「なに、あれ?」
「なんなんだいったい?」
「やばくない?」
夕方でもないの雲が茜色に染まり、その街の人々は空を見上げて指をさし、訝しむ。明らかな異常に不安の声も上がる。そして次の瞬間、雲をぶち抜いて現れたのは真っ赤な太陽と、それを背負った怪物。赤と金で彩られた人型の竜が炎の様に歪んだ甲冑を身に着けた様な前傾姿勢の騎士が、両腕の翼を広げ長い尻尾で太陽を引っ張りながら現れた。
「ドラグーンフレアストリームゥウウウウッ!!」
ファンタジーからそのまま抜け出してきたような巨体が空を舞い、騎士の様な姿で厚顔無恥にも炎の雨を降らして街を火の海に変える竜の怪物、ドラグーンノイザー。謎の邪魔者が現れた街は標的から外し、好きなだけ燃やし尽くす好機に、上機嫌に特に意味ない技名を叫びながら空を駆る。
「ヒッヒッヒ!今度こそすべて焼き尽くしてやる!」
「くそっ、そうはさせるか!」
火炎弾をばら撒き、街並を炎上させるドラグーンノイザーを、街中をマシンシングラーで走り抜け、追いかけるのは仮面ライダーシング。降り注ぐ火炎弾を避けながらどうしたものかと攻めあぐねていると、それは横からバイクに乗って現れた。
「邪魔をするな…シング!」
「仮面ライダー、ノイズ…!」
マシンシングラーによく似た漆黒のバイク「マシンノイズラー」に乗った仮面ライダーノイズがシングと並走する。全身に纏っている靄が風に流れてまるで煙のようにモクモクと空に昇り、紫色の複眼の輝きが軌跡を描いている。
《ガッキ・ウェポン!1!ソードランペット!》
左手で操縦を続けながら右手でレコードライバー左側面の一番下のスイッチを押しこみ、一回右側面を叩くとレコードリルからソードランペットが飛び出して右手に握り、炎を纏った刀身を横に並走する仮面ライダーノイズに斬りつける。
「無駄だ」
《ザン・テンポゥ》
するとノイズはマシンノイズラーを右手で操縦したまま左手で靄で見えないレコードライバーVer.0を操作して靄を左手に集束させて刃の様にし、ソードランペットと切り結ぶ仮面ライダーノイズ。シングのレコードライバーの様にガッキウェポンが搭載されてないらしい。しかし圧倒的なパワーでソードランペットを弾き飛ばし、シングのバランスを崩そうとする。
「このまま、雑音に呑まれろ!」
「そうはいくか!」
《ヘイ!ヘイ!ヘイヘイヘイ!》
マシンシングラーが倒れそうになるところを、ソードランペットを振るって道路を弾くことで体勢を無理矢理立て直し、バックルの左側面の三つあるスイッチのうち上から二番目を押し込み、右側面を五回リズムよく叩くシング。レコードリルは高速で回転しだして、早送りのクラシックが鳴り響く。
「速く!速く!行くぜ、行くぜ、行くぜ!」
《アップテン・ポゥ!》
「むっ…」
明らかに速度が変わったシングの挙動。ソードランペットを高速で振るうことでパワーの差をカバーし、幾度も斬撃を叩き込むシングに、ノイズは防戦一方だ。
《ノイズ…ガッキメラァ》
負けじとレコードライバーVer.0の左側面の一番下のスイッチを押しこみ、一回右側面を叩くとマシンノイズラーが速度を保ちながら浮遊。さらにバックルのレコードリル【ノイズ】からソードランペット、マラカスショット、ドラムハンマー、シンバルシールドによく似た漆黒のガッキウェポンが現れ、マシンシングラーのドラムセットモードと似たように変形するマシンノイズラーと合体。四本のメカアームが伸びてその先にそれぞれ武器を装備し、タイヤが変形したプロペラで空を飛ぶ形態「ガッキメラモード」へと姿を変える仮面ライダーノイズ。
「なんだよそりゃ…!?」
「殲滅する」
黒いシンバルシールドが黒いドラムハンマーで打ち出されて稲妻を纏ってブーメランの如く空を舞い、マラカスショットからエネルギーの弾丸がばら撒かれ、ソードランペットが振るわれて炎の斬撃が放たれ、弾幕となってシングに襲い掛かる。
「くそっ、これは、まずい…!?」
まるで一人合奏会の様な猛攻に、マシンシングラーを巧みに右に左に操縦してなんとか回避していくシング。しかしじり貧であり、こうしている間にも街並みはドラグーンノイザーに燃やされていく。
《ヘーイ…ヘーイ…ヘイヘイヘーイ…》
「おそーく、行くぜ!」
ならばとシングは猛攻を掻い潜りながら左側面の上から二番目のスイッチを押しこみ、遅いテンポで右側面を五回叩いて流れるクラシックのテンポを遅くする。
《ロー・テンポゥ……》
