ダンジョンに陰陽師一派がいるのは間違っているだろうか   作:かぼちゃマスク

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キャラ崩壊注意?


3 過保護

 ギルド。オラリオでダンジョンの入り口を管理している組織。神ウラノスが管理しているが、ファミリア運営で管理をしているわけではない。

 バベルの一階。そこがダンジョンの入り口であり、オラリオに帰ってくる冒険者は必ず通る場所だ。今の時間帯は夕方に差し掛かるわけでもなかったので人はまばらだった。

 とある小人族の少女がもたらした情報がなければ、そこまで騒がしくもなかっただろう。

 

 

 ──ミノタウロスが上層に進出している。

 

 

 サポーターの少女は上層を登るたびに出会った冒険者にそう言って避難を呼びかけた。一から四階層にはお昼を過ぎた頃には上級冒険者なんて一人もいなかったことが大きい。彼女は必死に駆け上がり、ギルド職員にその危機を伝えた。

 冒険者依頼を出してもいいから今すぐ上級冒険者を送ってくれと。残った駆け出し冒険者が死んでしまうと。

 

 ギルド職員のエイナ・チュールはそれを訴えた少女に見覚えがあり、駆け出し冒険者の名前が自分の管轄の少年だったために血色を変えて解決に奔走しようとした。ギルドにいる上級冒険者に声をかけていた頃だった。

 ダンジョンの入り口から、有名な冒険者が三人出てきたのを確認したのは。

 

 その先頭は狼男でロキ・ファミリアの幹部、【凶狼】ベート・ローガ。ロキ・ファミリアは遠征に出ていたのでそれから帰ってきたのだろうと思われた。

 もう一人は虎人だと思われるスタイルが恐ろしく良い着物を着た女性。金髪に琥珀色の瞳をして、頭には虎柄の耳。手も虎そのもので、尻尾もそうだ。恐ろしいほど整った美貌の持ち主、タマモノマエ・ファミリアのレベル五。治癒と防御魔法に秀でた金蘭。

 

 そしてもう一人。白髪に色素の薄い瞳。腰には日本刀と短刀を帯びた剣士。和服である着流しを着た、ロキ・ファミリアの援助で遠征についていったこれまたタマモノマエ・ファミリアのレベル五、吟。

 その吟がおんぶしている白髪の少年を見て、ミノタウロスのことをギルドに報告したリリルカが駆け寄った。

 

「ベル様ぁ!」

 

「リリルカ殿、ベル殿は気を失っているだけです。金蘭が治療したので安静にしていればもうじき目を覚ますでしょう」

 

「吟様と金蘭様が間に合って良かったです……!【凶狼】様もありがとうございました!」

 

 リリルカは床に下ろされたベルの様子を見ながら、涙を浮かべてそうお礼を言う。治療されていたので服などの汚れや鎧の欠損は残っているが、傷一つないベルの姿を見てリリルカは心の底から安堵していた。

 

 ステータスの劣る、歳下で駆け出しの少年を囮にしてしまったと言うことが心に響いていた。追いつかれてしまう距離で、どちらを逃せば二人とも生き残れるかの判断は難しい。逆だったら無事だったかもわからず、今回は運が良かったとしか言いようがない。

 

「あー、オレって言うか、ロキ・ファミリアにはお礼を言わないでくれ。むしろオレ達が悪い」

 

「ベート、それは後でいいでしょう。さっさとフィンと合流してギルドに報告しなさい。この騒ぎはミノタウロスのこと、知れ渡っているわ。私達は彼を連れていくから。決まったことはウチに赴いて説明なさい」

 

「待て。ソイツのファミリア知ってんのか?」

 

「ヘスティア・ファミリアよ。あなた達の女神と仲の悪い、竃の女神」

 

「聞いたことねーな……。まあ、任せた。こんなところでくたばる器じゃねー。しっかり養生させてやれ」

 

「言われなくとも」

 

 あの【凶狼】の褒め言葉に、周りで聞いていた冒険者が慄く。彼は弱者を罵ることで有名だ。その裏に込められた言葉を知っている者からすれば不器用だなとしか思わないが、その裏を知らない者は他者を扱き下ろす粗暴な人間としか思わない。

 

 レベル六という都市でも最強格の一人だからこそ許されている言動だと思って、それ以上の理解をしようとしない。

 まあ、そんなツンデレ狼のことは置いておいて。

 

「リリルカさん。ヘスティア・ファミリアまで案内してくれる?私達、彼の所属までは知っていても本拠(ホーム)までは知らないの。主神には説明しないといけないし」

 

「わかりました。案内します」

 

