結論から言うと帝都攻防(は?)
S2-1 帝都攻防
遠くで音がする。
爆発音、銃声……
「っ!」
目が覚めた時、僕が居るところは瓦礫の山となっていた。
…幸いにも体に傷は無く、それこそカムイさんが作った服が強いことが証明された。
証明されたくなかったけど。
そう思いながら周りを見渡す。
近くに海があるが、その海に炎が反射する。
反射し、更に周りを照らす。
蠢く人が見える。
皆、血まみれだ。
「アリス、大丈夫!?」
後ろからカムイさんの声が聞こえる。
僕には何が起こっているか分かってない。整理がついてない。
それでも、何とか答える。
「大丈夫…です」
するとカムイさんは僕の腕を掴み引っ張るように走り始めた。
「ここは衛生隊に任せて行くよ、戦いに!」
「え…」
確かに僕は軍人になったけど、訓練もまだ……
そう思うと同時に、目の前に何者かが現れた。
銃を向けている。
引き金に、指がかかっている。
「っ、アリスっ!!!」
カムイさんが突き飛ばそうとするが既に遅かった。
それより先に撃たれる。
でも、死にたくはない。死にたく……
「絶対に、死にたくないっ!!」
そう無意識に叫ぶ。すると…何か、機械の声が聞こえた。
ーーリリンシステム接続
ーーシステム〈
ーーリミッター解除、付属武装、作動、オンライン
ーーー〈カグツチ〉起動。レディ。
時が止まった気がした。目の前に新しい何かが出てくる。
ーー攻撃システム作動 と。
頭の中に相手を殺すための方法が出てくる。
敵の脈拍、温度、動き…すべてが分かる。
今なら、勝てる。
「役立つ
目の前に魔法陣が出てくる。青色の、幾多にも重なった、魔法陣が。
「っ!?」
相手が避ける行動をする前に、魔法陣から一本の弓矢が放たれ、相手の頭を貫く。
相手は…一発も撃つことなく即死した。
「魔法……!?」
カムイさんが驚いている声が聞こえる。
でも、今の僕は……他の事に意識が傾いていた。
周囲索敵システムには、沢山の敵の反応があった。
カムイさんもそれに気づき、言った。
「……アリス、つべこべ言ってる場合じゃないから…行くよ、敵を倒しに」
この力があれば、守れる。
前、僕は力がなかった気がした。
でも、今なら!
「…はいっ!」
この力で、生き延びてみせる。
絶対に。
「……そこっ!」
僕が一回攻撃する度に、敵は何人も死んでいった。
「やらせはしない!」
カムイさんが一回飛ぶ度に、敵は何人も死んでいった。
気づけば、敵は居なくなっていた。
…地は赤く染まり、
空は紅く光る。
周りは血の海になり、
そして…
二度と動かない死体が、埋め尽くされていた。
「大丈夫だった!?」
空から来たのはユウだった。
僕はその時、地面にただ突っ立っているだけだった。
ユウは、僕の前に着地し、言った。
「守るって言ったのに、守られちゃった…ごめんね」
そこから僕はぼんやりとしか覚えていない。
気づいたとき、僕はユウに抱えられていた。
その後分かったのはこの襲撃は帝国の想定外であった事。
海軍のレーダーに映らないよう、超低空飛行をし、一撃で帝国軍を倒す作戦だった…らしい。
しかしリリン型により海岸に抑え込まれ、包囲殲滅された。
敵兵力はアサルトライフルを持った魔導士500人。少数精鋭だったが、それが10機のリリン型、対空砲、それだけで文字通り殲滅された。
損害は兵士13名死亡及び対空砲8器。
リリン型の性能を、意図せず示した結果となった。
しかし、これは始まりでもなかった。
数日後、ある命令が発令された。
《以下の者は敵勢力殲滅作戦に参加せよ。
陸軍特務隊アルカディア隊 ユウ・リリン
同 アリス・リリン
以上》
「くそっ!これはなんだ、どこから発令された!?」
そう叫んでいるのはロキさんだ。
最初に会った岸場ロキさん。
「今調べてる…」
と冷静に言うのはユウの妹のルナさん。
水色のショートヘアの人。人じゃなくてアンドロイドだけど。
