ダンジョンに陰陽師一派がいるのは間違っているだろうか 作:かぼちゃマスク
ウィーネはディックスの呪詛によって一心不乱に地上を目指していた。ベル達の幻影を見せられてそれを追いかけている形だ。『クノックス』と繋がっている地下水道に出て、そこと地上を隔てるレンガの天井を突き破り、彼女は地上へ進出した。
そこが迷うことで有名なダイダロス通りだとしても、住民はいる。
そしてそこにいた住民が、ドラゴンとしてのウィーネの姿を見て叫び出す。
「も、モンスターだ!?」
「【怪物祭】の時も似たようなことがなかったか!?」
「とにかく逃げろ!ギルドとか冒険者に連絡を!」
住民達は右往左往しながら逃げ始める。こういう事態も二回目となると慣れもあって動き出しは早くなっていた。
そして冒険者もすぐに集まる。勘に従いダイダロス通りにやってきたロキ・ファミリア。彼らは闇派閥の根城がダイダロス通りにあったので今回の騒ぎでもダイダロス通りで何か起きるのではないかと警戒していたのだ。
玉藻の前から全ての計画を聞いていたフレイヤ・ファミリアもそこにいたが、ロキ・ファミリアの動きを注視するだけ。ギリギリまで様子見に徹していた。
「フィン。討伐する、よ」
「ああ、任せる。事態の悪化は避けたい。あのヴィーヴルが全ての終わりじゃなさそうだからね」
建物の屋根の上からウィーネの様子を見ていたロキ・ファミリアの中で、アイズとフィンがそう話し合い、アイズが剣を抜く。
住民達もロキ・ファミリアの【剣姫】が事態の鎮圧に出てくれたのならすぐに終わるだろうと歓声を上げた。
そこで白髪の、将来有望な冒険者がヴィーヴルを庇うように両手を広げて出てこなければ。
「ベル……?」
「ベル・クラネル。どういうつもりだ?何でそのヴィーヴルを庇う?」
「約束したからだ。彼女を守るって」
アイズはモンスターを庇うベルのことがわからず疑問の声を投げかけ、フィンは冒険者たる者がそんな怪物趣味を思わせるような行動に出たことに失望した。その上で問いかければ、まさしく怪物趣味の人間が言いそうな言葉を吐くではないか。
アイズに任せようと思っていたフィンはその計画を辞める。指揮官たるフィンが軽率に動くわけにはいかなかったが、ベルに対して私怨もあったので彼自身が動くことにした。
背中の、小人族には不釣り合いな長槍を抜く。
「……君を信じた僕がバカだったようだ。君なら彼女を幸せにしてくれると思ったから身を引いたのに」
「動くな!彼女にこの宝石を戻せば、彼女の暴走は止まる!それまで動かないで欲しいだけなんです!」
「そんな無駄な行為をする理由がどこにある?君は今、オラリオを危険に貶めようとしている。冒険者としてあるまじき姿だ。そのヴィーヴルも討伐すれば終わる。総員、あのヴィーヴルを討伐せよ。ベル・クラネルは僕が倒す!」
フィンは指示をした途端、屋根の上から飛び降りた。ベルはウィーネの赤い宝石をポシェットに仕舞い、赤と黄色の双剣を抜く。
そしてレベル六としても最上位のフィンを相手にするために、彼は初っ端から本気を出した。
「【
付与魔法の四重掛けを、一気に行う。そしてフィンの突撃を剣を交叉することで防いでいた。そして視線を動かすとロキ・ファミリアの実力者達がウィーネに向かっていた。矢や魔法も迫っている。
ウィーネはまだ幻影に囚われているようで正しい景色が見えていない。自分が襲われているということも自覚していない。
だからこそ、ベルが動く。
フィンを蹴り飛ばし、音を置き去りにして。
矢を斬り裂き、魔法を弾いて。近付いてきたレベル五未満の冒険者達を一蹴していた。
冒険者同士で殺し合うつもりのないベルは、斬るのではなく叩く、蹴る、殴る程度で再起不能にしていた。レベル五にランクアップし、ステータス貯金もかなりあるベルだ。レベル四以下の冒険者はいくらロキ・ファミリアとはいえ敵うはずがなかった。