 また吟がベルのことを運んでギルドを後にする。

 最初はレベル五に助けられただけかとあまり気にしなかった野次馬達だったが、ベートがギルドに報告した内容によってその評価は一転する。

 駆け出し冒険者であるのにミノタウロスと戦い、吟がトドメを刺すまで足止めしたという話が噂好きな神々によって瞬く間に広がった。

 

──

 

「そうか……。金蘭君、吟君。ベル君のことありがとう。主神として感謝しきれない。君達が間に合ってなかったらどうなっていたことか……」

 

 ヘスティア・ファミリアの本拠『教会の隠し部屋』にて。ヘスティアを交えた報告会をしていた。ベルは未だに眠ったままだ。

 

「申し訳ありません。ヘスティア様。リリが付いていながら……。別の選択をしていれば──」

 

「いや、サポーター君。君が気に病むことじゃない。吟君の説明じゃ悪いのは慢心していたロキのところの眷属(子供達)だからね。君達はその時考えうる限りの最善の判断をした。他の子供達を想ったベル君の判断を、君だけは否定しないでくれ」

 

 自虐に走るリリルカを、ヘスティアは止める。グータラ女神と巷で評判なヘスティアも、立派なオリュンポス十二神に数えられる位の高い神格。子を想う気持ちも言葉も本物で、リリルカの行動を止めるにはその言葉だけで十分だった。

 それに大元は遠征の帰り道とはいえミノタウロスの集団を逃がしてしまったロキ・ファミリアの失態だ。リリルカを責めるのは間違っていると判断した。

 

「結果的に君達は無事。他にも被害者が出ていないんだ。ロキに謝ってもらって、それで終わりさ。ソーマのところにもタマモのところにも文句は言わないよ。むしろサポーター君も被害者だし」

 

「……本来、こんなことにはならなかったはずなんですが。失礼」

 

 吟は呆れながら一言断って、リリルカのサポーター用のバカみたいにデカイバックパックに手を突っ込む。

 そこから引っ張り出したのは黄金色の小さな獣。というか、小狐。

 そんなものが入っていたことにヘスティアは驚き、リリルカはその狐の正体を知っていたので目を丸くして叫んだ。

 

「ゴン様!?いつの間にリリのバックの中に!」

 

「もしもの時のために明様が陰陽術で突っ込んでいたんですよ。中層まではこいつがいれば怪我なんてするはずもありませんから」

 

「さあ、クゥ?弁解はある?」

 

「……ねえ。出るタイミングを逃した」

 

「喋ったぁ?尻尾が三つもあるし、この感じ……。君、タマモの眷属だね?ファミリアの一員という意味じゃなくて、神に仕える者という意味で」

 

 話したことと本来ありえない尾の数から、ヘスティアはクゥと金蘭に呼ばれ、リリルカにはゴンと呼ばれた狐の正体を看破する。

 神には己を象徴する動物がいたりする。ヘスティアであれば聖獣としてロバがいて、ゼウスであれば鷲がいる。

 そんな動物達と同じ存在だと認識した。

 

「神ヘスティア。その通りだ。オレは玉藻の眷属で、神の恩恵も受けているゴン。クゥはあだ名というか、本名というか……」

 

「神の眷属が下界にいるのは問題があるかもしれないと、あえて別の名前を名乗らせています。ヘスティア神、申し訳ない」

 

「ああ、ボクは気にしないよ。というかこの子、そんなに強いの?」

 

「陰陽術も使えるので、レベル四相応だと思います」

 

「ウッヘエ。君達のファミリアは本当に少数精鋭だねえ」

 

 トップの蘆屋道満は都市有数のレベル六。団長の明に吟、金蘭がレベル五。銀郎と瑠姫がレベル四とギルドを通して公表されている。そこにレベル四相当の神の眷属だ。これで探索系ファミリアではなく商業系なのだからヘスティアが変な声を出してもしかたがない。

 たった六人と一匹とはいえ、その戦力図は都市最大派閥の最上位と変わらない。

 

 その戦力が公表されたのは、実は最近のこと。ソーマ・ファミリアが何を思ったのかファミリアの本拠である『星見の館・芒野』を襲撃するという事件があった。最大でもレベル二しかいない商業系の皮をかぶったなんちゃって探索系ファミリアの襲撃に、タマモノマエ・ファミリアは一瞬で制圧。

 

 近隣住民に被害を出し、『戦争遊戯(ウォー・ゲーム)』を仕掛けたわけでもなかったのでギルドから処分を受けて酒の営業停止と、襲撃犯の幾人かを恩恵封印という処分になった。

 

