ダンジョンに陰陽師一派がいるのは間違っているだろうか   作:かぼちゃマスク

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とあるキャラ、名前だけって言ってたのに出しちゃった。

今回は短いです。


30 祭りの前に

 『戦争遊戯』の形式が発表された翌日。

 ヴェルフはバベルを訪れていた。今日までリリルカの新しい防具を作っていたが、『戦争遊戯』の内容が攻城戦だと聞いて主神であるヘファイストスの元へ向かっていた。公表された途端アポイントを取ったので彼女はちゃんとバベルの一室にいた。

 

「何の用?」

 

「お別れを告げに来ました」

 

 精悍な顔つきで、ヴェルフは告げる。

 ヴェルフの目的は魔剣を超える武器を作り上げること。それを成し遂げる場所としては鍛治系ファミリアでも最大手のヘファイストス・ファミリアはうってつけで、しかもここはヴェルフに居場所を与えてくれた在り処だ。

 

 そこを抜けると、敬愛する女神に伝えていた。

 ヘファイストスは何も問わず、ただ彼の顔付きを見て一つの槌を渡す。

 彼女の分身に近い鍛治道具だ。それを形見として渡していた。

 

「ヘスティアによろしく。……これは私のちょっとした意地悪よ。貴方をそうまで駆り立てるものは、なに?」

 

 

 

「友のため」

 

 

 

「あなたのことを、ここから応援しているわ。負けたら承知しないから」

 

「──お世話に、なりましたッ!」

 

 

 

 

 

 ヴェルフ・クロッゾ。ヘスティア・ファミリアに加入。

 

 

 同じ頃。タケミカヅチ・ファミリアでも似たようなことが起きていた。

 ヤマト・命が主神であるタケミカヅチに土下座を敢行していた。

 

「自分をベル殿達の元へ行かせてください!私はまだ、彼らに恩義を返していない!」

 

 中層で行なってしまった『怪物進呈』の件だ。ベル達は許したものの、下手したら殺してしまったかもしれない出来事だ。そのことがまだ、命の心の内に引っかかっていた。

 救命行動として探しに行ったことは当たり前のこと。

 

 命を助けてもらい、殺し掛けてしまったことへの返礼はできていないままだった。

 命と同じ立場の桜花と千草はダメだ。桜花はタケミカヅチ・ファミリアの団長。千草はレベル一。

 

 今回の『戦争遊戯』で力を貸すとなれば、レベル二である実力者が向かわなければ返礼にならない。だから命は桜花達に自分が行くと告げていた。

 彼らが相談して決めたことを、タケミカヅチは否定しない。寂しい想いはあったが、それだけで彼女を引き止めることは無粋だと胸の内に仕舞い込んだ。

 

「……一年か。長いな。ヘスティアの元で色々と学んで来なさい。戻って来た時、成長した姿を俺に見せてくれ」

 

「はい!」

 

 

 

 

 ヤマト・命。ヘスティア・ファミリアに加入。

 

 

「玉藻。本当にヘスティア・ファミリアだけで良いのか?一人くらい援軍を送っても良いんじゃ……」

 

「あのエルフの子?レベル四を助っ人なんかにしたら、無効にするとかイチャモンつけられかねないですよ?それに……彼女も含めたら過剰です」

 

「過剰って。何人か入る目星はあるんだろうけど、相手はゴライアスを倒した集団戦のプロだぞ?いくらベル君が異例のレベル三だからって……」

 

「むしろ人数いっぱいで良いハンデだと思いますよ?一騎打ちになっていたら、ただの虐殺になっていたと思いますから」

 

 ヘルメスが玉藻のところへ相談しに来ていたら、とんでもない返答をされた。

 この場にヘスティアはいない。いるのは護衛で残っている瑠姫だけだ。その瑠姫もウンウンと頷いている。

 

『ベルっち、めちゃくちゃ強くなってるのニャ。銀郎がそろそろ本気になっても良いって言ってるくらいに』

 

「ま、待て待て待て!銀郎って確か、レベル四最上位だろう?その彼に拮抗してるのか⁉︎」

 

「まだ敵いませんよ。でも、ステータスだけならただのレベル四くらい、捲れます」

「そんなにステータスの貯金が……?」

 

「ヘルメスはゼウスに報告の義務がありますよね?なら教えても良いですか。複数のステータスでSS。レベル三に上がる時はSSSも確認できました」

 

 聞いたことのないステータスの表記に、ヘルメスは頬の筋肉が引き攣ってしまった。そんなことすら前代未聞で、もしそのステータスになる前にレベルアップしていたら今頃どうなっていたのか。

 

「……レベル四上位に、相当するのかい?」

 

「はい。一度銀郎との一騎打ち、見てみますか?戦闘技術も追いついてきたようで、かなり良い勝負が見られますよ」

 

「そこまでは良い。『戦争遊戯』、どうなることやら……」

 

「フレイヤちゃんの態度が全てだと思うけど?」

 

「……あの方はベル君のことをそこまで把握していたのか。確かにそうなると、リューちゃんは過剰になるわけだ」

 

「そうそう。良い席で楽しめば良いんじゃないかな?」

 

 ヘルメスもヘスティアと同様に、胃の痛みを訴え始めてミアハのところで胃薬を購入。

 オラリオでは久しぶりの祭りということで活気付く中、『戦争遊戯』までの期間はあっという間に過ぎていった。

 

 

