ダンジョンに陰陽師一派がいるのは間違っているだろうか   作:かぼちゃマスク

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フム?

となってできた作品です。

ベル君はヘスティア・ファミリアのままです。


オラリオ到着
1 『星見の館』


 オラリオ。

 世界に唯一ダンジョンがある街。ダンジョンはバベルという蓋がされていて、その中にはモンスターが溢れている。そのダンジョンを攻略しようとしているのが、冒険者だ。

 この迷宮都市オラリオには天界から神様が降りてきて、娯楽のために子供たちを見守っている。その神様が様々なことをするためにファミリアを形成して、子供達には神の恩恵と呼ばれる力を与える。

 

 この力を使って、オラリオにあるダンジョンに潜るもよし、商業を営むもよし、農業に精を出すもよし。それはファミリアと主神様の意向によって決められている。ただ人気があるのは探索系のファミリアだし、僕もそこに入りたかった。

 

 一緒に暮らしていたお爺ちゃんが亡くなったことで、一念発起してオラリオに来て、お爺ちゃんに言われ続けたハーレムを作るために冒険者になる。

 その思いを胸に、初めてやって来た都会にキョロキョロしながら街の大通りを歩いていた。街で一番高い建物、バベルにあるギルドで色々と紹介してもらってファミリアに入ることがまずやること。

 

 オラリオの入り口で会ったハシャーナさんという優しい人に教えてもらった。できれば有名なファミリアに入りたいなあ。

 そう思いながら、初めて見るものばかりの街並みに誘惑されながら、それでもバベルを目指して歩く。嗅いだことのない匂いは何だろう、カラフルな建物は何だろうと歩いている様子はお上りさんで、後から危ないと教えてもらった。

 

 悪い人に狙われやすいからと。

 

 でも、そうやって周りに視線を向けていたために、その建物を見付けた。

 薄い黄色の塗装がされた三階建ての建物。見た感じ何かの商店のようだった。何故だかその建物が気になって正面に立ってみて、看板に書かれた文字を読む。

 

「『星見の館・芒野(すすきの)』……。タマモノマエ・ファミリア経営……えっ、ここファミリアのお店なの!?」

 

 商業系ファミリアがあるのは聞いていたけど、何のお店かわからないようなお店をファミリアが経営しているとは思わなかった。お客さんもいないようで、何故か惹かれるようにお店の中に入ってしまった。

 

「いらっしゃいませ」

 

 可愛らしい女の子の声。その声の主はカウンターにいた小さい女の子。栗色の髪に、同じ色の瞳。ヒューマンにしては低い身長で、子供じゃなさそうな理性的な声に、佇まいに、その女の子の種族がわかった。

 小人族(パルゥム)だ。初めて見た、可愛らしい女の子。

 

「……あの?リリのことをジロジロ見てどうかされました?買い物ではなく、占いのお客様ですか?」

 

「あっ!?ご、ごめんなさい!小人族の、こんな可愛らしい人初めて見たから思わず見つめちゃって!?」

 

「……ナンパですか?リリなんかを、物好きですねえ」

 

 彼女は小さくため息をつく。リリさん、って言うのかな?彼女は店番をしつつ読書をしていたようだけど、その本を閉じてしまった。

 

「このお店が何かを知らないご様子。それに見たところ冒険者様でもないですし、見覚えもありません。最近オラリオに来た方ですか?」

 

「あ、はい。さっき着いたばかりで……。冒険者になりにオラリオに来たんですけど」

 

「なるほど。どうしてお店に入って来たのかわかりませんが、ルーキーにはあまりお勧めしません。値段もそうですが、効果があるとしたら上級冒険者様でしょうから」

 

「値段……?」

 

