因みに作中でのドラマ監督の千聖さんに対しての台詞は、私自身の『役者とは何か?』と言う問い掛けに対する『自分なりの考え』を『長過ぎない程度で分かり易く纏める事』を意識して書きました。
尚、今回のサブタイトルに関してですが、実は初期構想では『てっかめんのらぶそんぐ』と言う物になる予定だったのは、此処だけの話。
それと今回の話のイメージOP・EDは以下の曲です。
OP:Pastel*Palettes(楽曲は読者の皆様の御想像にお任せします)
ED:『LOVE CRAZY』上坂すみれ
「私って……汚物みたいな女なのかしら?」
羽沢珈琲店。
今其処には酷く重苦しい様子の千聖と彩と花音、それを見守るつぐみとイヴとつくしの姿があった。
「ち、千聖ちゃん……どうしたの?」
『目が完全に死んでいるわよ……』
「……もう嫌アアアアーー!!」
「千聖ちゃん!?」
「お、落ち着いて下さい!」
「ふええぇぇ!」
すると千聖は珍しく場を弁えずに叫び出し、彩達はどうにか千聖を落ち着かせ様とした。
「コホン……少し取り乱しちゃったわね……」
数分後、如何にか落ち着いた千聖は珈琲を一口飲んだ。
「あの……千聖先輩。 若しかしてさっきの『汚物みたいな女』って台詞と……関係があるんですか?」
「……その通りよ」
つぐみが先程の様子に至った原因に付いて問い掛けると、千聖は咳を切った様に語り出した。
『ウヘヘ……。 ねぇお姉ちゃん。 俺、この世界に来て偶々見掛けた時から、お姉ちゃんへのファンになっちまっんだ…。 だから俺とデートしない?』
『イヤアアアアア――!!』
事の発端は彩がテイルモンをパートナーにした日の少し前に起きた『ヌメモンストーカー事件』が切欠だった。
『千聖ちゃ~ん! オラのお嫁さんになってくれよ~!』
『キャアアアアアーー!』
『千聖ちゃ~ん! オイラの愛、受け取ってくれ~!』
『ヒィイイイイイイーー!』
ゲレモン、スカモン……それ以降千聖は何故か『汚物系デジモン』との遭遇が多くなってしまっているのが悩みの種となっていたのだった。
「それは……災難ですね……」
「もう『災難』なんてレベルじゃないわ……! これは私の……『沽券』的な問題よ!」
「『沽券』……ですか?」
「だって……」
そう一言切ると、千聖は彩の方を見て叫ぶ。
「最近彩ちゃんや日菜ちゃんに、私のポテンシャルが奪われている感があるんだもん!」
「ええっ!?」
『ポテンシャル?』
千聖のカミングアウトに彩は驚きの声を上げ、テイルモンはポカンとした様子を見せる。
「だって……彩ちゃんと日菜ちゃんは最近その……可愛さと格好良さが目立って来てる様に見えるのよ……」
「そ、そんな事無いよ! 私何て今でも噛んじゃうし、歌詞も間違える事もあるから、千聖ちゃんにはまだまだ遠く及ばないよ!」
「……彩ちゃん。 貴女の謙虚なその姿勢は確かに良い所よ……。 でもね、今の私にとってはそれが……ちょっと苦しいの……」
「え……?」
千聖の言葉に彩は言葉を止めてしまう。
「……御免なさい。 先に私の分だけ会計を御願いするわ」
そう言って千聖は自分の分の料金だけを払うと、そそくさと店を出て行った。
「千聖ちゃん!」
彩の叫び声が虚しく店内に響いた。
☆☆
「はぁ~。 ダメね。 これから彩ちゃんとどんな顔で向き合えばいいのかしら?」
彩達と別れた後、気持ちが落ち着いた千聖の脳裏に、数日前の一件が思い出される。
『白鷺ぃ……テメェ、女優を舐めてんのか?』
数日前、新作ドラマの出演者の1人に選ばれた千聖はそのドラマの撮影中に監督から不意に問い詰められていた。
『そんな……! 私は全力で取り組んでいます!』
『あぁ……。 確かにテメェは全力で取り組んでいるよ。 清楚な面の演技の方(・・・・・・・・・)はな!』
『……如何言う意味ですか?』
『白鷺……今回のテメェの役はどんな感じのキャラだ?』
『……表向きは清楚な感じだけど、内面がド変態で暴走するとそっちの面が強く現れる少女です』
『……ちゃんと設定を覚えていたのと噛まずに言えたのは誉めてやろう。 だがな、テメェは本気の変態の演技がまるで出来ちゃあいねぇんだよ!!』
『なっ……!』
『白鷺、これはあくまで俺なりの考え方だが、『役者』って言うのはな、どんな役に対しても自身の全力を持って演じる物って思うんだよ。 例えそれが、見ている連中から『頭可笑しい』だの『下品』だの『気持ち悪い』だの思われている役だとしてもな』
『……』
『白鷺。 お前が以前インタビューで語ってた『尊敬する女優』と俺は、一緒の撮影で仕事した事があるが、お前の知る彼女は清楚なキャラばっかしか演じてこなかったか? 違うだろ。 時には悪役や下品な感じ、変態役もやっていたが、それでも全力で演技に取り組んでいたぞ』