通常の状態ですらベルに敵わないのに、今や付与魔法でレベル的には七以上の実力があるベルだ。瞬間加速だけならレベル八のアレンに匹敵する速力を得ていた。
そんな速度に、いくら有望なロキ・ファミリアの実力者達でも追いつけないどころか、姿も見えず音も聞こえない。たった一瞬の内にレベル四が三人倒され、放った矢も魔法も全部弾き落とされていた。
それを見て、フィンが前線に出たことで現場指揮官を受け持っていたラウルが、即座に全員に指示を出す。
「アキ、下がれ!レベル五以下は彼と距離を置いて遠距離攻撃に徹底するっす!ベートさん、アイズさん!彼を止められるのはあなた方だけです!」
「ラウル、邪魔な奴らに何もさせるな!今のベルはヤバすぎる、何かされてもオレらの邪魔になるだけだ!」
ラウルの指示に付け足すベートは即座に駆け出した。フィンと並んで短剣による双剣を突き出す。それを避けたところにティオネがククリナイフで斬ろうとしたがそれも避けられる。
レベル六が三人で相手している間に猫人のレベル四アナキティとエルフのアリシアがウィーネへ攻撃を仕掛ける。アナキティが長剣で肉薄し、アリシアが魔法を使った。ベルは三人に囲まれているのだからまずは住民の確保のためにモンスターを倒してしまおうと自己判断した結果だった。
それを、最近ランクアップし戦場を俯瞰していたラウルだからこそ、マズイと理解できた。
「アキ、アリシア!止めるっす!」
その叫びは届かず。
昼間に走った紫電によってアナキティとアリシアの意識は刈り取られていた。三人の包囲網から高く跳ぶことで抜け出したベルは更に付与魔法を使うことで急落下。アナキティへ雷を纏った手刀で腹を打ち、魔法を使おうとしていたアリシアへ魔法が完成する前に一瞬で詰め寄り、同じように気絶させていた。
その余りの早業に。そしてラウル以外気付けなかったという事実に、レベル四以下の者達は戦慄した。
「ば、化け物……!」
「幹部以外攻撃も何もするな!彼は異常だ!レベル六以上じゃないと太刀打ちできないっす!リヴェリア様、周囲に被害が出ないように結界魔法を!」
「既に展開済みだ。ラウルの言う通りにしろ!お前達は他にモンスターが地下から現れないか、ここに一般人が来ないか監視していろ!」
リヴェリアがラウルの指示に追加をして、ベルの方を見る。
下層で強化種のミノタウロスの時からは信じられない進化だ。『戦争遊戯』でもその実力を見たが、その時ですらレベル四相応だった。
ロキ・ファミリアの最大戦力であるレベル六が三人でかかって抑えられない怪物に成り果てるなんて、誰も予想していなかっただろう。
「あの、リヴェリア様。ガレスさんは……」
「フィンが動いてしまった以上、このまま別命を続けてもらうしかないだろう。それにあの速度にはガレスも対応できない。アレは鈍足だからな」
ラウルの言葉を同期としてガレスを最大に理解しているからこそリヴェリアは却下した。
ベルがどういう意図なのかまだわかっていないために、別働隊のようなものを警戒しなければならない。ベルが本命ではないとすると、やはり戦力として一級のガレスをこちらに呼ぶことはできなかった。
ガレスは今、ロキのお守り兼何か別の動きがないかの確認のため少し離れた場所にいる。フィンの指示だ。
そしてリヴェリアは、酷なことを言おうとしていた。自分の娘のように育ててきたアイズへ目線を向ける。そのアイズは、早朝訓練を何度も一緒にしてきたベルだから頭をオーバーフローしていた。
有能な後輩だと思っていた。なのに彼はあろうことか人類の敵である、自分達の不倶戴天の敵であるモンスターを庇っている。モンスターは殺すしかないのに。
そんな思考を繰り返していて、彼女は動けていなかった。