 そう言われてガラスケースの中にあるサンプルを見る。

 呪符と書いてある使い捨ての魔道具(マジックアイテム)。そのお値段一枚3000ヴァリス。

 一食大体100ヴァリスあればそこそこ食べられるのに、使い捨てのアイテムで3000ヴァリス!?他にも置いてあるのは魔法の効果を高めたり補助したりする道具ばかり。

 ここ、アイテム屋だったんだ……。しかも、高級店。

 

「というわけで、お客様が選べる商品は占いくらいだと思いますよ?」

 

「占い?」

 

「タマモノマエ・ファミリアをご存じないのですか?特に女性に人気のある、占いを司った陰陽師がここのファミリアの団長なのです。百発百中と名高い過去も現在も未来も見据えた(あきら)・ナニワと言えばオラリオの外でも有名だと思いますが」

 

「ごめんなさい……。あんまりオラリオのこと詳しくなくて」

 

 初めて聞いた名前だ。英雄譚の英雄ならわかるけど、有名なファミリアの名前も僕はあまり知らない。

 それにしても百発百中なんて凄いなあ。その人に未来を視てもらえば安泰ってことじゃないだろうか。

 

「嘘はいけないな、リリルカさん。俺はいつ星見で百発百中になった?ランクアップなど全てを見通すことはできないよ。偶には外す」

 

 男の人の声。お店の奥から出て来たのは十代半ばの金髪に藍色の瞳の少年。僕よりは歳上だろうけど、今のリリさんへの言葉を聞くと、どうやら目の前の人が団長さんらしい。

 こんな若い人が、団長?

 

「明様。また覗き見ですか?タマモノマエ様に怒られますよ?」

 

「ああ、千里眼じゃなくて未来視をしたんだ。覗き見はしていない」

 

「どっちもどっちですよ……」

 

「いらっしゃい、ベル・クラネル(・・・・・・・)君。『星見の館・芒野』へようこそ」

 

「えっ、僕の名前!?」

 

 まだ名乗ってないのに!?どうしてこの人には僕の名前がわかったの!

 リリさんはシラーっとした目線を明さんに向けているし、どういうこと?

 

「未来視で君のことを知っていたんだ。驚かせたのならごめん。そのお詫びに、占いをタダでしてあげよう」

 

「え?はい……」

 

「うん。君は良い主神に恵まれるね。様々な困難も付きまとうだろう。牛の好敵手に、運命の友との縁。過酷ないくつもの選択、迷宮の迷い子との邂逅。……厄介な女神に魅入られるけど、まあ大丈夫かな。ごめん、男神にもだ。それも糧にして、君は進む。君の冒険譚は、神々さえも魅了するだろう」

 

「ありがとうございます……?」

 

 どういうことだろう?良いファミリアに入れるようで、ライバルや良い友達ができて、神様達に目を付けられて、僕の冒険譚が……?

 

「あの、明様?それ本当ですか?」

 

「もちろん。リリルカさん、君も暇だろう?ベル君が冒険者になったらサポーターをしてあげなさい。ベル君といる限り、彼らは手を出してこないよ。たぶんね」

 

「……ハァ。ご厄介になってるのはリリの方ですからね。わかりました。ということですのでベル様。冒険者になったらまたここを訪ねてください。リリがサポーターを務めますので」

 

「あ、うん……?お願いします」

 

 サポータってなんだろう?言葉の意味からして僕と一緒にダンジョンに潜ってくれるみたいだけど。

 というか、気になったことがあるから聞いてみよう。

 

「あの。ここでは団員募集をしていないんですか?」

 

「ウチのファミリアは特殊でね。主神が認めないと絶対に入団できない。かくいうリリルカさんも保護をしているだけで、ウチのファミリアじゃないんだ」

 

「そうなんですか?」

 

 てっきり店番をしているし、ダンジョンにも潜れるんだからここのファミリアの人かと思ったのに。

 

「君には君の主神がいるよ。それにウチは見ての通り商売系ファミリアだ。探索系を志願している君には合わないと思う」

 

