ダンジョンに陰陽師一派がいるのは間違っているだろうか   作:かぼちゃマスク

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皆さんお待ちかねの原作メインヒロイン再登場です。


再演
13 試練育成


「ねえ、オッタル。一つお願いがあるの」

 

「何なりと」

 

「あら?まだ内容も告げてないわよ?」

 

「あの白兎への試練でしょう?」

 

「以心伝心で嬉しいわ。愛しい子。まだ公表していないみたいだけど、あの子の最速記録、ぶっちぎりにしてくれる?」

 

「仰せのままに」

 

 

「ベル、どうだ!オレの防具は!」

 

「最高!動きやすいし、軽いよ!これならいつも通り動ける!」

 

 ダンジョン十一階層にて。ベルの防具が完成したこともあってベルとリリルカ、ヴェルフは中層の一歩手前まで進出していた。

 そこで片手剣を振り回して魔法をブッパするベル。大刀で大型のモンスターも両断するヴェルフ。どこからどう見ても身の丈に合っていない馬鹿でかい包丁のような物を振り回すリリルカ。

 彼らの大火力の前には、十一階層にいるオークなどの大型モンスターもひとたまりもなかった。

 

「リリスケ、お前さんの防具はどうだ!」

 

「名前を除けば最高ですよっ!」

 

「そうかそうか!小人族用の防具は初めてだったから不安だったが──名前もイカすだろう?」

 

「「全然?」」

 

 ベルとリリルカは息を合わせて否定する。ヴェルフの名付けのセンスは全くなかった。性能が良いのでそこだけは玉に瑕だと思っている。

 リリルカも接近戦をするからと、ヴェルフについでに防具を作ってもらっていた。レベル一ということもあってリリルカの防具を作るのは早かった。採寸と調整の方が時間がかかったと本人談。

 

「いやー、この階層なら経験値稼ぎも捗るだろうな!ベル様様だぜ!」

 

「というか、このパーティーバランス悪くありませんか!?全員インファイターって!ボウガンを使わずに包丁振り回してるリリが言うことじゃないかもですけど!」

 

「僕が魔導師になってもいいけど、敏捷鍛えられないし……。まだリリの接近戦は不安があるからちょっと」

 

「ベルはオレらの最高戦力だからな!狩りなら得意分野でやらせた方が稼げるだろ!」

 

 ということで、全員でモンスターを切り裂く。ついでにベルの発展アビリティのおかげで魔石の品質が良く、アイテムドロップもボロボロ。これにはドロップアイテムが欲しかったヴェルフも大喜び。

 流石に中層にはアタックできないが、それでもレベル一のヴェルフとリリルカからすればかなりのチャレンジを安全に行えていた。これもベルというレベル二がいるからだ。

 

 そのベルも、早朝に行なっている吟と銀郎との訓練や、ダンジョンでの無双で順調に経験値を稼いでいた。やはり大きいのは吟達との訓練だろう。吟達の的確な訓練とアイズも含めた模擬戦で戦術眼や身体の実践的な動かし方、対人戦闘について知識を深めてきた。

 それはモンスターにも活かせる内容だったために、ベルはダンジョンで様々なことを試していた。

 

 早朝訓練では魔法を使えないので、魔法を主に使うのはダンジョン内だ。

 しかもベルは回復魔法まで使えるので回復薬いらずで長くダンジョンに潜れる。時間だけ気にして怪我をしたらすぐ治療して、という感じでダンジョンアタックをしまくって三人は経験値を稼ぎまくっていた。ついでにアイテムと資金も。

 その稼ぎとステータスの上がり具合に、また胃を痛めるヘスティア。

 

 ランクアップしてまだ数日だというのに、敏捷・器用・魔力のステータスだけはもうDで偉業さえ達成したらランクアップ可能な域に達してしまったのだから、目のハイライトも消えるというもの。

 

 ベル達は回復薬を買わなくなった代わりに、ミアハ・ファミリアでちゃんと精神力回復薬を買っている。そっちの方が値段が高く、ベルがマインド・ダウンにならないようにと多めに買っているのでナァーザは大喜び。