「アイズ。ベル・クラネルを止めてくれ。彼に対抗するならば彼と同じように付与魔法が使えるお前が必要だ」
「止める……?」
「ああ、殺さなくていい。ヴィーヴルが希少とはいえ、彼がどうしてああも庇おうとしているのか。その真意が知りたい。……ベルは彼女と言ったな。それは誰のことだ?宝石を戻すと言ったのだからヴィーヴルのことだろう。つまりあのヴィーヴルが宝石を抜かれる前から知っており、我々と敵対してでもそうしたいと思える相手なのだろう。それにほら、ヴィーヴルを見ろ」
リヴェリアがヴィーヴルの動きを注視していたからだろう。ラウルはベルのことを警戒するあまりウィーネの方をあまり見ていなかった。
ウィーネは呪詛をかけたディックスが明によって気絶されたため、正気を取り戻していた。とはいえそれは呪詛が解けただけで、まだ竜種としての暴走状態は続いている。
だが、竜種として敏感な感覚が本能を刺激していた。自分を圧倒できる実力者が勢ぞろいしていることを。そしてその実力者からベルが守ってくれていることを。
余りの実力差と、ベルのことを知覚したことでそこから動いていなかった。家屋を破壊したり人を襲ったりしてもいない。
この場に駆け寄った冒険者も、ロキ・ファミリアの第二級冒険者がベルに瞬殺されたことでウィーネに手を出せていなかった。
「あのヴィーヴルも異常だ。できればガネーシャ・ファミリアにでも『
「団長に、伝えるっすか?」
「いや。あのバカ、頭に血が上って私程度が推察できることがわかっていない。私怨で動いているな。それはティオネもだが。あの子はどこで知ったんだか……。ベートもファミリアの女性がやられたとなれば止まらないだろう。あれはそういうオスだ」
ファミリアの年長者として、リヴェリアは解説しながら溜息をついた。
フィンから宿願を見付けたと聞き、しかも振られたと聞いていた。これを知っているのはリヴェリアとガレス、ロキだけのはずだったが相手が相手だ。オラリオで凄く話題になったこともあり、どこからかティオネの耳にも入ったのだろう。
そして恋する乙女を怒らせると怖いというか。フィンを悲しませたからベルをぶっ殺す。それくらいの思考でティオネは今暴れている。
「ティオナ。そういうわけでアイズを投入するから待機していてくれ。ラウルだけで全団員を守るのも無理だからな」
「りょうかーい。アルゴノゥトくん倒すのも気が引けるしね。アイズは大丈夫?」
「……うん。止めるだけなら。わたしも、話を聞きたい、から」
ティオナは自己判断で戦闘に加わるのを辞めていた。フィンからも命令はなかったし、彼と戦うのは違う気がしていたのだ。総員でヴィーヴルを倒せとは言われているが、レベル三相応のモンスターを倒すのにレベル六のティオナがやる意味もないだろう。
アイズは軽く、トンと聞こえるくらい軽い音で地上へ降りるのと同時に付与魔法を自身にかけた。風に導かれるように、ベルに肉薄する。
剣がぶつかり合う音がした。
「アイズさん……!」
「ベル。あのヴィーヴルは、何?」
「話せません!あの状態なら、尚更!」
ベルとアイズだけが剣閃を響かせる。フィンのステータスだけならロキ・ファミリア一だが、付与魔法が加わるとアイズの方が速いし強い。
黄色い閃光と緑の暴風雨が吹き荒れる。その超人的な速度に、他の戦っていた三人は手を出せなかった。速すぎるのだ。
アイズが特攻してしまったので、今更付与魔法を寄越せとは言えないフィン。それほど光速の戦いをしていれば何が集中を乱して致命的な隙になるかわからないからだ。
ベルは吟との模擬戦があったため、どうにかアイズの剣技に対応できていた。だがそれでも押されているのはベルの方。さっきレベル六の三人と戦っている時ですらギリギリで、連戦続きだ。万全な状態のアイズには一歩劣る。
