Digital_Dream!   作:睡眠タイム

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久し振りのMorfonica回です。

此処で少しだけ(+改めて)ましろちゃんに関しての説明。

私自身、今作のましろちゃんは


・もう1人の主人公組(分かり易いイメージとしては、『仮面ライダー』で言う2号ライダーのポジション)。
・本家バンドリより精神的な面で成長した感じのましろちゃん。


と言うのを意識して書いています。

因みにトリビア的な話をすると、実は初期設定ではましろちゃんのパートナーは、モニカのイメージ繋がりでモルフォモンにする予定でした……。
しかし、


・有咲のワームモンとキャラが被る。
・進化ルート面で悩んでしまった。


の2点で、最終的にハックモンになってしまったのです(成熟期は兎も角、完全体と究極体は片方のみか、両方採用かで悩みました)……。

因みに私の好きな『2号ライダー』は、


・ナイト(『龍騎』)
・ギャレン(『剣』)
・ガタック(『カブト』)
・ディエンド(&ネオディエンド)(『ディケイド』)
・バロン(『鎧武』)
・ブレイブ(『エグゼイド』)
・ゲイツ(『ジオウ』)
・バイス・ライブ&エビル(『リバイス』)


と言う感じです(『リバイス』に関しては、2号ライダーの基準が複雑な感じで、上記の様な表記になりましたが……)。


それとこれは個人的な疑問(&戯れ言)ですが、皆さんが好きな2号ライダー&ましろちゃんのキャラのイメージにしっくりくる2号ライダーを挙げるなら、何だと思いますか?


第18章 才女の受難、白の完全乱舞

 

 

「ふぅ……ったく、深夜の見回りって言うのも厳しい物だよ」

 

 

とある深夜。

 

 

現在、1人の警察官が見回りをしていた。

 

 

「にしても寒いなぁ……。 あそこの公園でコーヒーでも買うか」

 

 

若い警官はそう言ってコーヒーを購入する為、近くの公園にある自販機の前に立ち寄った。

 

 

 

 

怪しい光が此方を見ている事に気付かずに。

 

 

 

 

そして公園の自販機でコーヒーを購入すると、警官は中身を一気に飲み干した。

 

 

「あぁ~……生き返るなぁ……」

 

 

警官は自販機で購入した缶コーヒーを一口飲み、満足な様子で一息付いた。

 

 

トントン

 

 

「? 誰だい急に……?」

 

 

不意に肩を叩かれた感覚を感じた警官は其方に視線を向け、言いかけた言葉を止める。

 

 

 

 

其処には自身の倍の大きさもある黒い影がいた。

 

 

 

 

「ワーッ! か、怪物だーー!」

 

 

すると黒い影は、口から藤色の煙を吐き出した。

 

 

「グエッ! グウウウ……!」

 

 

それを吸い込んだ警官は呻き声と共に苦しみだし、そのまま倒れる。

 

 

そして煙が収まると、其処にはドロドロの液体のみが残されていた。

 

 

「中々強力な物を持っているではないか」

 

 

別の方向から現れた影ーー先程から様子を闇夜に隠れて伺っていたフェレスモンが賞賛の言葉を掛ける。

 

 

「パレオ様と●●●●●様からの伝言。 『期待していますよ』との事だ」

 

 

フェレスモンはそう言って、再び闇夜に姿を消そうとして、思い出した様に動きを止める。

 

 

「それと『彼女の事』だが……『其方は貴方の御自由にお任せします』だそうです」

 

 

伝えたい事を伝え終えたフェレスモンは、再度闇夜に姿を消した。

 

 

そして黒い影も目の前の敵が完全に消えた事を確認すると、再び暗闇の中へ消えていった。

 

 

 

 

☆☆

 

 

 

 

「……う~ん。 こんな感じかな?」

 

 

七深は悩みながらも、目の前の作業に取り組んでいた。

 

 

現在彼女がいるのは、月ノ森の庭園。

 

 

何故彼女がこの場にいるのかと言うと、美術の授業での課題の写生の為であった。

 

 

「最後はこうして……良し、完成~♪」

 

 

そして5分程経って、七深は等々課題を完成させた。

 

 

「おーい! ななみー!」

「あっ、透子ちゃん!」

 

 

其処へ丁度タイミングを見計らったかの如く透子が駆け寄って来た。

 

 

「ヤバいヤバいヤバい! めっちゃスゴい神作が出来上がっちゃったよ!」

「と、とーこちゃん……お、落ち着いて~」

 

 

透子はまるで珍獣を発見した学者の様に興奮気味に語り、七深はそんな透子を落ち着かせようとする。

 

 

「いやぁゴメンゴメン! でもこれ見てみなって!」

「おぉ……大胆だけど結構上手に描かれているねぇ~。 色使いの方も繊細且つ丁寧だし……広町的にこの校舎の屋根の色は好きだな~」

 

 

七深は自身の見て感じた感想を、透子に伝える。

 

 

「そっか! 実はアタシもこの校舎の屋根は他の所よりも力を入れて描いたんだ~! いやぁ~、同じ部分に注目する辺り、何だかアタシ等、『以心伝心』してるみたいじゃん♪」

「と、透子ちゃん~……痛い、痛いってば~」

 

 

嬉しさのあまり、透子は七深の背中をバシバシ叩き、七深は再び透子を落ち着かせようとした。

 

 

「あはは! ななみの方は如何なった?」

「う、うん。 こっちも今終わった所だけど……」

「本当!? なぁ、若し良かったら、ななみのも見せてよ!」

「……分かった。 はい、これ何だけど……」

 

 

そう言って七深は透子に、完成したデッサンを見せた。

 

 

「は? 何これ? 輪郭がグニャグニャじゃん。 校舎の壁とか、形めっちゃ崩れちゃってるし」

「あはは……。 何だか上手くいかなくて……」

「この花壇? にある白い塊は?」

「それはあそこにある梔子の花だよ。 綺麗だよね~」

「へぇ……。 確かにグニャグニャだけど、何だか見てたらこれはこれでイケてるかも。 ななみの絵も悪くないんじゃね?」

「有難う、透子ちゃん」

 

 

七深は透子に礼の言葉を述べる。

 

 

「……そうだ! 今日は放課後空いてるし、若し良かったら、あたしが絵の描き方を教えるよ!」

「ごめんね。 気持ちは凄く嬉しいけど、今日は予定が……」

「……ああ! 前に行ってたファミレスの『アレ』か! 頑張れよ~、応援しているから!」

「うん」

 

 

それと同時に昼休みの時間を告げるチャイムが流れた。

 

 

「やっと昼休みか! 教室行こうよななみ」

「待って。 まだ片付けが終わってないから」

「それじゃあ、アタシも手伝うよ」

「ふふっ。 有難う」

 