千聖は監督の言葉に何も言い返せず、ただ黙っている。
『はっきり言って、今のお前の変態的な演技からは、心まで『変態一色』に染まっているのが演技から感じられねぇ。 綺麗過ぎて逆に周囲がドン引きする様な物が感じられねぇんだよ』
監督の言葉が千聖の心に、まるで矢の如く刺さりまくる。
『テメェの綺麗な感じの演技は確かに凄い。 だが、時には箱の中の物を乱暴に扱う様な演技が周りに良い影響を与える事もあるんだぞ。 取り敢えず今日はもう帰れ。 これ以上撮影は時間の無駄だ』
そう言って監督は立ち上がって、その場を後にしたのだった。
☆☆
(『変態一色』って……どう表現すれば良いのよ)
千聖は悶々と悩み続けていた。
白鷺千聖と言う少女にとって、『黄色』と言う色は自身のイメージカラーでもある一方、コンプレックスの1つであった。
その切欠は子役時代の頃に遡る。
当時まだ小学生だった千聖は、戦隊物の特撮作品のサポート役の少女キャラの役で出演していた。
「そっかぁ……千聖ちゃんも『黄色』何だぁ……。 じゃあ、同じイエロー同士頑張ろうな!」
共演者のイエロー役の役者からそう声を掛けられ、まだ幼く、芸能界の事も詳しく無かった千聖はただ純粋に撮影を頑張ろうとしていた。
しかし、いざ撮影が始まった途端、彼女のイエロー役の心象は180º変わってしまった。
イエロー役の彼は普段は好青年だったのが、いざ撮影が始まった途端、まるで設定した役のキャラが現実世界に飛び出したかの如く、見事なまでの変態的な演技を披露して見せたのだ。
同時の千聖はまだ、子役の経験が演技に慣れていたとは言え、まだ幼かった千聖は彼の変態的な演技に『凄い』よりも寧ろ『怖さ』の方が勝ってしまい、撮影中にも関わらず泣き出してしまったのである。
更に拍車を掛けたのが、イエロー役の設定である。
作中での彼はコミカルな性格であり、同時にメンバーの中でコメディリリーフ的な立ち位置でもあった為、大概作中で酷い目に遭うなどの損な役回りをさせられていた。
その後この彼は、この作品が切欠でブレイクし始め、今では『若手名バイブレイヤー』と認知される程、数多くの作品に出演する俳優となったのだが、それでも千聖にとって彼の変態的な演技と作中の立ち位置が、『自分も『変態』の仲間』・『黄色は不憫』と言う印象を抱かせる一種のトラウマとなっており、それが彼女の『黄色』に対してのコンプレックスの要因でもあった。
その為千聖は、なるべく周りが自分にそんな変な印象を持たない様に徹底的なまでに努力をしたのである。
千聖自身、本音を言えば『『可愛さ』と『クール』な感じを合わせ持った女の子』をずっと維持したかった。
けどそれが綻びを見せる切欠が起きた。
それが彩と日菜のパートナーであるテイルモンとコロナモン達の存在であった。
そもそも千聖にとって2人の印象は、『同じパスパレの仲間』と言う物であった。
しかしパートナーデジモンと出会った&再開してからの彩と日菜の2人の姿が、千聖にとっては『隔たり』と『眩しさ』を感じる物に見えていた。
テイルモンやコロナモンと一緒にいる時の2人は、それ以前からパスパレにいた時には全く感じたり見た事が無かった雰囲気や表情を見せる事が多くなった。
『ねぇ! 最近パスパレの彩ちゃんと日菜ちゃん、何だか最近良い意味で変わった感じしない?』
『確かにそうだよね。 最初の頃は2人共ベクトルは違うけど、『コミカル』な印象があったけど、最近はそれぞれ『コミカルさ』に加えて『可愛さ』と『カッコ良さ』にも磨きが掛かった感じがあるよね~!』
『俺さ、最近パスパレの日菜ちゃんにすげぇハマってんだよ』
『意外~。 お前この前までアイドルとかそこまで興味無さそうな感じだったけど?』
『確かにそう言う部分は今でも多少はあるけど、でも日菜ちゃんに関しては『別格』って言うか……時たま見せる『カッコ良さ』が良いって思わせるんだよな~』
この前の休日、偶々馴染みのショッピングモールに行った先で聞いた他の客の会話は、千聖の心に突き刺さる所が、その中には千聖が到底許容出来ない物があった。
『なぁ、最近思ったけどさ、『面白さ満載』の千聖ちゃんって……有りじゃないか?』
『何だよ急に。 お前あんなに千聖ちゃんの事推していたのに、浮気か?』
『違えよ! いや……何と言うか、千聖ちゃんって『クールな感じ』をメインに押し出しているじゃん? それも良いんだけど……偶には変わった感じも見たいなぁって思ってさ……』
『例えば?』
『ギャグ漫画並みにコミカルな千聖ちゃんとか! 普段のイメージのギャップも相まって、個人的に有りかなって思うんだよ』
(私は……『笑い物』になる為に、この世界に入ったんじゃ無い!)
