深夜二時。夜の街、寒風吹き荒ぶ
「逃がさんぞ、チューナー…!」
《ザン・テンポゥ》
「あまいねい!」
ノイズは左手で靄で見えないレコードライバーVer.0を操作して靄を左手に集束させて刃の様にし、斬撃を繰り出すも、肩にベルトでかけていた黒と金で彩られた三味線……型の仕込み刀【霹靂万来】を引き抜いて受け止め、吹き飛ばされるも受け身を取ってまた走り出す。
「観念しろ、社長は今ならまだ不問にすると言っている」
「そいつはごめんだねい!おいらはもう、お前さんらの悪事に付き合うのはこりごりなんでい!」
逃げ込んだ倉庫のコンテナ置き場の行き止まりに追い詰められ、投降を要求されるも不敵な笑みで跳ねのけて、手にしていたアタッシュケースからラジオカセットプレイヤーを模した大型のバックル【ラジカセドライバー】を腰に取り付けると茶色いテープが伸びてベルトとなり装着。ラジカセドライバーを開いてカセットテープ型のガジェット【カセッドリラー】を引き抜くと、青白い雷が描かれたレコードリルと桜吹雪が描かれたレコードリルの二つを懐から取り出してカセッドリラーの穴二つに装填。
そんな音声を鳴らしたカセッドリラーをラジカセドライバーに装填し、右のスピーカー部分をリズムよく叩いていく男。
「不肖、この
「貴様、まさか…!」
すると桜吹雪が舞い散って万雷の拍手と共に拍子木と鼓を打つ音をBGMにした演歌風のメロディーが鳴り響き、男……
「あ、へぇんしぅん!」
稲妻の様に折れ曲がった五線譜が全身に刻まれたアンダースーツに、赤と緑で彩られた膝を過ぎる程の長尺の陣羽織の様な装甲の上から、襷掛けにした金色の縄を象ったアーマーには霹靂万来が取り付けられている。歌舞伎の隈取を象った赤色の線で彩られた大きな複眼に、連獅子を象った赤と緑の鬣状のファーがついた仮面を持つその戦士は、ジャオーンと異なりまさしく仮面ライダー。
「貴様、社長の財産を勝手に……許さん!」
そして、仮面ライダー残響と仮面ライダーノイズは激突した。
ロックンロールフェスタでローカストノイザーを倒した翌週。俺はカナデと共に街を歩いていた。今日はforteの週二だけある休日で、カナデのVtuber活動の休みとも重なったためぶらりと散歩することになったわけだ。……これってデートかと一瞬思ったが俺なんかが相手じゃカナデも嫌だろうし考えないようにしよう。
「それでね!その子、本当にかわいいの!」
「え?ああ、なんだったか……たしか、
「そうそう!縷々ちゃんすごくいい子なの!コラボしたときにねー」
最近、カナデは海渦縷々という子に熱中している。カナデの見せるスマホの動画には、まだデビューしたばかりだというのに3Dモデルで歌って踊っている海の様な色のドリルの如く渦を巻いた髪型をして笑顔を浮かべている少女が映っている。まるで生の人間みたいな滑らかな動きだ。さすが大手音楽プロダクション、金かけてるなあ。そんな子が個人勢のカナデ……奏輝ミソラとコラボしてくれるとは、ありがたい話だ。
「……うん?お前、雑談系Vtuberじゃなかったか?なんで音楽系Vtuberとコラボできたんだ?」
「え?普通に雑談配信だよ?」
「それ相手に旨味あるか…?」
なんか違和感を感じたが、カナデが楽しそうならそれでいいか。
「それにしても最近、ノイザーの出現が減ったね」
「アイツらも懲りたんだろ。ロックンロールフェスタで魔王ノイザーに勝てるとは思わないが……少なくとも、幹部級相手でももしかしたら倒せるかもしれないからな」
レコードリル【フェスタ】を取り出しまじまじと見つめる。あのあと、性懲りもなく買収しに来た律調歌音にお礼がてら聞いたところ「拾った」としか言わなかったが、どう考えてもレコードライバーと同じでスタジオノイズ由来のものだよな……。誰が何のためにこれを作ったんだ…?
「私もそんなレコードリル、知らないなあ。レコードリルって【シング】以外は人間をノイザーに変えるもののはずだし……あ、仮面ライダーノイズとジャオーンも使ってたっけ?」
「そもそもレコードライバーもそうだがどうやって作られてるんだレコードリルって」
「アイデア自体は社長が考えて、チューナーって幹部が要望に応えて作ってるんだったかな?……ごめん、あんまり覚えてないや」
記憶喪失のカナデはふとした時にたまに詳しいことを思い出すからそれをあてにしたが、だめか。
「チューナー……そう言えば、セロ・ドゥエスはスカウトマン、ガゼッド・ブーデはマネージャーを名乗っていたっけか。やっぱり会社なのか?」
「あっ、新作バーガーだって!食べて行こうよカケル!」
「おい、真面目に考えてたんだが?……まあ、いいか」
有名チェーン店の新作バーガーに目を輝かせて入っていくカナデに、苦笑しながらついていき店に入ろうとしたその時。カナデが頭を押さえて蹲った。
「カナデ!?」
「そこの商店街から、セロ・ドゥエスみたいな圧のある嫌な音……まるで液体が沸騰してるみたいな、不快な音が……」
「わかった、カナデは休んでいろ。行ってくる!」
カナデをベンチに座らせると急いで駐輪場に戻り、マシンシングラーを駆って急行する。そこには、血を流して倒れ伏した夫婦と思われる男女と、その男女の子供と思われる少女をつまみ上げた、蛍光色のレッドで配色された、面長な顔と鋭い眼光が鮫か騎士甲冑を想起させる、長身の異様なノイザーが立っていた。明かに別格、幹部か!
