「たまには一人で喫茶店もいいね。おしゃれ」
買い出しを終えて、帰り道に喫茶店に寄ったカナデ。はしゃいでいたカナデだったが窓の向こうでは燃やされた街が復興している様子が見えて、表情が暗くなる。
「…ごめんなさい。私の――――せいで……」
「お客様、すみません。満員でして、相席よろしいでしょうか?」
落ち込んでいると、誰か連れてきた店員が尋ねてきたのでカナデが了承すると、フルートケースを持った女性が向かいの席に座る。藍色の髪を長く伸ばしたメリハリの効いたスタイル抜群の20代後半の女性で、縁が金色のレンズが大きい丸メガネをかけた黄色い目が微睡からか細められている、シンプルな黒のズボンタイプの女性用ビジネススーツの下に青色のシャツを着たクール系の美女だ。視線を下げてそれなりにある自分のそれを見てジト目になるカナデ。
「相席でごめん。近くで面倒な商談があるんだけど、お腹が空いちゃって。よし、私はカレーライスとチョコバナナパフェで」
「かしこまりました」
「ここのカレー、美味しいよ。貴女も食べる?あっ、私は
「え、あ、…
カノンと名乗った女の慣れ慣れしい態度に、引きこもり気味だったカナデはたじたじで。
「ふーん。カナデって言うんだ。初めて会ったとは思えないね」
「たしかに…?」
変なデジャヴを感じながらも頼んだ食後のコーヒーを啜るカナデ。そのうちカノンが頼んだカレーライスとパフェが運ばれてきて、美味しそうに口に運ぶ様を眺め、そろそろ帰ろうかなと腰を上げた時、引き留められた。
「ちょっと待って。実は今、お金が無いの。奢ってよ、カナデ」
「は?」
固まるカナデ。至極真面目な顔で見つめるカノン。変な沈黙が二人の間を支配し、カノンがカレーを口に運んだことで静止が止まる。
「…お金、持ってないの?」
「大丈夫。私、有名人だから。後でちゃんと返せるよ。はい、名刺」
そう言って手渡された名刺には【レコード会社【
「レギオンって…大手レコード会社の!?社長!?」
「声が大きいよ……別に、大した事ないから。ただ楽しく演奏できれば良かっただけだし……それに何か、世の中へのウケを狙った企業とかも、元から好きじゃないんだ」
「そ、そう……わかりました、今回は私が払います。これ、私の名刺です…」
「へえ、forteの……」
いそいそと席を立つ準備をするカナデから渡された【forte】の名刺を見て不敵に笑むカノン。カナデが自分の分までレジで支払って外に出ていくのを見送り、そのままチョコバナナパフェを口に運んでご満悦の笑みを浮かべた。
数刻後、夕方。forteにて、客が少なくなる時間帯を利用して手分けして掃除を行っているカケルとカナデは、先刻の出来事について話していた。
「で、そんなことがあったんだ」
「それでその人の代金まで支払ったのか?お人好しがすぎるぞカナデ」
「私のお願いで命がけで戦っているカケルに言われたくないよ」
「…そうかもな」
包帯だらけの自身の身体を見下ろして自重するように笑うカケル。そこに、来客を知らせるベルの音が鳴る。
「いらっしゃいませ、楽器店「forte」へようこ…そ?」
「やっほー、また会ったねカナデ」
そこにいたのは、気だるげに手をひらひらさせるカノンだった。意外と早すぎる再会に驚くカナデ。
「律調、さん…なんでここに?」
「カノンでいいよ。そして貴方が「forte」の店長、曲尾翔だよね?」
「そうだが……あんたが【
ビジネススーツを着ているカノンが客じゃないと悟ったカケルは問いかける。するとカノンは懐から一枚の用紙を取り出し、突きつける。
「私も客と言えば客だよ。今日は商談に来たの。この「forte」を買い取らせてほしい」
その紙…契約書には買収に関する内容と、目が飛び出る金額が書かれていて。カケルはそれを一瞥するとカノンを睨みつける。
「ふざけてるなら帰れ」
「ふざけてないけど。正確には私達の傘下に入って欲しいの。ここ、品揃えは良いからさ。
「生憎とだがこの店は婆ちゃんからの貰い物でな。例え大金を提示されても売る気はない」
己の祖母である
「別に奪ったりはしないから。私達の傘下に入るだけ。悪い話じゃないよ」
「店に並べるものまであんたらの言う通りにしろって話だろ?お断りだ。話がそれだけなら帰ってくれ」
「二人とも、いったんやめて…ううっ!?」