 

そして片付けを終えた2人は、その足で教室に向かっていた。

 

 

 

 

2人が去って、誰も居なくなった庭園。

 

 

 

 

不意にその中の1体が、唐突に動き出した。

 

 

その植物は、先程透子と七深がいた時には見せなかった不気味な口を開いて呟く。

 

 

「『絵の描き方を教える』……か。 七深の絵を外面でしか判断出来ない単細胞な金髪女め。 もう直ぐだ……もう直ぐで俺は生まれ変われる……」

 

 

口の生えた植物は、その儘地面の中へ潜って行く。

 

 

そしてその場には、腕一本が丁度入れる程の小さな穴のみが残されてるだけだった。

 

 

 

 

☆☆

 

 

 

 

「でさ、この校舎の屋根の所とかもマジ神っぽくね?」

「もう透子ちゃんったら……もうその話、5回位は聞いたよ」

「透子ちゃん……よっぽど嬉しいんだね……」

『何だか彼女の辞書には、『ネガティブ』と言う言葉が無い様に思えるな……』

「嬉しいのは分かるけど、これ以上はしゃぐのはお店にも迷惑よ」

 

 

透子のハイテンションに、ましろ達も様々な反応を示している。

 

 

翌日の放課後。

 

 

現在、彼女達は近くのカフェでティータイムの真っ最中である。

 

 

あの後も透子は他のモニカメンバー達にも、自身のデッサンした絵の事を自慢気に話していた。

 

 

「だってアタシも自分のブランドのデザインのデッサンをする事があるからさ。 この校舎の屋根の所の神がかった描写を見てると、自分の関わっている事の要素を身近に感じちゃって嬉しいんだもん!」

「そう思うなら、普段の学校の授業もそんな感じで受ければ良いのに……」

「ウェ!? い、いやぁ……その点はちょっと……」

「もう……透子ちゃんったら……」

 

 

つくしは呆れた様子を浮かべていた。

 

 

 

 

ズボッ

 

 

 

 

『ん……?』

「如何したのハックモン?」

『今一瞬、何か妙な気配が……』

「若しかして……デジモンかしら?」

『解らない。 本当に一瞬の事だったからな……』

 

 

ましろと瑠唯の問い掛けに、ハックモンは曖昧な返答を返す。

 

 

「分かった! きっとアタシらのファンか何かだよ! ここの所、Morfonicaの名前も徐々に浸透していってるから、きっと私達の姿を見る為にこっそり隠れてたんだよ!」

「もう……透子ちゃんったら……」

(それに若しそうなら、さっきの『ズボッ』って音はどう説明付ける気だったんだろう?)

 

 

透子の発言につくしは呆れ、ましろは内心疑問に思いながら彼女を見る。

 

 

その後5人は喫茶店を出て、それぞれの帰路へ向かって行った。

 

 

 

 

☆☆

 

 

 

 

(『ファン』……か)

 

 

七深は1人帰り道を歩きながら、先程喫茶店での透子の台詞を思い返していた。

 

 

(そんなの……今まで考えた事無かったなぁ……)

 

 

七深は視線を上に向ける。

 

 

“『広町さんって、本当に何でも出来て良いよね』”

“『『普通』って言うけどさ、貴女の『普通』は私達の『普通』とは違うのよ。 馬鹿にしてるの?』”

“『貴女には、才能が無くて苦しい思いをする人の気持ち何か分かんないわよ』”

 

 

突然脳裏を過った台詞。

 

 

それは、七深が嘗て言われた周囲からの発言。

 

 

 

 

広町七深は一言で言えば、『才能』に愛された少女であった。

 

 

 

 

幼い頃から成績は常に上位な上に、彼女本人もそれを鼻に掛ける様子も無く、人当たりの良い性格だった事もあって周りからも好印象な様子で見られていた。

 

 

特に『絵の才能』に関しては、元々両親の血を強く受け継いだ事もあって、同年代の子達の中では飛び抜けた腕前の持ち主であった。

 

 

 

 

そんな彼女の周囲の関係が変化したのは、中等部の頃の事。

 

 

 

 

ある時母に薦められて、七深は自身の描いた絵を絵画コンクールに出展し、最優秀賞を獲得した。

 

 

此処までならハッピーエンドと捉えられるのが普通なのだが、七深にとってこの一件は不幸への片道キップであった。

 

 

中等部の友人達も、最初の頃は今までと同じ様に七深の絵の才能を褒めてくれていた。

 

 

しかしある日を境に、周りの七深を見る目が変わった。

 

 

『広町さんって、何かズルいよね~』

『本当。 何時も成績上位。 おまけに絵の才能だってピカイチ。 良い御身分よね~』

『あれだけのハイスペックを持っていて、『普通だよ~』って……馬鹿にすんじゃないわよ!』

 

 

ある日の放課後、偶々忘れ物をして教室に戻った七深は、教室に残っていたクラスメイトの話を聞き、激しいショックを受けた。

 

 

『て言うかさ。 広町さんって、そもそも人間なのかしらって思うのよねww』

『あのハイスペックぶりを見てると、あの人実は『人間の皮を被った化け物』何じゃないの?』

『仮に若しだったら、コンクールの件だって、本当に実力で勝ち取ったのかも疑わしいわね』

『御両親の力を使ったか、若しくはお偉いさんを色仕掛けで誑かしたんじゃないの?』

『有り得そうww』

『広町さん、AV女優でもやっていけそうだしww』

 

 

学友達の嫉妬や陰湿な悪意を目の当たりにした七深は結局、そのまま教室に入る事無く自宅に帰って行った。

 

 

この一件を切欠に七深は『普通』と言う事に強い願望を抱く様になった。

 

 

学校生活においても、テストの時は態と中間的な点数になる様にしたり、美術の時も敢えて下手に見える様に描き崩したりと、手を抜いて過ごす様にした。

 

 

若しまた本気を出して、皆が自分の事を恐れる様になってしまったら。

 

 

七深にとって、それは恐怖以外の何物でも無い事であった。

 

 

(大丈夫……私さえ我慢すれば、大丈夫だから……)

 

 

七深は湧き上がる恐怖を抑える様に、早足で自宅までの帰路を歩いて行った。

 

 

 

 

☆☆

 

 

 

 

「グエッ……オエエエエ……!」

「ンンンーーッ……!」

 

 

夜の広場。

 

 

少女達は苦悶の声と激しい嘔吐をしながら絶命し、そのまま跡形も無く溶けていった。

 

 

「フン。 これは天罰。 七深につまらぬ嫉妬と悪意を抱いた事を公開しながら、あの世で懺悔するんだな」

 

 

