Digital_Dream!   作:睡眠タイム

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久し振りの投稿。
漸くのさよひな回です。

元々、今作におけるさよひなの設定は、初期の頃から既に決まっていました。

その為、今回の話は2人の関係をより一層深める感じの物になっています。

それもあって何度も書いては書き直しを繰り返した結果、此処まで遅くなってしまいました……。

それでは久し振りの最新話、楽しんで下さい。


第20話 姉妹の満開

 

 

「御姉ちゃ~ん! 早く早く~!」

「日菜、そんなに急かさないの!」

 

 

日菜の陽気な声に、紗夜は注意しつつもその表情は楽しそうな物だった。

 

 

現在2人が来ているのは、東京の都市部から離れたとある山奥。

 

 

何故2人がこんな場所にいるのかは、2日前に遡る。

 

 

 

 

☆☆

 

 

 

 

「御姉ちゃ~ん!」

 

 

氷川家の紗夜の部屋に突然、日菜が飛び込んで来る。

 

 

「日菜……部屋に入る時はノックをしなさいって、言っているでしょ……」

「それは謝るけど……それよりも大変何だよ!」

「一体何なの……?」

「今日商店街で福引きがあってね。 私も面白そうでやってみたら、これが当たっちゃったの!」

 

 

そう言って日菜が見せて来たのは、2枚のチケットだった。

 

 

「『ペアで行く2泊3日の温泉旅行』……?」

『そっ! しかも1等賞だぜ!?』

「ねっ? 一緒に行こうよ~!」

「随分唐突ね……。 大体、私じゃなくてもパスパレの皆さんや他の人を誘えばいいじゃない……」

「それが彩ちゃんも千聖も御仕事で無理だし、麻弥ちゃんもイヴちゃんも用事や部活の大会に向けての練習があって無理なの……」

「そうは言っても……私にもRoseliaの練習があるから……」

 

 

その時、突然紗夜のスマホが鳴ったので、紗夜は手に取る。

 

 

「湊さん?」

 

 

紗夜は直ぐにRoseliaのグループChatを確認すると、其処には『此処の所、喉の調子が悪くて病院に行ったら、『暫くの安静が必要』と医師に言われた為、少しの間練習を休みにする』と言うメッセージが来ていた。

 

 

「湊さん……」

 

 

紗夜は直ぐに様子を気にしてメッセージを送ると、『今回は少し重くて、完治には短くても4、5日は懸かる』との返信が届いた。

 

 

これによって、Roseliaは実質数日間の活動休止を余儀無くされてしまったと言う事である。

 

 

友希那からは謝罪のメッセージが来ており、紗夜は丁寧に『完治の為に、ゆっくり休んで下さい』と言う主旨のメッセージを送ると直ぐにスマホを置き、ルナモンと相談する。

 

 

『どうするの紗夜?』

「そうね……。 折角だし行ってみようかしら?」

「本当!? やった~!」

 

 

紗夜の言葉を聞き、日菜が大きく喜ぶ。

 

 

「大げさね……」

「だって此処の所、家と学校以外で一緒に居られる時間が無かったんだもん。 嬉しいに決まってるじゃん!」

 

 

紗夜は日菜の言葉で此処最近を振り返って、思い直す。

 

 

『旅行かぁ……楽しみだぜ』

『確かにこの世界に来てから……私達、あんまり遠い所とかに行った事無いもんね』

 

 

コロナモンとルナモンの言う通り、ガールズバンドメンバー達のパートナーデジモン達は、パスパレの芸能活動の関係で遠方のロケなどに同行するコロナモンとテイルモンを除けば、基本的に人間界での行動範囲がこの都内位しか無い者の方が多い。

 

 

ルナモンもその中の1体である為、人間界に来てから、少し遠くの方に行くのが初めてなのもあって、内心嬉しさを隠しきれない様子だった。

 

 

そして翌日、つまり前日に万全な準備を終えた2人と彼女達のパートナーデジモンは、こうして今に至るのであった。

 

 

 

 

☆☆

 

 

 

 

「それにしても、此処は空気がおいしいわね」

「ええ。 それに都市部と違って、静かで落ち着くわ」

 

 

歩きながら周りの景色を見るルナモンは、この場所の澄んだ空気と心地良い雰囲気を堪能している。

 

 

「……紗夜。 日菜の事……」

「有り難うルナモン。 ……でも良いのよ。 仮に結ばれたとしても、それでハッピーエンドで終わる程、現実は甘くない」

「……確かにそうだけど……でもそれじゃあ、紗夜が可愛そうよ……」

「あの子の幸せの為なら、私はこの位傷付いても構わないわ」

 

 

そう語る紗夜の姿を、ルナモンは切なそうに見ている。

 

 

 

 

氷川紗夜と氷川日菜。

 

 

 

 

この双子の姉妹の関係は少し特殊であり、同時に複雑な物であった。

 

 

 

 

幼い頃から紗夜の事をとても慕っていた日菜は、紗夜が興味を持って始めた物事には殆どと言って良い程に関わっていた。

 

 

しかし『努力型』の紗夜に対し、『天才型』の日菜はその持ち前の才覚で、あっさり紗夜の積み上げてきた物を乗り越えて行った。

 

 

(私が何をやっても、日菜は直ぐに私の築いた物を壊して、一歩先に向かってしまう)

 

 

何時しか紗夜は日菜の天才的な才覚に対して、強烈なコンプレックスと恐怖を抱く様になっていた。

 

 

そしてある日を境に、紗夜は日菜の事を避ける様になり始めた。

 

 

日菜の方も、紗夜が避ける原因が自分である事を知ってからは、姉との接し方に戸惑う様になり、2人の関係はより拗れていった。

 

