仮面ライダーシング   作:放仮ご百物語

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どうも、放仮ごです。この時期と言ったら強化回よね。楽しんでいただけたら幸いです。


第13テンポゥ!響かせろロックンロール!

 それは二ヶ月ぐらい前、買い出しで街に出ていた時だ。今にも崩れてしまいそうな、不安になるほどか細い音色を聴いた。

 

 

「なんだ…?」

 

「ううっ……」

 

 

 それが聞こえてきた路地裏を覗き込むと傷だらけで倒れ伏している少女を見つけたんだ。

 

 

「逃げても無駄だ、女。レコードライバーを返してもらうぞ。それは我が社にとって大事な代物だ」

 

「渡すもん、か…!」

 

 

 カナデを襲っていた張本人であるCDの怪人を見て思わず逃げようとしたが、気丈にも反抗しようとする少女の姿と聴こえてきた今にも泣きそうな音色に、俺は見て見ぬふりはできなくて、少女と怪人の間に割り込んだ。

 

 

「やめろ……!」

 

「あなた、は……?」

 

「なんだお前?仮面ライダーにでもなったつもりか?笑わせるな!」

 

 

 先端がCDを模しているハルバードの刃が回転して熱線がグルグルと回転しながら襲い掛かり、俺は少女を庇って熱線を背中に受け、膝をつく。

 

 

「なんで、そこまで……!?」

 

「放っておけるわけないだろ……!お前の心の音色は、泣いていた!」

 

「っ!」

 

 

 熱線の余波で近くに転がった鉄パイプを手に、CDの怪人に殴りかかるが、CDを束ねたような鎧はびくともせず弾かれ、なすすべなく少女の傍に転がりながらも、守るために立ち上がる。すると少女は意を決したような表情を浮かべるとレコードプレーヤーの様な機械を取り出すと俺の腰に取り付けてきた。

 

 

《レコードライバー!》

 

「え?おい、なにを……」

 

「本当に心の音色が聞こえたの?……本当に聞こえるなら、あなたなら……!」

 

 すると五線譜が伸びてベルトとなり俺の腰に取り付けられ、少女はレコード針を模してるレバーを上げると取り出したレコードリルをくぼみに装填してレバーを下ろすとバックルの右側面を叩いていく。

 

 

《レッツ・ミュージック!》

 

「貴様!なんのつもりだ!」

 

《ヘイ!ヘイ!ヘイヘイ!》

 

 

 するとレコードリルが回り出してクラシックの音楽と共に音声が鳴り響くと、足元にレコード盤が出現して回り出し、CDの怪人が放った熱線をバリアの様なものが弾いていく。

 

 

「踊って!叩いて!そして歌って!その言葉を!」

 

「え、お、あ……こう、か?」

 

《ヘイ!ヘイ!ヘイヘイ!ヘンシーン!》

 

 

 俺は言われるままに一回転しながらステップを踏み、ベルトを叩いて鳴らしていくとそのたびに合いの手が上がり、俺は困惑しつつも言われるままにベルトの言葉を復唱する。

 

 

「へん、しん?」

 

《シング!シング!シーング!》

 

 

 すると足元のレコード盤がエネルギー体となって上昇。俺の身体に装甲が装着されていき、俺の仮面ライダーシングへの初変身は果たされた。

 

 

「お、お、おおおおっ!?」

 

「馬鹿め!それを使えば反動が………ない、だと?」

 

(あざな)はシング!お願い、人と心の音楽をスタジオノイズの魔の手から守るために力を貸して。私の代わりに……戦って!」

 

「お、おう!何だか知らないけど!これなら!」

 

 

 少女…カナデに言われるままにまっすぐ横に跳躍し、拳を振りぬいてCD怪人……セロ・ドゥエスを殴り飛ばす。こうして俺の戦いは始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あの時、頼られたのが嬉しかった。だけど俺は偶然出くわして、偶然心の音色を聴けたから戦っていただけなんだ。俺は、カナデに俺以外の適合者を見つけてほしかった。俺なんかよりもふさわしい奴はいくらでもいるはずだ。そう思って、突き放した、のに。