黒い影は先程自身が裁いた月ノ森の女子生徒達の姿を、侮蔑の表情で見ながら呟く。

 

 

この月ノ森の女子生徒達は、中等部の頃に七深に対して陰口や悪意をぶつけていた者達であり、この日も広場で七深に対して陰口や悪意を話していた結果、この黒い影の怒りを買い、無惨な死を遂げたのであった。

 

 

「七深……俺の七深……もう直ぐ俺とお前との新しい未来が待っているぞ……!」

 

 

黒い影はそう言うと、再び闇夜の中に消えていった。

 

 

 

 

☆☆

 

 

 

 

「さて……今日中には作詞を完成させよう……」

 

 

数日後。

 

 

今日が土曜日と言う事もあって、ましろは自分の家の自室にて新曲の歌詞の作成に取り掛かろうとしていた。

 

 

ヴーヴー。

 

 

「ましろ。 スマホが鳴っているぞ」

「有り難うハックモン」

 

 

ましろはハックモンに礼を言って、自分のスマホを手に取ると、つくしからの着信だった。

 

 

「つくしちゃん……?」

 

 

疑問に思いつつ、通話する。

 

 

「もしもし?」

「あっ、ましろちゃん!? 良かったぁ~……それより大変なの!」

「!……何があったの?」

 

 

つくしの言葉で、ましろはただ事で無いのを察し、冷静に問い掛ける。

 

 

「ついさっき、七深ちゃんと透子ちゃんが……変な植物みたいな怪物に浚われて……それで……」

 

 

つくしは余程ショックを受けたのか、先程から喋る声が涙ながらな様子だった。

 

 

「落ち着いてつくしちゃん。 今そっちに向かうから」

「うん……分かった」

 

 

そう言ってつくしは連絡を終え、通話を切った。

 

 

「ハックモン!」

「ああ!」

 

 

母に出掛ける事を伝え、ましろはハックモンと共に家を出て、現場の広場へ向かって行った。

 

 

 

 

☆☆

 

 

 

 

ましろ達が現場に行くと、其処にはつくしとましろと同じ様に呼ばれた瑠唯、そしてリサとララモンの姿があった。

 

 

「おーい! つくしちゃーーん!」

「! ましろちゃん!」

「御免! 遅くなっちゃった」

「ううん。 私……怖かったよ~」

 

 

つくしは少し落ち着いたのか、何時も様子を見せていた。

 

 

「所でリサとララモンは、如何して此処に?」

「うん。 アタシも出掛けていたら悲鳴が聞こえてきて、こっちに聞こえて来たんだ……」

「残念だけど、私達が来た時には2人は浚われた後だったわ……」

 

 

ハックモンの問い掛けに、リサとララモンは此処に来るまでの様子を語ってた。

 

 

「それで二葉さん。 もう一度、状況を話してくれるかしら?」

「うん……」

 

 

瑠唯に促され、つくしは同時の状況を語り始める。

 

 

 

 

その時つくしは自身の用事を済ませた事もあって、帰路を歩いている道中だった。

 

 

「あれ……? 透子ちゃんと七深ちゃん……?」

 

 

その途中、何やら深刻な様子の透子と七深を見たつくしは、気になってこっそりその後を追った。

 

 

やがて、広場のベンチに座った2人は先程と違って穏やかな様子で会話をしていた。

 

 

つくしは自身の気にし過ぎと今の2人の間に入るのは良くないと考えて、その場を離れたと言う。

 

 

 

 

「キャアアアーー!」

 

 

 

 

しかし離れてから5分程経った後、突然七深の悲鳴が聞こえ、つくしが慌てて戻ると其処で見たのは、地面から現れたと思われる大きな口の付いた植物の様な見た目の化け物に締め付けられる七深と、彼女を解放しようとする透子の姿であった。

 

 

「コラ! ななみを離しやがれ!」

「透子ちゃん! 私はいいから逃げて!」

「馬鹿な事言うなよ! ななみを置いて自分だけ逃げる何て出来るか!」

 

 

すると再び地面が割れ、透子の背後から何かがやって来る。

 

 

「! 透子ちゃん!」

「ワッ!」

 

 

七深の叫び声を聞いた透子は、ギリギリの所でもう1本の触手による攻撃を回避する。

 

 

幸い大怪我は免れたが、着ていた服の左の袖の部分が鋭利な刃物で切られた様な状態になり、透子の素肌が露出していた。

 

 

「キャアア!」

 

 

やがて七深を捕らえた植物と透子を襲った植物は目的を果たしたと言わんばかりに七深を捕らえたまま地面に潜ろうしたが、その時咄嗟に透子がしがみ付き、そのまま2人は地面の中に消えて行ったのであった。

 

 

 

 

「私……怖くて何も出来なかった。 これじゃあ、『Morfonica』のリーダー失格だよ……」

「つくし……怖かったんだね」

「落ち着いて。 二葉さんは何も悪く無いわ」

 

 

リサと瑠唯はつくしを優しく慰める。

 

 

「ハックモン」

「2人を攫った相手……間違い無くデジモンだろうな。 それに……」

 

 

ハックモンは2人を攫った植物の消えた穴を見る。

 

 

「この感じ……私がこの前喫茶店で感じた物と同じだ。 同一の相手と見ていいだろう」

「……早く2人を見付けないと」

「でもどうやって?」

「私に任せてくれ」

 

 

瑠唯の問い掛けにハックモンは穴の方に向かい、そのまま目を閉じる。

 

 

(執着心、独占欲……。 凄い負の感情を感じる……。 否、此処までの強さ……最早『執念』と呼ぶべきか……)

「ハックモン……さっきから目を閉じてるけど、何をしているの?」

「私のハックモン、昔から殺気とか悪意って言うのかな? そう言った悪い雰囲気何かに敏感なんだ」

「つまり……その雰囲気を読み取って、其処から後を追おうとすると言う事かしら?」

「うん」

 

 

つくしと瑠唯の疑問に、ましろは分かり易く説明をする。

 

 

暫くしてハックモンが目を開ける。

 

 

「如何、ハックモン?」

「ああ。 こっちだ!」

「行こう皆!」

 

 

ハックモンとましろの後を追って、つくし達も駆け出した。

 

 

 

 

☆☆

 

 

 

 

不意に『冷たい何か』が当たる。

 

 

「ん……んんっ」

 

 

それによって七深は意識を取り戻した。

 

 

「此処は……そっか、私……」

 

 

七深はこれまでの事を思い出す。

 

 

 

 

カフェの一件の翌日、自宅のアトリエで透子に中等部の頃に絵画コンクールで最優秀賞を取った絵を見られた事を機に、彼女に自身の過去を話した七深。

 

 

そんな彼女に対して透子は、良いアイディアがあると言って来た。

 

 

その為に2人きりで話がしたいと言う誘いを受け、今日2人は秘密の会議と言う事で先程の広場に来ていた。

 

 

そして5分程たった時、2人は妙な音に気付いた。

 

 

「一体何だよこの音?」

 

 

そして次の瞬間。

 

 

 

 

ボゴオオ!

