ダンジョンに陰陽師一派がいるのは間違っているだろうか   作:かぼちゃマスク

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38 儂の名は

 べル達が一進一退の攻防を繰り広げている中、フレイヤを先頭とした都市最強派閥が崩壊した歓楽街を進んでいた。ベル達の姿も見える位置で、フレイヤが片手を上げて進軍を止める。

 

「よろしいのですか?あの個体、我々が相対した精霊よりも強敵だと思われますが」

 

「いいのよ、オッタル。アレは彼が倒さないとダメ。まさか【剣姫】のように適格者がいたなんてね。いいえ、あのお爺さんがそこまで零落れていると読めなかった私のせいかしら?でもあの子のところに配置されているのは皮肉よね。私達のところだったら十把一絡げに打倒していたでしょうから」

 

 フレイヤは遠くからでも異形の正体を看破していた。彼女の魂を見る目は並外れている。特徴的な雷を纏っていることもそうだが、べルと魂が共鳴している様子から『穢れた精霊』の大元を察していた。

 たとえ醜い異形に変わり果てていようとも、その魂の気高さだけは天界の頃から一切翳っていない。

 

「そもそも、アレこそが今回あの子に与えた試練でしょう?危なくなったら介入でいいわ。オッタル、アレン。あなた達なら一人でアレに勝てる?」

 

 フレイヤは自派閥の二大戦力に確認を取る。吟との遭遇が早かったために一番ステータスが上なのは彼らだ。

 自分の実力を鑑みて、オッタルは頷き、アレンは首を横に振る。

 

「アレンは正直ね。今のあなたじゃ、まだ無理?」

 

「はい。ですがオッタルなら。今のこいつならば一人で討伐可能でしょう」

 

「適確な情報分析ありがとう。あなた達、主力だけを残して人命救助に移りなさい。この辺りでもっとファミリアの名声も上げておきましょうか」

 

 レベル五以上がいればいいと判断して、それ以外にはガネーシャ・ファミリアと一緒に救助活動に動いた。安い回復薬も無償で提供したことで救助された側は優しくて気高く美しい最強派閥の女神へ一層の敬愛を募らせた。

 敵対派閥を落とせて名声も手にして、住民からの信頼も得る。『穢れた精霊』退治で眷属が経験値を得て、ギルドの覚えも更に良くなる。この騒動でフレイヤが得たものは存外多かった。

 

 

 ベル達は誰も脱落者を出さなかったが、それでも『穢れた精霊』の討伐には程遠かった。傷は与えることができる。だが、倒せるような決定的な一撃には至らない。ロキ・ファミリアの一軍を一蹴した化け物というのは間違いなかった。

 

 そんな化け物と渡り合えているのは防御専門で破格の式神瑠姫の的確な防御と、アタッカーとしてベル・リリルカ・アスフィ・ファルガー・ゴンが相手に攻撃ばかりさせないようにダメージを与えて、範囲回復ができるヒーラーのカサンドラがいて、他の面々が牽制に徹していたからだ。

 

 戦闘が長引いてしまったからか、大火力を誇りそれなりにダメージを与えていたヴェルフの魔剣が全て砕け、そろそろマインドダウンを起こしかねない人物が増えてきたことか。精神力回復薬は生命線であるベルとカサンドラがほぼ使用しており、もう残りが心許ない。

 

『ヌアッハッハッハ!もう終わりかのう!』

 

「まだまだぁ!」

 

「団長、付与魔法はもうアタッカーだけに集中しな!ウチらの分も攻撃に回せ!もうウチらにできることは少ない!」

 

 ダフネが戦況をよく見てそう判断する。牽制も大事だが、動く人数が多くなるほどベルとカサンドラの負担が多くなる。回復薬とかだって数には限りがある。それよりはバフは一極集中した方がいいと進言する。

 全員の傷や負担が増えすぎた。これなら一箇所に纏まって瑠姫に守ってもらいながら支援する方が全員の負担が減る。

 