 

 

「カナデ、おい、まさか……」

 

 

 窓越しにマシンシングラーで走り去っていくカナデが見えて、嫌な予感がした。…あいつ、まさか自分で戦うつもりなんじゃ……いや、今の俺になにができる。俺はもう戦えないって、そう納得したじゃないか。そこに、来客があった。いや、勝手に入ってきてずかずかと俺の部屋までやってきたんだから客とは言えないかもしれないが。扉が蹴破られた音に顔を上げると、律調歌音がそこにいた。

 

 

「酷い顔。買収しに来たんだから、顔を洗って待っていて欲しかったんだけど?」

 

「律調歌音……そうだ、お前なら!カナデを助けてくれ!お前だったら、アイツを守れる!そうだろう!?買収でも何でも応じる、だから……!」

 

 

 思わず、カノンに縋りつく。こいつはカナデを気に行っている、どんなにクズでもカナデを守る理由はあるはずだ。そう思っての懇願だったが、突如頬に衝撃が走ってひっくり返り、頬を押さえながら見上げる。俺は、カノンにビンタされたようだった。

 

 

「なに、を……」

 

「何寝言を言ってるの?私があの子を守る義理がある訳ないでしょ。まあ、気に入ってはいるけど、それとこれは話が別。言っとくけど、カナデはあなた以外を選ばないと思うよ。カナデを戦わせたくないなら、あなたが戦うしかないの。それ位、分かってたはずだよね?」

 

 

「俺、は……」

 

「天才じゃない気持ちなんて私には分からないし。負け犬の気持ちも、知りたくないね」

 

 

 そう言って、机にコトンと何かを置いて背を向けるカノン。見れば、一枚に赤、橙、黄、緑、青、紫の六色に分けられた円形のディスクに紅いドリルがくっついた様な…多分レコードリルが置かれていた。

 

 

「後、こんな酷い顔の店長の店なんて、こっちから願い下げ。取引の材料になるかなと思って持ってきたけど……これ、あげるよ。レコードリル【フェスタ】。私のフルートランザーLには使えないし。じゃあね」

 

 

 

 手をひらひらさせながら去っていくカノン。……あいつはきっと、カナデが死にかけていたとしても助けないだろう。カナデを助けられるのは、俺一人……。

 

 

「……なにやってんだ、俺」

 

 

 レコードリル【フェスタ】を握りしめ、立ち上がる。……迷いは晴れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やあああああ!」

 

 

 拳を握り、ローカストノイザーに殴りつけるカナデが変身するシング。しかしローカストノイザーは蝗の群れにばらけてあっさり回避される。さっきからこんな状況を繰り返していた。ガッキウェポンを召喚しようとしてもできず、ただ殴る蹴るしかできないカナデのシングは既に限界で。ローカストノイザーは翅を羽ばたかせて空に舞い上がり一斉に襲い掛かる。

 

 

「っ……なら!」

 

《ヘイ!ヘイ!ヘイheヘイヘイへヘヘヘへヘヘヘイ!》

 

「うああああああっ!?」

 

 

 ならばとバックルの左側面の三つあるスイッチのうち上から二番目を押し込み、コンクリートすら貪るローカストノイザーの突撃を避けつつ右側面を五回リズムよく叩くカナデ。するとレコードリルは高速で回転しだして、早送りのクラシックが鳴り響く……のが通常だが、バグった音声を響かせるレコードライバーから放たれた稲妻に動きが止まり、蝗の群れの突撃をまともに受けて装甲に火花が散り、変身が解けて倒れ伏すカナデ。

 

 

「あっ、ぐっ…!?」

 

「レコードライバーで変身まではできる、だが能力の行使は音楽(アカシックレコード)に愛される者にしか不可能!脅かせやがって……だがこれで、レコードライバーは取り返した…!」

 

 

