ダンジョンに陰陽師一派がいるのは間違っているだろうか   作:かぼちゃマスク

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31 破城炎雷

 『戦争遊戯』が始まる直前。

 配置に着いたベルは改めて集まってくれたヴェルフと命にお礼を言っていた。

 

「ヴェルフ、命さん。僕達のために『改宗』までしてくれてありがとう。……絶対に勝とう」

 

「ああ。それに硬いことは言いっこなしだ。オレは『改宗』に何も文句はないし、お前達の力になりたかったんだ」

 

「そうです、ベル殿。自分は一年限定ですが、皆様へ恩義を返したいからこそここにいるのです」

 

「オレ達は納得して、お前達のために何かしたい。それだけだ。……ベル、リリスケには言わなくていいのか?」

 

 ヴェルフのからかいに、ベルは躊躇もせずに頷く。

 

「うん。リリにはもう伝えたいことは伝えたから」

 

「まあ、今更ではありますよね。それにあのミノタウロスに比べれば、凄い危機ではないですし」

 

「いや、お前ら感覚狂いすぎだろ……。相手はゴライアスも倒した派閥だぞ?」

 

「ゴライアスなら僕達も倒したし」

 

「ええ。しかも推定強化種ですから。人は少ないですけど、大丈夫でしょう」

 

「腹括りすぎだろ……」

 

 息の合った自信っぷりにげんなりするヴェルフ。実際十八階層でのゴライアス討伐の立役者はベルなので間違っていないのだろうが、二人の余りの息の合い方にヴェルフは二人の関係性の発展を確認した。

 命も察したのだが、黙認するのではなく言葉に出して確認してしまう。

 

「やはりベル殿とリリルカ殿は恋仲なのですか?」

 

「こっ!?……あー、まあ。先日から、そのぉ……」

 

「やはりそうでしたか!だからリリルカ殿が『改宗』なさっても当たり前のように受け止めていたのですね」

 

「いや、こいつらのことだから本当にちょっと前のことだぞ……」

 

「ヴェルフは何でそうも僕達の関係を完璧に把握してるの!?」

 

「専属鍛治師舐めんな」

 

「関係なくない!?」

 

 命の確認に照れ臭そうに答えたベルだが、ヴェルフの弄りには顔を真っ赤にして慌てていた。ヴェルフが把握しているのはベルとリリルカが分かり易すぎるからだろう。

 一方リリルカはこうなると予想できていたのか、ベルのように慌てることなくお姉さんとして粛々と受け入れていた。

 フードの中で隠れている耳は上まで真っ赤になっていたが。

 

「最終確認と行こうぜ。まあ、オレ達がやることは至ってシンプルだ。大火力を持ってして一方的に城攻め。相手が疲労したところにベルが相手の大将を倒して終わりだ。周りの足止めはオレらに任せろ」

 

「ヴェルフは、良かったの?魔剣をこんな場所で使っちゃって……」

 

「いいんだよ。お前ら以上に大事なもんなんてねえ。オレのプライドでベルを守れるなら安いもんだ。つーわけでこれ、使ってくれ」

 

「お借りします。ヴェルフ殿」

 

「返すな。使い切れ。魔剣なんてそんなもんだ。いざとなったらそれを盾にしろよ」

 

 ヴェルフが魔剣を一振り、命に渡す。『クロッゾの魔剣』ともなればオラリオの冒険者の誰もが欲しがる逸品だ。それを使い捨てにして最悪盾にしろとまで言うのはヴェルフだけだろう。

 

「まずオレと命で城壁を削る。いくら攻城兵器と言われるオレの魔剣でもそこまでだ。だが、壁がなくなれば……」

 

「僕の魔法で、城を落とせる」

 

「そうだ。その後は雷で麻痺した連中を各個撃破。ベルをあのいけすかねえイケメンまで届ければそれで終わりだ。あっちはベルをズルでレベル三になったと思い込んでるからな。銀郎の旦那に一撃食らわせてやったお前の実力、見せつけてやれ」

 

「うんっ!」

 