勿論、彼がそんな気持ちで発言したのでは無いのは分かる。
だが千聖にとっては、今まで築いてきた『白鷺千聖』のイメージを根本的な面から否定された感じがあって、堪らない程嫌だった。
そして千聖は、逃げる様に早足でその場を去って行った。
☆☆
「あれ~、千聖ちゃん?」
突然声を掛けられたので振り向くと、其処には日菜とコロナモンの姿があった。
「日菜ちゃん……コロナモン……」
「千聖こそ如何したんだよ、そんな表情して?」
「……そう言う2人は何をしているの?」
「ん~とね~……今日は御姉ちゃんとルナモンがRoseliaの練習でいないから、何か楽しい事探してコロナモンとお散歩!」
「んでその最中に、千聖と出会ったって訳だ!」
「そうなのね……」
「……千聖ちゃん、何か元気無いね」
「そう……かしら?」
「あぁ。 何か何時も違って雰囲気が淀……よど……?」
「『淀んでいる』?」
「そう! そんな感じの顔しているぜ」
「あなた達にもそう見えるのね……」
そんな千聖の様子を見た日菜は『ん~っ』と何か考え込み、そして何かを思い付いた様にキラキラした様子を見せた。
「ねぇ! 千聖ちゃんって、この後何にも無いよね?」
「え……えぇ。 そうだけど……」
「じゃあ其処の広場でお話しよ!」
「えぇ…?」
「そうだな! 俺もパスパレ関連でしか千聖と話をした事が無かったから、もっと話をしたいぜ!」
「と言う訳で千聖ちゃん! レッツゴー!」
「ちょ……ちょっと日菜ちゃん!?」
千聖の言葉を無視して日菜は彼女の手を掴んで、コロナモンと共に駆け出した。
☆☆
「はい千聖ちゃん!」
「あ、有り難う……」
広場に付いた日菜は近くの自販機で買った紅茶の入った小さいペットボトルを千聖に渡し、千聖は渡されたボトルのキャップを開けて一口飲む。
「落ち着いたか?」
「えぇ……一応は……」
「良い天気だよね~。 御姉ちゃんもお外で一緒に『るんっ♪』ってすれば良いのに……」
千聖は日菜の『ある物』の事を見て、不意に問い掛ける。
「日菜ちゃん。 日菜ちゃんのデジヴァイスって……」
「あぁ、これね」
そう言って日菜はポケットから、自身の持つライトイエローの縁取りのディーアークを取り出した。
「何と言うか……。 意外な配色ね」
日菜のディーアークを見た千聖は、そう言葉を零す。
千聖の中の日菜のイメージは主に、『パスパレのブルー担当』と『姉の紗夜が好きな女の子』と言うのが大きかった。
その為、不謹慎ながらディーアークの色と氷川日菜のイメージカラーが全く噛み合って無い様な印象を抱いてしまっていた。
「えぇ、そう?」
「だって日菜ちゃんって、青系のイメージがあるから……」
「私が青系かぁ……」
「確かに出会った頃の日菜何か、デジヴァイスの色の事でワガママや文句言ってた事も多少あったからなぁ……」
千聖の発言にコロナモンも思い当たる節があったか、過去を振り返る発言をする。
「まぁ、そう言う事も少しはあったけど、今は私は『黄色』って大好きだよ!」
日菜の表情からはとても嘘偽りは無く、本音で言っていると千聖は感じられた。
「……日菜ちゃん。 『黄色』って、不憫とか思った事は無いの?」
「何で?」
「ほら……『黄色』って、グループとかだと、結構『コメディリリーフ』って言うか……『そんな役回り』ばっかさせられるとか、感じない?」
千聖の問いに日菜は『ん~っ』と考えた後、はっきり答えた。
「アタシはそう考えた事は無いかな~。 寧ろ逆に『凄い』と思うよ」
「如何してそう思うの?」
「だって『黄色』ってさ、『縛りが無くて、何でも自由になれる』んだもん」
「『何でもなれる』……?」
そう言って、日菜は空にある太陽を指差す。
「千聖ちゃん。 太陽って何色だと思う?」
「……バカにしているの? 『赤』に決まっているじゃない」
「確かに千聖ちゃんの答えも間違ってはいないけど……じゃあ100人の人に同じ事を聞いたら、100人全員が『赤』って答えると思う?」
「……それは……」
千聖は言葉を濁す。
『太陽は赤い』と言うのは、飽くまで千聖自身の考えであって、100%の正解では無い。