 カナデの腰からレコードライバーとレコードリル【シング】をはぎ取り手に取って満足げに唸るセロ・ドゥエス。ローカストノイザーを伴って去ろうとするその足に、しがみつく手。満身創痍で片目の眉が上がらないながらも気丈にセロ・ドゥエスを睨みつけるカナデだった。

 

 

「返し、て……それは、カケルのもの……」

 

「盗人風情がなにをほざく!これは我々のものだ…!ローカストノイザー、食い荒らしてしまえ!」

 

 

 カナデの手を振り払い、その命令を告げたセロ・ドゥエスに頷き、ゆっくりと歩み寄るローカストノイザーに、カナデが思わず目を瞑った。その時、聞こえないはずの声が聞こえた気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「カナデー!」

 

「ぐあっ!?」

 

 

 セロ・ドゥエスの背後からやってきて跳躍、飛び蹴りをその背に叩き込んで蹴り飛ばし、ローカストノイザーに激突させてもみくちゃにしながら着地したのは、曲尾翔。セロ・ドゥエスの手から手放されたレコードライバーを手に取り、腰に取り付けるとカナデを助け起こす。

 

 

「無事か、カナデ!」

 

「なんとか……生きてる、よ。待ってた…」

 

「…待たせてごめんな」

 

「馬鹿め!今更来ても無駄だ!変身に使うレコードリルはまだ俺の手にある…!」

 

「それはどうかな?」

 

 

 勝ち誇るセロ・ドゥエスに、カケルはレコードリル【フェスタ】を取り出しじっと見つめる。カノンが持ってきた出どころ不明のアイテム、今はこれに賭けるしかなかった。

 

 

「カナデを守れるなら何でもいい!やってやる!」

 

《レッツ・ミュージック!…ロックンロール!》

 

「なんだ、そのレコードリルは…!?」

 

 

 驚愕するセロ・ドゥエスを無視しながらレコードリル【フェスタ】を装填。レコードライバーの右側面を叩いて起動するとドライバーではなく、直感からレコードリルそのものを叩いてリズムを刻む。

 

 

《ヘイ!イエーイ!ヘイエーイ!ヘンシーン!》

 

「変身!」

 

 

 いつもよりテンションの高い音声と共に掛け声を上げ、赤、橙、黄、緑、青、紫の六色のレコードディスク状のエネルギーが足元に出現してスポットライトの様にカケルを照らし、ギャイーン!というギターの様な音色やドラムロールと共に六色のスポットライトが束ねられてその身を包み込み、歓声が上がる。

 

 

《ロックンロール…!ダダダッ!ダダダッ!…ウ~ッ!フェスタ!!》

 

 

 四分音符を模したアンテナが目立つ青の複眼。赤の五線譜が四肢に、指まで通った黒い全身スーツ。胴体は五線譜の意匠を残しながら岩の様なごつごつとした装甲に変わっていて、背中には青と赤にそれぞれ色が分かれているツインネックギターの形状をしたガッキウェポン「エクスギタリバー」が装着されている。カケルはエクスギタリバーを両手で構え、振り回して切っ先を突きつけ叫ぶ。

 

 

「さあ、レッツ!フェスタイムだ!」

 

 

 仮面ライダーシング ロックンロールフェスタ、爆誕の瞬間だった。




・過去
二ヶ月前(第一テンポゥの一ヶ月前)に出会った。なにも力を持ってなかったカケルがカナデを守ろうとしたのがきっかけ。

・レコードリル【フェスタ】
色とりどりな大きなレコードリル。レコードライバー全体を覆うディスク部分が六色に彩られている。虹色にも見える。

・シング〈奏〉
殴る蹴るだけで何の能力も使えない。使おうとすると反動が来て変身が解除される。どうやらアカシックレコードに愛されている者にしか使えない様だが……?

・ロックンロールフェスタ
シングの強化形態。モチーフはロックとフェスタ。身の丈ほどはあるツインネックギター型のガッキウェポン「エクスギタリバー」が武器。


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