんなこと……!その話が本当なら、シングで幹部たちと対等に戦えていたのはすごいことだよ!カケルは強いよ!」
「そうだとしても、俺は……お前の期待に、応えられない。悪いけど、別の奴を探してくれ……」
「カケル……。っ!?」
そこに響いてくる、不快な羽音の様な嫌な音に耳を押さえる。それと一緒に聞こえてくるのは、金属で黒板をひっかいたみたいな嫌な音。セロ・ドゥエスだ…!私が預かっているレコードライバーとレコードリル【シング】を取り出して見つめる。目覚めたカケルから押し付けられたものだ。……もうカケルに頼るわけにはいかないよね。
「…私は、カケルに頼ったことを後悔なんかしないよ。今までありがとう。じゃあね」
「カナデ…?」
別れの言葉を告げてから外に出て、ヘルメットを被ってマシンシングラーに跨りアクセルを全開にして走り出す。カケルの分まで、私が戦う…!
マシンシングラーに乗ったカナデが町の中心地に辿り着くと、セロ・ドゥエスだけがいて。周囲の建物や乗り物を何か、霧の様なものが襲って骨組みだけにしている光景があった。
「いいぞいいぞ!すべて喰らい尽くして悲鳴を絞り出せ!ローカストノイザー!」
ローカストノイザー。レコードリル【蝗害】を用いて生み出されたノイザー。大量の鋼色の異形の
「ん?なんだ、社長にぼろ負けしたシングのお出ましかと思いきやお前か!スタジオノイズからレコードライバーを盗み出した
「私には記憶がない、なんでそんなことしたのかは覚えてないけど……これだけはわかる。貴方たち、スタジオノイズは止めないといけないって!」
《レコードライバー!》
レコードライバーを腰に取り付け、五線譜が飛び出してベルトとなりカナデの腰に装着。懐から取り出したレコードリル【シング】をレコードライバーのレコード針を模してるレバーを上げてくぼみに装填してレバーを下ろすカナデに、「まさか」と狼狽えるセロ・ドゥエス。
「何のつもりだ貴様!それは、適合者しか使えぬはず……」
「ノイザーの音色だけは聞こえる私にも、使えるはず!」
《レッツ・ミュージック!》
そしてバックルの右側面を叩くとレコードリルが回り出してクラシックの音楽と共に音声が鳴り響くと足元にレコード盤が出現して回り出し、カナデは舞うように軽く跳ねて一回転しながらステップを踏み、ベルトを叩いて鳴らしていくとそのたびに合いの手が上がり、そのたびに稲妻が走って歯を噛み締めて耐えながらその言葉を叫ぶ。
《ヘイ!ヘイ!ヘイヘイ!ヘンシーン!》
「ッぁ……変身!」
《シング!シング!シーング!》
足元のレコード盤がエネルギー体となって上昇、カナデの身体に装甲が装着されていき、小柄な仮面ライダーシングとなったカナデは、バチバチと稲妻が走り負荷がかかる身体に鞭打ちながら、構える。
「っ…!さあ、勝利のメロディーを奏でようか!」
「面白い…!やれ、ローカストノイザー!女を食い荒らしてレコードライバーを奪い取れ!」
稲妻を全身に迸らせたカナデの変身したシングの拳と、セロ・ドゥエスの言葉に頷いたローカストノイザーの昆虫型の関節の脚が激突した。
・スタジオノイズの社長
シングを瞬殺したり、かと思えば新しい力を用意したりとよくわからない。レコードライバーの使い手が必要らしいが…?
・カケルの過去
祖母しか理解者がいなかった特異体質故の孤独な人間。今はそれを隠して活動しているが、昔の知り合いからは煙たがれている。故に求められて命懸けの戦いを繰り広げる精神性になってしまった。
・ローカストノイザー
何者かにセロ・ドゥエスが「蝗害」のレコードリルを埋め込んだことで生まれた怪人。建物や乗り物を骨組みだけに喰い尽くしてしまう。モチーフはゼロワン・メタルクラスタホッパー。
・仮面ライダーシング【奏】
資格を無視してレコードライバーを使ったカナデが変身した姿。カケルが変身した姿との差異は小柄な事と、常に稲妻が走っていること。動くたびに強烈な負荷が襲い掛かる。例えるなら仮面ライダー001に近い。
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