 四人全員が拳を前に出す。コツンとぶつけてさあ決戦だと前を向いたところで、またしてもヴェルフがイジワルを言う。

 

「もうそろそろ『神の鏡』が使われてる頃だろ。アポロンって神に見せつけてやれよ」

 

「見せつけるって……?」

 

「恋人がいるので神々の勧誘は受け付けませんってな。口付けでも見せてやりゃいいんじゃねえの?」

 

「ブッ!?」

 

「ヴェルフ様!?これ、神々どころかオラリオ全体に流される『戦争遊戯』ですよ!?」

 

「おう。だから見せしめになるんじゃねえか。やっとけやっとけ」

 

「自分も見ておきたいです!」

 

「命さんまで!?」

 

 味方がいないことに狼狽するベル。流石に今回はリリルカも慌てる。

 ニヨニヨと二人に見守られて、ベルは意を決したかのようにリリルカの肩を掴んだ。

 

「べ、ベル?本気ですか……!?」

 

 ベルはリリルカに近付いて。

 フードを少し上げて。

 おでこに、軽く触れるだけのキスをした。

 

「えー。おでこかよ」

 

「こ、これ以上は無理だからっ!」

 

「むしろおでこの方が恥ずかしいんですが!?」

 

「そうなのですか?接吻とは難しいものですね」

 

 一応団長であるベルの身柄を賭けた一大決戦のはずなのに、数でも戦力でも負けているヘスティア・ファミリアは和気藹々としていた。

 ちなみにこの様子はもちろんオラリオ全体に流れていて、ベルとリリルカの関係や彼らの余裕っぷりから様々なところで負の感情が噴出していた。

 

 賭けでヘスティア・ファミリアに賭けている者やベル達を知っている者達はうんうんと頷いているだけだが。なおヘスティアは主神としての羞恥や周りの神々からの色んな視線でまた胃をさすっていた。ミアハはすぐ胃薬と水を差し出す。

 ベル達もようやく準備を整えた頃。

 

 オラリオでは鐘の音が。

 城跡では、銅鑼の音が開始の合図として鳴り響いた。

 

 

 一方、防衛側のアポロン・ファミリアは城の中の一番良い状態の部屋。玉座では大将であるヒュアキントスが苛立ちながら座っていた。一騎打ちでも勝ってみせたのに、わざわざ攻城戦という手間のかかるものにしたアポロンの神意がわからなかったからだ。

 そして更に苛立たせているのが、極東の土下座にも近い形で頭を下げているヒーラーのカサンドラの存在だった。

 

「もう一度言ってみろ、カサンドラ。お前は団長であり今回の『戦争遊戯』での大将であるこの私に、なんと言った?」

 

「だ、団長様。お願いです……!開始前に全団員を城外に出して、平原で打って出るべきです。そ、それが一番被害の出ない戦いになります……!」

 

「また予知夢とかいうわけのわからないお告げの話か!?攻城戦の防衛側で、圧倒的に人員の勝る我々がなぜ打って出なければならない!?貴様は、この城が、私の指揮する場所が堕とされると思っているのか!」

 

「お、堕ちるのではなく……雷に引き裂かれて、粉々になっちゃいます……!城なんて跡形も残りませんっ!」

 

「この晴天のどこに雷が発生すると言える!?しかも引き裂かれるなど、どんな馬鹿げた夢だ!」

 

 荒唐無稽なカサンドラの発言に、取り合おうとは思わないヒュアキントス。後から聞き入れておけば良かったと思っても後の祭り。

 開始直前にそんなことを言われても、既に人員を配置している。この城は中々に広く、百人だって防衛の配置に穴が開いてしまうほど巨大な城だ。今からでは全員を外に出すなんて時間的に不可能だ。

 

 もっともカサンドラはこの城に着いてからずっと進言していたのだが、誰にも取り合ってもらえずここまで来てしまった。

 そして無情にも、開始の銅鑼の音が場内にも響く。

 

「あ、ああ……」

 