 

そして2人がデジタルワールドに飛ばされ、それぞれのパートナーデジモンであるムンモンとサンモンーーーー後のルナモンとコロナモンに出会ったのは、そんな時であった。

 

 

日菜は持ち前の明るさで自身の使命を受け入れる一方で、紗夜は冷静さを装いつつも、日菜との関係性に加え、『いきなり見知らぬ世界に連れてこられた挙げ句、世界を救って欲しいと言う無理難題を押し付けられた事』や『元の世界に帰れるのか』と言う不安を抱えていた事もあって、情緒不安定な面を見せる事が度々あった。

 

 

2人はデジタルワールドの冒険に於いても、度々揉めてしまう事もあったが、パートナーデジモンであるコロナモンやルナモン、そして同じ様に出会った香澄達の助けや支えもあって、最終的に和解した。

 

 

その後、デジタルワールドの冒険を終えて戻って来た2人は、まるで今までの空白を埋めるかの様に、今まで以上の仲の良い関係となっていた。

 

 

しかし、その関係に再び変化が訪れたのは、高校生になってからの事だった。

 

 

それは2人が高校1年の時の事。

 

 

その日2人は、日菜の提案で外に出掛けたのだが、その道中で柄の悪い男達に絡まれた。

 

 

その時は何とか撒いたのだが、去り際に男達の1人がこんな言葉を吐き捨てたのだった。

 

 

『うわぁ……君達2人共、姉妹でそんな関係なの? 気持ち悪いわ~』

『女は男に抱かれてナンボってもんだろ!』

 

 

あの時は怒りで気にも止めなかったのだが、男達を撒いた後に気持ちが落ち着いた途端、急に周囲の人間の目線に恐怖を感じてしまい、結局様子を察した日菜と共に、2人は帰宅した。

 

 

その後、日菜がパスパレの一員として芸能界デビューをした際、紗夜も喜んだ反面、過去の一件から不安な面を抱いていた。

 

 

(日菜は良くも悪くも純粋な子。 でも若し私の『この想い』が原因で、日菜が傷付けてしまったら……)

 

 

日菜が良くない輩の悪意に傷付き、壊されてしまう事は、紗夜にとって耐えられなかった。

 

 

だから紗夜は、自身の中の『日菜への想い』を封印しようとした(最も、ルナモンには直ぐにバレてしまったと言うのもあったが)。

 

 

(日菜の幸せな様子は、私にとっての幸せ。 私が今まで傷付けてしまった分、あの子には幸せでいて欲しいの。 その為なら、私は……!)

 

 

「御姉ちゃ~ん! 早く~!」

「え、えぇ!」

 

 

日菜の言葉で我に帰った紗夜は、直ぐに彼女の後を追って掛けていく。

 

 

(紗夜……。 紗夜だって、幸せになっても良いのに……)

 

 

ルナモンも複雑な表情を見せるも、直ぐに気を取り直して駆けて行ったのだった。

 

 

 

 

☆☆

 

 

 

 

「ようこそ。 当館にお出でいただき、誠に有り難う御座います」

 

 

暫く歩き続けて、漸く目的地である旅館に辿り着いた2人は受付で手続きを済ませると、指定された部屋へ向かう。

 

 

そして部屋に着くと、2人は自分達の荷物を置き、ゆっくり寛いだ。

 

 

「大きい部屋だね! 御姉ちゃん!」

「そうね……」

『如何したんだ紗夜? 調子悪いのか?』

「いえ……何でも無いわ」

 

 

コロナモンからの問い掛けに、紗夜は少し歯切れが悪そうな様子で答える。

 

 

「ねぇ御姉ちゃん! 一緒に温泉入ろう!」

「え、でも……」

「旅行に来て温泉に入ら無い何て損だよ! さぁ行こ~う!」

「ちょ……日菜ってば!」

 

 

紗夜は入浴の道具を準備して、日菜に半ば強引に誘われる形で彼女の後を追った。

 

 

 

 

☆☆

 

 

 

 

「う~ん。 やっぱり旅行の醍醐味と言えば、温泉だね~!」

「えぇ……そうね」

 

 

日菜の言葉に紗夜も、静かに同調の意を示す。

 

 

(日菜……大きくなったわね)

 

 

紗夜は日菜まじまじと見ながら思う。

 

 

身長は自分より少し低いけれど、タオル越しから覗かせるその裸体は、多少の幼さを残しつつ、全体的にすっかり『女性』としての丸みを帯びた体となっていた。

 

 

「きゃ~御姉ちゃん、エッチ~♪」

「だ、誰が『エッチ』よ!」

 

 

紗夜は自身の中の煩悩を必死に抑えようと、内心で素数を数えた。

 

 

そして気持ちがある程度落ち着いた紗夜は、そのまま温泉に浸かった。

 

 

「ふう……」

 

 

一息付いて紗夜は、天を見る。

 

 

“『でもそれじゃあ、紗夜が可愛そうよ……』”

(……何を弱気になっているのよ。 私は日菜の幸せの為なら、『この想い』を封をするって決めたのに……!)