スローモーションと化した攻撃を、遅くなった挙動でソードランペットを振るって迎撃するシング。炎の斬撃とエネルギー弾をからめとり、さらにシンバルシールドに叩きつけた際にからめとった炎とエネルギーを集束させてシンバルシールドに稲妻と炎とエネルギーを集束させて上空に打ち上げ、同時に左側面の上から二番目のスイッチを押してローテンポを解除する。
「ローテンポにはこういう使い方もある!」
「しまった…!?」
「なんだあぁああああああっ!?」
そして元の速度に戻った黒いシンバルシールドはバチバチと輝きながら上空のドラグーンノイザーに直撃。大爆発が起きて地上に叩き落とされるドラグーンノイザーを守るように、ガッキメラモードの仮面ライダーノイズが立ちはだかり、シングはマシンシングラーから降りて身構える。
「叩き落としたなら、こいつの出番だ」
《ガッキ・ウェポン!5!アルプホランス!》
レコードライバー左側面の一番下のスイッチを押しこみ、五回右側面を叩くとレコードリルからアルプホルンのラッパ状の部分が刃となっている二メートルほどはある戦槍が飛び出してその手に握られる。
「…Ver.1に追加されたNo.4以降のガッキウェポン…!」
「お、俺は逃げるぜ!ぐあっ!?」
ガッキメラの弾幕をアルプホランスを振り回して薙ぎ払いながら、ドラグーンノイザーの翼を斬りつけて逃げられないようにしながら、シングはマウスピース型のつまみを回した。
「くそお!」
《テクニカルテン・ポゥ!》
「鎮火の時間だ!」
すると先端の円形の刃からブォオオオオオン!と爆音が鳴り響き、ドラグーンノイザーの放った炎を冷気に変換し、ドラグーンノイザーを凍り付かせる氷像にしてしまう。熱エネルギーを音に変え、冷気に変換する「熱音響冷却」を使ったテクニカルな攻撃である。ソードランペットの炎も冷気に変換されて氷像とまではいかないまでも氷漬けになった仮面ライダーノイズは不時着して身動きが取れなくなり、シングはレコードライバーの左側面の一番上のスイッチを押し込んだ。
《フィニッシュテン・ポゥ!》
するとレコードリルの曲調が終盤に切り替わり盛り上げていくのと同時にアルプホランスの穂先を纏うようにレコード盤型のエネルギーが渦を巻き、高速回転して冷気の渦を作り上げていく。
「こいつが最終楽章だ!」
《ヘイ!ブリザド・ブレイク!》
そして連続でアルプホランスを横に振るって氷像のドラグーンノイザーに叩きつけ、最後に勢いよく振り上げたそれを振り下ろしてレコードリルのメロディーを叩き込んで粉砕。爆発することもなく砕け散った跡には、放火犯の男が気を失って倒れていた。
「次はお前だ、仮面ライダーノイズ」
「任務失敗。…覚えていろ、仮面ライダーシング」
仮面ライダーノイズはそれを確認すると、黒いマラカスショットから光弾を地面に撃ってシングを怯ませると、そのまま飛び去って行った。
「…仮面ライダーノイズ、何者なんだ…?」
その後、テレビで放火魔が逮捕されたことが報道されているのを見ながら、カケルはクラシックのレコードを聴きながらコーヒーを飲んで一服していた。正面には同じくコーヒーを飲もうとして苦かったのか砂糖を追加するカナデがいた。
「事件が解決してよかったねー」
「今回のは自我があるノイザーで厄介だったな……こんなケースは初めてだ」
「私も自我があるノイザーなんてあんまり聞かないな」
「…セロ・ドゥエスやガゼッド・ブーデ、か」
カナデの言葉に、自我のあるノイザーである幹部の名前を上げるカケル。カナデは頷き、コーヒーを啜ってから続ける。
「うん、幹部はノイザーのなれの果て。ただの「音」から「楽曲」に昇格したノイザーだよ。私の知る限り全部で四体いる」
「あと二人も厄介なのがいるのか……今回のがそうだった可能性は?」
「あれが幹部なら私も知らないやつだね」
「じゃあ違うのか……厄介だな」
前途多難な今後に、溜め息を吐くカケルなのだった。
アルプホルンとかいうすごい長い楽器。
・ドラグーンフレアストリーム
元ネタの龍騎サバイブの必殺技みたいななにか。ドラグーンノイザーは天災級のやべーやつ。
・マシンノイズラー
仮面ライダーノイズの専用マシンでマシンシングラーの色違い。変形合体してガッキメラになる。
・アルプホランス
右側面を五回叩くことで出現するガッキウェポン。氷属性を有しており、マウスピース型のつまみを回すことで「テクニカルテン・ポゥ!」を発動でき、熱を冷気に変換することができる。リーチの長さが売り。
次回は新戦士絡みの話。お気に召していただけたら感想ならびに評価、お気に入りしてくれると嬉しいです。