 ダフネのレベル三の近接による一撃だってあまり通じないのだ。それ以下のレベルの者が群がったところで無意味。だったら魔法や弓による援護射撃に徹底した方がマシだ。

 実のところ限界が近くなる前にルルネとタケミカヅチ・ファミリアの者がこの場を離脱して一つでも精神力回復薬を集めてくるようにアスフィとダフネが指示を出していた。アスフィだってヘルメスから事前に聞かされていたのでかなりの量を用意したはずだが、消費が激しすぎた。

 

 タケミカヅチ・ファミリアが近くにいたフレイヤ・ファミリアの者に死を覚悟しながら精神力回復薬を土下座して頼み込むと、あっさりと都合してくれた。人命救助が女神から通達されているので援軍には行けないがそれくらいならとかなりの数を渡してもらえた。

 

 それをルルネに渡して、ルルネだけが盗賊の技能を使って全速力で気付かれないように飛翔靴(タラリア)を使って戦場へ戻ろうとしていた。タケミカヅチ・ファミリアの者達はフレイヤ・ファミリアに図々しいことをしてしまったのでルルネに物を渡した後腰を抜かしていた。

 

 それらはフレイヤが見越して事前に眷属に言い含めて用意させた物だったので何も問題ないのだが。一応今回の件では同盟関係なので実はタケミカヅチ・ファミリアがそこまで恐縮する理由はない。

 精神力回復薬百本くらい、最上位ファミリアからすれば端金だからだ。

 そしてルルネが戦場に舞い戻る。

 

「待たせた、アスフィ!」

 

「よくやりました!【英雄候補(イノセント・ラビット)】は一時避難を!マインドを回復してください!」

 

「はい!」

 

『させるか!』

 

 最前線から離脱しようとしたベルを『穢れた精霊』が追うが、その間に入り込む影があった。ヴェルフによって投擲されたダフネだ。詠唱を行なっていたために動けないところを無理して割り込んだ形だ。

 

「【──咲け、月桂樹(せいじゅ)(かご)】!【ラウミュール】!」

 

「ダフネさん!?」

 

「グゥ!?」

 

 雷を纏った右ストレートを、ダフネは魔法で耐久を強化した腕をクロスさせて受け止める。残った全魔力を通した防御だったが、それでも激痛が走り吹っ飛ばされた。

 だが、稼いだ時間で更なる時間稼ぎの詠唱が終わる。

 

「【神武闘征】!【フツノミタマ】!」

 

『ヌオオオオオ!?』

 

 レベル二とは思えない超強力な命の重力魔法。最大規模で放ち、『穢れた精霊』を丸ごと飲み込んで地面にめり込ませた。その間にベル達が回復薬などを飲みコンディションを整える。

 ダフネがわざわざ割り込んだのも、『穢れた精霊』の注目を浴びて本命の重力魔法を気取られないようにするため。こういう判断、そして自身をも駒とする覚悟があるからこそダフネは指揮官を務められるのだ。

 

 重力魔法は範囲内全てが効果対象なのでこれを用いている時は他の攻撃ができない。まさしく状況を整えるのに相応しい時間稼ぎだった。

 無理矢理に複数本の精神力回復薬を飲んだベルは、すぐさま魔法を用いる。

 

「【雷霆を(ケラウノス)】!」

 

 前衛で頑張る人間へ、三重の付与魔法。初めて三重でアスフィ・ファルガー・ゴンはその力強さを実感でき、アスフィは一人でミノタウロスの強化種を討伐できた理由を実感していた。

 まもなく重力魔法が終わるという時に、ベルはリリルカの方を見て一言謝った。

 

「リリ、ごめん。【雷霆よ(ブロンテス)】!!!」

 

「なっ!?ベル、やめてください!また目を失いますよ!?」

 

 アミッドに禁止されていた付与魔法の四重掛け。以前は失明と酷い筋肉痛という後遺症に見舞われたために三重以上の重ね掛けは禁止されていた。だが、そうしなければ勝てないとベルは判断する。

 あの時以来の、ミノタウロス以来の強敵だと。なりふり構っていられないと腹を括っていた。

 