若しかしたら、同じ様に『赤』と答える人もいれば、『金』や『黄色』、はたまた全く違う考え方をする人だっているかもしれないのだ。
「それにね……」
「おっ」
日菜はコロナモンを抱き上げて、頭を撫でる。
「アタシの名前の漢字って、お日様の『日』が入っているでしょ? それにコロナモンだって『太陽』だし、そう意味では、『黄色』って『アタシ達2人のパーソナルカラー』って思うんだ!」
「『日菜ちゃんとコロナモンのパーソナルカラー』……」
「後黄色には、『サンライトイエロー(山吹色)』と『ムーンライトイエロー』って言うのがあってね、前者が『私とコロナモン』なら、後者は『御姉ちゃんとルナモン』を表しているって事じゃん! そう考えたら、『黄色』って『私と御姉ちゃんのパーソナルカラー』って感じがあって、好きになったんだ!』
日菜の無邪気な様子から語られる言葉は、千聖にとって考えさせられる物に思えた。
「私ね、千聖ちゃんの『黄色』って千聖ちゃんらしさのある色に思うの」
「『私らしい』?」
「千聖ちゃんって女優さんでしょ? 『黄色』だって、千聖ちゃんが言った『コメディリリーフ』もあれば、『可愛い』や『力強い』感じもあって、何だか役者さんみたいだよね? 千聖ちゃんは如何して『この世界』に入ろうと思ったの?」
千聖の脳裏に幼い頃の事が過る。
小さい頃、偶々見たテレビに映っていた女優の演技。
彼女の演技を見た千聖は衝撃を受けると同時に思った。
『自分もこの人みたいになりたい』
その後は、両親に頼んで劇団に入り子役としてデビューをした。
初めて演じた役は、ほんの短い台詞しか無い脇役だったけど、それでも千聖にとっては『憧れの女優さんと同じ道を歩いている』と言う気持ちが強くて、幼なじみである薫にも自慢する程嬉しかった。
でも成長するに連れ、幼少期のトラウマに加え、芸能界の黒い一面を知ってしまい、何時しかそんな『演じる事の楽しさ』を忘れ、『あんな下劣なイメージ何て付けられたく無い』と言う思いで演技をしていた。
冷静に考えれば、普通そう考えるなら、その時点で『芸能界を引退する』と言う方法があった筈。
でもそれをしなかったのは、千聖自身の心の中に『女優への愛着』が残っていたからだと、日菜とコロナモンとの会話で気付かされた。
同時に千聖はあの監督が言った言葉の意味を悟っていた。
(……監督は私に、『演じる役を全力で楽しめ』って言いたかったのね)
『清楚な面のみで、『変態一色』な感じが全然無い』と言う言い方も、監督自身が千聖が役に全く成りききれていない事を見抜いた上での発言だったのだと、気付かされる。
「有り難う日菜ちゃん、コロナモン」
「へっ?」
「何だよ急に?」
「ううん。 何でも無いわ」
千聖は微笑みを浮かべるだけだった。
その時、突然日菜達の周りに火花と煙が散る。
「キャア!」
「千聖ちゃん、大丈夫!?」
「日菜! あれを!」
コロナモンの視線の先を見ると、其処には雀蜂を機械化させた様な見た目の異形の姿があった。
「ジジジジジ……」
「ヒイイっ!? 蜂はイヤアアアアーー!!」
「落ち着いて千聖ちゃん! あれデジモンだから!」
「デジモンでも蜂は嫌なのよーー!!」
千聖は相手の見た目の怖さにパニックになり、日菜が慌てて諫める。
「ジジジジ!」
すると雀蜂の異形は、日菜と千聖の方に下半身に備わった砲身を向ける。
そこには予めエネルギーを溜めていたのか、先の方が光っていた。
「ヤベぇ! コロナフレイム!」
コロナモンは咄嗟に体全体に炎を纏い、そのまま相手の方へジャンプをし、それと同時に相手の方も下半身に備わった砲身から協力なレーザー光線を放ち、両者が激しく衝突した。
「ウオオオオーー!! 『太陽の貴公子』を舐めんなああああーー!!」
やがて拮抗の末に、両者の間で爆発と爆炎が起こる。
「コロナモン!」
それと同時にコロナモンが空中から落ち、日菜と千聖は慌てて駆け寄る。
「大丈夫コロナモン!?」
「な……何とか……な。 あのまま……突っ込んでいたら……正直ヤバかったぜ……」