 

 

紗夜は厳しく自身に言い聞かせる。

 

 

「ねぇ、御姉ちゃん」

「日菜……!」

 

 

 

 

次の瞬間、日菜の唇が紗夜の唇と重なった。

 

 

 

 

やがて唇が離れ、紗夜は突然の事に呆然とし、日菜はゆっくりと口を開く。

 

 

「御免ね御姉ちゃん。 突然こんな事をしちゃって……。 私、本当は気付いていたんだ。 御姉ちゃんが『何かに悩んでいる事』に……」

 

 

日菜は更に言葉を続ける。

 

 

「『私、御姉ちゃんに何か悪い事しちゃったのかな?』、『御姉ちゃんは私の事、本当はもう嫌いになったのかな?』……そんな気持ちを抱きながら、この日まで過ごしていたの……」

「日菜……」

 

 

パートナーデジモン達と再会してから、日菜自身、其処まで思い悩んでいる様子を見せた事がなかった為、紗夜は驚いていた。

 

 

「私……悔しくて、苦しかった。 折角『あの冒険』で御姉ちゃんと仲直り出来たのに……御姉ちゃんの苦しむ姿を助けて上げられない自分が嫌で……ついこんな乱暴な事しちゃった……」

「違うわ日菜! 貴女は……!」

「……本当に御免ね」

 

 

日菜は浴槽から出ると、頭だけ軽くシャンプーで洗い、その場を後にした。

 

 

(日菜……違うの。 貴女は何も悪くない。 悪いのは……私の弱さなの)

 

 

本心を伝えられずにすれ違ってしまった事への後悔を前に、紗夜は静かに涙を流した。

 

 

 

 

☆☆

 

 

 

 

『日菜、落ち着いたか?』

「まぁ……ある程度はね」

『俺も日菜と一緒に謝る! だから……そんな悲しそうな顔はしないでくれよ……』

 

 

あの後温泉から上がった日菜は、自身のスマホと財布、コロナモンの入ったディーアークと共に、少し遠くの森の中に来ていた。

 

 

「……私、また同じ過ちを繰り返しちゃった」

 

 

日菜は続ける。

 

 

「前の冒険の時も……御姉ちゃんの気持ちを分かっていたのに、ちゃんと向き合わなかった所為で、御姉ちゃんにあんな『残酷な罪』を背負わせてちゃった……」

 

 

日菜の脳裏に、過去の記憶が蘇る。

 

 

『イヤアアアアアアアー!! ルナモン! ルナモーーン!』

 

 

『あの時の紗夜』の悲痛な様子を、日菜は今でもはっきりと覚えている。

 

 

だからこそ、日菜は『あの冒険』で紗夜と和解して移行、『自分とは違う相手や周囲の状況を考えない発言や行動をしてしまう』事を多い自身なりに、『紗夜の気持ちだけは理解し合える様になりたい』と、少しずつ努力を重ねて行った。

 

 

その中で芽生えていった『紗夜への本当の想い』。

 

 

日菜はそれを受け入れ、紗夜に歩み寄ろうとしていた。

 

 

「……結局、私の独り善がりだったのかな?」

『……そんな事言うなよ』

 

 

日菜の言葉に、コロナモンが口を開く。

 

 

『俺は不器用だから上手く説明する事何て出来ねぇけど……でも、これだけははっきり言えるぜ。 日菜、お前はあの時と比べてちゃんと心身共に成長しているぞ』

「コロナモン……」

『確かに姉ちゃんである紗夜と比べりゃ、短い付き合いかもしれねぇけど……日菜の事は大切に想う気持ちは誰にも負けてねぇぞ』

 

 

日菜はコロナモンの言葉に、大きく目を見開いた儘、聞いている。

 

 

『だから日菜。 明るく元気な様子でいてくれよ。 若し崩れそうなら、俺も一緒に支えてやるからよ』

「……有り難う。 コロナモン」

 

 

日菜の言葉にコロナモンも微笑む。

 

 

意を決した日菜が紗夜達の所に戻ろうと一歩踏み出したその時だった。

 

 

 

 

キュオオオ!!

 

 

 

 

「! キャア!?」

 

 

突然、何処からともなく現れた無数の糸の様な物が日菜の体を縛り上げた。

 

 

『何だこの糸!?』

「コロナモン……キャッ!」

 

 

日菜はコロナモンをリアライズしようとしたが、更に飛んできた糸に弾かれ、自身のディーアークを落としてしまう。

 

 

『日菜! 日菜!』

「コロナ……モン……キャアアアーー!!」

『日菜ーー!!』

 

 

コロナモンの叫びも虚しく、無数の糸に拘束された日菜は強力な力に引っ張られ、そのまま森の更に深い所に姿を消したのだった。

 

 

 

 

☆☆

 

 

 

 

「日菜、いるかしら?」

 

 

温泉から上がった紗夜が部屋に戻るも、其処に日菜の姿は無かった。

 

 

「いないわね……」

『紗夜、探してみましょう』

「でも……私は……」

『……紗夜の気持ちも分かるわ。 でも若し今放置してたら、後悔するよ』

「……そうね。 有り難うルナモン」

 

 

ルナモンの言葉に、紗夜は意を決すると直ぐに着替えを済ませて、日菜の捜索に当たるのであった。

 

 

館内を捜すもいない事を確認した紗夜は旅館の外へ出て、捜索の範囲を広げる。

 

 

「駄目……見付からないよ」

「スマホにも連絡したけど……全く繋がらないわ」

 

 

紗夜とルナモンは途方に暮れた様子を見せる。

 

 

 

 

『ーー! ーー!』

 

 

 

 

「あれ?」

 

 

ルナモンの長い耳が、ピンと立った。

 

 

「ルナモン?」

「今、微かに何か聞こえたわ」

 

 

ルナモンの言葉を信じ、紗夜も黙って耳を傾けた。

 

 

『ーー夜! ーーモン! 紗夜! ルナモン!』

「コロナモンの声だわ……!」

「こっちだわ!」

 

 

ルナモンが声の聞こえる方に先行し、紗夜もその後を追って向かう。

 

 

「あれは……!」

 

 

