ダンジョンに陰陽師一派がいるのは間違っているだろうか 作:かぼちゃマスク
朝日が昇ってすぐ。
ベルはまたディアンケヒト・ファミリアに入院することになった。
万能薬を即座に用いたために大事には至らなかったが、筋肉痛で身動きが一歩も取れない状態では本拠にいても辛いだけ。本当に筋肉痛だけで済んでいるのかという確認も込みで入院と相成った。
歓楽街が崩壊したも同然で、ディアンケヒト・ファミリアは大繁忙。回復薬なども足りなくなりこういうときだけはミアハ・ファミリアに応援を頼んでいた。ディアンケヒトはすっごく嫌そうな顔を隠さなかったが、背に腹は変えられなかった。
ヘスティア達神々もギルドによる事情聴取を受けて忙しそうにしていた。ギルドはそれに加えて歓楽街で怪我人の捜索と瓦礫除去作業もあったのだから朝早くから、それどころか『穢れた精霊』が現れて緊急出勤してからずっと忙しそうに駆け回っていた。
フレイヤ・ファミリアが『穢れた精霊』を撃破後、ずっと救命活動を続けてくれているのはだいぶ有り難かった。全戦力を率いてきたロキ・ファミリアもそれに続き、ガネーシャ・ファミリアを始め有志のファミリアが撤去作業を手伝った。
そのおかげで復興は早そうだった。
神々の説明で全容を掴んだギルドは、今回の一件を持って神イシュタルの天界送還を決定。即日フレイヤによって送還は行われた。更に今回の計画を主導していたイシュタルの眷属達も禁固刑になった者も多い。
計画に関わっていなかった元眷属は神々の審問の後に他派閥への『改宗』を認められた。イシュタル・ファミリアの面々は散り散りになり、歓楽街は完全閉鎖。これには常連客と男神達が嘆きの涙の川を作り上げた。
計画を知っていても抗議して魅了を受けた者、計画の被害者なども『改宗』が認められたので神々に直談判をしてファミリアに所属した者もいる。
ヘスティア・ファミリアにも一人、そうして眷属になった者がいる。ヘスティアは彼女を守りきれる自信がなかったので一度は断ったが、次の候補のタケミカヅチ・ファミリアはヘスティアより格下。それに玉藻の前と本人の説得に屈して首を縦に振った。
「というわけで新しく眷属になったサンジョウノ・春姫君。彼女は珍しく『改宗』してもランクアップしなかったレベル一だ。まあ、ダンジョンにもあまり潜って戦闘をしなかったみたいだし、ステータスも魔力を除いたらそこまで高くない。サポーターか、家事担当希望とのことだ」
「ふ、不束者ですがよろしくお願いいたします!」
階位昇華というトンデモ魔法を持っている春姫だ。秘匿には十分気を付けなければいけないし、弱小ファミリアでは守りきれない。ベル達は少数精鋭になってきたのでまだなんとかなると踏んでいる。
あと。『改宗』した直後に春姫には魔法が発現したが、ランクアップに比べれば些細なことであると現実逃避した。
もちろん、かなり強い想いがないと魔法なんて発現しないし、やはりヘスティアの神格が影響しているのだがヘスティアはもう魔法なんかのことで騒ぎ立てる精神と胃をしていなかった。慣れって怖いネ。
「で、だ。今回もすっごく強いモンスターを倒しちゃったわけだし?春姫君を守れるようになるには皆の戦力アップが必須だし?ベル君も退院したから更新をしよっか……」
結局ベルは筋肉痛だけだった。もっとレベルが上がれば付与魔法の重ねがけも四回以上しても大丈夫だろうというアミッドの見解は通達されたが、それでも見た目の変化もあって四回以上はまだ禁止のままだ。
万能薬がなければどうなっていたわからず、その万能薬は五十万ヴァリス以上。いくら稼ぎが増えてきたからといってそうそう買える物ではない。
提供してくれたシャクティからは「オラリオを守ってくれた駄賃にしては安すぎるくらいだ」とのことで返礼を受け取ってもらえなかった。ガネーシャ・ファミリアとして返礼を一々受け取っていたら街の警邏などとてもではないが続けられないのだろう。
