ダンジョンに陰陽師一派がいるのは間違っているだろうか   作:かぼちゃマスク

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「オンモフ」側はめちゃくちゃ強い設定です。

原作でも吟が悪神を倒したとか言っていますので。


幕間 リリルカ・アーデの変化

 リリルカが玉藻の前に拾われてすぐ。

 まず、何で拾ってくれたのか不思議だった。なのでファミリアの面々に聞いてみる。

 

「あの。助けてくれたことはお礼を言います。ありがとうございます。それで、その。どうしてリリを助けてくれたのでしょうか?」

 

「いつもはハルが誰かを拾ってくるから、今度はわたしが拾っても文句は言われないかなって」

 

 何とも神らしい変な理由だった。

 要するに、玉藻の前の気まぐれだったと思うことにした。

 

「リリルカさん。ミク……じゃ伝わらないか。玉藻がこう言ってるから、君を保護することにした。君の事情は何となくわかってる。ソーマ・ファミリアから君を守ろう」

 

「は……?」

 

 この時、リリルカはまだ自分の事情を一切話していなかった。精々玉藻の前と一緒にお風呂に入った程度だ。お風呂から出てご飯を食べてすぐの会話で、自分よりちょっと年上くらいの男の子に全てを看破されていた。

 それに思わず、声が漏れてしまう。

 所属しているファミリアの名前も、今の状況も何も伝えていなかった。

 

「君はもう、あのファミリアにお金も支払わず、あそこへ帰らなくていいって言ったんだ。住む場所もここでいい。お酒の魔力からも守ろう。当座のところそんな内容でどうだろうか」

 

「……えっと」

 

「ああ、自己紹介してなかった。明・ナニワだ。タマモノマエ・ファミリアの団長をしている」

 

「あなたが、団長?」

 

 十歳を少し超えたくらいの少年がファミリアの団長と名乗る。リリルカは自分のように小人族かと疑ったが、そんなことはなかった。若輩者が団長になるのは零細ファミリアあるあるだった。

 実際この時点で、タマモノマエ・ファミリアはただの零細ファミリアでしかない。

 

「なあ、ミク。やっぱりこの見た目は不味かったんじゃないか?」

 

「道満を用意したんだから、ハルの見た目はどうとでもなると思いますよ?」

 

「まあ、五年後を想定したらこの見た目が一番良いんだけど。……リリルカさん。まだ現状を受け入れられないだろうけど、しばらくここでゆっくりしたら良い。ここには君を傷付ける害意はない」

 

「タマモノマエ・ファミリアなんて聞いたことがありませんっ!そんなところがどうやってリリを守るんですか!?ソーマ・ファミリアにはレベル二もいるんですよ!」

 

 リリルカは突然押し付けられた善意に、好意に、優しさに。戸惑ってしまった。

 だからこその反発。それも仕方がない。

 彼女はこれまで愛を知らずに育ってきた。そういう場所で過ごしてきた。

 親にも見放され。ファミリアにも捨てられた彼女は。

 家族愛という当たり前の感情すら知らない。

 そんな十歳の少女だった。

 

「あー、レベル二。神々も認めた偉業を超えた者。ミク、偉業って何なんだ?」

 

「さあ?ドラゴン倒したり、強いモンスターを倒したり。格上の人を倒したり。そういう戦闘面ばかり取り沙汰されているかな?」

 

「その程度で偉業になるのか。いや?あの穴はそれほど脅威という反証か?」

 

「外と中じゃモンスターは別物だけど。ハルの予想通りドラゴンもピンからキリまで。じゃないと黒龍と同じ名称のドラゴンをそこそこの冒険者が倒せるわけがないから」

 

 明と玉藻の前は自分達の基準とオラリオの基準を照らし合わせていく。

 その結果、明の表向きのステータスが決定される。

 

「じゃあ俺のレベルは?」

 

「五、で良いんじゃない?」

 

「……はぁ!?」

 

 もうリリルカはわからなかった。

 若干十歳がレベル五に至ったと言う理由が。

 その言葉の数々の意味が。

 会話の不自然さも、何もかも。

 

「モンスターの弱い外で、レベル五に至れるはずがありません!ラキアでも精々三、レベル五ともなればオラリオでも一握りしかいない最上位クラスですよ!?」

 

「うん。だから。最上位の面々に君は守られているわけだ。それに外にだって三大クエストのように凶悪なモンスターも存在する。それを倒せるならレベル三如き簡単に覆せる」

 

「無茶苦茶な……!」

 

 確かにリリルカは外のことを噂でしか知らない。お金を稼ぐことに精一杯で、自分の閉じ籠っている箱庭以外は誰かに聞いた人伝の話に過ぎない。

 三大クエストの話だってそうだと聞いているだけで、リリルカの目で見たわけではない。もしかしたら三大クエストのモンスターのように強力なモンスターが古代から生き残っている可能性はあった。