紗夜とルナモンが見付けたのは、日菜の持つライトイエローの縁取りのディーアークだった。

 

 

「コロナモン! 大丈夫!?」

『! 紗夜! ルナモン!』

 

 

紗夜は日菜のディーアークを起動させ、コロナモンをリアライズさせる。

 

 

「何があったの?」

「済まねぇ……! 日菜が……日菜が攫われた!」

「日菜が……!?」

 

 

紗夜はコロナモンの言葉に、動揺を隠さずに詰め寄る。

 

 

「日菜は……日菜は大丈夫なの!?」

「分からねぇ……! 突然の不意打ちと物凄ぇ不快感に襲われちまって、まともに戦えもしなかった……! 俺が付いていながら、情けねぇぜ……!」

 

 

紗夜はその場に崩れ落ちた。

 

 

「私の所為だわ……。 あの時私があの子の気持ちにちゃんと向き合っていれば……!」

「落ち着いて紗夜! コロナモン。 さっきその相手と遭遇した時、他に変わった様子は感じなかった?」

 

 

ルナモンの言葉にコロナモンは、自身の頭を稼働して思い出す。

 

 

「そう言えば……アイツにあった時、鈴の音がしてたんだよ。 そっから急に物凄ぇ不快感に襲われちまったんだ」

「鈴の音……」

 

 

ルナモンは少し思案した後、紗夜に呼び掛ける。

 

 

「紗夜! ……? 紗夜!」

「日菜……日菜……」

 

 

ルナモンの呼び掛けに何の反応も示さず、紗夜は小さく日菜の名前を呼ぶだけであった。

 

 

「……! ティアーシュート!」

 

 

次の瞬間、意を決したルナモンは紗夜の顔に向けて水球を放つ。

 

 

紗夜は水球で濡れた顔のまま、ルナモンを茫然と見ている。

 

 

「ルナモン……?」

「少しは頭が冷えた? そんな所でポーッとしていたって、日菜が戻って来る訳が無いでしょ。 今日菜を助けられるのは、紗夜だけなのよ!」

「……でも私、あの子の『私への気持ち』……拒絶しちゃって……」

「私は『恋愛』に対しては、あんまり良いアドバイスは出来ない。 けど、これだけはハッキリと言うわ。 紗夜の本当の気持ちは如何なの?」

「私の本当の気持ち……?」

「言っておくけど、『世間体』とかそう言うのは今は無しだからね」

 

 

ルナモンの言葉に紗夜は考える。

 

 

(私にとっての日菜……)

 

 

 

 

紗夜の脳裏に浮かぶのは、今までの人生の中での日菜との思い出。

 

 

それを思い出す度に、露わになっていく『本当の想い』。

 

 

日菜の幸せを想い、ずっと押し殺していた気持ち。

 

 

ふと周りの風景が、黒一色に染まる。

 

 

『御姉ちゃーーん!』

 

 

無数の黒い糸に何重にも拘束される日菜と、彼女に伸びてくる黒い手。

 

 

『……日菜ーー!』

 

 

紗夜は駆け出す。

 

 

そして手に所持していた嘗て扱った事のある武器(ハーケン)を振るい、日菜を拘束していた糸と伸びてくる黒い手を切り裂く。

 

 

『御姉ちゃぁん……』

 

 

一糸纏わぬ姿の日菜を、同じく一糸纏わぬ姿となっていた紗夜は優しく受け止める。

 

 

(私は……もう逃げない……!)

 

 

眩い光が2人を包み込んだ。

 

 

 

 

数分経って、紗夜は口を開いた。

 

 

「私は……日菜の事が……好き……! 『妹』としても、『1人の女性』としても……愛しているわ!」

 

 

紗夜の真剣な眼差しと強い意志の籠もった言葉を、ルナモンはただ黙って見ている。

 

 

「御免なさいルナモン。 そして有り難う。 私はこの気持ちを偽る事はしないわ。 だから、力を貸してくれる?」

「紗夜。 私は紗夜のパートナーデジモンよ。 何時如何なる時も、私は紗夜の傍にいるわ」

 

 

紗夜はルナモンの言葉を受けて立ち上がる。

 

 

「行くわよルナモン!」

「えぇ!」

「あっ! 俺を置いてかないでくれよーー!」

 

 

そのまま3人は駆け出して行った。

 

 

 

 

☆☆

 

 

 

 

「ん……んうぅ……?」

 

 

日菜は暫くして意識を取り戻した。

 

 

「此処は……?」

 

 

体を思う様に動かせない事に気付き、視線を向けると自身の体が太い糸で何重にも縛られているのに気付いた。

 

 

「これは……」

 

 

その時、重い足音が耳に届いたので、振り向くと其処には、上半身は牛、下半身が蜘蛛の様な見た目の巨大な異形の姿が存在していた。

 

 

(デジモン……!)

 

 

日菜は咄嗟に身構えるが、身動きが取れない上に相棒のコロナモンはディーアークと共に今はこの場にいない為に、日菜は打つ手無しが無い状況であった。

 

 

その時、足に何かが当たる感触を覚え、其方に視線を向けた日菜は息を呑んだ。

 

 

 

 

彼女の足に当たった物ーーーーそれは、頭部の人骨だった。

 

 

 

 

「ルフォフォ……オンナ……ヒサシブリ……!」

 

 

目の前のデジモンの言葉に、日菜は大方の背景を察した。

 

 

恐らくこのデジモンは人間界に来た時から、自分と同じ様に迷い込んだ人間を捕らえて、その身体を貪り尽くしていたのだろう。

 

 

(……何だか、『冒険してた頃』を思い出すなぁ……)

 

 

日菜は内心で呟く。

 

 