ヘスティアはとてもじゃないが、今回もとんでもなことが起きるんだろうなあと予測してしまい乗り気ではなかったが、一番の問題児であろうベルから順番に更新をしていく。
『穢れた精霊』はどうやらベル達が戦った個体が一番強かったようだと玉藻の前から聞いていたのでもう諦観しきっていた。
最初に刺激物を処理しておけば後が楽になるだろうと信じて、ベルの更新に挑む。
その結果。
────
ベル・クラネル
Lv.3(ランクアップ可能)
力 :C628→SSS1386
耐久:C647→SSS1489
器用:B757→SSS1348
敏捷:A888→SSSS1851
魔力:A859→SSSS1939
幸運 :F→D
耐異常:I→H
《魔法》
【
・付与魔法
・雷属性
・速攻魔法
・追加詠唱をすることで魔法変質
・詠唱文【天空より更に彼方へ、黄金の雨となり、聖獣たる御牛をも震わせ、最果ての
・【
・変質魔法
・追加詠唱により広域攻撃魔法へ変質
【ファイアボルト】
・速攻魔法
・追加短文することで魔法変質
・【ファイアボルト・ジュピター】
・速度上昇
・地上で使用時威力上昇
・【ファイアボルト・ウルス】
・威力上昇
・暗闇で使用時更に威力上昇
・【ファイアボルト・ウェスタ】
・回復魔法
・対象者が家族の場合、回復量増加
【】
《スキル》
【
・早熟する
・想いが続く限り効果永続
・想われれば想われるほど上昇率増加
【
・能動的行動に対するチャージ実行権
・鼓舞されるほどに威力上昇
・共闘時、チャージ速度上昇
【
・雷に対する絶対耐性(自身の魔法含む)
・雷に関する攻撃時、威力増加
・女性(特に家族関係に当たる者)への耐性低下
────
いつも通り【
「ら、ランクアップおめでとう……」
「やったー!レベル四だー!」
「畜生チクショウ!見たこともないアビリティ・ランクに発展アビリティの上昇に魔法の変質に新しいスキルだって!?どれだけてんこ盛りなんだい!っていうかユピテル!ユピテルってもう!?『穢れた精霊』の名前と特徴聞いてたから予想はできたけどさぁ!!新しい発展アビリティは【精癒】だけだからこれで良いね!?」
「はい!」
ヘスティアはヤケクソで叫ぶ。一応主神の部屋で二人っきりで更新をしているのだが、二人の大声は地上で待っている全員の耳に届いていた。
続いてリリルカの番だ。一応彼女が副団長なので、そういう順番を守ったわけだ。
その後の順番は加入順になっている。
ここで。
「ハァ!?」
────
リリルカ・アーデ
Lv.3(ランクアップ偉業達成済み)
力 :H143→E488
耐久:I89 →F376
器用:H113→E438
敏捷:I98 →E401
魔力:H102→E460
幸運:H
耐異常:I
《魔法》
【
・変身魔法
・変身像は詠唱時のイメージ依存。具体性欠如の際は
・模倣推奨
・模倣相手の能力擬似模倣可能。模倣精度は相手への理解度に準ずる。
・模倣相手の魔法を使用する場合、詠唱式を正しく把握する必要あり。
・詠唱式【貴方の
・解呪式【響く十二時のお告げ】
【】
《スキル》
【
・一定以上の装備過重時における補正。
・能力補正は重量に比例
【
・【英雄達の船】スキル保持者と共闘時、器用・魔力能力補正
・【英雄達の船】スキル保持者と共闘時、成長促進補正
・【英雄達の船】スキル保持者の想いの丈により補正に上昇効果
────
「またバグった!?なんだよ、『ランクアップ偉業達成済み』って!聞いたことない!!」
「あの、ヘスティア様。人のステータスを見てバグったと言われても困るのですが……」
「リリルカ君にも見せてあげようじゃないか!今写してやる!」
ヘスティアが渡した羊皮紙にリリルカも口をへの字にして。
続くヴェルフと命はかなりの経験値を積んだのかレベル三にランクアップ可能に。カサンドラとダフネもリリルカほどのステータス上昇は見られなかったが、『ランクアップ偉業達成済み』の文言はレベルの隣に書かれていた。