「そう、ですね。占いありがとうございました」

 

「いえいえ。それと、これも選別だ。これから冒険者になる君へ、お近付きの印だ」

 

 そう言って渡されるのは青色の呪符。え、これって……。

 

「こ、こんな高級な物もらえませんよ!3000ヴァリスもするものなんて!それに僕、エルフでもないから魔法なんて使えませんし!」

 

「恩恵を貰ったら魔法が発現するかもしれないじゃないか。まあ、お守りだと思って持っていてくれれば良い。その高級な物をまた買えるように、励みとしてくれれば良いから」

 

「……じゃあ、ありがたくいただきます。ありがとうございます」

 

 有無を言わさない感じで押し付けられたので、リュックに大切にしまう。

 でも恩恵を貰って魔法が使えるようになったら使える物だから、期待して持っておこう。

 

「あの、これってどうやって使うんですか?」

 

「基本は魔法の補助具だ。強く願えば、持っていなくても勝手に威力を増大させたり、範囲を広げてくれる。君の想いが強ければ強いだけ、その呪符は応えてくれる」

 

 なるほど。持っていなくても使えるのは便利かも。肌身離さず持っていれば魔法の効果を増大させてくれるなんて、使い捨てとはいえ凄いんだなあ。英雄譚でもそんなマジックアイテムなかったのに。

 名前からして極東のアイテムなのかな。極東の英雄譚はあまり詳しくないや。

 明さんの説明を反芻していると、リリさんの表情が、なんというか微妙だった。どうしたんだろう。

 

「そういえば占いって普段いくらでやっているんですか?」

 

「一回100ヴァリス。失せ物探しから運命の人まで、なんでもござれ。運命の人も占うかい?」

 

「安い……。占いはまた今度お願いします。旅をしてきたので手持ちが少なくて」

 

「じゃあ今後もご贔屓に」

 

「リリさんも、冒険者になったらお願いします」

 

「ええ。こちらこそお願いします、ベル様」

 

 そうして僕は晴れやかな気持ちでお店を出て、当初の目的通りバベルに向かって。

 リストで貰ったファミリアはことごとく僕のようなもやしのような奴は入れられないと門前払いを喰らって。

 そして、僕の女神様に出会った。

 

──

 

「あの、明様。ベル様に渡したあの呪符。お店で出している呪符じゃありませんよね……?」

 

「さすがリリルカさん。あれは特殊な呪符で、俺と金蘭の合作だ」

 

「やっぱり……。所持しているだけで効力のあるアイテムなんてぶっ壊れなんてレベルじゃありませんよ。そこまでの人物ですか?ベル様は」

 

「ああ。彼と、【剣姫】を中心にオラリオは廻る。彼は面白い星回りだよ。君もね」

 

「リリも……?」

 

「まずは一緒にダンジョンに潜ってみると良い。酒の魔力が切れた後に待っているのは、君だけの物語だ。待ち人来たり、神々が望んだ滑稽話(シナリオ)は崩壊する。うん、楽しみだ」

 

「まさか、その崩壊のためにさっきの呪符を……?」

 

「まあ、そういう側面もある。人間は神々のオモチャじゃないんだ。望まれた役割をこなすためだけの存在なんて、俺一人で十分。俺は俺で、それで良いと自分から進んだけど、最後の英雄に仕立て上げられる道化に、彼にはなって欲しくないんだよ。……全く。君の想いは強烈に過ぎる。アルフィア」

 

「あの人が、英雄に……?そうは見えませんが」

 

「誰もがそう思うだろうね。気付くのは一部の神々だけ。その神々も性悪ばかりだ。少し彼を側で見てみると良い。神の悪意も、彼の善性も見られるから」

 

「……アルフィア?どこかで聞いたことのある名前ですが」

 

「ただの家族想いの、儚い女性だよ」

 




リリは保護されていますが、ソーマ・ファミリアのままです。今は。
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