 

 そしてそれを討伐していたら、十歳程度でもレベル五はありえなくはない。

 理論上は。

 

「何だったかな?ゴライアス?あれがレベル四相当だったはずだ。あれを俺が単独で討伐すれば信じてくれるかな?」

 

「……あなたが?」

 

「ああ。君の護衛で他にも吟と金蘭をつける。そうすれば君には危険がないし、俺達の実力も把握できるだろう?」

 

 明はさも何でもないようにそう言う。

 ゴライアス。

 十七階層に出てくる階層主。レベル四相応で、巨大と形容すべき巨人のモンスター。レベル四でも単独撃破は難しく、何十人ものパーティーを組んで倒す相手だ。

 

 レベル四でも数人パーティーで倒すことが常識の、普通のモンスターとは異なる相手。

 それを、子供にしか見えない人間(ヒューマン)が倒すと豪語する。

 

「それじゃあ誰かが倒す前に行こうか」

 

「え?あの?」

 

「吟、金蘭。手を出すなよ?久しぶりに俺がやる。俺だけだ」

 

「「御意」」

 

 ギルドで冒険者登録をすることもなく、四人はダンジョンに潜っていく。上層なんて全て無視して最短距離で十七階層まで迷うことなく到達し、「嘆きの大壁」に行った。

 

 道がわかっていたかのように走りながらも、リリルカにダンジョンのことを聞いて特徴やモンスターの種別など確認していた。確認がてらモンスターは塵に変えて魔石の回収まで行なっていく。

 そして都合よく、そこにはゴライアスが産まれていた。

 

「ON」

 

 その短い言葉で、ゴライアスは途方もない大きな蒼い炎に包まれる。その炎はゴライアスを包み込んで燃え盛ったままゴライアスを閉じ込めているようで、ゴライアスは産まれた場所から一歩も動かない。

 ゴライアスのものと思われる叫び声がその場に轟く。轟くばかりで行動を阻害するようなハウルにもならず、徐々に身体が崩壊していく。

 

 炎が産まれてジャスト一分。

 叫び声が消えたのと同時に、ゴライアスの巨体が消えた。影も形もなくなり、炎があった場所に残るのは巨大な紫色に光る魔石だけ。

 

「さて。これで証明になったかな?」

 

「……はい。超短文詠唱で何もさせずに一撃でゴライアスを完封するなんて、レベル五だと認めます……」

 

 リリルカはむしろレベル五()()なのかと疑ってしまう。都市最強クラスの戦闘なんてリリルカは見たことがなかったが、ゴライアスをたった一つの魔法で完封できる人間がいるなんて信じられなかった。

 しかも超短文詠唱という所持者の少ないレア魔法を駆使して、威力は桁違い。

 こんな証拠を見させられたら納得するしかなかった。

 

「しかしあっけないな。吟、お前なら一瞬で倒せたか?」

 

「おそらくは。ただ巨大なだけではおれ達の敵にならないでしょう」

 

「だよな。どれくらいの相手がいるのか確認しておきたい。龍脈の流れも掴んだし、どこまで龍脈が広がっているかの調査も必要か。ミクには遅くなるって伝えよう」

 

「なら簡易式神を飛ばします」

 

 ゴライアスを倒したというのに涼しい顔をしている三人。金蘭は蝶型の簡易式神を地上に向かって放つ。

 その行動と発言に、リリルカは頬を引き攣らせる。

 なにせ彼女はまだ十歳。上層にしか潜っていなかった人間だ。この中層にいる時点で結構いっぱいいっぱいなのに、この先へ進もうとしている三人の正気を疑った。

 

 初めてのダンジョンアタックで中層へ突入して階層主を倒して、その先へ進もうとするなんて何と常識のないことか。

 いくらレベル五とはいえ、無謀が過ぎる。ダンジョンには未知が広がっているというのに。

 

「キリのいい五十階層まで行くか?」

 

「あ、そこまで行くのなら五十一階層まで行きたいです。何でも万能薬(エリクサー)の原料が湧き出る泉があるのだとか」

 

「じゃあそれを回収に行くか」

 

「あ、あの!五十一階層と言ったら下層を超えて深層域なのですが!?」

 

「ん?何か危険でも?」

 

 明は常識を問うかのように聞き返す。五十階層という場所が深層だとわかっていてなお関係ないと言えてしまう胆力。

 本来深層なんて都市最大派閥がしっかりと準備をして大人数で行く場所だ。決して十歳の子供を含めた四人という少人数で目指す場所ではない。

 

「ああ、金蘭の結界魔法はモンスターごときじゃ破れない。世界最高の守りだ。金蘭から離れなければ安全は確保されている」

 