 

 

 

 

地面から突然現れた触手の様な物が、七深を捕まえた。

 

 

「キャアアアーー!」

「七深!」

 

 

気付いた透子は咄嗟に駆け付け、七深を触手の拘束から解こうとする。

 

 

その最中、拘束されている七深は、再び地面が割れて、透子の背後から何かがやって来るのに気付く。

 

 

「! 透子ちゃん!」

「ワッ!」

 

 

七深の叫び声を聞いた透子は、ギリギリの所でもう1本の触手による攻撃を回避した。

 

 

「透子ちゃん!」

 

 

すると触手達は用が済んだと言う様子に七深を捕まえたまま、元出た穴の中に潜ろうとする。

 

 

「透子ちゃん! 透子ちゃーーん!」

 

 

それを最後に七深の意識は途絶えた。

 

 

 

 

「透子ちゃん……大丈夫かなぁ……ふぇ?」

 

 

そして七深は自身の状況に気付く。

 

 

何故なら今の彼女は手足を植物で縛られている状態で、上から吊されていた。

 

 

「えっ!? 何これ!?」

「漸く目が覚めたか?」

 

 

突然耳に届いた見知らぬ声に、七深の体が固まる。

 

 

やがて奥の方からゆっくりと声の主が現れた。

 

 

「ヒッ……」

 

 

七深は思わず声を漏らす。

 

 

其処に現れたのは、毒々しいまでの紫色の顔と何本もの触手を生やしたカーキ色の身体が特徴の植物の様な異形だった。

 

 

「あぁ…。 こうして直接見て触ると、本物は違うな」

 

 

そう語って植物の異形は、自身の触手で七深を丁重に触るも、七深の中にあったのは生理的な嫌悪感だった。

 

 

「…っ! 透子ちゃんは……透子ちゃんは何処なの!?」

「そんなに会いたいなら会わせてやろう。 最も、少し仕置きをさせてもらったがな」

 

 

七深の必死の問い掛けに、植物の異形は視線で促し、七深も其方に視線を向ける。

 

 

「イヤァァー! 透子ちゃーーん!」

 

 

七深の叫びが響く。

 

 

植物の異形の言った通り、其処には確かに透子の姿はあった。

 

 

だが今の彼女は抵抗したのか、まるでぼろ雑巾の如くボロボロに痛めつけられ、傷や痣だらけな上に軽い出血の後が見られる状態だった。

 

 

また着ていた服も完全に無くなり、上下の下着だけが彼女の身体を守っている有り様となっていた。

 

 

「透子ちゃん! 透子ちゃん! しっかりして!」

「安心しろ。 死んではいないさ。 あっちが勝手に抵抗してきたから、それ相応の対応をしたまでだ」

 

 

植物の異形の異形は侮蔑な視線を透子に向けながら、更に言う。

 

 

「全く馬鹿な女だ。 大人しくしてれば痛い目に遭わずに済んだ物を……。 それとも此奴の体は、胸や尻ばかりに栄養が行って、脳味噌には行き届いてないと言う事か。 だとしたら、とんだ阿婆擦れ女だな」

「透子ちゃんを……透子ちゃんを悪く言わないで!」

「だが安心すると良い七深。 お前は俺と共に1つの存在となり、新世界の頂点に立つ存在となるのだからな……」

 

 

七深は植物の異形の言葉に、困惑とショックの混ざった様子を浮かべていた。

 

 

(何? 『新世界の頂点に立つ存在』って? そんな訳の解らない物何かになる為に、あんな化け物に私の全部をあげるの?)

 

 

“狂っている”

 

 

目の前の植物の異形に対して、七深はそんな印象を抱いていた。

 

 

「恐れる事は無い。 俺は七深の可愛い容姿、才能、声、耳、目、手足、鼻、髪の毛、脳味噌、臓器……全てを受け入れ、受け止める自信を持っている。 ……もう苦しむ事は無い。 七深の事を悪く言う奴は老若男女問わず、俺が抹殺してやるからな……」

 

 

七深は植物の異形の言葉を、呆然とした様子で聞きながら思う。

 

 

(あぁ……これは広町への『罰』なんだな……)

 

 

無意識に自身の才能で、周りの人々を傷付けた『罪』。

 

 

そして『Morfonica』のメンバー達に才能を隠して、のうのうと楽しい日々を過ごしていた事への『罪』。

 

 

七深は今この一時が、自身の犯した『罪』に対する『罰』の執行されるまでのカウントダウンの様に思えていた。

 

 

「さて……お喋りは此処までにして、早速始めよう」

 

 

植物の異形は、自身の触手を七深に少しずつ迫らせて来る。

 

 

 

 

(しろちゃん……つーちゃん……るいるい……そして透子ちゃん……広町は皆とお別れになるみたい)

 

 

 

 

七深は全てを受け入れた様に目を閉じながら、内心でメンバーに対して自身の本心を語る。

 

 

 

 

(でも若し叶うなら……皆ともっと、Morfonicaをやりたかったな)

 

 

 

 

触手が七深の下に刻々と迫ろうとする。

 

 

 

 

「バーンフレイム!」

 

 

 

 

その時突然大きな火球が飛来し、植物の異形は咄嗟に自身の触手で防ぐ。

 

 

「今の……「七深ちゃーーん!」」

 

 

七深が振り向くとその先から、ましろとバオハックモン、そしてリサとサンフラウモンに守られる形でつくしと瑠唯がやって来た。

 

 

「七深ちゃん! 怪我は無い!?」

「私は対した事は無いけど……透子ちゃんが!」

 

 

七深の言葉でましろ達が透子の方に目を向けると、痛めつけられてボロボロの彼女の姿が目に入った。

 

 

「透子ちゃん……」

「2人共! これを透子に!」

 

 

バオハックモンは自身の赤いマントを外してつくしと瑠唯に渡し、透子に掛ける様に言う。

 

 

「己えぇぇ……! 良くも俺の邪魔をしてくれたなあぁ……!」

 

 

そして植物の異形が正体を現した。

 

 

「貴方……ブロッサモン?」

「否、似ているが違う」

 

 

敵の姿を見たましろは5年前の冒険で出会ったデジモンの事を言及するが、バオハックモンは直ぐに否定する。

 

 

何故ならブロッサモンに酷似したそのデジモンは、ましろとバオハックモンの知るブロッサモンと違い、顔色が毒々しい程の紫色、周りの花びらが水色、背中の葉っぱと植物はカーキ色に変色しており、明らかに別のデジモンである事を示していた。