幸いダメージを受けてはいたが、身に纏った炎がレーザーの勢いを相殺していた為、致命傷を避けたコロナモンは息も絶え絶えになりながらも、無事な反応を見せ、日菜達は安堵する。
「ジジジジ……!」
だが直ぐに相手の方を振り向くと、其処には余裕な様で此方を見ている雀蜂の異形の姿があった。
(さて……如何しよっかな? この様子じゃ、コロナモンを進化させるのはリスクが高いし…… せめて千聖ちゃんだけでも安全な所へ逃がさないと……!)
日菜は脳内で考える。
だが相手は此方を待たずに、突撃して来て、日菜達は咄嗟に身構える。
「ブシドーーーー!!」
その時、雀蜂の異形の方に目掛けて何かが飛んできた。
「ネコパンチ!」
そして飛んできた何かは雀蜂の異形の顔を思い切り殴り飛ばし、相手は横へ吹っ飛ばされた。
「今の……「千聖ちゃ~ん!! 日菜ちゃ~ん!!」
声の方を振り向くと、其処には彩とイヴ、花音の3人が此方に駆け寄って来た。
「彩ちゃん! イヴちゃん!」
「ま……間に合った……」
「怪我は有りませんか?」
「何とかね……」
「コロナモンは大丈夫?」
「当ったり前だ! ……アタッ!」
「もう……無理しちゃだめじゃない」
コロナモンの方も先程来た黒い影の正体であるテイルモンに呆れた様子で接しられる。
「3人共、如何して此処へ?」
「あの後、私と花音ちゃんも心配になって、つぐみちゃんに頼まれて来たイヴちゃんと3人一緒に千聖ちゃんを探していたの……」
「そしたら凄い音が聞こえたから此処まで来たら、さっきの大きな雀蜂が千聖ちゃん達の方へ突進して来るのが見えたんだ……」
そして状況を察したテイルモンが3人の中で身体能力が高いイヴに自身を相手の方へ思い切り投げる様に指示をして、了解したイヴが砲丸投げの要領でテイルモンを投げ付け、後はテイルモンが相手に強烈な一撃をお見舞いして今に至る訳であった。
「千聖ちゃん……あのね「御免なさい!」……え?」
千聖の突然の謝罪に彩は困惑の様子を見せた。
「私ね、自己中な思いから、彩ちゃんや日菜ちゃんの『成長する姿』に……少し『嫉妬』してた。 ……そして同時に怖かったの。 周りの彩ちゃんや日菜の評価と自身を比べている内に、『自分のイメージが変わってしまう』って思いが強くなって……それで……」
その時、不意に千聖は温もりを感じる。
視線を向けると、彩が自分を抱き締めている事に気付いた。
「御免ね。 私……千聖ちゃんがそんなに悩んでいるのに、全然知らなかった……」
「彩ちゃん……」
「でもこれだけは信じて。 私『丸山彩』にとって『白鷺千聖』ちゃんは、Pastel*Palettesの大切な仲間であり、同時に最も尊敬する女の子です」
彩の言葉に千聖は大きく目を見開き、視線を向けると、其処には穏やかな眼差しを向ける彩の姿がいた。
「……私、怒ると怖いわよ」
「知ってる。 でも、それは私の事を思っての事だよね」
「……絵を描く事と電車の乗り換えが苦手なのよ」
「大丈夫。 私もダンスや歌、トーク何かまだまだ苦手な面があるから」
「……納豆だって苦手なのよ」
「私もたこが苦手だから、お互い様だよ」
「……本当にこんな私なんかでいいの?」
「うん。 どんな千聖ちゃんだって受け入れるよ。 だって、それほど千聖ちゃんの事が大好きなんだもん」
「……やっぱり彩ちゃんには敵わないわね」
そう言って微笑む千聖の表情は先程と違い、晴れやかな物だった。
「ジジジジジ!!」
突然激しい唸り声が響き、その方向に視線を向けると、先程の雀蜂の異形が敵意の籠った視線を向けていた。
「ワスプモン。 成熟期。 サイボーグ型。 ウィルス種。 必殺技は『ターボスティンガー』と『ベアバスター』」
千聖を自身の後ろに移し、彩は自身のディーアークで相手の情報を調べた後、テイルモンと共にワスプモンに相対する。
「ジジジ!!」
「テイルモン!!」
「ええ!!」
その時、彩のディーアークに眩い桃色の光が放たれ、テイルモンを包み込んだ。
――DERIVATION EVOLUTION
「テイルモン進化!!」
光に包まれたテイルモンの姿が変わっていく。