 四重で付与魔法を施したことでベルも『穢れた精霊』のように身体にスパークしたような雷撃を纏っていた。他の者も雷は纏っているのだが、ベルのものだけ質が違う。それを全員が見て感じ取っていた。

 その質の違いこそが、戦力の急上昇と禁止される両方の理由なのだと知る。

 

「せめてわたしにももう一つ掛けてください!短時間で終わらせます!」

 

「ううん、僕だけで良い。改めて使ってわかるよ。今の僕の魔法は、僕より相当上の実力者じゃないと耐えられない。リリじゃ動けなくなる」

 

「ベルだってわたしと同じレベル三でしょう!?ベルだって相当な無茶なはずです!」

 

『小娘。こいつとお前じゃ、ステータスの蓄積量が違うんだ。こいつの実力は既にレベル四上位。この中の誰よりもステータスは上だぞ?』

 

 ゴンの指摘にリリルカは黙る。ベルのステータスは異常だ。最大値とされるSを超えるSSやSSSというアビリティランク。そのランクも数値もかなり高い状態で毎回ランクアップしているので他の冒険者のランクアップとは一味違う能力値の積み重ねがあった。

 ゴンの言葉の正しさは、同じレベル四のアスフィだからこそ頷ける。既に自分の実力は追い抜かれていると。アスフィがレベル四としてはそこまで高ステータスではないということもあるが、その成長速度は有り得ないと叫びたくなるほど。

 

『だがな、小僧。オレは玉藻の前からお前達を預かってるんだ。無理にでも生き残れ。そうする義務がお前にはある』

 

「はい!」

 

「すみません!もう限界です!」

 

 これ以上の論議ができないくらいの時間が経っていたようで、命が叫ぶのと同時に魔法が解除された。『穢れた精霊』はこれ幸いと空へ飛び立つ。

 

『ほうほう。【雷霆よ(ブロンテス)】のう。儂とお主の雷、どちらが上か勝負!』

 

「望むところだ!」

 

 牽制組が多種多様な手段で『穢れた精霊』を地面に落とそうとする。主に鷲の翼の部分を狙って攻撃した。付与魔法のおかげで全員高く跳ぶことはできるが、空中戦ができるわけではない。

 

 飛翔靴(タラリア)をヘルメス・ファミリアから借り受けることも考えたが操作が難しく、ぶっつけ本番で使えるものでもないとしてアスフィが却下。そうなるとまともに戦える地上に引き摺り落とすことが重要だった。

 もう一撃重力魔法で引き落とすために命も精神力回復薬をガブ飲み。それ以外の面々も何かしらの手段を講じていた。

 

『喰らえ!狐火焔・五連!』

 

 ゴンが狐火を五連続で放つ陰陽術を使い、両翼を狙い撃ちにする。それは一つだけ避けられたが四つは直撃。バランスが崩れたところに上空を取ったアスフィが爆薬を下へ投げつける。

 

「最後の爆撃です!喰らいなさい!」

 

『効くかァ!』

 

 狐火は高火力だったために『穢れた精霊』も防ぐことができなかったが、爆薬の火力はこの雷神にとってはそうでもない。雷を雨のように放射することで爆発する前の瓶ごと破壊して夜空に数々の爆発が彩りを飾った。

 

 だが、それこそ牽制。団長の意思を読み取ったファルガーが下から飛翔靴(タラリア)によって駆け上がる。アスフィがわざわざ声を出して注意を引いたことで視線は上空を彷徨っていた。

 そこへファルガーが付与魔法で活性化した筋力を持ってして大剣を左翼に突き刺す。上空からもファルガーに合わせてアスフィが短剣を使って左翼へ斬り込んだ。

 

「「「はああああああ!!」」」

 

『グオオオオオ!?』

 

 二人の共同作業の結果、()()が落ちる。正確には三人目が右翼を一人で斬り落としていた。その人物はイシュタル・ファミリアの宮殿の壁を走り上がって目標であった邪魔者の翼を攻撃しただけ。

