「これより。元幹部、枇々木万雷の裏切りに関する会議を始めます」
アイ。ディー。ルル。アール。四人の秘書が並ぶ、壁一面に設置された大画面が照らす暗闇の会議室に、四人の人間が集っていた。
「【スカウトマン】セロ・ドゥエス様」
「あの野郎、まさか裏切るとはな……だから俺はあんなやつを幹部にするのは反対したんだ」
椅子に不機嫌そうにどっかりと座ったのは、大柄で無精ひげで白のTシャツジーパンにサングラスのスキンヘッドの大男、セロ・ドゥエス。
「【マネージャー】ガゼッド・ブーデ様」
「ただの人間の身で幹部にまで成り上がった男ですわ。彼もいい
豊満な胸を強調するように腕を組んでいる、女物のスーツをびしっと着こなしたスタイル抜群の黒っぽい茶髪の美女、ガゼッド・ブーデ。
「【プロモーター】ジュール・ボクス様」
「だけど裏切りは事実だ。僕がせっかくスカウトしたノイザーまで倒して邪魔してきたからね」
机に肘を突き、無駄に絵になるポーズをしている真っ白なワイシャツを着崩した爽やかな金髪のイケメンの青年、ジュール・ボクス。そして。
「【テックエンジニア】チキチキ・オング様」
「……社長の所有物を勝手に持ち出して使うとは、度し難い……ね」
眠そうな顔で欠伸をするのは、短く首元で切り揃えた銀髪のショートヘアで、だぼだぼの男物のコートを着ている細身で色白の少女。まだ高校生にも見えるチキチキ・オングと呼ばれた少女はイラついているのか啜っていた缶コーヒーを机に置くとつまんで回し、カラコロと音を立てた。
《「“なぜか”持ち出され仮面ライダーシングの手に渡った新型レコードリル【フェスタ】と、開発中だったラジカセドライバーとレコードリル【喝采】【稲妻】の二つを持ち出し逃亡した【チューナー】枇々木万雷。この二つの件は繋がっているとみていいだろう」》
壁一面に映し出されたシルエットのみの「社長」の声と共に表示された、枇々木万雷の情報と仮面ライダーノイズ視点と思われる仮面ライダー残響の戦闘映像に、息つく幹部たち。
「でしょうね。どれもあの枇々木万雷が開発したものだ。セキュリティを設定した本人なら持ち出すのも容易いでしょうよ」
「戦闘力も折り紙つきですわ。ただの素人のはずなのにあの仮面ライダーノイズを圧倒し、港の一角を壊滅させていた。あれを相手するのは正直ごめんですわ」
「あそこまで強力とは聞いてなかった。僕の作ったオニムシャノイザーはかなり強力なノイザーだったのだけど、瞬殺だ。事前に伝えてくれないと困るな、社長」
「調子に乗る……なジュール。社長すらも想定外……だよね?」
《「オングの言う通りだ。あそこまで正義感の強い人物だったとは想定外だった。君たちもただの技術者だと侮っていたんじゃないかな」》
「「「……」」」
チキチキ・オングの言葉に頷いた社長の言葉に、心当たりがあるのか押し黙るセロ・ドゥエス、ガゼッド・ブーデ、ジュール・ボクスの三名に、チキチキ・オングは口を三日月の様に歪めて静かに嗤った。
《「枇々木万雷はおそらく我々の邪魔をするべくノイザーを倒していくだろう。それは困る、非常に困る。故に、最優先で生け捕りにしろ。ノイザーを使いつぶしても構わない」》
「生け捕り……ですか?」
「ノイザーを犠牲に奴を捕縛しろ、と?」
《「彼の技術は有用なんだ。非常に残念なことだ」》
「では、わたくしに行かせてくださいまし!律調歌音の排除こそ失敗しましたが、此度こそは必ずや!」
仰々しくお辞儀をしてアピールするガゼッドに、傷が癒えてないセロやニコニコとそれを見守るジュール、欠伸をするオングは特に異議もせず、そのまま承認される。
《「ではガゼッド、任せたぞ」》
「期待に応えて見せますわっ!」
《「…もしもの時は、オング。わかっているな?」》
「社長の指示とあれば、喜ん……で」
ガゼッドが意気揚々と出て行ったあとで、チキチキ・オングも立ち上がり不敵に笑う。その笑みを見て、セロ・ドゥエスとジュール・ボクスは顔を見合わせ、何とも言えない顔を浮かべるのだった。
オニムシャノイザーが暴れたその日。カケルが留守の楽器店「forte」に不思議な客が訪れていた。
「あいや!すいやせん、ここがforteであってやすかい?」
「そうですよー。あ、でも今、店主が不在でして……」
黒髪を短く切り揃え、白色の甚平を着て背中に「和」と描かれた赤と緑の羽織を羽織り、素足に下駄を履いているという現代の人間とは思えない恰好で長方形の箱のケースを手にした大男に呆然としつつも、店の名前を聞いてきたことからカケルの客だと思い対応するカナデ。しかし男はうんうんと満足げに頷くと、周りに他の客がいないことを確認すると不敵に笑う。
「それは存じておりますとも!おいらは枇々木万雷。スタジオノイズのチューナーをやっていた男でさあ!」
「ぁjshslhhsぃhdくsgさえあわwq!?」