 こうやって経済を回しているベルだった。

 

「しっかしリリスケも勿体無いよなー。ステータスの更新ができないなんてよ。こんだけモンスター倒してたらかなりの経験値溜まってるだろ?」

 

「さぁ?もう六年近く更新していないのでわかりません。ソーマ・ファミリアから逃げているリリからしたら、更新ができないことが当たり前なので」

 

「ろ、六年……」

 

「なっが。親がファミリアの団員だとそうなるのか……。しっかし酷いファミリアだよな。オレ、主神がへファイストス様で良かったぜ」

 

「僕も神様で良かった……」

 

 六年もの間、一切上がらないステータス。神の恩恵はまさしく恩恵であるのと同時に呪いだ。

 六年もあれば、まだ子供であったリリルカなら筋肉などもしっかりついて骨格も変わっているのだから身体能力は上がっているはずだった。だが、先に貰った神様の手助けでそこで成長が止まってしまっている。

 

 成長したいと思っても成長できない。老化や病などで神の恩恵をもらっていても身体能力が落ちることもあるが、伸ばすには訓練をしてモンスターを倒して、神に更新してもらわなければならない。

 たとえ訓練を何年もしたところで。モンスターを何百体と屠ったところで。

 更新をしてもらわなければ、神の恩恵を授かった人間は成長できないのだ。

 

「タマモノマエ様に拾われたのが五年前って聞いたけど、一年もファミリアでステータス更新できなかったの?」

 

「ソーマ様に会えるのは、上納金をしっかり払った眷属だけです。冒険者としての才能がないと知ってサポーターになったリリにはそのまともな上納金も稼げなかったんです」

 

「ステータスの更新にも金がいるって、ホントふざけてんな。いくらファミリアにも形態があるからって」

 

「そうですね……。狂ってることに気が付かないんですよ。皆さん酔ってますから」

 

 酒に溺れて判断力が鈍る。そして金を稼ぐだけの機械になる。集めたお金で神酒を作って、その酒を飲むために働く。そういう悪循環で回っているソーマ・ファミリア。

 

 リリルカのように酔いから醒めてしまう眷属もいる。だが、逃げられるのは極一部。捨てられる場合もあるが、捨てられる前にもう一度神酒で酔わせるという手段さえ取る。

 それが今のソーマ・ファミリアの団長。ザニスという男のやり方だった。

 

「リリスケ。改宗(コンバーション)は考えなかったのか?」

 

「もちろん考えましたよ。ただリリの恩恵にはソーマ様のロックがかかっていて。いえ、基本全ての恩恵にはロックがかかっているんですが、改宗には今の恩恵を与えている神の許可が必要なんです。リリはソーマ様からその許可をもらってないんです」

 

「一年前の騒動でも、許可をもらえなかったの?」

 

「向こうが拒絶したということもありますが、リリがソーマ様と会うのが怖かったということもあります。目の前に行けば、また酔わされてしまうのではないかと思って……。会えずじまいです。今の生活も心地いいので、リリとしては文句なんてありません。暖かいご飯が食べられて、ちゃんと安全が保障されている場所で寝られるだけ幸せです。暗黒期なんてそんな時勢じゃありませんでしたから」

 

 そんな言葉を聞いてしまっては、ベルもヴェルフも無理強いはできない。会うのが怖い相手に会いに行けなんて言えるわけがなかった。

 二人とも一年前のソーマ・ファミリアによる『星見の館』襲撃事件については聞いたり知ったりしていたのでそれでも改宗ができないのかと思ったが、かなり根深い問題だとわかった。

 

「んじゃあ、オレは一層ちゃんとした防具をリリスケに作るか。ステータスが上がらない分は防具や武器で補うもんだ」

 

「じゃあ僕も危険なことからリリを守るよ。レベル二だしね」

 

「冒険者歴一ヶ月未満のひよっこベル様に言われるのは屈辱です……。リリの方が圧倒的に歴は長いのに。というかなんです?そのおかしなスピード……」

 