話は平行線で。カナデが止めようと試みるも、耳障りな甲高い金属をこすり合わせる様な音が耳に響いてその場に蹲る。
「カナデ、どうしたの?」
「カナデ!?まさか、ノイザーか!?」
「うん……待って、近づいてくる…!?」
「なんだって?」
首を傾げるカノンと駆け寄るカケルに、カナデは警鐘を上げた、その瞬間。窓を突き破って大小さまざまな“剣”が襲来。次々と飛び込んでくると自在に飛びまわって店内をめちゃくちゃにし、咄嗟に側転して回避したカノンのいた場所に巨大な剣が突き刺さる。
《レッツ・ミュージック!》
「おい、修理代誰が払うと思ってるんだ!!ふざけるなノイザー!」
《ヘイ!ヘイ!ヘイヘイ!ヘンシーン!》
「変身!」
《シング!シング!シーング!》
踊りながら変身動作を行い、宙に浮いている剣を蹴り飛ばしながら変身し外に躍り出るシング。
「え、あ、カケルの馬鹿!えっと……今のは内緒にしてもらえると……」
あまりに言い逃れできない目の前での変身に、なんとか秘密にしてもらおうとするカナデ。しかしカノンは不敵に笑っていて。傍に落としたフルートケースを手に取り開くと、カナデはその中身を見て驚く。
「それは…!?」
「手伝うよ。ついでに」
一方、シングはforteの近くの公園まで来ていた。そこには、片手剣、手裏剣、大剣、銃剣、槍など十本の様々な形状の剣で構成され連なる剣身に五線譜が描かれた怪人、ジョワユーズノイザーがいた。剣が一本鶏冠の様についた手裏剣の様なX字の顔がシングを睨む。
「何者だ?」
「こっちのセリフだ!俺の店を襲うなんてなんのつもりだ!」
「お前に用はない。律調歌音を出せ!」
大事な店を襲われて頭に来ているシングの言葉に、同じく怒りをにじませて返すジョワユーズノイザー。どういうことかと考えようとしたシングに、そんな隙は与えないとばかりに靄に包まれた戦士が襲い掛かる。
「そういうことだ。お前に用はない。シング…!」
「くそっ、仮面ライダーノイズ…!」
ジョワユーズノイザーを守るように現れた仮面ライダーノイズの拳を受け止めるシングだったが、ジョワユーズノイザーが突進してきて左腕を構成している蒼い槍で薙ぎ払われ、右手を構成している赤い片手剣を振るうと空中に出現した十本の剣が爆撃の様に襲い掛かり、シングを薙ぎ払う。
「があっ!?」
「命が惜しくば律調歌音を出せ!」
そして追撃でジョワユーズノイザーと仮面ライダーノイズが合わせて攻撃しようとしたその時、軽快な旋律が響き渡って攻撃が止まる。ジョワユーズノイザーと仮面ライダーノイズ、二人とも聞き入ってるらしい。
「私を指名してくれるなんて、嬉しいな」
《フルートランザーL!》
そこにやってきたのは、ジョワユーズノイザーの要求する律調歌音その人。その手に握られたフルートと融合させたような日本刀、フルートランザー
「貴様、律調歌音…!」
「私のところの社員かな……でも、商談を邪魔されたし。うん。諸々含めて払ってもらおう。私の高い演奏料を」
《DO・IN!》
そして懐から取り出したレコードリル【ジャオーン】を、フルートランザーLの歌口部分から展開したスロットに装填、閉じるとジャズ風の待機音が鳴り響き、大きく円を描く様に回すとフルート演奏の様な構えを取り、大きく振るう。
「……
《MAD・GUN・JAZZ・KILL! ジャ・オーン……!》
すると軽快なリズムで機械音声が鳴り響き、青い五線譜と金色の木管楽器風のラインが全身を走り、二色の閃光と共にその姿が変わる。黒いアンダースーツに青色の五線譜、木管楽器に似た金色のパイプを無数に組み合わせた装甲、顔に付けた八分音符を模したバイザーが特徴的な姿をしている戦士。ドラグーンノイザーを一撃で追い払った存在。
「魔楽奏者ジャオーン。私の演奏は……億千万だ」
・
レコード会社【
・ジョワユーズノイザー
恐らく
・フルートランザーL
ジャオーンに変身するためのアイテム。フルートと日本刀が合体したような姿をしている。実際に演奏することが可能。
・ジャオーン
カノンがフルートランザーLにジャオーンレコードリルを装填し、「奏音」した魔楽奏者。レコードリルを使っているが仮面ライダーとはシステムが異なり、関係としてはドライブと魔進チェイサーみたいな感じ。
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