その日の朝。瓦礫の山と化した港の一角。そこに、女物のスーツをびしっと着こなしたスタイル抜群の黒っぽい茶髪の美女が訪れていた。
「まったく。力仕事ならセロ・ドゥエスの出番ですのに……仮面ライダーに返り討ちにされた傷がまだ癒えてないとは不甲斐ない限りですわ。ワタクシもジュール・ボクスの奴みたく現場に行きたかったですわ」
《フェローチェ!》
女……ガゼッド・ブーデはぼやきながらレコードリル【フェローチェ】を取り出すとスイッチを起動し、胸に突き刺す女性。するとレコードリルを突き刺した胸元から大量の茶色いテープが溢れだし、全身に巻き付いて怪人態へと姿を変えるとテープを伸ばして瓦礫を撤去していく。
「あらら……手酷くやられましたようですわね」
「……助かった」
瓦礫の下から現れたのは、腰にレコードライバーVer.0を装着した黒いレインコートを身に着けた人物、仮面ライダーノイズの変身者。瓦礫に埋もれていたらしいその人物をテープで巻き付けて引っこ抜いたガゼッドはアスファルトの地面に降ろすとレコードリルを胸から引き抜いて人間態に戻る。
「貴方は社長のお気に入りなのですわ。なにかあったらワタクシたち幹部が尻拭いすることを忘れないでくださいまし」
「面目ない……裏切り者の枇々木万雷の持ち出したラジカセドライバー……、想定以上の強さだった」
「そこまでですの?幹部ではありますがノイザーではない技術班上がりの人間だったはず。戦闘経験もなにもない男に貴方が負けるとは思いませんが」
「……このありさま。なにがあったと思う?」
取れていたレインコートのフードを深く被りなおし、視線を背後に向けるノイズの変身者。ガゼッドもつられて視線を向け、更地になっている一角に首を傾げる。
「貴方と奴の必殺技がぶつかった余波…とかじゃありませんの?」
「私はなにもできなかった。このありさまは、奴によって引き起こされたものだ」
「……はあ!?」
オニムシャノイザーの片手剣を受け止めた謎の戦士。稲妻の様に折れ曲がった五線譜が全身に刻まれたアンダースーツに、赤と緑で彩られた膝を過ぎる程の長尺の陣羽織の様な装甲の上から、襷掛けにした金色の縄を象ったアーマー。歌舞伎の隈取を象った赤色の線で彩られた大きな複眼に、連獅子を象った赤と緑の鬣状のファーがついた仮面を持つその戦士はノイズタッフを蹴りで一蹴すると手にした三味線を、日本刀の柄の様な撥で引き鳴らす。
瞬間、弦から稲妻が発生。バチンッという音と共にオニムシャノイザーは弾かれ、のしのしと後退する。
「お前は……いったい何者なんだい?」
「おおっと、お忘れですかい。いやわかってないなら名乗るような不躾なことはしやしませんよ。ただこう名乗りましょう。おいらは
ジュール・ボクスの問いかけに仮面ライダー残響を名乗った戦士は撥で三味線を掻き鳴らすと、バチバチバチ!と帯電していった三味線の先端に撥を取り付けたかと思えばくるっと半回転させて連結させると腰を下ろし深く沈み込む。
「
そして瞬きの間にその姿が消えた次の瞬間、オニムシャノイザーの背後に出現する残響。そして遅れて雷鳴が轟いたような爆音が発生し、オニムシャノイザーの胴体に切り傷が走って帯電、スパークを起こし弾け飛び、ひっくり返るオニムシャノイザーの巨体。斬ったのか、今の一瞬で。
「はっや……」
思わず声が漏れる。いくらなんでも速すぎる。アップテンポとは訳が違う。俺のはスピードアップだが、残響の今の速さは“刹那”としか言いようがない速さだった。継続的に素早さを上げる俺とは違う、一瞬だけの加速。
「この霹靂万来、演奏することで稲妻を充電し、それを体に流し身体能力を一瞬だけ底上げしているのでございやす」
「ご丁寧にどうも」
そう自慢げに霹靂万来というらしい三味線を掲げる残響の背後から迫る影。音叉の様な長剣を握って振りかぶったジュール・ボクスだ。しかしその完全な不意を突いた一撃は、やはり一瞬で体勢を変えた残響が霹靂万来に連結した撥を握って引き抜いたことで現れた刀身に受け止められる。
「ジュール・ボクス。前から言いたかったのでございやすが、あんたのその卑怯上等なやり方大嫌いでい!」
「ああ、お前。枇々木万雷か。武器にまで自分の名前を付けるなんてナルシストめ」
「だぶるねーみんぐというやつでさあ!」
そして抜刀。日本刀のような形状のブレードが引き抜かれ、音叉剣を斬り弾くと再び三味線の様な仕込み鞘に刀身を納める残響。あいつの流派は抜刀術なのか。
「させるか!」
バックステップで後退して距離を取りながら、取り外した撥で霹靂万来を掻き鳴らし、再び充電していく残響に、ジュール・ボクスは音叉剣を振るってヒュイィイイン!と音を鳴らしたかと思えば刃の間に集束した光が斬撃となって飛ばされ、それを見た残響は演奏を止めると撥を連結、その姿をブレさせて回避していく。
「今、加勢を…」
「おっと。君は邪魔しないでくれるかいシング」
少女の両親という人質を襲っていたノイズタッフがもういないことを思い出した俺も加勢しようとレコードリル【フェスタ】をレコードライバーに装填して変身しようと試みるが、それに気づいたジュール・ボクスが音叉剣を振るったかと思えば平衡感覚が狂って倒れてしまう。なんだ、なにをした……?