だから、ベルは親友の力を借りる。『焔』に蓄積させていた魔法を解き放った。
「ッ!?」
アイズも剣から炎が飛んでくるとは思わなかったのだろう。魔剣でもないのだからそんなことを警戒もしていなかった。威力もレベル五のインチキステータスによって増加された【ファイアボルト】だ。流石のアイズも両手をクロスさせて防御せざるを得なかった。
その隙にベルは距離を取ろうとして、ウィーネが大人しいことに気付いた。他の者達も近付いていないのだから今こそが好機だった。
即座にウィーネの脇に跳び、頭に宝石を収める。
そうして彼女は、絶叫しながら元の姿に戻っていった。
『ヴオオオオオオ!』
その声と共に、青白い肌をした片翼の少女へと戻っていた。すっぽんぽんだったので着ていた玉藻の前謹製の黄金色のローブをかけてあげるベル。
そしてすぐにウィーネを庇うように立つ。まだロキ・ファミリアの面々が武器を構えているのだ。
「……それで?どうするつもりだ?ベル」
「彼女を、ダンジョンに戻します。彼女は闇派閥に操られて暴走していただけだ」
「それを示す証拠がどこにある?それにそんな真似をしなくても、それはモンスターだ。倒せば終わる。ダンジョンに戻す意味がない」
「意味はある。彼女が地上で生きていけないのなら、ダンジョンに戻すしかないでしょう!」
お互いの意見は平行線。そして武器も下ろさない。
あくまでウィーネを殺そうとするロキ・ファミリアの団長の考えに、団員達は異論を挟まない。彼らはフィンを信頼しているが故に、彼を盲信していると言ってもいい。それにモンスターは敵だ。そんな敵を庇うベルのことが信じられないと考え、フィンの考えを肯定する。
今、何の異常事態でこうして地上に待機していたのか。誰もがその理由を忘れているかのようにフィンに付き従っていた。リヴェリアはダンジョンの異変だと覚えているが、それを今口にしてもフィンは止まらないだろうと理解している。
今の彼はロキ・ファミリアの団長ではなく、フィン・ディムナという個人で動いているために。
折角見付けた宿願の少女と恋仲の少年。その少年が人類を裏切るようなことをしているのだ。
彼はスキルを使わずともブチギレて理性を失っていた。
理性を、心を持ったモンスターなんてものの存在を一片たりとも思いつかないために。
そしてフィンが動く。フィンが動けばティオネも動き、話ができないと思ったアイズはベルを気絶させるために動き出す。
一方、ベートは逆に背中を向けてリヴェリアの元へ戻ってきた。
「いいのか?ベート」
「ベルの意見なんてどうでもいい。醜い男女のいざこざに巻き込まれるのはゴメンだ。……あのヴィーヴルが、神ウラノスが言っているダンジョンの異変かもしれないんだろう?」
「お前は覚えていたか」
「それを忘れて戦ってるフィンがおかしいんだっての」
ベートは不貞腐れたように吐き捨てる。
今戦っている三人はアイズに付与魔法を貰ってベルを押していた。速さも同等になり、三人の攻撃がベルに通っていた。
ベルも格上との戦闘は何回かしているが、複数の格上との戦闘には慣れていない。手数はヴェルフの剣のお陰でどうにかなっていたが、それでも足りない。
徐々に裂傷が増えていき、反応も遅れだした。ベルは無茶をしているだけで、本来格上複数と戦えるほどは成長していない。
今まで彼は強敵に仲間の力を借りて勝ってきた。ミノタウロスもゴライアスも『穢れた精霊』も、全てにおいてそうだった。
だが今の彼は一人で。
付与魔法の四重掛けという無茶も祟って、フィンの一撃を肩に受けて吹き飛んだ。
近くの家屋に激突し、家屋が半壊する。それだけレベル六の膂力とは化け物じみているのだ。
「ガハッ!」
叩きつけられた衝撃でベルは喀血する。