背中に巨大な白い翼が生え、前足首には宝石の装飾が施された鎧が身に付けられ、体も一層と大きくなっていく。
やがて光が収まると、其処には白い翼を生やした女性のスフィンクスのような姿をしたデジモンがいた。
「ネフェルティモン!!」
「テイルモンが……」
「進化した……」
「大丈夫、2人共? 怖かったかしら?」
「……そんな事無いよ」
「えぇ。 とっても綺麗よ」
「ネフェルティモン。 アーマー体。 聖獣型。 必殺技は『カースオブクィーン』と『ロゼッタストーン』」
「ジジジ!!」
「下がって2人共!! カースオブクイーン!!」
ネフェルティモンの姿に脅威と感じたワスプモンは下半身の大口径のレーザー砲からレーザー光線を放ち、それに気づいたネフェルティモンは彩と千聖を下がらせて、額の飾りから赤い光線を放って相殺する。
「ジジジ……!!」
「逃がさないわ!!」
するとワスプモンは距離を取る為に飛行し、ネフェルティモンもそれを追って飛行する。
「ジジ!!」
「ロゼッタストーン!!」
ワスプモンは再びレーザー光線を放ち、ネフェルティモンも古代碑文の巨石を召喚して放って相殺する。
「如何やら……威力は互角みたいですね……」
「ふぇぇ……でもこれじゃあ、決着が付かないよぉ……」
「せめてアイツのあのレーザー砲さえ封じりゃあ……」
2体の戦いを観戦してたイヴと花音とコロナモンが見たままの様子を語る。
(レーザー砲を封じる……)
千聖は周りを見渡し、『ある物』に注目する。
それは、先程の攻撃で粉々に砕けた巨石の残骸だった。
(あれなら……!)
「千聖ちゃん!!」
そして千聖は巨石の残骸の下へ駆け寄り、その中のかなり大きめの残骸を持とうとするが、千聖自身とほぼ同じ位の大きさもある為、非力な彼女1人の力では、到底持ち上げるのは不可能であった。
(御願い…! 動いて!)
「千聖ちゃん!! 私も手伝うよ!!」
「彩ちゃん……」
「困っているなら、私も手伝うよ……」
「有難う……」
「じゃあ行くよ……!」
「「 せーの!!」」
2人は全身の力を込めて持ち上げる。
「アヤさん!? チサトさん!?」
「行くよ!!」
「ええ!!」
「「そぉ~……れ!!」」
2人は其処から一気にワスプモンへ向けて巨石の残骸を投げ付けた。
「ジジ?!」
ワスプモンも突然の残骸に動揺して動きが鈍ってしまった事もあって、残骸の直撃を受けた事で発生したレーザー砲のエネルギーの爆発に巻き込まれる。
「ジ…ジ…ジ…!」
爆発と煙が収まると、其処には全身がボロボロになったワスプモンの姿があった。
特に下半身のレーザー砲に関しては損傷が酷く、使い物にならない状態なのは誰の目にも明らかだった。
「彩ちゃん! 今だよ!」
「ネフェルティモン!!」
「スカーレットストーム!!」
彩の叫びを聞いたネフェルティモンは、額の飾りからの赤い光線と古代碑文の巨石を召喚しての一斉攻撃をワスプモンにお見舞いする。
「ジ…ジジ…ジ…ジ!!」
其の侭全身に一斉攻撃を浴びたワスプモンは、モチーフの如く『蜂の巣』となった後に爆発し、そのまま消滅したのだった。
「やったね千聖ちゃん……」
「ええ……」
安堵した2人は其の侭崩れ落ちた。
「彩!! 千聖!!」
其処へ進化が解けたテイルモンが駆け寄る。
「2人共……こんなに泥だらけになる程無茶しちゃって……でも有難う」
テイルモンは疲れて気を失った2人に優しくお礼を述べたのだった。
☆☆
『フフフ……真~秀~(ま~ほ~)ちゃ~ん♡……私の可愛い可愛い真~秀ちゃん♡……貴女は如何してこんなに、魅力的なのかしらぁ~?』
数日後。
その日、日菜の提案でお泊まり会をしていたパスパレの5人は千聖が出演したドラマの最新話の初回放送を、千聖の家の大広間のテレビで鑑賞していた。
『真秀ちゃんはねぇ……私の……母親になってくれるかもしれない女の子なのよ……!』
「あわわわ……千聖さんが……!」
「あはは! 麻弥ちゃん、もうこれで三回も同じ台詞を言っているよ!」
「でも、これ全国で放送されてんだよな……」
(チサトさん……映像越しからでも、凄いオーラを感じます)
「も、もう……皆ったら……」