 突然の乱入者に、その人物が槍を使っているところを初めて見たことも合わさり、そして難なく着地して平然としていたこともあって、見ていたレベル二以下の者達は

レベル五の理不尽さを実感していた。

 その麗人は翼を槍で斬り落とすのと同時にかなりの高さから地面に着地したのにケロリとしていた。そして臨戦態勢のまま地面に落ちた怪物を見る。

 

「【象神の杖(アンクーシャ)】!?いや、援軍ありがたい!」

 

「【万能者(アンドロメダ)】、後で事情を話せ!ヘルメス・ファミリア(貴様ら)のことだ、全ての事情を知っているんだろう!」

 

『ほっほっほ。翼は落とされたが、別嬪が増えたの!プラマイゼロじゃ!肉体年齢はそこそこ行っていそうじゃが、エルフも似たようなものじゃの!関係なし!』

 

「……なんだこの色情魔は。いや、言葉を話した?人型の上部があるとはいえ、そんなモンスターはいくらでもいる。これがガネーシャの言っていた異端児(ゼノス)か?聞いていた特徴とはずいぶん違うが……

 

 至極真っ当なツッコミを返した後、下手に知識があるために困惑するガネーシャ・ファミリアの団長であるシャクティ。

 倒していいものかと思慮していると、玉藻の前の簡易式神が彼女の肩に止まる。

 

「シャクティちゃん、玉藻の前です。アレは異端児(ゼノス)ではないので思いっきりやっちゃってください」

 

「!……さすが未来を知る神は違いますね。わかりました。ありがとうございます」

 

 簡易式神やゴンのことなどでタマモノマエ・ファミリアのことはよく知っていたのでシャクティはそれだけのやり取りで全てを納得する。

 憂いもなく戦闘に全てを籠められた。

 レベル五も加わり、相手が地上に落ちたことで戦闘はやっと有利に進められた。相手の攻撃は瑠姫が方陣で防ぎ、数々の攻撃を仕掛ける。

 

 特にゴンとシャクティ、そして限界突破したベルの攻撃はよく効いた。地上に落ちても雷と振るわれる豪腕によって傷が増えていったが、それでもと立ち上がり、一つでも多くの傷を付けていく。

 全員が全員、己のやるべきことに集中する。小さなきっかけでもいいから隙を作って相手を倒すために。派閥の違いなんて通り抜けて手と手を取り合い、目の前の怪物を倒すことだけに奮起する。

 

 エルフだろうと他種族の相手の手を引っ張って相手の雷を一緒に避けて。小人族であってもできうる限りの力を出してその場に踏ん張り。特技を活かしてその人に必要なアイテムを配り。レベルも関係なく援護をしていく。

 その全員の輝きに、遠くで見ていたフレイヤが絶頂してオッタルに支えられるという事態も巻き起こった。

 

 汚い悲鳴を出しながらも、『穢れた精霊』はタフだった。かなりの攻撃を叩き込んだというのにまだ笑っている。元の空中庭園の美しさなど残っておらずめちゃくちゃに焼け焦げていて、臭いもキツイ中とにかく全員が駆けた。

 

『好い好い!人間の可能性というものを見た!矮小ながらも集団の力で巨悪に挑む!英雄譚とはこうあるべし!だからこそ、倒される悪として本気を出そう!』

 

 『穢れた精霊』がそう宣言すると、身に纏っていた雷を両手に集め出した。雷が段々と収束し、一本の太い槍が形成されていく。

 その槍は、長い間オラリオにいた者からすれば見覚えがありすぎる、日常を破壊する神の最強武具だった。

 特に街の警備を務めているガネーシャ・ファミリアとしてはあの雷に何度頭を悩ませたものか。

 

「【万能者(アンドロメダ)】、まさかアレは精霊か!?何故そんなものが暴走している!?あんな異形になってまで、彼はどうしたんだ!!」

 

「おそらく本来は力だけの再現・収束だったんです!ですが何故かアレには意識が宿り、本来の精霊に近くなっている!」

 