 その制圧の様が酷かったので他の神々がレベルの公表を促して、全員がタマモノマエ・ファミリアの実力を知ることとなった。構成員が全員ランクアップの報告もなく商業しかしていなかったので交流のあったファミリアしか実態を知らなかったわけだ。

 この襲撃前から実力を知っていた都市最大派閥二つはただただ納得し、その片方の道化の女神は大好きな神酒(ソーマ)を飲めなくなったことを逆恨みして、販売停止の片棒を担いでしまった玉藻の前に直談判。

 

 心の広い玉藻の前はロキ・ファミリアに遠征での手助けとして構成員の派遣と、神酒に変わるお酒の販売をロキにした。このお酒を作っているのが玉藻の前とゴンだ。

 言いがかりにこんな対応をされてロキは喜んだが罪悪感も負ったために、ファミリア間の交流が増えてロキ・ファミリアが『星見の館・芒野』の常連になった。実際ダンジョン攻略に便利な物が多数商品として置いてあったので助かっている部分もある。

 そんな貧乳女神のことは置いておくとして。

 

「神ヘスティア。私はあなたに謝らなければならないことがあります。私と明様が謝らなければならないのですが」

 

「ん?あー、もしかして未来を視てたとかそういうこと?」

 

「明様が視ていたのは事実でしょう。私はそういう力がないので。それとは別件でして。明様がベル君に渡した呪符を覚えているでしょうか?」

 

「ああ、3000ヴァリスする物だろう?こんな高価な物もらっちゃったので頑張りますって張り切ってたよ。魔法の補助具だろう?それが何か?」

 

 ヘスティアも見せてもらった青い呪符だ。何か変な感じがしたが、魔道具とはそんな物だろうと思ってあまり確認しなかった。ヘスティアは下界に降りてきてあまり時間が経っていないため魔道具について詳しくなかった。

 

 バイト生活をしているので下界の情報もそこそこ集めているが、ジャガ丸君の屋台とへファイストスのお店でバイトをしていただけなので、魔道具について触れる機会がなかった。玉藻の前ともそこそこ交流があったが、必要ない物だったので詳細を知らない。

 

「実はあれ、魔導書(グリモア)と同じ性能をした魔道具です」

 

「「……え?」」

 

 その発言に声を合わせたヘスティアとリリルカ。それだけありえない言葉を聞いたからだ。

 魔導書。読むだけで魔法が発現する、【神秘】と【魔導】の発展アビリティが高ランクでないと作成できない伝説の魔道具。

 そのお値段。数千万ヴァリスを容易に超える。

 

 その価値もそうだが、本来魔導書とはその名の通り本のような見た目をしている。幾枚もの魔力を帯びた特別な紙に特殊なマジックサークルを閉じ込めて、それを本という形で抑え込めた代物。

 決してただの紙一枚。しかも薄い呪符程度で再現できる物ではない。

 

「もしかして、ベル君はこれからステータスの更新をしたら魔法が発現しているのかい……?」

 

「いえ、もう発現済みです。おれの前で魔法を使っていましたよ」

 

「ひょ?」

 

「強制的に魔法を発現させるという効力を強めにしましたので。それに彼には適性もあったので表に出すのは難しくありませんでしたよ。私と明様の合作でそれくらいはできて当たり前です」

 

「ひょひょひょ?」

 

 さっきからヘスティアが変な音を発しているが、それにお構いなく吟と金蘭は自慢げに話を続ける。その脇でゴンが呆れているのも、リリルカが青ざめているのも気付かない。

 

「ミノタウロスを数秒とはいえ足止めしました。範囲もそこそこ広かったですし、魔力のステータスが0にしては強力な魔法だったと思います。おれは魔法に詳しくないので所感になりますが」

 

「ベル君は雷の適性があったようなので極東の雷を司る神の一柱、青竜の力を封じ込めた呪符を渡しました。想定通り雷の魔法を発現したようで。吟、なんて魔法だった?」

 

「【世界の果てに、刻憧の雷霆(グレェヴン・ケラウノス)】、だったな」

 

「ケラウノス?吟君、ケラウノスって言ったかい!?何でベル君にそんな魔法が発現するんだ……!」

 

「ヘスティア様?」

 

 リリルカはその単語に驚愕するヘスティアの様子がわからなかった。雷の魔法とは珍しいなと思ったが、ケラウノスという言葉には何が隠されているのか。

 それがギリシャ神話で最も有名な十二神の頂点が使う裁きの雷を指すことに気付いたのはヘスティアだけ。

 

「……ベル君のステータスを更新しよう。見ないとダメだ。ボクの許容量を超えてる」

 