「さすがに種が割れちまえば、そうやすやすとさせてくれやせんねえ!」
さらにオニムシャノイザーも復活。片手剣に炎を纏わせ、巨大な刃にして横薙ぎに振るってきたのを、霹靂万来を片手に宙返りして避けながら残響は顎に手を寄せる。
「おっと。そういやこいつがありやした!」
すると何かを思い出したらしい残響は霹靂万来を襷掛けにした金色の縄を象ったアーマーの背にかけると、腰のラジカセの様なドライバーのスイッチを入れてスピーカー部分を何度も叩きながら何度もバック転してオニムシャノイザーから離れていく。
そのたびにレコードライバーとはまた違う合いの手が上がっていき、太鼓と笛の根が合わさった祭囃子の様なメロディーが鳴り響いて雷雲が地上に立ち込めて不規則に輝いていく。あれは、やばい…!?
すると雷雲が周囲ごとオニムシャノイザーをすっぽり覆い隠し、一緒に包まれようとしていたジュール・ボクスは危険を感じたのか退避。まるで拍手の様な絶え間ない雷鳴が轟くその中に斜め上から飛び込んだ残響は、雷を帯びて輝きながら加速。
瞬間、まるで一番上の雷雲から放たれた巨大な雷がオニムシャノイザーを貫き、遅れて巨大な雷鳴が轟くと同時に爆裂。アスファルトをめくり上げながら地面を吹き飛ばし、砂煙が渦を巻いて発生して見えなくなる。
「また、加減ができやせんでした。こいつぁ参った」
砂煙が収まるとまるで小さな爆心地の様になったその中心で、気絶した少女を抱えた残響が頭を抱えて困っていた。なんて力だ……。
「これが超攻撃型ドライバーの力か……末恐ろしいね。ああ、シング。また今度、邪魔者がいないところで遊ぼうじゃないか。またね」
「っ、待て…!」
ジュール・ボクスはその光景に肩を竦めると体を発光させて目くらまし。目を開けたその時にはすでに逃亡していた。すると少女と気絶したその両親をベンチに寝かせている残響が見えて、俺はなんとか立ち上がりながら歩み寄る。
「おい、仮面ライダー残響といったか。お前、何者だ?」
「……ここだと目立ちやす。また後で相まみえると致しやしょう」
そう言ってベベン!と霹靂万来を掻き鳴らし、一瞬で姿を消す残響。……俺も事情聴取されると困るし、戻るか。……新しい幹部に、新しい戦士。休ませてくれないみたいだな、まったく。
モチーフは某大正アニメの二期。
・ガゼッド・ブーデ
セロ・ドゥエスが活動不能なので仮面ライダーノイズの回収を任された幹部。テープ操作は瓦礫の隙間に差し込んだりと結構便利。
・仮面ライダー残響/
チューナーと呼ばれる謎の男。ジュール・ボクスとも顔見知り。ガゼッドによるとノイザーではない技術班上がりの人間で戦闘経験もなにもない男とのことだが、あのシングとジャオーンの二人がかりで倒した仮面ライダーノイズを一蹴した超攻撃特化型仮面ライダー。専用武器である霹靂万来に充電しそれを利用した神速の抜刀術で戦う。
・
三味線型の仕込み刀。演奏して充電、それを転用させるための武器。撥を連結させて持ち手にした抜刀術に用いる。演奏中は帯電こそするが、演奏しないと十分な火力が出せないため隙が大きい。
・オニムシャノイザー
片手剣に炎を纏ったリーチを伸ばして薙ぎ払う技を持つが、残響に圧倒され一瞬で撃破されてしまった。
・ジュール・ボクス
音叉の剣が武器で、斬撃にして飛ばしたりカケルの平衡感覚を狂わせりとしたたかな戦い方をする。万雷曰く卑怯上等なやり方。
・残響一撃
仮面ライダー残響の必殺技。ラジカセドライバーを操作することで雷雲を発生させ、残響自身が雷と化して敵を貫く必殺の飛び蹴り。着弾地点が小さな爆心地の様になるとんでもない威力を誇る。
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