 

 

「唯のブロッサモンじゃねぇ! ダークブロッサモンと呼んで貰おう!」

「ダークブロッサモン……」

「ダークブロッサモン。 完全体。 植物型。 ウィルス種。 必殺技は『スパイラルフラワーⅡ』と『ポイズンブレス』……」

 

 

リサは自身のディーアークでダークブロッサモンのデータを調べる。

 

 

「如何して七深ちゃんを狙ったの!?」

「そんな物、七深が欲しいからに決まってるであろう!」

 

 

そう言ってダークブロッサモンは語り出す。

 

 

ダークブロッサモンは自信の直属の上司によって、この人間界に送られた後、密かに潜伏活動をしていた。

 

 

転機が訪れたのは、ひょんな切欠だった。

 

 

その日、彼は自身のエネルギー補給をし終えていた。

 

 

『何だ?』

 

 

その時騒がしい音に気付き、自身の触手を使ってその騒がしい音の出所を調べさせた。

 

 

“『それでは聴いて下さい』”

 

 

ダークブロッサモンの気付いた音の正体ーーそれは偶々見たMorfonicaのライブだった。

 

 

 

 

そしてその瞬間ーーダークブロッサモンの世界は一瞬で変わった。

 

 

 

 

「その時俺はデジモンとしての生を受けて、生まれて初めて『美しい』と言う感情を抱いた。 音楽もそうだが、中でも一際心を揺さぶったのか、七深の存在だった……」

 

 

周りの観客達の殆どがボーカルのましろの歌声に聴き惚れる中、ダークブロッサモンの心を掴んだのは七深の姿だった。

 

 

ベースを演奏する七深の姿や表情を見たダークブロッサモンにとって、彼女の姿はまるでこの世に舞い降りた人の姿をした『美しい別次元の存在』に映った。

 

 

気付けばダークブロッサモンは触手越しと言う形であれ、七深の存在の虜になると同時に強い感情を抱いた。

 

 

 

 

“『彼女を自分だけの物にしたい』”

 

 

 

 

それと同時に、ダークブロッサモンの脳裏に過去にデジタルワールドで聞いた話が浮かぶ。

 

 

“『嘗てデジタルワールドにいた救世主と呼ばれる人間達は、自身のパートナーデジモンと全てを1つにして得た力で世界を救った』”

 

 

半信半疑に思えたその話も、今は事実と納得したダークブロッサモンは同時に確信した。

 

 

 

 

“『この少女こそが、自身の新たな存在へと導いてくれる』”ーーと。

 

 

 

 

「七深は……七深は俺の物だ……! 俺は七深と全てを1つにし、新たな存在へと生まれ変わる!」

 

 

ダークブロッサモンの告白を聞いたましろ達は戸惑う物、困惑する物と様々な反応を見せた。

 

 

特にましろとバオハックモンに至っては、人一倍戸惑いの様子を浮かべていた。

 

 

「勝手な事言わないでよ! 七深ちゃんは貴方の物じゃない!」

「そっちこそ、七深が内心の気持ちを理解して無い癖に随分上から目線な発言をするでは無いか!」

「七深ちゃんの内心の気持ち……?」

「天才的な才能を持っていて、それを当たり前の如く発揮しただけなのに、まるで化け物を見るかの様に蔑み、離れられていった故に『普通』に固執する事しか出来無かった七深の気持ちを! ……最も其処の金髪女は七深から直接聞かされてたけどな……」

 

 

ましろ達は七深の過去とその苦しみを知り、何とも言えない様子を見せた。

 

 

「だから……御前達を始末し、七深の全てを貰う! スパイラルフラワーⅡ!」

 

 

ダークブロッサモンは同時に触手の先に付いている花を手裏剣のように飛ばして来る。

 

 

「バーンフレイム!」

「カクタステイル!」

 

 

バオハックモンとサンフラウモンは迫り来る花を自身の技で打ち消して行くも、あまりの数の多さに苦戦してしまう。

 

 

その最中、ましろはダークブロッサモンの様子を見て叫んだ。

 

 

「! バオハックモン!」

「ポイズンブレス!」

 

 

バオハックモンが避けると同時にダークブロッサモンの口から紫色の煙が吐き出され、回避し損ねたサンフラウモンは煙の直撃を受けた。

 

 

「ウワアアアーー!」

 

 

サンフラウモンは苦しい声を挙げると、そのままララモンへと退化した。

 

 

「ララモン! ララモン!」

「御免なさい、リサ……」

 

 

リサの呼び掛けに、ララモンは弱々しくも申し訳無さそうに応えた。

 

 

「さて次は御前達だが……その前に」

 

 

ダークブロッサモンはつくし達の方に視線を向け、その意図を察したバオハックモンが駆け出すと同時に、ダークブロッサモンが行動に移した。

 

 

「スパイラルフラワーⅡ!」

「クッ……」

 

 

全力で駆け出したバオハックモンは何とかつくし達の所に立つも、技を出す暇も無く攻撃の直撃を受けた。

 

 

「ウワアアアー!!」

「バオハックモン!」

 

 

遅れて来たましろはバオハックモンに駆け寄って呼び掛ける。

 

 

「フハハ……愚かな奴め」

 

 

ダークブロッサモンはバオハックモンの行動を嘲りながら近付き、ましろ達は身構えるも、ダークブロッサモンは途中で動きを止め、彼女達に言い放つ。

 

 

「チャンスをやろう。 七深を俺に差し出すと言うのなら、見逃してやろう」

「そんな……! 無茶苦茶だよ!」

「なら俺の餌食になるしか道は無いな」

 

 

つくしの反発を、ダークブロッサモンは情け容赦無く一蹴する。

 

 

 

 

「私が行けば、皆を助けてくれるの?」

 

 

 

 

そう言って一歩踏み出したのは、七深本人だった。

 

 

「広町さん、貴女自分が何言ってるか分かっているの?」

「私が行けば皆が助かるんだよね? だったら……」

「駄目だよ七深ちゃん! そんな事したら……!」

「でも! 私の所為で、透子ちゃんやシロちゃんが……! 私……これ以上堪えられないよ」

 

 

七深の叫びにつくしも瑠唯も何も言えない様子を浮かべ、そして七深はダークブロッサモンに問い掛ける。

 

 

「本当に……皆を見逃してくれるんだよね?」

「当然だ。 俺が今言った言葉に嘘は嘘は無い」

「シロちゃん……ハックモン……透子ちゃん……つーちゃん……るいるい……短い期間だったけど……有り難う」

「駄目! 七深ちゃん! 七深ちゃん!」

 

 

つくしの制止を無視して、七深は向かおうとするーー。

 

 

 