 まだ寝たままのベルの服を脱がして、背中に手を当ててヘスティアによるステータスの更新を行う。その様子を他の三人と一匹は見なかったが、帰ってきたヘスティアの様子からなんとなく結果は予想できた。

 無言のまま渡された用紙には、共通語(コイネー)で書かれたベルのステータスが記載されていた。本来であればステータスは最重要秘匿事項だが、ヘスティアの言うように限界を超えたらしい。

 

 

 

 

 

──────

 

ベル・クラネル

Lv.1

力 :H102→H145

耐久:H112→F307

器用:I85 →H112

敏捷:G201→G278

魔力:I0 →H105

 

《魔法》

雷霆を(ケラウノス)

・付与魔法

・雷属性

・速攻魔法

・追加詠唱をすることで魔法変質

・詠唱文【天空より更に彼方へ、黄金の雨となり、聖獣たる御牛をも震わせ、最果ての宇宙(カナタ)へあなたの証を届けよう】

 ・【世界の果てに、刻憧の雷霆(グレェヴン・ケラウノス)

 ・変質魔法

 ・追加詠唱により広域攻撃魔法へ変質

【】

【】

《スキル》

【      】

 

──────

 

 

 

 

 スキルのところが何かに塗り潰されたような跡があったが、そこに気付いたとしても金蘭も吟も何も言わなかった。そこよりも注目すべきことがあるからだ。

 

「何ですか、このステータスの伸び率……。いくらミノタウロスと相対したからって」

 

「倒せていれば偉業としてランクアップに匹敵したんでしょうが。足止めだとこんなものなのかもしれません」

 

「私はこの魔法の方が気になるわ。これでスロットを一つしか使っていない。ベル君はあと二つ魔法を覚えられるみたい。変質魔法って初めて聞いたわ」

 

 リリルカ、吟、金蘭の率直な意見。加算ステータス400オーバー。

 レベル二上位に匹敵するミノタウロスと相対して生き延びたのだからこうもなるのかもしれない。とはいえやはり異常としか言えないが。

 

「魔法は君と明君のせいなんだろ……?」

 

「はい。それでも無関係な魔法なんて発現しません。ベル君の中にあった確実な欠片が芽生えただけです」

 

「ケラウノスかあ……。ああ、だからタマモはベル君が色々な神に注目されているって言ってたのか……。注目するに決まってる。ボクは気付かなかったけど、わかる神にはわかる。どうしたものか……」

 

「ギルドに聞かれたらそのまま答えるしかないかと。ウラノスは確実に気付いているでしょう」

 

「だよねえ。詠唱文もそのままだし」

 

 ヘスティアは頭を抱える。まさかの弟のやらかしに、下界に降りてまで迷惑を被るとは思っていなかった。天界でも主に女性関係で手を焼かされたが。

 

「ああ、あと。これその時のミノタウロスの魔石です。ロキ・ファミリアは要らないでしょうし、我々も要りません。今日は換金する空気じゃなかったので持って帰りましたが、明日にでも換金するといいでしょう」

 

「うわー、立派な魔石。倒したのは吟君なのにいいのかい?」

 

「慰謝料の一部と思ってくれれば。他には明様と玉藻の前様と相談してお詫びの品を見繕います」

 

「魔導書みたいな物受け取ってさらになんて受け取れないよ……。君達はボクの胃を破壊する気かい?」

 

 お腹の辺りをさするヘスティア。それでもミノタウロスの魔石は置いていく予定だったのでそこは絶対に譲らなかった。

 吟達タマモノマエ・ファミリアが帰った後の夜、ベルは目覚めてまたヘスティアとリリルカに泣かれて、ステータスを知って驚いて。

 ベルの初めての試練は、こうして終わった。

 

 




ベル・クラネル
Lv.1
力 :H102→H145
耐久:H112→F307
器用:I85 →H112
敏捷:G201→G278
魔力:I0 →H105

《魔法》
雷霆を(ケラウノス)
・付与魔法
・雷属性
・速攻魔法
・追加詠唱をすることで魔法変質
・詠唱文【天空より更に彼方へ、黄金の雨となり、聖獣たる御牛をも震わせ、最果ての宇宙(カナタ)へあなたの証を届けよう】
 ・【世界の果てに、刻憧の雷霆(グレェヴン・ケラウノス)
 ・変質魔法
 ・追加詠唱により広域攻撃魔法へ変質
【】
【】
《スキル》
万雷の喝采を(リアリス・フレーゼ)
・早熟する
・想いが続く限り効果永続
・想われれば想われるほど上昇率増加
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