 『戦争遊戯』当日。

 既に二つのファミリアは攻城戦を行うシューリム古城跡地に着いていた。

 都市そのものは異様な熱気と興奮に包まれて、どこもかしこもお祭り騒ぎ。下界最大の神のお遊びとも名高い『戦争遊戯』が行われるのだ。冒険者達も住民も、今日ばかりは酒場などを除いて休んでいた。

 

 それは『星見の館』も同じ。酒場などで賭けが行われているので、どちらが勝つのか占ってもらおうとする輩もいた。それを明達は拒絶。それでは賭けが成り立たなくなってしまうからだ。

 明達もどっちが勝つか分かっているが、賭けには参加しない。冒険者主導の賭けに、未来が視える者が参加するわけにはいかないと自重していた。胴元達からも口うるさくどっちが勝つかを教えるのと、参加を禁止されていた。

 

 なので『星見の館』ではベル達の勇姿を見守るだけ。

 もうすぐで『戦争遊戯』が始まるという頃合いで、『星見の館』を訪れる者がいた。お店を閉めているのに客かと、もしや迷子を探して欲しいとかだろうかと明が目線を向けると入ってきたのはギルドの職員のように女性物のスーツを着た、長身の女性。

 明達と旧知の仲であり、かといって家族ではない人物。

 

『久しぶりじゃの。すまんが金を貸してくれんか?』

 

「ヴェルニカさん……。ウチは貸金業はやってないんだが?」

 

『固いこと言わんでくれ。そこら中で賭けをやってるんじゃろ?それに賭ける元金が必要なだけじゃ』

 

 ヴェルニカ。明達をして最強の存在を認めている半吸血鬼。

 亜種ベヒーモスを瞬殺した、人の心を持った異形。

 

「どっちが勝つか分かってるのか?」

 

『白兎の方。見ただけでわかる』

 

「……そんなにお金いるか?気ままな放浪旅なのに。食事だって俺達が血を提供してるんだから要らないだろ?」

 

『それでも行った先々で食事とか楽しみたいじゃろ?そろそろ貯蓄が尽きそうでの。儲け話を聞きつけてやってきたのじゃ』

 

「分かった。……一部ファミリアが人相書きを知ってるから気を付けて」

 

『ありがとう。これが終わったら返すからの』

 

 皮袋に入れた大金──五百万ヴァリスを持って酒場に向かうヴェルニカ。最近は占いを控えていたことと、『戦争遊戯』の結果がわかりきっていたので星見を使っていなかった明達。千里眼も使っていなかったので彼女がオラリオに来ていることに気が付かなかった。

 

 暴れる様子がなさそうだったのでこのまま放置。

 黒龍討伐を先延ばしにしてしまっている明達はヴェルニカに負い目があった。だからこの程度の援助はすぐにする。

 

『神々もわからんの。この程度の遊びが世界で最も楽しい遊びなどと。まあ、可能性の発芽を促す祭りで、しかもお金も稼げるから今回は文句もないんじゃけど』

 

 ヴェルニカは街を歩きながらそんなことを呟く。

 ふと、空を見上げて誰にも聞かれないような声を、空気に溶かすように紡いでいた。

 

『待っていてね。お父様方。もう直ぐだから……』

 

 『戦争遊戯』なんてどうでも良いというように、彼女はある事柄にだけ注視する。明達に久しぶりに会って思い出してしまったのだろう。

 暖かい日々を。どうしようもなくくだらない、楽しい日々を。

 ただただ殴り合って、笑い合った。三体の旅路を。

 それとはとても比べられない喧騒を奏でる酒場に入っていき、賭けの胴元に明から貰った皮袋を叩き付ける。

 

『白兎に五百万じゃ』

 

「ご、五百万!?マジかよ姉さん!」

 

『大マジじゃ。博打はやってこそ。賭ける金額が多いほど、当たった時の快感は底知れぬものじゃろう?』

 

「おおおおお!?他に賭ける奴はいねえか!まだまだ倍率はアポロン・ファミリアの方が上だが、金額は一気に増えたぞ!」

 

「お、俺はアポロン・ファミリアに賭けるぞ!四人で勝てるわけがねえ!」

 

「俺はヘスティア・ファミリアだ!あの姉さんはなんか雰囲気が違う!」

 

 ヴェルニカが大金を賭けたことでこの酒場は一気に賭けに走る者が増える。ヴェルニカの行動がとんだ道化に映ったのか、酒の注文が増えていた。

 ヴェルニカもカウンター席に腰を掛けて適当に飲み物を頼んで観戦することにする。結果は見えていても、ベルのことをちゃんと見るのは初めてだ。そういう意味では楽しみでもあるお遊び。

 明達の目に適った少年がヴェルニカにどう映るか。それを確認するための儀式だった。

 

 

 バベルの三十階。そこにヘスティアとアポロンはいた。ぶつかる両派閥の主神はここに待機しており、他の神々も暇であればここに来ている。しかし酒場や本拠で観戦する予定の神も多いようでそこまで数は多くなかった。

 それでも今か今かと、身を乗り出しそうな勢いで待つ神もいる。

 ウラノスの許可を得て。下界で行使が認められている『神の鏡』を用いてオラリオから遠く離れた場所での『戦争遊戯』を眺めることを可能にしていた。

 

「たった四人でどうするつもりだ?ヘスティア」

 

「ボクは皆を信じている。それだけさ」

 

 始まる前の、アポロンとヘスティアの鍔迫り合いを経て。

 四対百の、城潰しが始まる。

 

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