日菜自身、デジタルワールドでの冒険と戦いを共に経験した他の4人と同様、『死』に対してはある程度達観している面があった。

 

 

若し今の日菜に心残りしている事があるとすれば、それは唯一つ。

 

 

 

 

(御姉ちゃんと仲直りしたかったな……)

 

 

 

 

最もそれも叶わないだろうと自嘲し、日菜は抵抗を諦めて目を閉じる。

 

 

異形の大きな右手が、日菜に目掛けて伸びようとした。

 

 

 

 

「ティアーアロー!」

 

 

 

 

その時、何処からともなく、美しい氷の矢が飛んできて、敵のボディに命中する。

 

 

「今の……「日菜ーー!」御姉ちゃん!」

 

 

日菜が視線を向けた先には、レキスモンと紗夜、コロナモンが此方に向かってくる姿があった。

 

 

「ヴォオオ……!」

 

 

相手のデジモンは、荒々しいで視線を紗夜達に移す。

 

 

「ギュウキモン。 完全体。 魔獣型デジモン。 ウィルス種。 必殺技は八束染縛(やつかせんばく)に魔塵瓢箪(まじんびょうたん)、千砲土蜘蛛(せんほうつちぐも)……」

 

 

紗夜は自身のディーアークでギュウキモンの情報を調べる。

 

 

「紗夜! 此処は私に任せて日菜を!」

「分かったわ!」

 

 

レキスモンに促され、紗夜とコロナモンは日菜の下へ向かって行く。

 

 

「ヴォオ……「ティアーアロー!」ヴォ!?」

 

 

紗夜とコロナモンを狙おうとしたギュウキモンであったが、即座にレキスモンが氷の矢を放って牽制する。

 

 

「貴方の相手は私よ!」

 

 

レキスモンはそのまま、ギュウキモンと交戦を再開し始める。

 

 

「日菜! 大丈夫!?」

「日菜、少し待ってろよ……!」

 

 

一方日菜の下へ駆け寄った紗夜とコロナモンは、彼女を拘束する何重もの太い糸を協力して解き、日菜を開放する。

 

 

「御姉ちゃん……」

 

 

彼女の無事を確認し、2人は安堵を浮かべる。

 

 

 

 

「キャアアーー!」

 

 

 

 

悲鳴の方を振り向くと、レキスモンが吹っ飛ばされる姿があった。

 

 

「レキスモン!」

「! 日菜!」

「う、うん……!」

 

 

 

 

――EVOLUTION

 

 

 

 

「コロナモン進化! ファイラモン!」

 

 

コロナモンは進化するとレキスモンの下へ加勢に行く。

 

 

「日菜、こっちを向きなさい」

 

 

紗夜の声に日菜の体がビクンと跳ね、彼女は恐る恐る体を向ける。

 

 

そして振り向いた次の瞬間ーー日菜は紗夜に抱き締められていた。

 

 

「御姉……ちゃん?」

「御免なさい。 でも聞いて欲しいの」

 

 

紗夜は続けて語る。

 

 

「正直に言うとこの気持ちを自覚した時、私は怖かったわ。 女の子である事に加えて、実の妹である貴女をそんな目で見てしまって自分が。 それによって周囲から貴女が差別や迫害を受けてしまう事が……とても怖かった。 傷付くのは私だけで充分だし、何より……貴女には幸せになって欲しいと思って、この気持ちをずっと封印するつもりだった。 だからさっきの温泉での貴女の行動にもつい乱暴に対応してしまったの」

 

 

でもね、と紗夜は更に続ける。

 

 

「貴女が行方不明になって……探しても見付からない中で、私の心の中に後悔と同時に堪えられない程、貴女への想いがどんどん強くなっていて……『あぁ。 私はこんなに貴女の事が大事なんだなぁ』って思えた。 日菜、今この場で伝えるわ」

 

 

紗夜は改めて日菜と真正面に向き合い、口を開く。

 

 

 

 

 

 

「私、氷川紗夜は……氷川日菜をこの世の誰よりも愛しています」

 

 

 

 

 

 

日菜は紗夜の言葉に大きく目を見開き、恐る恐る問い掛ける。

 

 

「御姉……ちゃん。 冗談じゃないよね?」

「この状況の中、冗談や嘘でこんな事を言う訳無いでしょ?」

 

 

その言葉に日菜の目から、涙が流れてくる。

 

 

「わた……っ! ……私も、御姉ちゃんが好き……! 愛してる……! これから……も……御姉ちゃんと……一緒にいたい!」

 

 

日菜は涙と嗚咽混じりになりながらも、自身の気持ちを伝える。

 

 

「御免なさい日菜……。 私が臆病だった所為で、貴女には辛い想いをさせてしまったわね……」

「そんな事無いよ……! 御姉ちゃんは私の為を想ってたから、あんな様子だったんでしょ? 御姉ちゃんは……この世で1番大切で……最高の御姉ちゃんだもん!」

 

 

日菜の言葉に、紗夜は目頭が熱くなるのを抑える。

 

 

「ウワアア(キャアア)ー!」

 

 

2人が振り向くと、其処には倒れるファイラモンとレキスモン、そして獰猛な笑みを浮かべるギュウキモンの姿が映った。

 

 

「レキスモン!」

「ファイラモン!」

 

 

するとギュウキモンは標的を紗夜と日菜に定め、右腕を伸ばそうとし、紗夜は日菜を守ろうとする。

 

 

「ティアーアロー!」

「ファイラボム!」

 

 

その時、ギュウキモンの右腕に強い衝撃が走り、視線を向けると其処には辛うじて立っている状態のファイラモンとレキスモンの姿があった。

 

 