 そういうことじゃないっ!とリリルカは叫びたかったが、その声は出ない。

 セーフティーエリアである十八階層を素通りして。

 二十六階層で見付けたアンフィス・バエナは吟が軽く三枚に下ろし。

 三十七階層に現れたウダイオスは取り巻きのモンスターごと明が大火力で燃やし尽くして。

 

 四十九階層に現れたバロールは、明が陰陽術で動きを止めたところに吟が首を一閃。面倒な魔眼を使われる前に終わらせていた。

 階層主がそこらのモンスターと変わらないように倒されていく姿を見て、リリルカはもう諦めの境地に至っていた。ウダイオスに至っては見たことのない大剣をアイテムドロップするということもあって収穫品はいくつかあった。

 

 そして、彼らの目的地である「カドモスの泉」に着いて。

 攻撃力だけなら最強クラスと名高いモンスターであるカドモスが複数いたが、明と吟がすぐに灰に変えていく。貴重なカドモスの皮膜も落ちていく。

 リリルカはそんな周りの様子を一切気にしない金蘭と一緒に水を汲み上げていた。

 

「ねえ、リリルカさん。これって高く売れるの?万能薬の元になるのだから、かなりの値段になるのでしょう?」

 

「万能薬は一つで五十万ヴァリスなので……。元となるこの水もかなり高額になるかと」

 

「ふうん?調査もしたいから、そこそこ回収して少し残して、後は売りましょう。本拠のローンに充てるべきかしら?」

 

「……あそこに落ちているカドモスの皮膜は一千万ヴァリスは下らないかと」

 

「え、あんな皮が?モンスターならいくらでも復活するから狩り放題……?明様、吟!そのモンスターいっぱい倒してください!ローンなくなりますよ!」

 

「「(おれ)達に幸運を期待するな!ロクな結果にならないぞ!」」

 

 二人の声が重なる。その言葉は真実のようで、カドモスはもう四十体以上倒しているのに皮膜は一つだけ。

 ヤケになった二人が産まれてくるカドモスをひたすら倒したが、結局手に入った皮膜は三つだけ。

 彼らの幸運値は、神が認めるほどに低い。

 

「ま、これくらいなら市場を荒らさないだろ。俺達の幸運値の低さで逆に助かったな」

 

「むしろウダイオスのドロップアイテムである大剣の方が高く付きそうです。なにせ今まで存在しなかったドロップアイテムなので」

 

「あれが?……刀や防具を売るのもアリか?でも鍛治ファミリアもあるからな……。一つの案としておこう」

 

 ちなみに。

 この後帰還してウダイオスの大剣はフレイヤ・ファミリアに情報料と一緒に売却された。そのおかげでローンはすぐになくなる。

 そしてリリルカはこの出来事で一つベルに自慢をする。

 

「ベル様。上層くらいで舞い上がってはダメです。なにせリリの到達階層記録は五十一階層ですよ」

 

「ええっ!?深層でも奥の方だよね!リリってすごかったんだ!」

 

「ええ。あれで精神がやられなかったリリはすごいと今でも思いますよ……」

 

 レベル六でも少人数で向かわない深層。そこへ当時十歳でレベル一の時に経験したのだ。

 それと比べると上層・中層くらいは何とかなる。戦いさえしなければ。

 そう、ミノタウロスがやってくるとかのイレギュラーさえなければ、リリルカは割と何とかなったりする。

 

 精神が鍛えられているからこそ、そんじょそこらの冒険者よりも肝が座っている。

 それが良いことかどうかわからないが。

 なお。リリルカの到達記録はもちろん非公式だ。

 なにせ連れて行った面々の表向きの到達階層記録は四十二。

 

 五十階層より先へはロキ・ファミリアの遠征についていかなければ更新できないとしているのでリリルカの記録もあくまで非公式。

 リリルカのこの記録を知っているのはタマモノマエ・ファミリアの他にフレイヤ・ファミリアのみ。

 フレイヤ・ファミリアも口外しないという条件の元でウダイオスについての情報を得たので公表もしない。

 

 もっとも、レベル一のサポーターの到達記録が五十一階層なんて誰も信じないだろう。

 そしてタマモノマエ・ファミリアの非公式到達階層を知っているのは本人達を除いてリリルカだけ。

 その数字を絶対口外することはない。都市最大派閥に目の敵にされるとわかっているからだ。

 

(ロキ・ファミリアへの派遣は敵情視察と固定客の確保。それだけでしょう。ダンジョンに潜る理由は些か特殊だと皆さん言っています。……あの人達は本当に冒険者らしくない。あの人達にとってダンジョンに潜ることは『冒険』ではないですからね……)

 

 リリルカはそんなことを思う。

 彼女に溜まった経験値は莫大だ。その小さな身体に収まらないほどに。

 というか。何度か五十一階層に付き合っているのでレベル一のサポーターと名乗ることが一つの詐欺だった。

 彼女が芽吹くのは、もう少し先の話。

 

 




とりあえずフラグだけは残しときます。
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