「お前……なにをしてやがる!」
「やあ。君が仮面ライダーシングかい?お初にお目にかかる。僕はスタジオノイズプロモーターのジュール・ボクス。気軽にジュールと呼んでほしい」
「俺は何をしていると聞いているんだ…!」
俺に気付き、爽やかに俺に話しかけてきたそいつに、敵意がみなぎる。子供を…親から奪ったのか!
「なにって、才能ある若人をスカウトしているところさ。親にもお話して納得してもらったよ」
「はなしてよお!パパっ、ママーっ!」
「……五月蠅いなあ。人が話しているんだよ?静かにしろ」
「やめろおおおお!」
少女が泣き喚いた瞬間、豹変して地面に叩きつけ、足蹴にするジュール・ボクスに、レコードリル【フェスタ】をレコードライバーに装填して変身しようとするが、「動くな」と言われたことで静止する。せざるを得なかった。傍に控えていたノイズタッフが、少女の両親に槍を突きつけたからだ。
「お前が動いたら二人を殺すよ。僕たちからしたら歌手以外はどうなってもいいんだ。ドゥエスもガゼッドもそこが甘いよねえ。……人質を取ればこんなにも簡単にノイザーを作れるってのにさ。特に子供はいい、こうも簡単に上質な絶望を生み出してくれる」
「まさかっ、やめろ!」
俺の静止の声虚しく、泣きわめく少女の胸に取り出したレコードリルを突き刺して、半時計回りに回すと楽曲を逆再生したかの様な不協和音が鳴り響き、音符が刻まれた五線譜の様な物が引きずり出されて、蠢いた五線譜の様なものがレコードリルに吸い込まれるようにして少女の胸に取り込まれていき、赤色に輝いてメキメキと音を立てて変貌していく少女の肉体。
「音色反転。この者の歴史の音楽、アカシックレコードよ。打ち込みしコード「鬼武者」に染まれ、
現れたのは、赤と黒で異形の武者の姿をしたノイザー。少女の面影を完全に失った二メートルを超す巨体の鬼の如き体に無理矢理鎧を着せられたような風貌で、胴体にはノイザーの証である五線譜が刻まれており、その手にスピーカーと剣が合体したような片手剣を握っており、反狂乱しているかの如く振り回し咆哮を上げる。
「グオオオオアアアアアアッ!」
「やはり、強大なノイザーが生まれた!素晴らしいと思わないかい?仮面ライダーシング!」
「ふざけるな……!」
「気に喰わないのはいいけど、動いたら殺すよ?まあ?オニムシャノイザーが勝手に殺すだろうけどね?」
「っ!」
《レッツ・ミュージック!…ロックンロール!》
ジュールの思惑に気付いた時には時すでに遅し。少女が変貌したオニムシャノイザーは片手剣を振り上げ、ノイズタッフごと斬り裂かんと迫る。しかし、それを受け止める者がいた。
「おっと。そいつは解せねえ。人の心がないんかい?」
刃を三味線の様な武器で受け止めたのは、まるで歌舞伎を思わせる姿の戦士だった。
・仮面ライダー残響/
チューナーとも呼ばれる謎の男。江戸っ子口調で話す。三味線型の仕込み刀【霹靂万来】ラジカセモチーフのバックル【ラジカセドライバー】カセット型の【カセッドリラー】レコードリル【稲妻】と【喝采】を有している。仮面ライダーノイズの攻撃を変身せずに武器一本で受け止める身体能力を持つ。
・
U-ZIONが売り出し始めた音楽系Vtuber。カナデとコラボしたらしい。デビューしたてなのに3Dモデルで、海の様な色のドリルの如く渦を巻いた髪型をして笑顔を浮かべている少女。
・ジュール・ボクス
スタジオノイズの第三の幹部でプロモーター。セロ・ドゥエスとガゼッド・ブーデがかわいく見えるクサレ外道。モチーフはジュークボックス。
・オニムシャノイザー
少女にジュール・ボクスが「鬼武者」のレコードリルを埋め込んだことで生まれた怪人。親を殺されたという少女の強い絶望から強力な力を有し、圧倒的な巨体を有する。モチーフは装甲響鬼と魔化魍。
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