ジャオーン再び。楽しんでいただけたら幸いです。
ロケットノイザーとの戦いから翌日。俺とカナデ、そしてforteに居候することになったバンライの三人は、大手レコード会社【
「うーん、ノイザーになった秘書を入院させたの失敗だったなあ……」
その一番奥の机に、藍色の髪を長く伸ばしたメリハリの効いたスタイル抜群の、縁が金色のレンズが大きい丸メガネをかけた黄色い目が微睡からか細められている、シンプルな黒のズボンタイプの女性用ビジネススーツの下に青色のシャツを着たクール系の美女……
「客だと聞いて誰かと思えば……さて。何しに来たの?曲尾翔。傘下に入る気になった?」
「違う。婆ちゃんの店を売る気はない。今日は、共闘を持ち掛けに来た」
「共闘?なんの?」
「アンタは強い。新しい力を手にした俺でも勝てるか微妙だ。そんなアンタだからこそ、スタジオノイズを相手に、一緒に戦ってほしい」
「へえ?」
眺めていた書類を置いてこちらに向き直る歌音。興味を引いてはくれた様だ。すると、俺の後ろにいたバンライが口を開いた。
「此奴が件のジャオーンでございやすか……しかしあの【
「話の前に。それ、誰?変な喋り方。弱そう」
「カケルさん!こいつ嫌いでございやす!」
ブチギレるバンライをまあまあとなだめる。なんというか、すぐ地雷を踏みに行くよなこの女は。
「だって、どう見たって技術畑の人間でしょ。それが必死になって江戸っ子かな?を演じてさ。私を牽制しているの丸わかりだよ?」
「うぐっ……な、なんのことでございやしょうか?」
「そうだったんだ……」
意外と、というか見る目はある歌音に看破されて口ごもるバンライにカナデが驚く。話が進まないから俺が紹介するか。
「こいつは枇々木万雷。スタジオノイズの裏切り者で仮面ライダーに変身する。仲間になった」
「なら私、必要なくない?」
「いや、昨日幹部のガゼッド・ブーデを倒せそうだったんだが、そこにやってきた別の幹部にしてやられた。まだ戦力がいる」
「チキチキ・オング。スタジオノイズ社長の側近、社長に最も近い力を持った幹部でございやす。アレに勝つには力を合わせる必要があるんでい」
「へえ、アレが表舞台に出て来たんだ。んー、パスかな!」
「なっ……」
歌音が笑顔で告げた返答に絶句する俺達。歌音は机の端に置いていたフルートケースからフルートランザーLを取り出すと、布で拭きながら続けた。
「まずひとつ。私は別にスタジオノイズの敵じゃない。むしろ、提携相手なんだよね。お得意様。ノイザーを倒したのは私に害があったからで、あっちにも納得してもらってる」
「なんだって!?」
咄嗟にレコードライバーと、背中に背負った霹靂万来を構える俺とバンライ。歌音は笑みを崩さないまま続けた。
「第二に。このジャオーンも、スタジオノイズの技術を参考にして火の粉を払うために作ったものに過ぎない。負けないとは言わないけれど、スタジオノイズの社長に喧嘩を売るのは嫌かな」
社長、という言葉に魔王ノイザーと呼ばれていたノイザーを思い出す。あれは、俺も一度は心が折れてしまった強大な力だった。アレに喧嘩を売りたくないというのは理解できない感情ではない。
「第三に。私より弱いやつらと手を組んでも無駄。それならスタジオノイズにこの情報を渡して恩を売った方が建設的じゃないかな?」
「……スタジオノイズにつくと?」
「私は中立だよ。火の粉がかかるなら戦ってあげるけど、それだけ。自分から喧嘩を売る気はないかな?」
「ええい、もう我慢なりやせん!そっちがその気ならここで倒してやりやしょうカケルさん!」
「お、おい……」
ラジカセドライバーを腰に取り付けベルトにして、ラジカセドライバーから取り出したカセッドリラーにレコードリル二本を取り付けてバックルに再装填するバンライ。
「今時演歌?いい趣味だけど、ちょっと古臭いよ。まあでも、高いけど払えるのかな?私の演奏料…!」
歌音もレコードリルを、フルートランザーLの歌口部分から展開したスロットに装填、閉じるとジャズ風の待機音が鳴り響き、大きく円を描く様に回すとフルート演奏の様な構えを取り、大きく振るう。これは、止められないな。
「あ、へぇんしぅん!」
「……
演歌のメロディーと共に稲妻の様に折れ曲がった五線譜が落雷の様にバンライに突っ込み変身を遂げる。軽快なリズムで機械音声が鳴り響いて、青い五線譜と金色の木管楽器風のラインが歌音の全身を走り、二色の閃光と共にその姿が変わる。
名乗りを上げ、広い社長室で身構える残響とジャオーン。睨み合い、残響は霹靂万来を演奏して電気を溜めていき、ジャオーンは左腕の装甲をスライドさせ変形させてクラリネットを模した槍状の武装を展開する。
「やかましいよ。綺麗な音色だけど雑な演奏だ」
「そう言ってられるのも今のうちでい!」
瞬間、加速した残響の抜刀した霹靂万来と、ジャオーンのクラリネスティンガーが激突。稲妻を散らし、カーペットを焦がす。しかし初速の勢いが衰えた残響の隙を逃さずジャオーンは蹴りを叩き込み、残響は残像を残して回避。再び演奏して電気を溜めていくのに対し、ジャオーンは右腕の装甲も展開してサックスを模したライフルを展開して向け、スイッチを一つずつ押した。
「そんなあからさまなチャージ時間があったら勝てるものにも勝てないよ!」
放たれる群青色のレーザーの嵐から、加速して逃れる残響。外れた弾丸がカーペットを破砕させていく。社長室がめちゃくちゃだけどいいのか歌音!?
「雷の速度に追いつけやすかい!?」
「追いつく必要はないんだよね。あなた、得意なのは屋外でしょ?屋内じゃせっかくのスピードも、速すぎて急ブレーキせざるを得ない」
「ぐああっ!?」
残響の動きを読んだジャオーンの狙撃が炸裂。火花が散って転がる残響。ジャオーンは必殺技の動作を行う。それはまずい!俺は咄嗟に、二人の間に飛び込んだ。
「……なんのつもりかな?」
「ここまでだ歌音。……お前、戦いながら残響の弱点を教えていたな?」
「なんと!?」
「………気のせいだよ。でも、こんなに弱いんじゃやっぱりダメ。私の背中を預けるには足らないよ。黙っといて上げるから強くなって出直してね」
そう言って変身を解除し、焼け焦げたカーペットを見て「あちゃー」と頭を抱える歌音に、毒気を抜かれたのか残響も変身を解除した。
「……彼女は味方か、敵、どちらなのでございやすか?」
「どちらでもないってことにしておこう。少なくとも、敵意はない」
「うん、私もそう思う」
「ちょっと待って」
そうカナデとも頷き合って出ていこうとすると、歌音に呼び止められた。なんだろう、と振り返ると不機嫌そうに頬を膨らませて歌音はカーペットを指さして言った。
「弁償して。370万円。傘下に入るでもいいよ」
「え」
「あんたが撃った跡でございやしょう!?」
「に、逃げろ!」
たまらず逃げ出したのは言うまでもない。
敵でも味方でもないけど味方より。羽休め回でした。
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