やがて発令元が分かった。
「…発令元は…勅令、つまり皇帝から。」
「はぁ?」
ロキさんが一瞬怒りをあらわにした気がした。
「直通回線用意しろ!」
しかしルナさんは冷静に言う。
「…特務隊の隊長は皇帝、だから文句言っても…」
「くっ…てかそもそも新米にこんな任務させるなんて正気じゃねぇ…」
ともかく命令が出たからには、やらないといけない。そうユウが言って作戦室へ僕を連れて行った。
「リア母、どういう事!?」
作戦室へ入るなりユウは中に居たリアさんに叫んだ。幸いにも中に居たのはリアさん一人だけだった。
すると困ったように答えた。
「…一応突入路の確保が任務内容とはなってるけど、確かにこれは酷いと思うわ……それに発令元は皇帝とはなってるけど本当はその下の大発令所…ユウとアリス君を嵌める気満々ね」
「やっぱり私達を…」
するとリアさんは作戦室の真ん中の机兼モニターを起動させて言った。
「でも、指令が出た以上それを遂行するのが軍人。どう遂行するか決めましょ」
軍人ってそんなに大変な物だったなんて……
するとモニターに地図と線が表示される。
「目標はアリオス王国の対帝国防衛拠点。一つしか無いけどその分守りは強固よ」
「あの…」
僕はそもそもなんで王国に攻め込むか分からない…から聞こうとし、
「そもそも何で攻撃を…?」
と聞くとユウが答えた。
「数ヶ月前、一つの国が滅んだんだよ。滅ぼしたのはアリオス王国っていう所でその前もたくさんの国を滅ぼした……けどそれより大事なのは、その民間人を実験台に使ってる事」
「実験台…?」
「噂だと滅んだ王国の王女が実験台にされ兵器にされたという噂まで…ね。それで周りの国が王国を攻撃し制圧する同盟を組んだのはいいけどあの王国は魔法が強くて今まで…って感じ。しかも強固な拠点まで築いちゃってこっちにちょっかいまで出してくる…」
「まさか前攻めてきたのは…?」
「そ、王国の軍だよ」
と、リアさんが口を開く。
「攻めてくるのは想定外だったけど、いつ次が来るか分からないから潰したいのが思惑だと思うわ…それに、攻められて反撃をしなければ帝国の力は弱いと言ってしまうようなものよ。それなら尚更…たった二人で敵の基地を攻撃するなんて愚策だけども。」
と言いつつモニターを一つの赤線を表示させる。
「たった一つ攻撃部隊を送る事が出来るのがこのルート、通称<
表示されたのは薄い赤色の領域。そこには<異常魔力発生区域(侵入不能)>と書かれている。
「敵が監視出来ない代わりに私達も侵入出来ない、魔の森。侵入したら最後、魔物になってここに住むことになるわ」
思わず一歩下がってしまう。ユウが驚いたように言う。
「まさか……ここを!?」
リアさんは静かに頷く。
「無茶だよ……!?」
が、モニターにもう一つの青い線が表示された。
リアさんが言う。
「……その領域の中で、異常魔力が薄いのがこのルート。リリン型の装甲でなら耐えれる濃度を維持し続けているの。ここを通り敵基地の防空機能及び対地対空設備の破壊…それが任務よ。破壊され次第、私達主力部隊が航空戦力で突入路を開き陸上部隊が突撃を開始するわ。でもそれまでは………」
「二人で耐えろってこと…?」
「そう、なるわね」
…酷すぎる。
でも、やらなきゃ行けないと思う。
この<人>を超えた力。
前に力が無くて守れなかった気がする。
だから、今度こそは守りたい……だから
「…僕はやります。それで何かを守れるなら………」
それを聞いたユウも言う。
「母さん、私も行くよ。でも迎えに来てね」
リアさんは答える。
「ええ、もちろん。…無事に帰ってきてね。」
もし未来が分かるのなら、
いや分かってても、分かっていたからこそ、これは変わらなかったのかもしれない。
でも、この決断が……
僕たちの運命を決めたのだと思う。
同時に、沢山の運命を消すことになるなんて、今の僕には分からなかった。