いきなりスタジオノイズの幹部を名乗った男、バンライに、大混乱して目を回しわたわたと後退し、咄嗟にシンバルを手に取り盾替わりにするカナデ。生憎とシンバルシールドの様に守れないが。
「嘘つかないで!私が知ってるチューナーはたしか、年下の子供だったはずで……」
「そいつはおいらの先代でさあ。それに、勘違いさせてしまったなら謝りやす!だけどもおいらは足を洗った身。スタジオノイズの裏切り者でさあ!」
「裏切り者なんて、そんなの信じられるわけ……」
「信じていいと思うぞ、カナデ」
そこに、マシンシングラーに乗ったカケルが戻ってきて口をはさむ。キョトンとするカナデと、こちらを見て嬉しそうにするバンライを見ながらカケルは続ける。
「そいつはスタジオノイズの幹部とあからさまに敵対してた。…あんたが仮面ライダー残響だな?」
「ご明察!約束通り、話に来やした!」
「よく考えれば雷の速度で動けるお前の方が圧倒的に速いのはすぐわかったな……で、何を話してくれるんだ?」
「聞きたいことは何でも答えやす。まあおいらも最近幹部になった身で色々知ったのもその時でやすが……」
「なら単刀直入に聴く。お前らは……スタジオノイズは何者だ?」
町のはずれの山道を、ロードバイクで爆走し駆け下りていく少年がいた。その足には包帯が巻かれてある。
「誰よりも、誰よりも速く…!アイツにタイマンで勝つんだ、優勝まっしぐらだ…っ!?」
慣れているのか順調に駆け下りていた少年だったが、包帯が巻かれてある足に激痛が走ったのか体勢が崩れて道を外れ、急斜面を転がっていき、下の道に倒れ込んでようやく止まる。少年はシクロクロスの選手だった。しかし先の試合で足を選手生命を絶たれる大怪我をしてリタイア、しかし夢を忘れきれずに走っていたのだった。
「くそっ、くそっ……俺は、もっと速く……!」
「あら、素晴らしい不協和音が聞こえたと思ったらこんなところにこんな逸材が!スカウトしない手はないですわ!」
そこにやってきたのは、手ごろなノイザーを探しに出向いていたガゼッド・ブーデ。取り出したレコードリルを倒れている少年の胸にレコードリルを突き刺して、半時計回りに回すと楽曲を逆再生したかの様な不協和音が鳴り響き、音符が刻まれた五線譜の様な物が引きずり出される。その光景に恐れおののいている少年の耳元に口を寄せるガゼッド。
「これを受け入れれば、怪物になる代わりに怪我関係なく「最速」を目指せますわ。いかがいたします?」
「…どうせ俺はもう終わりだ。それなら、怪物にでもなんにでも…!」
「どうせなら自我がある方が強いのですわ!音色反転。この者の歴史の音楽、アカシックレコードよ。打ち込みしコード「ロケット」に染まれ、
そして人生に絶望してむしろ受け入れる体勢を取った少年の胸に五線譜の様なものがレコードリルに吸い込まれるようにして取り込まれていき、まるで変形するかのようにその姿が変わっていく。現れたのは、胴体に五線譜が刻まれている宇宙飛行士の様なフォルムで、両腕がロケットの先端部分が左右に分かれた形状をした可変装甲になっており、背中にブースターのついた、パラボラアンテナに眼がついているような姿の怪人、ロケットノイザー。
「うーん、これはなかなか……ですわね」
「俺は、速い……!なによりも、速い…!」
「っ!」
お粗末にも強そうには見えない姿に、あからさまにがっかりするガゼッドだったが、次の瞬間腕を合体させてスペースシャトルの様に変形したロケットノイザーが一瞬で加速し空中に飛び上がったのを見て、歓喜の声を上げる。
「このスピードなら……いけますわ~!あなた、あなた!実は最速を誇る我々の敵がいるのですけど、打ち勝ってみたくありませんこと?」
「俺が一番速い…!」
ガゼッドの言葉に頷くロケットノイザー。こうして新たな魔手が伸びる。
・ジュール・ボクス
人間態は真っ白なワイシャツを着崩した爽やかな金髪のイケメンの青年。幹部内でも嫌われている。
・チキチキ・オング
以前役職だけ出てた第四の幹部でテックエンジニア。短く首元で切り揃えた銀髪のショートヘアで、だぼだぼの男物のコートを着ている細身で色白の少女。眠そうな顔で欠伸をし、缶コーヒーを啜っているという不真面目な態度だが社長への忠誠心は本物。
・レコードリル【フェスタ】
“なぜか”持ち出されてシングの手に渡ってたらしい。なんでだろね。不思議だね。万雷のせいにされた。
・枇々木万雷
雷の速度で先にforteにやってきて堂々と名乗った。
・ロケットノイザー
シクロクロスの選手生命を絶たれた少年にガゼッド・ブーデが「ロケット」のレコードリルを埋め込んだことで生まれた怪人。モチーフはフォーゼ・コズミックステイツとバリズンソード、ジオウ・フォーゼアーマー。
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