「ハァハァ……ハァ……2人の幸せを……壊させはしねぇぞ……!」

「紗夜達は……ハァ……私達が……守るわ!」

「……御姉ちゃん」

「えぇ」

 

 

紗夜と日菜はそれぞれのパートナーの隣に立つ。

 

 

「有り難う2人共。 あなた達のお陰で私は漸く本当の気持ちと向き合い、答えを見付けられたわ」

「ヴォヴォヴォ……!」

「ギュウキモン! 私達の本当の力、見せてあげるよ!」

「ヴォオオオオーー!」

「行くよ、御姉ちゃん!」

「えぇ!」

「やるわよ! ファイラモン!」

「あぁ!」

 

 

 

 

――MATRIX EVOLUTION――

 

 

 

 

その文字が紗夜と日菜のディーアークの画面に表示され、同時にディーアークが光を放ち、その輝きに呼応してファイラモンとレキスモンが光に包まれる。

 

 

 

 

「「ファイラモン(レキスモン)、超進化!」」

 

 

 

 

光に包まれた2体の姿が変化していく。

 

 

 

 

ファイラモンの方は体が一回り大きくなり、威風堂々とした鬣を蓄えた逞しい物へと姿を変えていく。

 

 

そしてレキスモンの方も仮面と甲冑を纏い、左腕に三日月の意匠が施された盾、右手にもハーケンが装備されていく。

 

 

 

 

「フレアモン!」

「クレシェモン!」

 

 

 

 

やがて光が収まると、其処には仲間の為にはどんな困難にも立ち向かう心の強さを持った二足歩行の獣人と、より一層美しくなった見た目の魔人の姿が現れた。

 

 

 

 

「ヴオオオオーー!」

 

 

激昂したギュウキモンは左腕に装備された大筒をぶっ放そうするも、先にそれを察知したフレアモンとクレシェモンはそれぞれのテイマーを守る様に抱き締めながら砲撃を回避すると、即座に空いた穴から外へ脱出する。

 

 

一方ギュウキモンも、直ぐに2体の後を追って這い出てくる。

 

 

「2人は下がって!」

「此処なら、存分に戦えるぜ!」

「ヴオオオオーー!」

 

 

そして戦闘が再開する。

 

 

お互いに完全体と言う事もあってか、そのぶつかり合いは激しく、紗夜と日菜の体にもそれぞれのパートナーの戦闘ダメージが反映されて、傷が付いていく。

 

 

「クッ……! あの巨体に似合わず、随分器用に動く……!」

「悔しいけど……状況は此方の方が不利ね……」

 

 

本領を発揮して戦っているフレアモンとクレシェモンも、一方的な物と化したギュウキモンの攻撃に苦戦を強いられていた。

 

 

「御姉ちゃん……」

(あの一方的な攻撃の絡繰りを如何にかしない限り、此方に勝ち目は無いわ)

 

 

紗夜は冷静に状況を見ながら内心思案し、目を見開く。

 

 

「日菜」

「……!」

 

 

紗夜は日菜に視線を向けると、日菜も紗夜の言いたい事を察して頷いた。

 

 

「「クレシェモン(フレアモン)!」」

 

 

クレシェモン達は紗夜達の方に視線を向けると、2人の目を見て察した。

 

 

「フレアモン!」

「分かった!」

 

 

その隙を付く様に、ギュウキモンが左腕の大筒から攻撃を放つ。

 

 

「紅蓮獣王波!」

 

 

フレアモンは拳に獅子の闘気と火炎を集中させて作った獅子を象ったエネルギー波を放ち、ギュウキモンの攻撃を相殺する。

 

 

それによって発生した煙幕が、互いの姿を隠す。

 

 

「ヴオオ……!」

「喰らえーー!」

 

 

ギュウキモンの真正面から、フレアモンが突撃をしようと現れる。

 

 

ギュウキモンも下半身の口部を開いて対応しようとする。

 

 

 

 

「ダークアーチェリー!」

 

 

 

 

その時、突然反対側から飛んで来た漆黒の矢が、ギュウキモンの右側の角の先にぶら下げた鈴を破壊した。

 

 

「ヴオオ!?」

「紅蓮獣王波!」

 

 

ギュウキモンは突然の事に動きを止め、その隙にフレアモンが獅子を象ったエネルギー波を放ち、もう片方の角の先にぶら下げた鈴を破壊した。

 

 

「ヴオオオオ!?」

「貴方の角の先の鈴は攻撃の時のみ、音を発する。 それによって発生する不協和音が私達の感覚を狂わせていた……。 だから貴方の攻撃を一方的な物にして有利な状況にしていた……」

「これでお前の無敵の絡繰りも使えないな」

「ヴヴヴ……!」

「今度は私達のターンよ!」

「倍返しにさせてもらう!」

「ヴオオオオーー!」

 

 

ギュウキモンは左腕の砲台から砲弾を放つが、先程のギリギリだった時とは違い、フレアモンとクレシェモンも余裕を持って交わす。

 

 

「ルナティックダンス!」

 

 

クレシェモンは舞う様なステップで間合いを詰め、両手に持った武器ーー『ノワ・ルーナ(ラテン語の『新月』)』を使った斬撃をギュウキモンに浴びせる。

 

 

「グオオオオ!? グオオ……!」

 

 

ギュウキモンは体勢を何とか立て直すと、下半身の口部を開いて攻撃をしようする。

 

 

「紅蓮獣王波!」

 

 

しかし、それより先にフレアモンが獅子を象ったエネルギー波を放ち、下半身の口部を封じる。

 

 

「ヴォ……ヴォ……!「こっちよ!」!」

 

 