 

「行くなよ……七深」

 

 

 

 

その時聞こえた声に、七深は足を止めて振り返る。

 

 

其処には、バオハックモンのマントで身体を隠した透子の姿があった。

 

 

「透子ちゃん……」

「ほぉ……あれだけ痛め付けたのに、まだ立つ力があったのか……」

 

 

透子はゆっくりした足取りで、七深の元へ寄った。

 

 

「七深。 お前は……アタシ達Morfonicaのベースだ。 だから……あんな野郎の所へ何か行かせねぇ」

「透子……ちゃん」

「ハッ! それが如何した! 幾ら七深の一面を知ったからって、所詮「黙れ変態ストーカー植物!」」

 

 

透子はダークブロッサモンの言葉を遮る様に叫ぶ。

 

 

「例え七深が天才だろうが何だろうが、アタシは七深と一緒にMorfonicaをやりたいんだ! これはアタシのワガママで、願い事何だ!!!!」

「透子ちゃん……」

「……如何やら本気で死にたいみたいだな」

「最後にハッキリ言ってやるよ。 『力ずくで振り向かせよう何座、モテねぇ野郎のする事だぜ』」

「なら……死ねえええぇぇーー!!」

 

 

ダークブロッサモンは2人に向けて、再び触手の先に付いている花を手裏剣のように飛ばして来た。

 

 

「透子ちゃん! 七深ちゃん!」

 

 

つくしの悲鳴が響き、透子と七深は目を瞑る。

 

 

 

 

「フィフクロス!!」

 

 

 

 

その時、透子と七深の前に影が現れ、そのまま迫り来る花を全て切り裂いた。

 

 

「何だと!?」

 

 

ダークブロッサモンの驚きの言葉で透子と七深は目を開ける。

 

 

「大丈夫か、2人共?」

「バオハックモン……」

「透子ちゃん! 七深ちゃん!」

「「シロ(しろちゃん)……」」

「己ええぇぇ……!」

 

 

ダークブロッサモンは先程の攻撃を妨害したバオハックモンと2人に駆け寄ったましろの姿を忌々しげに見る。

 

 

「七深ちゃん。 私もつくしちゃんも瑠唯さんも……透子ちゃんと同じだよ。 『Morfonica』のベースは七深ちゃんだけなの。 変わり何ていない。 『Morfonica』は……このメンバーで『Morfonica』何だよ」

「七深。 付き合いの短い私が偉そうに言えた義理では無いが、ハッキリ言おう。 君がいなくなって、悲しむ人の気持ちを考えるんだ! 私もましろ達もそんな事を望んではいない……!」

「透子ちゃん……しろちゃん……バオハックモン」

 

 

ましろとバオハックモンの言葉に、七深は静かに泣き崩れた。

 

 

「クソオオォォ……! 七深は……七深は俺の物だーー!」

 

 

ダークブロッサモンは憤怒と怨みの籠もった言葉を吐き出した。

 

 

「ダークブロッサモン。 貴様はさっき言ったな。『嘗てデジタルワールドにいた救世主と呼ばれる人間は、自身のパートナーデジモンと1つにして得た力で世界を救った』と……」

「それが何だと言うのだ!?」

「そんなに貴方が望むのなら……その一端、見せてあげるよ。 バオハックモン!」

 

 

ましろの叫びにバオハックモンは頷く。

 

 

 

 

――MATRIX EVOLUTION――

 

 

 

 

その文字がましろのディーアークの画面に表示され、同時にディーアークが光を放ち、その輝きに呼応してバオハックモンも光に包まれた。

 

 

 

 

「バオハックモン超進化!」

 

 

 

 

光に包まれたバオハックモンの姿が変化していく。

 

 

 

 

4足歩行から2足歩行と化し、両腕と尻尾に紅の刃が生まれる。

 

 

そして胸にはクリスタルが施され、同時に背中に真紅のマントが施される。

 

 

やがて光が収まると、全身刃の攻撃的なスタイルとなった白い竜人が現れた。

 

 

 

 

「セイバーハックモン!!」

 

 

 

 

「バオハックモンが……また進化した……」

「綺麗……」

「セイバーハックモン。 完全体。 竜人型デジモン。 データ種。 必殺技は跳び蹴りの姿勢から足の刃で敵を突き刺し貫く『レッジストレイド』、マシンガンのように口から炎弾を連射し敵を焼き尽くす『メテオフレイム』、尻尾と両腕に装備された三つの赤い刃で斬りかかる『トライデントセイバー』……」

 

 

セイバーハックモンの姿を初めて見たましろ以外のMorfonicaの4人とリサは、様々な反応を見せる。

 

 

「カッコ付けやがって……喰らえ~!!」

 

 

忌々しげな表情を浮かべながら、ダークブロッサモンは再び触手の先に付いている花を手裏剣のように飛ばして来た。

 

 

「危ない!」

 

 

七深は叫ぶも、セイバーハックモンは両腕と尻尾の赤い刃を振るい、ダークブロッサモンの飛ばした花を全て一蹴した。

 

 

「な……何ぃ!?」

「凄い……さっきまであんなに苦労して裁いてた花が一瞬で……!」

 

 

セイバーハックモンは無言のまま、ゆっくりダークブロッサモンの下へ歩いて行く。

 

 

「クソ! クソ! クソ!」

 

 

ダークブロッサモンはセイバーハックモンに触手の先に付いている花による連続攻撃を浴びせるも、セイバーハックモンは攻撃を受けてるにも関わらずに歩く事を止めない。

 

 

一方ましろの方も、セイバーハックモンにダークブロッサモンの攻撃が当たる度に所々傷付く。

 

 

「何で? 何でましろちゃんが傷付いてるの?」

「これが完全体の力……」

「今井先輩、何か知っていらっしゃるんですか?」

「うん…。 アタシも香澄のを見た事がある友希那から話を聞いただけ何だけど……パートナーを完全体まで進化させると………テイマーとデジモンはより一心同体に近くなるの………」

 

 

リサは友希那から聞いた話を瑠唯達に伝える。

 

 

「しろちゃん……」

「心配しないで七深ちゃん。 私はセイバーハックモンを信じているから」

 

 

ましろは振り返らず、七深に優しく語り掛ける。

 

 

その様子から他の5人はましろとセイバーハックモンの信頼関係の深さと強さを感じていた。

 

 

「クッ……ポイズンブレス!」

 

 

するとダークブロッサモンは、口から猛毒の含まれた紫色の煙を吐き出す。

 

 

「セイバーハックモン!」

「ハアアアーー!!」

 

 

その瞬間、鋭い斬撃が煙を裂いてダークブロッサモンの両方の触手を切り落とした。

 

 

「グワアアアアアアアアー!?」

 

 