「ホントだよなあ。オレもあっという間に追い抜かれちまったし。いくら鍛治に精を出していたからって、オレも長くダンジョンに潜ってるんだぜ?」

 

 話の流れでベルの成長速度についての議題になったが、誰もその理由がわからない。

 なにせベルもヘスティアから教わっておらず、成長促進スキルがあるなんて知らないのだ。そもそも前提として、成長促進スキルなんて神々も把握していない。

 

 ベルが初めて得た未知のスキル。

 常識に捉われてしまうからこそ、三人ともそんな突拍子もないスキルの存在について行き着かなかった。

 

 ちなみに本来の【憧憬一途(リアリス・フレーゼ)】よりも【万雷の喝采を(リアリス・フレーゼ)】の方が上昇率が高い。元がベル一人分の想いだということに対して、【万雷の喝采を(リアリス・フレーゼ)】は複数の人間の想いを媒介にしている。

 そのため一層成長が早い。早すぎるほどに、彼には期待と想いが込められている。

 

「二人とも吟と銀郎の旦那達に稽古つけてもらってるんだろ?そういうのもあるのかねえ?」

 

「レベル五とレベル四ですからね。効果はあると思いますよ」

 

「模擬戦や稽古でも経験値って貯まるの?」

 

「ある程度は、だな。それでレベルアップしたって話は聞かないから、経験値しか入らないんだろ。んでも、フレイヤ・ファミリアは団員同士の殺し合いでランクアップしたとか言ってたか……?」

 

「えぇ……。怖っ」

 

「あそこは女神至上主義でダンジョンに潜るよりも身内で争ってばかりですから」

 

 ヴェルフからの情報に頬が引きつってしまうベル。身内同士の殺し合いでレベルアップなんてしたくないと思ったベル。

 そもそも身内と呼べる同じファミリアの人間がベルにはいない。

 そんな噂話もしつつ、三人は今日も上層できっちりと稼ぐ。

 ダンジョンで凌ぎを削る猪人と牛に、気が付くことはないまま。

 

 

「ベル・クラネルの最初の強敵はミノタウロスだったらしい。──お前だ」

 

『モオオオオオオォ!』

 

「威勢良し、強度良し。あとは鍛えるだけだ」

 

 いたってなんてことのない大剣を持った男が、ミノタウロスへそれを振るう。

 彼の実力なら容易く両断できるというのに、まるで指導するかのように手加減をする。

 ミノタウロスも徐々に男の動きに対応し、男の動きを真似ていく。

 ミノタウロスは倒れれば男に魔石を摂取させられ、体毛が変化していく。

 

 男はミノタウロスに大剣を渡そうとしたが、赤く変化したミノタウロスはそれを拒んだ。

 持っていた石斧を手放すものかと。

 その執着心に男は感心し、限界まで鍛えて魔石を与えて、ひたすらに技を仕込んでいく。

 

 強化種になったからか、モンスターであるはずなのにミノタウロスは人間の技と駆け引きを覚えていく。

 男がミノタウロスを鍛え始めて五日ほど。

 

「……やりすぎたか?いくら最速のレベルアップをしたとはいえ、奴はレベル二。だがこのミノタウロスはレベル四……ほどはあるな。……まあ、これも試練か」

 

 男の頑張りすぎで、本来の予定よりも大分強化をしてしまった。

 だが、そのままこれをぶつけようとする男。

 これくらい乗り越えてみせろと、男からの辛辣なメッセージだった。

 

 そして自分が持ってきた大剣を渡そうとしたが、ミノタウロスは元々持っていた石斧を離そうとしなかった。二刀流という技も試す前に、石斧を用いながらの近接戦闘を習得しようとするミノタウロスに、男は楽しくなってしまって熱心に指導してしまう。

 

 結果が、レベル四相応のインファイターの出来上がりだ。

 不器用ながらも技を真似し、本能も交えた戦闘方法と、魔石を喰わせるほど強くなっていく様子に加減を忘れてしまった。

 絶好の決行日も近付いていたので修行はここまで。後はこのミノタウロスが人目に触れないように保護するしかやることがなかった。

 

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