ギュウキモンが視線を向けると、其処には『ノワ・ルーナ』を1つに組み合わせ、ボウガンのような形態に変化させて構えるクレシェモンの姿があった。

 

 

「アイスアーチェリー!」

「ヴオオオオー!?」

 

 

其処から氷の矢がギュウキモンの眉間を貫通し、ギュウキモンの体を凍結させて、巨大な氷像と化した。

 

 

「フレアモン!」

「止めだ! 清々之……咆哮! ウオオオーー!」

 

 

フレアモンが自身の火炎によって浄化力を込めた衝撃波を、咆哮と共に口部から放つ。

 

 

直撃を受けたギュウキモンは自身の最期を理解する事無く、粉々になって、静かにデータの粒子と化して霧散したのだった。

 

 

ギュウキモンが完全に消滅したのを見たフレアモンとクレシェモンは再び光に包まれ、元のコロナモンとルナモンに戻る。

 

 

「「コロナモーン(ルナモン)!」」

 

 

其処へ紗夜と日菜が駆け寄って来る。

 

 

「つ……疲れた……」

「有り難うコロナモン……」

「ルナモンもお疲れ様」

「紗夜……ボロボロだね」

「それは……お互い様でしょ」

「でも……何だか良い表情してるわ」

「……有り難うルナモン」

「見て御姉ちゃん!」

 

 

日菜の言葉に紗夜とルナモンが空を見上げると、其処には大きくて綺麗な満月が浮かんでいるのが見えた。

 

 

「綺麗ね……」

「うん……」

 

 

満月の神秘的な雰囲気と光が、まるで戦いを終えた紗夜とルナモン、日菜とコロナモンの2組を優しく労る様に照らしていた。

 

 

 

 

☆☆

 

 

 

 

チュンチュン……チュンチュン

 

 

「んぅ……」

 

 

鳥の囀りと明るい日差しの刺激で、ベッドで眠っていた紗夜の意識が覚醒する。

 

 

「此処は……「御姉ちゃん」?」

 

 

隣を見ると其処には、一糸纏わぬ姿の日菜の姿があった。

 

 

「日菜……?」

 

 

ふと見てみると、自身も日菜と同様に、一糸纏わぬ姿である事に気付く。

 

 

それと同時に、紗夜の脳裏に昨日の記憶が蘇ってくる。

 

 

(そうだわ……。 あの後、旅館に戻った私達は食事を済ませた後、で再び温泉に浸かって……その後、日菜の提案で一緒のベッドに寝て……)

 

 

その後の事を思い出し、紗夜の顔が真っ赤に染まる。

 

 

「アハハ。 御姉ちゃんってば、真っ赤な顔して『るんっ♪』てする程可愛い!」

 

 

日菜の発言に、紗夜は慌て布団を体に掛ける。

 

 

「ふふふ……。 私も御姉ちゃんと思いっ切り『あ~んな事』や『こ~んな事』したりで、結構楽しかったもん!」

「い……言わないで……//」

 

 

紗夜は昨日の夜の様子を更に意識してしまい、恥ずかしさのあまり顔がより一層と紅潮していっていた。

 

 

 

 

「でも、嬉しかったよ」

 

 

 

 

不意に背中越しに温もりを感じて振り返ると、同じく布団に入り込んだ日菜が此方を見ている。

 

 

「私の心や体に、御姉ちゃんの愛情がいっぱい注ぎ込まれていくのが分かって、本当に御姉ちゃんの妹であり、恋人になれて良かったもん」

「日菜……」

「御姉ちゃん。 私はもう、御姉ちゃん無しでは生きていけない。 だから……連れてって。 御姉ちゃんの見ている世界へ。 私、御姉ちゃんやコロナモン達と一緒なら、どんな所にだって付いていくよ」

「……日菜。 この世界は常に残酷よ。 全ての人が私達の関係を認めてくれるとは限らない。 これから先、迫害や差別を受ける事だって、あるかもしれないわ。 それに私だって、結構歪みのある人間よ。 そんな私でも、本当にいいの?」

「覚悟はとっくに出来ているよ。 私はどんな時でも、御姉ちゃんを愛して、信じているよ」

 

 

そう語り終えると、2人はお互いの唇を重ね合わせ、絡み合う

 

 

『私、決めたわ。 紗夜と日菜、2人と2人の幸せの為に、私自身の全てを捧げて守りたい。 コロナモン、貴方は如何?』

『愚問って奴だな。 俺も2人が信じて選んだ道を全力で支えるぜ』

『……コロナモンの口から、『愚問』って言葉が出たのは意外ね……』

『ウォイ!? 其処は普通、格好良い雰囲気で締めるだろ!』

 

 

そんな2体のパートナーデジモンの会話を余所に、紗夜と日菜は暫く甘い時間を過ごしていた。

 

 

 

 

☆☆

 

 

 

 

そして残りの旅行期間を楽しんだ2人は、丁度今旅館をチェックアウトして、帰路に立っていた。

 

 

「うう~ん、楽しかった~!」

「温泉や旅館の食事に景色……何だか名残惜しいぜ……」

 

 

日菜とコロナモンの様子に、紗夜とルナモンはほっこりとした様子で見ている。

 

 

「あっ! そーだ!」

 

 

すると日菜は紗夜に近付き、左手を差し出し、紗夜は首を傾げる。

 

 

「手だよ手! 恋人繋ぎしよ!」

 

 

その言葉に、紗夜は自身の右手を出し、日菜の左手を掴んだ。

 

 

「えへへ~♪」

「それで日菜、どっちの方向に行くの?」

「東!」

 

 

日菜は即答で答える。

 

 