「再現率がどんなものであろうと!アレをオラリオに放たれたらここが全て廃墟になるぞ!?」

 

「「「え」」」

 

 シャクティのあまりの発言に、十五年前を知らない若い冒険者達が絶句する。

 いや、レベル七相応の怪物が本気を出すと言って行使してくる力なのだ。何故それをシャクティが知っているのかという疑問もあったがそういうものだろうと納得もできた。

 それを聞いて、ベルが一目散に飛び出す。

 

「止めます!」

 

 ベルが目前まで迫り剣を振り下ろすと、『穢れた精霊』も収束させた雷の槍で受け止める。そこからは雷による剣戟が巻き起こっていた。ベルもよく食らい付き、雷同士が共鳴したのか二人のみの空間となる雷のフィールドが形成されていた。

 

 雷でできた小さな闘技場。そう呼称すべきものがそこにできていて、その中で二人が決闘をしていた。

 外からリリルカ達が割って入ろうとしたが、あまりの高電圧に刃がまともに入ることはなかった。

 だからこそ、満を持して春姫が立ち上がる。

 

「【大きくなぁれ】【ウチデノコヅチ】」

 

 これこそイシュタルによって隠された禁忌の魔法。その正体は階位昇華(レベルブースト)。対象者のレベルを一つ上げるという破格の魔法だった。

 その効果もあって、一騎打ちだというのにベルは『穢れた精霊』とやりあえていた。

 ベルが速度を上げて斬る。『穢れた精霊』も応じるように槍を振るう。

 

 まさしく決闘さながらの血が舞う死闘なのだが、神の視点を持つゴンと瑠姫だけには別の様相が映っていた。

 まるでそれは、祖父が孫に戦い方を教える見取り稽古のようだと。

 実際ベルは武器をぶつけるごとに動きと技の精度が上がっていく。魔法の使い方もわかってきたのか速度は上がり続け、攻撃の斬れ味も増していった。雷による負担が減り、効率の良い魔力の通し方を学んでいるようだった。

 

 だが、『穢れた精霊』の殺意も本物。一瞬でも気を抜けば容易く身体を両断される猛撃が振るわれる。速くなっていったベルが辛うじて避けられる速度で放たれるそれもどんどん速度が上がっていった。

 二人のぶつかり合いがちゃんと見えていたのは、この場ではシャクティと瑠姫、ゴンだけ。レベル四以下の動体視力では何が起こっているのか見て取れなかった。

 

 その時間も、終わりが来る。

 最大限まで引き出せたと判断したのか、『穢れた精霊』は槍を投擲する姿勢を取った。それに呼応するようにベルは武器を持っていない左手を突き出す。

 止めるために速度を重視した一撃を、投擲される前に繰り出した。

 最後の魔力を全て絞り出した、決死の一撃。

 

 

 

 

 

「【ファイアボルト・ジュピター】!」

 

 

 

 

 

 

 光並みに速い炎雷の一撃が一直線に飛び。

 人間に当たる胸の部分に、それは突き刺さった。

 胸には大きな穴が空き、それが決定打となったのか『穢れた精霊』は上げた腕をダラリと下げて、不敵に笑う。

 

『ふ、ふふふ……。そうか、その名を持つ魔法にやられるか……。ああ、喝采しよう!小僧、名をなんという?』

 

「ベル・クラネル」

 

『よろしい!儂を討ち取った英雄の名を、永劫憶えていよう!我が名はユピテル!悪に堕ちた雷の化身なり!!』

 

 最後に両手を合わせて柏手一つ、オラリオ中に響き渡る大音量で鳴らしたそれは「神鳴り」と呼ばれる現象だった。

 それを最後に、『穢れた精霊』は小さな粒子に分解されて天に昇っていった。

 

 ベルはそれを見届けた後、倒れこむ。即座にカサンドラが回復魔法を使い、シャクティは持っていた万能薬を提供した。

 歓楽街の騒動は、これにて集結。

 彼らを祝福するように太陽が、顔を出し始めていた。

 

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