ダークブロッサモンの苦痛に満ちた声が響き渡る。

 

 

「トライデント……セイバー!!」

 

 

其処からセイバーハックモンは、尻尾と両腕に装備された三つの赤い刃で一瞬の内にダークブロッサモンの全身を切り裂いた。

 

 

「グワアアアアーー!!」

「メテオフレイム!」

「ギャアアアアアー!!」

 

そして振り返り様にマシンガンのように口から炎弾を連射し、ダークブロッサモンを焼く。

 

 

この瞬間、勝敗は誰の目にも明らかだった。

 

 

「やった! シロとハックモンが勝った!」

「シロちゃん……」

「大丈夫だよ七深ちゃん。 私は無事だから」

 

 

ましろとセイバーハックモンの姿を見た他のMorfonicaの面々とリサとララモンから歓声が上がる。

 

 

「フッ……ハハハハハハ……」

 

 

その時、全身を炎に包まれたダークブロッサモンが不気味に笑う。

 

 

「そうか……お前とそこの白髪の女、『あの話の救世主達』の1組か……!」

「そうだとしたら何だ?」

「救世主として持て囃されて……さぞ良い御身分だなぁ……! 所詮、持っている物を持っている奴等に……持っていない者達の……苦しみや悔しさなど……一生分かる筈もない! お前達……はいずれ……味わうだろう……! 持っていない者達の持つ……闇を……」

 

 

呪詛の様な言葉を吐いたダークブロッサモンは、そのままデータの粒子となって消えた。

 

 

ましろとセイバーハックモンは、静かにダークブロッサモンの消えた後を見ていた。

 

 

 

 

☆☆

 

 

 

 

「はよー! ごめんごめん、遅くなった!」

「透子ちゃ~ん!」

 

 

一週間後。

 

 

七深の家のアトリエにて、透子の元気な一声が響き、七深が嬉しさのあまり透子に抱き着く。

 

 

「透子ちゃんや七深ちゃんが元気になって良かった……」

「元気なのは良い事だけど……無理はしない様に心掛けなさい」

 

 

つくしも2人の様子に安堵し、瑠唯は無表情ながらも2人を思いやる様に声を掛ける。

 

 

ダークブロッサモンの一件から暫く経った後、七深は透子と共にバイト先のファミレスでましろ達とリサに対して、透子の語った良いアイディア――七深のコンクールの絵をプリントした新作Tシャツを披露した。

 

 

新作Tシャツは4人やパートナーデジモン達からもとても好評であり、その後透子がSNSで発表した事でかなりの反響を呼ぶ事となった。

 

 

その翌日の練習時に、七深は意を決して自身の過去をましろ達に話し、彼女達はそんな七深を知って純粋に褒めて且つ改めて受け入れた事で、Morfonicaの結束は更に深まる事となった(因みに絵の件は、七深本人の希望でMorfonicaの5人とハックモンの秘密と言う事になった)。

 

 

一方ましろは少し離れた所から4人のやり取りを見ながらも、少し浮かない表情をしていた。

 

 

『救世主として持て囃されて……さぞ良い御身分だなぁ……! 所詮、持っている物を持っている奴等に……持っていない者達の……苦しみや悔しさなど……一生分かる筈もない! お前達……はいずれ……味わうだろう……! 持っていない者達の持つ……闇を……』

 

 

ましろの脳裏にダークブロッサモンの言葉が、消えては浮かんでいた。

 

 

ディーアークの画面越しからハックモンも、ましろの様子を気にかけていた。

 

 

彼女達はダークブロッサモンの語った『自身のパートナーデジモンと全てを1つにして得た力』を聞いて、直ぐに『あの力』の事を言っていると同時に気付いてしまっていた。

 

 

それはーー『このデジモンをここまで歪めてしまったのは、自分達を含めた『あの冒険』を共にした5組である』と言う事。

 

 

確かにダークブロッサモンが七深を襲った切欠は偶然的ではあるが、結果的にそれを加速させてしまったのは、自分達の『あの力』の存在である事を考えると、結果的に複雑な感情がましろの心中を支配していた。

 

 

『ましろ』

「ハックモン?」

『ましろは……あのままダークブロッサモンと七深が1つになっても良かったと思っているのかい?』

「……っ! そんな事は無いよ! 七深ちゃんは……大切な『仲間』だから。 見捨てる何て出来ないよ」

『それでいいんだ』

 

 

ハックモンはましろの気持ちを聞き、優しく温かい眼差しを向ける。

 

 

『正直、こんな事を言っても慰めになるかは分からないのは自分でも分かっている。 ……でも、それを承知の上で聞いてほしい。 ましろ、君は本当に心優しい少女だ。 だからこそ、君と私は七深や皆を守る為に奴と戦った』

 

 

ましろはハックモンの言葉を黙って聞いている。

 

 

『ましろ。 私は君に自分の信じる気持ちの儘に歩んでほしいと思っている。 若し悩んだり困ったりするなら……共に探して行こう』

「ハックモン……有り難う」

 

 

ましろは少し落ち着いた様子で、ハックモンに礼を述べる。

 

 

「しろちゃーん! そろそろ練習、再開するよ!」

「うん。 今行くよ」

 

 

ましろは七深達の方に向かう。

 

 

(ましろ……その優しさを忘れないでくれ)

 

 

ハックモンは内心でそんな気持ちを抱きながら、ましろ達の練習風景を見守っていた。

 

 

 

 

☆☆

 

 

 

 

とある高層マンションの近くの広場のベンチにて、六花は物思いに考えていた。

 

 

(香澄さん……やっぱり凄いなぁ……)

 

 

“『『グレイド……スラッシュ!!』』”

“『グオッ……馬鹿……な……』”

 

 

(それに……ましろちゃん)

 

 

“『セイバーハックモン』”

“『レッジストレイド!!』”

“『グエエエエーー!?』”

 

 

脳裏に浮かんだのは、少し前に行った『ガールズバンドカーニバル』の一件で隠れて見ていたデジモン騒ぎと、それをパートナーデジモンと共に鎮圧する2人の姿。

 

 

その時の姿があの時の六花にとっては、まるで『英雄』の様に見えていた。

 

 

(でも……私にはどうあったってなれない)

 

 

しかし今の六花にとって、2人の姿は『憧れ』であると同時に、『己の惨めさ』を痛感させられる程に、眩しくて手の届かない、遠い存在となっていた。

 

 

(私にも……『あの力』があれば……)

 

 

そして六花の脳裏に、その後に出会った2人の存在が浮かぶ。

 

 

 

 