「始まったな。軍師でもないお前の進言を聞き入れるつもりはない。いくら『星見』に弟子入りしていようが、お前の進言には現実味がなさすぎる。それにファミリアにとんと顔を出さなくなったお前の言葉を受け入れるはずがないだろう。お前がここにいるのは貴重な回復要員(ヒーラー)だからだ。誰かが傷付くまで待機していろ」

 

 ヒュアキントスの命令からすぐ。

 城まで届く爆炎と稲妻が城壁を破壊した音と地鳴りが響いた。

 

「何事だ!」

 

「ま、魔剣です!奴等、炎と雷の魔剣で城壁を破壊しました!」

 

「……雷?おい、カサンドラ。お前の言っていたことはこのことか。何が城を引き裂くだ!城壁しか破っていないだろうが!」

 

 連絡員の迅速な報告に、やはり嘘だったかとヒュアキントスはカサンドラを叱責する。確かに魔剣は脅威だが、使用制限があり何回か使えば壊れる。城壁を破壊するほどの火力を有する魔剣なんて高級品を零細ファミリアが持ち出してきたことは予想外だったが、それでも城を落とされるまでの脅威ではない。

 城が、大きすぎるがために。

 

「ち、違います……!あれじゃない!【禁忌を侵した者への鉄槌、それはまさしく神々の王が持ちし象徴。その憧れの、想いの結晶。降り注ぎは天罰たる雷霆に廃城は脆く引き裂かれる】……。この程度で終わるものじゃないんです!」

 

 カサンドラが予知夢の一節を説明しようとした時に、リン、リィンという大鐘楼もかくやという美しい音色が調べとしてヒュアキントスの耳に届く。

 それは廃城にいた者全員に。

 オラリオ出観戦していた者にも。

 果てには世界で何も知らなかった者達にまで、そのベルは届く。

 

 さて、ここでベルの【英雄達の船】というスキルだが。

 応援されている状態だとチャージ速度が上昇するという破格のスキルだ。

 今現在、この『戦争遊戯』はオラリオ中に放映されていて。

 

 賭けをしている者から純粋に応援している者まで多種多様。その数はかなりの大人数だと言える。

 そんな応援を受けたベルは、その熱を右手と背中に集めて、詠唱しきった魔力を廃城に向けて掲げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「【世界の果てに、刻憧の雷霆(グレェヴン・ケラウノス)】!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それはまさしく神の雷。

 一直線に向かった雷撃は残っていた城壁を飲み込んで。

 触れただけでヴェルフと命を止めようとしていた者達は痺れと痛みでその場に倒れ伏し。

 まともに電流に巻き込まれた者は火傷で身体が爛れて再起不能になり。

 

 巨大だった廃城もそれを超える雷の帯に呑み込まれてボロボロと基礎の部分から根こそぎ持っていかれ、中にいた者はまだ城がその攻撃を受け止めてくれたためにダメージは少なかったが、それでも雷を受けたことは事実。

 

 触れた者と同じかそれ以上の負傷で戦線を離脱する者多数。

 スキルにより強化された雷は、城跡だったことさえ忘れさせるような破壊跡を地面に残した。

 

「な、なんじゃありゃー!?あの兎、あそこまで馬鹿げた魔法使えたのかよ!?」

 

「ベル・クラネルほしー!あの魔法、マジでレベル三なのか!?」

 

「け、ケラウノス!?ベル・クラネルのは付与魔法だって言ってたじゃないか!ヘスティアの嘘吐き!!アババババ……!!」

 

「あ、こいつゼウスとヘラの夫婦喧嘩に巻き込まれた奴だ」

 

「SAN値チェック失敗乙」

 

 その結果に神々は大興奮。中には雷がトラウマを呼び起こしたのか、失神する神もいた。

 雷が消えて立ち上がる者は幾許か。カサンドラがすぐにダフネを瓦礫の山から掘り起こして回復魔法を使う。カサンドラは本来大将であるヒュアキントスを優先して治さなければいけないのだが、ファミリアで唯一貶さないでくれたダフネを優先していた。

 