「だ、大丈夫! 可愛くても変態さんでも私は千聖ちゃんの事、大好きだから!」
「彩ちゃん……それ、恋人を誉めているの? それとも貶しているの?」
やがてドラマのクライマックスが近付く。
『貴女死にたいんだって? さぁて、害虫掃除の御時間よ♡』
「千聖の演じる千坂(ちさか)と言う少女、画面越しからでも表情の圧を感じるわ……」
「……これが所謂『千坂スマイル』の誕生だね……」
(日菜ちゃん……後でお説教が必要かしらね?)
(日菜……生きろよ)
やがてドラマが終わり、メンバー達はそれぞれ思い思いの感想を語り合う。
「圧巻でした……」
「いやぁ何と言いますか……今までの千聖さんの演技とは、180º異なった感じの演技でしたね……」
「個人的に、絶対今回のドラマの『目玉』になりそうなヤツだと思うぜ……。 『アレ』は」
「うんうん! 結構ハマり役に見えたし、特撮とかだったら、絶対に『悪女』や『悪の女戦士』とか形で出演しそうだよね!」
その一方で当の本人である千聖は、魂が抜けた様子で顔を逸らしていた。
『大丈夫、千聖?』
「もうお嫁に行けない……」
「ち、千聖ちゃん! その時は私が責任持って、千聖ちゃんを貰って行くから、元気出して!」
彩の言葉に、千聖ちゃんは顔を真っ赤にして彼女の方を向いた。
「……本当に?//」
「うん! だって私は千聖ちゃんの事がそれ程までに好き何だもん!」
「……彩ちゃん。 気持ちは嬉しいんだけど……//」
「向こうの方を見て」
「へ?」
テイルモンの言われた方へ視線を向けると、其処には此方にニヤニヤした眼差しを向ける日菜とコロナモン、キラキラした眼差しのイヴ、苦笑いの麻弥の姿があった。
「あわわわわ……//」
「いやぁ、彩ちゃん大胆だね~♡」
「俺、彩の事見直したぜ……」
「天晴れです! アヤさん!」
「////」
緊張と恥ずかしさから、彩は表情を真っ赤にして倒れた。
「「彩(ちゃん)!?」」
千聖とテイルモンは慌てて彩へ駆け寄った。
「彩ちゃーーん!! 御願い、気をしっかり!!」
「千聖さん落ち着いて下さいッス!!」
麻弥が必死に千聖を抑える。
その後5人はそのまま就寝するしたが、翌日千聖が目を覚ますと何故か隣の布団にいた彩が彼女の隣で一緒に寝ている状態になっていて、それを先に早起きして目撃されたイヴと彼女経由で知った日菜とコロナモンと麻弥とテイルモンから、温かい視線を彩と共に送られる事になったのであった。
と言う訳で、此処まで読んでくれて有り難う御座います。
あやちさに関しては、この小説を書く時から既に決めていたCPの1つでした。
少しネタバレになりますが、あやちさ以外に登場させるCPは実は既に決めてあります(尚且つ、作中でもそれっぽい描写も実は少し出て来ています)。
他のバンドリキャラ達の関係が今後如何なるのかは、想像して見て行って下さい。
因みにテイルモンのネフェルティモンの進化は、『デジコロ』の物をイメージした物になっています(その為、進化の表記も『DERIVATION EVOLUTION(派生進化)』と少し特殊な物になっています)。
と言う訳で、今回登場したデジモンの紹介です(尚、ヌメモンに関しては以前紹介したので省略です)。
ネフェルティモン
世代:アーマー体
タイプ:聖獣型
属性:フリー
彩のテイルモンが進化したアーマー体の聖獣型デジモン。
本来はテイルモンが『光のデジメンタル』のパワーによって進化したである。
『光のデジメンタル』は『光』の属性を持っており、このデジメンタルを身に付けたものは強力な光の力で闇を浄化する能力を持てるようになる。
古代種族の末裔でないテイルモンも、体を構成するデータの中に眠っていた特殊能力に目覚めアーマー進化できるようになった。
必殺技は額の飾りから高熱の赤い光線を出す『カースオブクィーン』と、デジ文字が刻まれた古代碑文の巨石を召喚して敵を攻撃する『ロゼッタストーン』。
ゲレモン
レベル:成熟期
タイプ:軟体型
属性:ウィルス
ヌメモンと同種の軟体型デジモン。