自分が刻んだ恩恵のはずなのに訳がわからなくていつものように頼れる先輩の神に泣きついた。
「タマモ、助けてくれぇ!?」
「ランクアップ可能な偉業は成したけど、アビリティが足りないってだけだよ?ダンジョンに二週間も潜ってどれかをDに上げればランクアップできるってこと」
「な、なんだそれ!?」
「それだけ今回のことが認められてるってこと。ほら、今回の相手ってゼウスの分け御霊みたいな存在だったでしょ?誰もが知る神話の頂点を下したとなれば、ね?」
「あんのバカ弟のせいじゃないか〜!?」
玉藻の前がヘスティアと二柱だけで話した後、玉藻の前はせっかく来たのだからとリリルカを呼び出す。
「リリルカちゃん。今から『暗黒期』の別側面を星見の力で見せるね。当時オラリオにいたリリルカちゃんからすれば目を背けたいことかもしれないけど、あなたには知っていて欲しいの」
「別側面……?」
「そう。とある義母の想い出」
・
歓楽街の一件から数日後。ようやくギルドの方も落ち着いてきたところで複数の大規模ファミリアからとある申請がいくつもやってきていた。
その悪魔の申請に、またギルド職員はそこら中を駆け回ることとなった。「何徹させる気だバカヤロー!?」という職員の悲鳴が聞こえた時には住民から慈愛と感謝の目で見られたという。
そして申請から数日後。それは一気に公表された。
フレイヤ・ファミリア
オッタル レベル九
アレン・フローメル レベル八
ヘグニ・ラグナール レベル七
ヘディン・セルランド レベル七
ガリバー兄弟 レベル六
ガネーシャ・ファミリア
シャクティ・ヴァルマ レベル六
タマモノマエ・ファミリア
明・ナニワ レベル六
吟 レベル六
金蘭 レベル六
怒涛のランクアップ祭り。これにベル、ヴェルフ、命、桜花も加わって最大規模の騒動となった。
ベルのレベル四最速もそうだが。
十五年以上現れなかった希望の星。
レベル九に到達したオッタルのことと、それに続く強者が産まれているフレイヤ・ファミリアに全ての関心が集まっていた。
・
とある片田舎で。
村の奥にあるレンガの家でとあるお爺さんと美しく若い金髪の女性が仲睦まじく穏やかに過ごしていた。お爺さんはどこからどう見ても良い年齢なのだが、金髪の女性に膝枕をされてとても喜んでいた。
お爺さんは朝に家の前の田んぼと畑を耕して、女性の作る朝ごはんを食べ、作業の続きをして昼ごはんを食べて。午後からは牛の世話をして、夜には女性と一緒に風呂に入り一緒に寝るという。
凄まじく健康的な、憧れのようなスローライフを送っていた。
この日も朝ごはんを食べ終わってイチャついてから仕事をしようとしていたところ、空からとある白い粒子が家に入ってきて、それがお爺さんの中に入っていく。
「ぬおっ!?」
「ジュピター様!?」
いきなりのことでお爺さんも女性も驚いてしまう。
だがその白い粒子は悪いものではなかったようで、お爺さんは見る見るうちに肉体が活性化していき、髪や髭、肌に艶が戻り、肉体も筋骨隆々。色々なものが元気になって見た目も四十代くらいの男性に若返っていた。
「おお!若い頃の身体に戻った!なるほど、切り離したジュピターの力が戻ってきたからか」
「あらあらまあまあ。若返りましたねえ」
「これでエウロぺをもっと可愛がれる!今日はこのまま床に就こうか!」
「ダメですよ、ジュピター様。畑の手入れを疎かにしてはすぐに土地も作物もダメになってしまいます。動物もヘソを曲げてしまいますよ?」
「エウロぺは厳しいの……」
「でも、夜なら。いくらでもお好きになさってくださいな?」
「ウヒョー!ちょっと仕事終わらせてくる!後アポロンでもとっちめればずっと夜じゃろ!」
お爺さん──いや、若返ったゼウスは元気溌剌に外へ出ていく。
愛人であるエウロぺには言わなかったが、ジュピターとしての記憶も一緒に戻ってきていて、孫であるベルの活躍を知って嬉しくなりはしゃいでしまったのだ。
なお。その日は夜になると二人の艶声が延々と聞こえ、朝になるまで止まらなかったという。