 カサンドラは複数を治せるほど優秀なヒーラーではない。そのため、なんとか立ち上がれた者達もどこかしら負傷したままだった。

 城の外縁部にいた者で立ち上がった者はヴェルフと命が排除。

 中にいて立ち上がった者にはベルとリリルカが武器を持って突っ込んでいた。

 

「オイオイオイ!?あの小人族、めちゃくちゃ速くね!確かレベル一のサポーターだったって話だろ!?」

 

「ベル・クラネルに追従してるじゃねえか!っていうかあの包丁みたいな太刀何!?」

 

「あ、あれは『星見の館』で売ってる奴だ。見覚えある」

 

「あのイカれたデザイン好き。観賞用として買いに行こ」

 

「俺も俺も」

 

「武器よりあの子の情報だろ!?ヘスティア、どうなってるわけ!?」

 

「彼女はベル君と一緒に例のミノタウロスを倒した子だよ。今はレベル三だ」

 

「レベル三!?」

 

「あーあ、アポロンに賭けた奴ザマァ」

 

 神々はヘスティアから公開される情報でどちらに勝勢が傾いたか把握した。

 ギルドからは『戦争遊戯』にあたり『改宗』した人物の元々の所属は発表されていたが、この短期間でランクアップした者まで発表されていない。次の『神会』までにランクアップの報告をすれば一応規約違反ではない。

 

 最近ランクアップしたヴェルフもまだ公表されておらず、リリルカに至ってはヘスティアが敢えて秘匿した。情報が漏れて不利にならないように。

 だからヘスティア・ファミリアの戦力としてはレベル三が一人、レベル二が一人、レベル一が二人というのが知らされていた情報だ。だからこそ、人数比でも戦力比でもヘスティア・ファミリアに賭ける者は馬鹿だと笑われていた。

 

 しかし実態はレベル三が二人に、レベル二が二人。

 しかも攻城戦に向いているクロッゾの魔剣に、ベルの広域攻撃魔法まであったらむしろ攻城戦はもってこいの舞台だった。

 酒場にいてアポロンに賭けていた神々は賭券を早々にぶん投げた。最早紙切れに等しくなったと神だからこそ見切りをつけていた。

 

 それでもベルの勇姿を見届けようと、目線だけは鏡に向けたままだったが。

 一人、また一人と立ち上がったアポロン・ファミリアの構成員をベルとリリルカが薙ぎ倒していく。ステータスの差、もっと強い近接戦闘の鬼との差から二人は一気に本丸へと駆け寄る。

 

「させないよ!」

 

 回復してもらったダフネが細長い短剣でベルに斬りかかろうとしたが、それをリリルカがインターセプト。カサンドラも魔法の準備をしようとしていたが、リリルカが右腕につけていたボウガンで牽制して詠唱を中断させていた。

 

「ベル、早く!」

 

「お願い、リリ!」

 

 万全と呼べるのはこの二人だけ。後の立ち上がった者はベルによる蹴りや拳、瓦礫の投擲で昏倒させていた。

 ヒュアキントスもどうにか立ち上がって波状剣(フランベルジュ)を持つ。魔法を使おうと思っても、レベル三とは思えない速度で近寄るベルの姿を視界に捉えて両手で剣を握った。

 

「二ヶ月前まで冒険者でもなかった貴様が!(レベル三)に挑むだと!?どんな寝物語だ!」

 

 ありえないと逡巡しながらも、ヒュアキントスは剣を振るう。剣を交えるのは初めてのはずだったが、ベルはまるでヒュアキントスの剣など見慣れたかのように避けるか剣で弾いてくる。

 それもまたありえないと思考を鈍らせた。

 

 立ち上がった者達が必死に稼いだ時間のおかげでヒュアキントスの身体の痺れはなくなっていた。あるのは城から落とされた痛みだけだが、瓦礫の中で無事だった回復薬を飲んでその痛みもだいぶ引いている。

 万全、とは言えないがまともには戦えるような状態だった。

 