『貴女がアサヒ・ロッカさんね?』

『あのどちら様ですか?』

『申し遅れました。 私はガールズバンド、『RAISE_A_SUILEN』のプロデューサー、チュチュです。 そして……』

『僕はアンジェロ。 RAISE_A_SUILENのマネージャーを担当しているよ』

『わ、私に一体何の様で……』

『貴女の事は、マスキングから聞いているわ』

『ますきさんから?』

『あぁ。 彼女の話を聞いて、僕もチュチュも君に興味を抱いてね。 こうして声を掛けた訳さ』

『御言葉ですけど……私は其処まで大した腕前の人では無いです。 それじゃあ……』

『トヤマ・カスミとクラタ・マシロ』

 

 

立ち去ろうとした六花の足が止まる。

 

 

『貴女は疑問に思っているでしょう? 何故彼女達が、彼処までに強いのか?』

『……あなた達は香澄さん達の何を知っているんですか?』

『『全て』……と言ったら?』

 

 

チュチュの言葉に六花の瞳が揺れ動く。

 

 

そしてアンジェロは、六花に1枚のメモ用紙を渡す。

 

 

『これ……』

『其処には僕とチュチュの住んでいるマンション、彼女のスマホの電話番号が書いてある』

『本当はもう少しTalkをしたいのだけど、私達にも貴女にもSomething があるし、改めて機会の場を設けて話した方が良いと判断したのよ』

『まぁ、これは強制と言う訳では無いから、興味が無いなら無理に来なくても良い』

 

 

そう言うと、2人は踵を返して六花の下から離れて行き、途中で足を止めて振り返る。

 

 

『最後に少しだけ。 君はもう少し、自分の感情のコントロールの仕方と、自分の意志を徹底的に貫く事を覚えた方が良い』

 

 

アンジェロはそう言って、再びチュチュと共に立ち去って行った。

 

 

 

 

(『自分の感情のコントロールの仕方と、自分の意志を徹底的に貫く事を覚えた方が良い』……か)

 

 

アンジェロの言葉が六花の中で強く反響している。

 

 

やがて意を決した六花は、自分のスマホを取り出して、登録した番号に掛ける。

 

 

『その様子……Answerは見付けたみたいね』

「……はい。 今、チュチュさんのマンション近く前まで来ている所です」

『OK. 丁度部屋には他のMemberも揃っているから、付いたらパレオの案内で此方に来なさい。 待っているわ』

 

 

チュチュの連絡が切れる。

 

 

(私は変わりたい……! このままこんな所で終わりたくない!)

 

 

それを確認した六花は迷う事無く、チュチュのマンションへと進んで行ったのであった。




久し振りのモニカ編でした……。
正直、今まで書いた話の中では一番文字数が長いです。

因みに作中のダークブロッサモンがましろとハックモン達に言った死に際の呪詛(?)とも呼べる発言。

ネタバレするとましろとハックモン、そして香澄とドルモンはこれを後々この意味を身を持って味わう事となります。

そしてさらっと登場した謎のキャラ・アンジェロ君。
お察しの方もいますが、本編開始時から度々チュチュ様と会話していた存在です。

最も、これは仮の姿。
本当の正体は……だいぶ先になる為、まだ秘密です。
敢えて本当の正体に対する私の感じた印象を述べるなら、『良い意味でも悪い意味でも、『珠手ちゆ』と言うキャラを象徴している存在』です。
2回目ですが、本当の正体はまだ秘密です。
明かされるまでは、皆様なりに予想して見て下さい。


それでは今回登場したデジモンの紹介です。




セイバーハックモン


レベル:完全体
タイプ:竜人型
属性:データ


ましろのハックモンが進化した完全体の竜人型デジモン。

長きに渡る旅路からデジモンとの出会いや別れを繰り返し、いくつもの修羅場を潜り抜けて絶え間なく起こるデジタルワールド内の紛争に武力介入し戦闘停止を求めつつ、被害にあった現地デジモンの救済にあたってきた。

その結果は全て成功とはならず、悲惨な光景を前に流した涙はセイバーハックモンを強くし、次に助けを求むデジモンへ懸命に手を伸ばす。また、両足が刃ながらに2足歩行を可能とし、両腕と尻尾に紅の刃が生まれ、全身刃の攻撃的なスタイルとなり、胸のクリスタルは努力を欠かさず力を磨き上げた証の結晶である。

必殺技は跳び蹴りの姿勢から足の刃で敵を突き刺し貫く『レッジストレイド』、マシンガンのように口から炎弾を連射し敵を焼き尽くす『メテオフレイム』。
尻尾と両腕に装備された三つの赤い刃で斬りかかる『トライデントセイバー』は、クロンデジゾイドを纏った敵であろうと容赦なく割断する。


ダークブロッサモン イメージCV:上田燿司さん(代表作『リコリス・リコイル』吉松シンジ,『BLEACH』二枚屋王悦、『機動戦士ガンダム 水星の魔女』ケナンジ・アベリー)


レベル:完全体
タイプ:植物型
属性:ウイルス


本作オリジナルデジモン(正確にはオリジナル派生デジモン)。
農薬関連のデータや悪質なコンピューターウイルスを取り込んだ事によって全身が紫色に変色したブロッサモンの亜種。
性格はブロッサモンと違ってかなり凶暴になっている。
必殺技は、スパイラルフラワーの強化版『スパイラルフラワーⅡ』と、口から猛毒の息を相手に吐き付ける『ポイズンブレス』。
因み余談ではあるが、今作で登場したオリデジの中では、初めてチュチュが作り出したパターンでは無い個体である。

裏話

このデジモン、実は私が最初に考えたオリデジだったりします。
元々は別な植物系のデジモンを登場させる予定でしたが、偶々自分のパソコンのデータ整理をしている時に、このデジモンの設定データを見付けて見返していたら、『これ、少しリメイクすればイケルかも』と考えた結果、この様な形で登場するに至りました。

尚、如何して今回の敵が植物系デジモンになったのかと言うと、公式のMorfonicaの『ALIVE』のカバーを聴いて、『ALIVE→リコリコ→彼岸花→植物』と言う形で植物系デジモンになったのでした……。

因みに作中でダークブロッサモンによって下着姿にひん剥かれた透子ちゃんの件ですが、元々初期プロットでは全裸になる予定でしたが、『流石にやり過ぎ』と思って下着姿に変更されました。

更に言えば、今作でのダークブロッサモンと七深の関係性のモデルは、『リコリコ』における千束と吉松の関係をイメージして書きました(七深→千束、ダークブロッサモン→吉松)。


それでは之にて、失礼致します。

あなたがバンドリのボーカル組の中で好きなキャラは、誰ですか?

  • 戸山香澄
  • 湊友希那
  • 美竹蘭
  • 丸山彩
  • 弦巻こころ
  • 和奏レイ(レイヤ)
  • 倉田ましろ
  • 高松燈
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