だが、ここで立ち止まっていてはウィーネが殺される。そう思って身体の痛みを無視して立ち上がる。
まだ、フィンとティオネは武器を構えていた。ベルもウィーネを守るために武器を握り締める。
──そこへ、黒い天使が舞い降りた。
誰も知覚できず、空から軽く地上に降り立った、黒衣を纏った銀髪の天使。両目を閉じ、片手には細い片手剣を持ち。豊満なスタイルを魅せつける彼女は、閉じた目のままロキ・ファミリアを射抜く。
その姿に。
彼女を知るロキ・ファミリアは表情を青くさせ。
ベルは会ったことがないはずの女性に、どこか既視感を覚えていた。
そして、喉が思わずその言葉を呟いてしまう。
「お、
「ベル、休んでいなさい。ここは私が時間を稼ぐ」
ベルの言葉を否定せず、その女性は一歩前に出る。それだけで七年前を知る者達は一歩引いてしまった。
生きているはずがないのに。オラリオを地獄に叩き落とした闇派閥の首魁の切り札が、当時と同じ姿でそこに立っているはずがないのに。
剣を持っているだけで、無造作に立っているだけの女性。その女性が放つ威圧感に、彼らは声を震わせた。
「なぜ、お前が生きている!──【静寂】のアルフィア!!」
「まったく、道化だな。ロキ・ファミリアは。どうせ道化になるのなら
フィンへ煽るように言葉を重ねる彼女。
『大抗争』を経験した者はこの話し方、声。そして佇まいで確信した。
彼女は、本物だと。
「いや、アストレア・ファミリアでも実証は難しいか。だが、ロキ・ファミリアなら行き着かなければならない答えがあるだろう?貴様らは最近、
「
胸に魔石を埋め込んだ、闇派閥の幹部。普通の人間を超える身体能力を得た、見た目は人間と変わらない化け物。
怪人。そんな存在を、闇派閥と戦ってきたロキ・ファミリアは知っていた。そしてそれが目の前の彼女にも適応されるというのであれば。
「最悪の事態だ……!」
「最悪?私程度が現れた程度で大げさな。それは貴様らが
「──ああ。それを望むなら、かの神を呼び出そうか?」
アルフィアの声に呼応するように、男の声が嫌に響き渡る。
その男の声がしたのと同時に、野次馬に来ていた神々がその力の波動を感じて一つの事実を理解していた。その男が使おうとしている力は『
そして何故その男が神だと忘れていたのかと、神々はしきりに首を傾げていた。
地上に現れた蘆屋道満は、光の柱を天に届ける。そして術式を行使した。
「
陰陽術において至高の術式が発動した。
その天に届いた光は逆流するように地上へ光を収束させ、一つの形を作り出す。
その光が消えた時、黒い神がそこにいた。
「おかえり、神エレボス。久しぶりの地上は如何かな?」
「ああ、相変わらず最悪だな。大局が見えてないと思える。……それでも七年前よりはよっぽどマシだな。可能性の発芽がそこら中にある。だが……正義の剣は折れたか。それは残念だ。ん?まだ残ってるじゃないか。おーい、リオン!お前、まだ残ってたのかー!好きかな好きかな。正義の灯火は続いていると。それが確認できてオレは嬉しいぞ」
この騒ぎを聞いて、シルに言われてダイダロス通りに来ていたリュー・リオンだったが、咄嗟に隠れてしまった。彼女にとってその神はトラウマだ。
『大抗争』でどれだけの人間が彼に殺されたことか。そして何故か気に入られた。そんな闇派閥の首魁が、今ここに顕現していた。
「なんだ。照れ屋だな。折角の再会だというのに」
「エレボス。彼女がお前を嫌うのは当然だと思うが?この街に何をしたと思っている?」
「それを言うなよ。あー、道満?もう一度『大抗争』なんて起こさないからな。今回のオレはただこの劇場を楽しみにきた観客だぜ?」
愉快そうに笑う黒い神。
オラリオを闇に落とした二大巨悪が、揃い踏みとなって。
今度こそロキ・ファミリアは絶望の表情を浮かべた。
エレボスタグがやっと機能した。長かった。