 そんな自分が、レベル三でも高いアビリティを所持する派閥の長が負けるはずがないとヒュアキントスは確信していた。

 なにせ相手は冒険者としてはルーキーもルーキー。レベル三になったのも最近のこと。ステータスでは確実に勝っているはずで、武術だって長いこと冒険者をやっている自分は負けるはずがないと思っていた。

 

 誤算はベルのレアスキルによる成長と、彼のスポンジのような技術を吸収するとある叔母を思わせる才能。そして手本になる吟と銀郎(師匠)の存在。

 これによって同格には全く引けを取らない近接技術を身に付けていた。

 

「何だ、誰だ貴様は!?」

 

「あなたに、勝つ男だ!」

 

 ヒュアキントスの持つ剣を弾く。純粋な技術と筋力の差によってベルがヒュアキントスを超えた証拠だった。

 ベルがトドメとして左腕を前に出す。だがヒュアキントスはそここそを狙った。トドメとして殺す覚悟がない相手の手加減。そこに隠し持っていた武器による逆襲。

 

 無知による状況把握の欠如。突然の痛み、硬直する思考。戦慣れしていないであろう子供。これらの要素からまだ逆転できると思い、ヒュアキントスは腰のポーチに左手を伸ばしてそこに収納されている短剣を取り出した。

 ベルの左手に刺す。ただ向けるだけで相手が向かってくるのだから大雑把に狙うだけで良かった。

 

 これで逆転だと、大将を倒してこの遊びも終わりだと。

 ここまでの道中は不甲斐ないこともあったが、終わりよければ全て良しとすることにした。

 その最後の慢心が、運命を分ける。

 

「読めていました。最後まで相手の切り札を警戒しておくことを、ミノタウロスから学んだ。僕達はそうやって彼を倒したんだから」

 

 ベルの伸ばしていたはずの左手が引いていく。短剣はただ突き出しただけなので、その左手に当たることはなかった。

 その引いた左手に、魔力が集まる。

 

「【ファイアボルト】!」

 

 それは彼を焼き尽くす断罪の炎。至近距離で喰らったヒュアキントスは立っていることすらままならず、瓦礫の中に崩れ落ちる。

 そしてベルはそんな彼に、首元へ剣を突き立てた。

 

「僕達の勝ちだ!」

 

 ベルの宣言を肯定するように、銅鑼が鳴り響く。

 たった四人による城塞潰し。人数比二十五倍の相手を喰らうジャイアント・キリング。

 

 本来三日間かけて行うはずだった、城崩し。それを超大規模火力に物を言わせた超短期決戦。

 戦闘時間僅か四十分。『戦争遊戯』における攻城戦で、最速レコードを叩き出していた。

 

「あーあぁ!見せつけてやったぞ!これがボクの自慢の派閥だ!見せつけちゃったからにはまた説明地獄か……。キュウ」

 

「ヘスティア!?そんなテンションの急落下を見せつけながら気絶するな!?」

 

「勝者として締まらないぞ、ヘスティア。彼女は私が看病をしよう。アポロンへの要求についてはベル達が帰ってきてからでよかろう?ヘルメス」

 

「ああ、それでいい。ヘスティアを頼むぜ、ミアハ」

 

 勝って気絶したヘスティアと、負けるとは思っておらず圧倒的な被害とワールドレコード付きで敗北して真っ白になっているアポロン。

 その様子を見てフレイヤは勝利の美酒(ワイン)を新たに開けてベルへ捧げていた。口に含んだ瞬間、恍惚の表情を浮かべて、それを見ていた神々が魅了されてヘスティアと同じように失神。

 

「フレイヤちゃん。そこで愉悦顔なんてしちゃうから魅了にかからない女神に勘違いされちゃうんだよ?」

 

「あら、タマモ。でも楽しいじゃない?」

 

「この死屍累々な光景はちょっと愉しくないかな……」

 

 玉藻の前は仕方なく簡易式神を用意して気絶した神々をバベルの下の救護院に送ることにした。

 勝者も敗者も見届け神もそのほとんどがダウン。

 本当に締まらない終わりだった。熱闘を繰り広げたベル達との温度差が酷い。

 

 


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