攻撃力は低いが、その割に凶暴で誰が相手でも襲い掛かる一方、当然のごとく返り討ちにあうが、すぐに忘れてしまい、その度に何度でも強敵にケンカをしかけるこりないヤツである。
必殺技は、キョーレツなニオイを身体中から撒き散らす『ハイパースメル』。
スカモン
レベル:成熟期
タイプ:ミュータント型
属性:ウィルス
金色に輝くウ○チの形をしたイヤーなデジモン。
コンピュータの画面上にあるゴミ箱に捨てられたデータのカスが集まって突然変異をおこして誕生した。
暗所を好み、データのカスの集まりということで他のデジモンからは嫌がられている所がヌメモンに似ている。
知性や攻撃力は皆無な上に相棒の“チューモン”はネズミのような小型デジモンで戦うことは出来ないが、悪知恵だけは誰にも負けず、いつもスカモンをそそのかしては、悪事を働いている。
チューモン
レベル:成長期
タイプ:獣型
属性:ウィルス
いつもスカモンにワル知恵を入れ込んでいるネズミのようなデジモン。
スカモンとは固い友情で結ばれており(といっても思っているのはチューモンだけかも?)、以前ネットワーク上のトラップ「カーニボア(肉食獣)」に捕獲されそうになっていた所を、たまたま通りかかったスカモンに助けられてからの仲。
基本的には小心者だが、ワル知恵だけは天下一で、危なくなるとスタコラサッサと逃げていく。
必殺技はチーズの形をした爆弾を投げる『チーズ爆弾(ボム)』。誤って食べようとするとトンでもない事になってしまう。
ワスプモン
レベル:成熟期
タイプ:サイボーグ型
属性:ウィルス
謎の“空中秘蜜基地「ローヤルベース」”を守るサイボーグ型デジモン。
頭部の触角パーツは索敵能力が高く、基地に近づくデジモンを警戒して常に周辺をパトロールしており、近づくだけで襲い掛かってくる。
肩の推進器と背中のスタビライザーにより、上下前後左右と、あらゆる方向に急速に移動が可能で、近づいてくる敵をディフェンスして、強力なレーザー砲で追い払ってしまう。
必殺技は大口径のレーザー砲を連射して放つ『ターボスティンガー』と、大型のデジモンをも一撃で仕留めてしまう『ベアバスター』。
尚、この技はエネルギーを溜めてから放つため、素早い敵には当たり難く、主に地上の敵に対して有効である。
裏話
実は当初、『虎』をモチーフにしたデジモンを登場させる予定でしたが、成熟期に『虎』をモチーフにしたデジモンがいなかった為、少し捻って『虎柄風なイメージ』の繋がりで選びました。
因みに何故『虎』だったのかと言えば、
千聖さん→上坂すみれさん→ラムちゃん→虎
と言う連想ゲーム的な形で決めたからです(更に言えば、サブタイトルの初期案であった『てっかめんのらぶそんぐ』もこれに因んだ物だったりします)。
オリジナル技解説
・スカーレットストーム
彩のネフェルティモンが使用する本作のオリジナル技。
『カースオブクィーン』と『ロゼッタストーン』による一斉攻撃で相手を殲滅する。
それでは之にて、失礼致します。
あなたが3代目テイマー組の中で、『主人公はこのペア』と言うのを選ぶならどのペアですか?
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山吹沙綾&ギルモン
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湊友希那&ブイモン
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今井リサ×ララモン
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美竹蘭×アグモン(セイバーズ版)
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丸山彩×テイルモン
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弦巻こころ×パタモン
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奥沢美咲×ベアモン