S0-1 〈少年〉アリス
声がする。
懐かしい、兄さんの声。
「大丈夫、必ず守るから」
その声が遠くなっていく。
─いかないで……
「……僕を一人にしないでっっ……!!」
目の前には誰も居なかった。
あるのは朽ちた壁と窓から差し込む光だけ。
「……夢…。」
ふと横にあるひび割れた鏡を見る。
目の前には耳にかかる程度に長い白髪、蒼の目の少年しか居ない。
あれからどのぐらい経ったのだろう。
兄さん──アリシア兄さんはどこにいるのだろうか。
きっかけは喧嘩だった。
ただ些細な喧嘩だったのに……まさか、二度と会えないのか。
そうは思いたくない。思ったら永遠に会えない気がするから……
そもそもなんでこんな世界になったのか。
十数年前、もしかすると数十年前なのかもしれない。
世界は崩壊した。
〈第三次世界大戦〉というものがあったのである。
詳しくは知らない。しかし、その結果がこの世界である。
世界は朽ち果て、空は黒く覆われ、そして緑は失われた。
人々はほとんど死に絶えたのかもしれない。
そんな中、生きてきたのがアリスとアリシア兄さんだった。
でも───
と、その時外から男の声が聞こえた。
「アリス!そろそろ出るぞ」
その声を聞き、外に出る。
目の前には黒目黒髪短髪の背の高い男が立っていた。
名は〈マークス・アクスホード〉。
この人がアリスの居るグループのリーダーである。
マークスは悪意のない声で言った。
「また同じ夢を見たのか?」
「…うん。」
そう答えるとマークスは明るい声で励ましてくれた。
「ま、アリスのお兄さんに会うまでこれまで通り一緒に探してやるよ、行くあてもないからな」
つられて笑顔になる。
「さて、そろそろ行くか」
「はい!」
マークスに続き車に乗る。
車は4人乗りだが耐久性は高い。
だからこそ今まで動いているのだから。
車の後ろにはある少女が寝ていた。
名前は〈
手入れがされていない、腰まである白髪に赤目の、体が弱い女の子。
この子もマークスが拾った。見捨てられない、ただそれだけの理由で。
その横には〈ひさめ〉という少女が居る。紫の目をし、暗い赤の三つ編みの少女だがローブを着ている。彼女については自分も知らない。
そんなこんなで今マークスの周りには多くは無いが人が集まっている。
アカナ・オークフォードさんやナルス・イル・ワーレンさん、テクナ・ルーアイードさん、
アカナさんや雪さんは女性だが逆に助かっている。料理とか出来ないから女性陣に任せ切り・・・。
そんな信頼されているマークスが口を開く。
「アリス。」
と言われたので、「はい」と答えるとマークスは聞いた。
「もしアリスのお兄さんが見つかったとしたらどうするんだ?」
質問の意味を理解するまで少しだけ時間がかかった。
「それってつまりここから出ていくのか……って事ですか?」
「ああ」
言葉に詰まった。もし兄さんが抜けろと言ったら僕は……
そう考えているとマークスはからかうように言った。
「まぁそう考えるな。気になっただけだ、忘れてくれ。ただ俺としては居て欲しいだけだからな………」
マークスは意外と寂しがり屋な所もある、そういつも感じている。
そう話しつつ繰り出す荒野には人影も無い。
周りには車が3台。マークスのチームの車しかない。あとは朽ちた建物や道路だけだ。
こんな世界にもし平和に暮らせるところがあれば……
そして世界のどこに兄さんは居るのだろうか……
そう思ってから何時間経ったのだろう。
少しずつ目の前に見えてきたのは小さいテントの集まりである。
〈ギルド〉と呼ばれるものである。
僅かに生き残った人間たちは大きくわけて二つに分かれた。
1ヶ所に固まり永住する者、
移動し使えるものをサルベージし手に入れた物と食料を交換し生き延びる者である。無論交換相手は永住する者。
それでも貰える食料は少ない。
しかし永住するための土地は無い。
僕達は後者である。サルベージをし、それと少ない食料を交換し何とか命をやりくりしてきた。
今、僕達は食料を交換してもらいに来たのである。
ギルドの中は賑わいは無い。なぜなら人が少ないから。
噂では月に1回は賑わうという話だがそんな場面に出くわした事は無い。
そんなギルドをマークスと僕は布袋を持ち歩く。布袋の中はサルベージで手に入れた珍しいものである。
お店に入りマークスが交換をしている間、僕は気になり近くの人達の話に耳を傾ける。
「──には理想郷なるものがあるらしい」
「本当なのか?」
「さぁな……ただ誰も戻ってきていないという話だが」
「それじゃあ分からんな」
アリスはその話を聞きマークスに言う。
「マークスさん、今の話聞きましたか!?」
「聞いていた。だが確証はない…」
と消極的なマークスに対しサルベージ品を査定していた店主が言う。
「これは今となっては珍しいものだね…1ついい考えがあるんだけどね、約束した食料に合わせて情報料、これでこの珍しいものを買うと言うのはどうだい?」
今となっては食料は少ないがそれよりも大切なのが情報である。上手く使えば食べ物に困らなくなる。
そんな情報をくれると言う。これにはマークスも、
「……いいだろう」
と言った。
店主は僕とマークスの2人を個室へ連れていった。恐らく情報が2人以外に漏れないようにするため。
つまり貴重って言うことだと思う。
個室の中で店主は言う。
「ここから東南に50km程度、そこに大きい建造物がある。遠くから見た人によれば人影がいくつもあったらしい。大きさは1kmから5km。情報者はこれを〈
「シャングリラ……」
僕は思わず呟いた。マークスが、
「で、そのシャングリラとやらの写真はあるのか?」
と聞くと店主はニヤリと笑いある写真を取り出した。
写真にはそびえ立つ白い建造物があった。
「建造物は存在してる。あとこれもだ」
次に出した数枚の連続写真は動く人影を写していた。
「近くには近づいていないが情報は確実だね」
マークスは考え始めた。僕は、
「マークスに任せるよ…でも僕は行きたいって思ってる」
と気持ちを言った。ここに行けばアリシア兄さんの手がかりが掴めるかもしれないから……
マークスはまた少し考えた素振りを見せた。そして言った。
「…分かった。写真は貰えるか?」
「無論だとも」
チームの目標は決まった。
目指すは
でもこの決断が後に悲劇を産むなんてことはまだ僕には分からなかった……
書いてみました・・・
至らぬとこあると思うけどね!!
(自己満)