「……如何してかしら?」

「お日様が昇る方向だから!」

「……分かったわ」

 

 

その時、太陽の日差しが強くなった事に気付き、2人と彼女達のパートナーデジモンは、日差しに視線を向ける。

 

 

 

 

その瞬間、4人の瞳に黄金に輝く人型の『何か』が一瞬だけ写る。

 

 

 

 

「あれは……」

 

 

 

 

しかし次の瞬間には、その『何か』はスーッと消えていった。

 

 

 

 

「御姉ちゃん……今の見た?」

「えぇ……」

「……あれって、『神様』か?」

「でも……綺麗だったなぁ」

 

 

そしてその瞬間、日菜は弾けた。

 

 

「……『るんっ♪』て来た~~!」

「日菜!?」

「行こう御姉ちゃん!」

「ちょ……ちょっと待ちなさ~い!」

 

 

そして2人と2体のパートナーデジモンは、その儘駆け出して行った。

 

 

 

 

その様子を、太陽がまるで2人の幸せな関係と信じる道を突き進む姿を、祝福している様に見ているのだった。




と言う訳でさよひなメイン回、如何でしたでしょうか?

少しだけこの作品の裏話を含めて話すと、実は元々この小説の初期案では、2代目テイマー組のポジションはポピパのメンバーになる予定でした……。
しかしそれだと、他のバンドからパートナーデジモンを付けるキャラを決める際に『偏りが出るな』と思い、香澄と有咲以外の3人は外す事となりました(因みに有咲のパートナーがワームモンだったのは、この初期案の名残りです)。

その後、ポピパ以外の面々のバンドリキャラのパートナーデジモンを考えた時に真っ先に思い付いたのが、ましろちゃんとさよひなの3名だった事もあって、今の形に落ち着く事となりました。

そして今作のさよひなの関係は、2人のパートナーデジモンを決めた時からある程度構想は練っていたので、更に突き詰めた結果が、今回の形と言う訳なのです。


因みに紗夜さんが作中で振るった『嘗て扱った事のある武器(ハーケン)』の正体は、『ルナモンの究極体』の『アレ』です。
そして、最後にさよひな&彼女達のパートナーデジモン達が見た黄金に輝く人型の『何か』の正体……これに関してはまだ秘密です(最も、読者の方の中にはある程度予想している方もおられるかもしれませんが)。


尚、作中での友希那さんの喉の不調の件は、今年の4月に起きた中の人の一件が元ネタです。


そして次回からは前にも言ってた通り、文化祭編(アニメ2期7話~9話)の突入になります。
此処の話からは、様々な展開が起こる予定です。


それでは最後に、今回登場したデジモンの紹介です。




クレシェモン


レベル:完全体
タイプ:魔人型
属性:データ


紗夜のルナモンが進化した完全体の魔人型デジモン。
体が柔軟で流麗な戦闘を得意とし、しなやかな動きで敵を討つと言われ、特に月の光を受けるとその力は倍増すると言われている。
必殺技は、舞うようなステップで敵を幻惑し、間合いを詰め、両手に持った武器“ノワ・ルーナ(ラテン語:新月)”を使った斬撃『ルナティックダンス』。
また、“ノワ・ルーナ”は1つに組み合わせることでボウガンのような形態に変化し、この状態から氷の矢を放つ『アイスアーチェリー』と、闇エネルギーの矢を放つ『ダークアーチェリー』の2つの技を繰り出すことができる。




フレアモン


レベル:完全体
タイプ:獣人型
属性:ワクチン


日菜のコロナモンが進化した完全体の獣人型デジモン。
威風堂々としたたてがみとその存在感により一見怖そうだが、仲間の為にはどんな困難にも立ち向かう心の強さを持っている。
必殺技は、拳に獅子の闘気と火炎を集中させて、獅子を象ったエネルギー波を放つ『紅蓮獣王波(ぐれんじゅうおうは)』と、炎をまとわせた拳と蹴りを、高速連続で敵に叩き込む格闘乱舞『紅・獅子之舞(くれない・ししのまい)』、そして全てを燃やす火炎によって浄化力を込めた衝撃波を、咆哮と共に口部から放ち、敵をデータ分解させる『清々之咆哮(せいせいのほうこう)』。




ギュウキモン


レベル:完全体
タイプ:魔獣型
属性:ウィルス


丑のような上半身と蜘蛛の下半身を持つ魔獣型デジモン。
残忍かつ陰湿な性格で、自分の姿を見た者を何日もかけて追い回し、夜になるたび背後から奇襲を仕掛ける怪異である。
巨体に似合わず、蜘蛛の足を器用に使い音も無く静かに移動する事が出来、攻撃するときのみ、ツノの先にぶら下げた鈴が音を発するため、ギュウキモンを見た者は常に鈴の音に怯えて過ごすことになる。
鈴が放つ不協和音は相手の感覚を狂わせ、ギュウキモンの攻撃を一方的なものにする。
必殺技は下半身の口部から吐き出す蜘蛛の糸で敵を拘束し、猛毒液を吐きかける『八束染縛(やつかせんばく)』と、腹部に備わったシリンダーを投擲し毒ガスを振りまく『魔塵瓢箪(まじんびょうたん)』。
ギュウキモンの接近を察知し遠くに逃げたデジモンは、左腕の武器『千砲土蜘蛛(せんほうつちぐも)』で確実に仕留める。

あなたがバンドリのボーカル組の中で好きなキャラは、誰ですか?

  • 戸山香澄
  • 湊友希那
  • 美竹蘭
  • 丸山彩
  • 弦巻こころ
  • 和奏レイ(レイヤ)
  • 倉田ましろ
  • 高松燈
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