それはさておき、私は軍事知識には乏しいので戦略、戦術、用語、その他もろもろが間違っていても目をつぶっていただけると嬉しいです。
敵の来襲から十数分。
僕はユウを抱きかかえて森の中を進んでいる。
足に内蔵された
そのためにも、目的を早く果たさなきゃ。
そうしていると、目の前が開けて、大きな建物が見えてきた。あれが…目的の…
そこにあったのは、レーダーサイト?で、その周りには対空砲。ミサイルまである。
「…あれを壊せば」
僕はユウを優しく降ろしながら、
「今は休んでて…」
と呟いた。ユウはいつの間にか気絶してたけど。
そうして、近づいたその時、大声が聞こえた。
すぐに隠れて様子を伺う。
「へっ、こんな奴が魔物とはなぁ!!」
殴られてる音がする。
もう少し近づくと、そこには数人の軍人らしい人と、そして小さな女の子がいた。
「人間様をなめんなよ!!」
何回も殴られていた。
…助けたいけどそうしたら、ユウは……
そう思って通り過ぎようとした時、突然頭が痛くなった。
同時にとある……風景が浮かんできた。
違う、風景じゃない、訳の分からない物。
銃声と、鉄の匂いがする世界。
目の前には、人間「だった」物。
何故かそれを敵だと思ってる。
……なんで突然これが浮かんできたのかは分からない。
声が聞こえる。
『アリス!全員の生存確認だ!ひさめは傷ついた者の応急処置!テクナ!居るか!?』
この男の声は僕の名前を呼んだ…?
その、僕なのか分からない人は車の影を見る。
そこには……死体があった。もう、人では無い……物が。
……本当にそれを見たのが僕かは分からない。
でも、気持ちは分かる。
「悔しい」
その気持ちが…
いつの間にかその記憶は消え、現実に戻っていた。
……僕には力がある。
何かを守れる、力が。
記憶の中の<アリス>が僕なら……絶対に見捨てはしない。
力があれば絶対に、皆を守るはず。
僕は覚悟を決めた。
「役立つ宇宙を、この手に降らせ今こそ…!」
手の中に出てきたのは弓。
これが僕の力の1つ……
魔力で12の力を操る、魔法システム。
影から身を出し、狙い、弓に矢をつがえて…射る。
その矢は心地よい音を奏でながら頭に飛び、相手が倒れる。
それに気づいた他の敵が慌てつつも僕を探す。
でも、もう遅い。
二射目。
また一人倒れる。
三射目…と矢をつがえようとした時、銃弾が飛んでくる。
場所が相手にばれてしまった。
近くの部屋へ身を隠す。キンッという跳弾音が止まない。
足音が近づく。
でも…それは思惑通り。
警戒しながら二人の敵が入ってくる。
そして…三人目が入ってきたとき、僕は天井から首目掛けナイフを突き刺す。
いくら警戒しようとも、天井にくっついているとは敵もわからなかったみたい。
肉を切る感触と共に体が血で染まる。一人目。
すでに入っていた二人が振り向く。でも僕は機械、人以上の動きができる。
片方に飛びつき、そのまま持ち上げる。
もう片方が小銃を撃つがその弾を持ち上げた人で防ぐ。これで二人目、ボディアーマーは銃弾に耐え切れなかったのか絶命している。
最後の一人が逃げようとする。でも遅い。
「ひ、ひぃっ!!」
悲鳴を上げる敵。
そのままナイフを首へ投げ、殺す。三人目。
部屋の中にただ一人立っていたのは僕だけ。
そして気づいた。
もう戻れない事に。
そしてサイレンが鳴り始める。
気づかれた。
考えてみればそれは当然。
何人も殺したのだから気づかれないわけがない。しかも大っぴらに。
部屋の前にはあの少女が。
何も言わずに、立っていた。
僕はその子の手を取り、部屋を出て走った。今なら隠れれるけど部隊が展開されたらそれも出来なくなる。
「ついてきて!」
少女に言い、建物の陰に入ろうとする。
でも…手遅れだった。
正面には小銃を構えた敵が5人。すぐに撃ってきた。
一方の僕はその攻撃にも普通なら耐えきれない。…でも。
「後ろにっ!」
少女を守るように僕は立ちはだかる。
そして…敵に対して正面を向かずにすこし斜めを向いて構える。
チューンっという跳弾音が鳴る。
<避弾経始>。
つまり、弾に対してそのまま受けるんじゃなくて、斜めに受けることで弾を逸らす。
なんでこんなことを覚えているのか分からない。
でも、使える物は使ってみせる。
絶対に生き残って、ユウと一緒に帰ってみせる。
でも…これじゃ何もできない。
カンッと何回も跳弾する音がする。
少女は僕を心配そうに見つめている。
警告音が鳴る。
<装甲表面形状変形>。
弾を逸らしていると言っても衝撃の一部は食らう。
つまり、あと少しで僕の装甲は貫かれる。
一か八か。
足の魔力砲を展開しようとする。恐らく魔力砲は撃ち抜かれ…最悪爆発する。
覚悟を決めて展開しようとしたとき、空から一筋の光が見えた。
同時に敵の頭から光が…違う。空から細い光が頭に当たり、貫通している。
すぐに頭から透明な液体が出たと思ったら敵は倒れていく。
僕は空を見た。そこには…気絶したはずのユウが飛んでいた。
「ゆ、ユウっ!?」
思わず僕は叫んだ。
関節部分は大ダメージを受けていてまともに動けないはず…そもそも変な角も出ているのに!?
よく見ると手足はだらんと垂れ下がっている。でも、背中には…まるで天使のような白く光る翼が展開されていた。
普通のリリン型に積まれてる飛行システム、<ルギウス >システムの最大出力があの翼のはず……
つまり、力を尽くして僕を、いや僕たちを助けに来たの…!?
「無事、だっ…た………」
僕に聞こうとしたのは分かったけど、その答えを言う前に回転しつつ、ユウは墜落した。
最後に羽ばたくように小さく浮き、地面に崩れ落ちる。
「ユウ……っ!なんで無理してまで僕を…!!」
それを聞いた時、僕は多分悲しい目をしていたんだと思う。
ユウは小さく笑い言う。
「君を守るって……そう言った、でしょ…?傷付くのは……私だけで……」
だからって……
こんなの…違う!
「僕だって…傷付くのは嫌だよっ!!守られるだけじゃない、僕も…守りたい……っ……」
目の前が、まるで雨が目に入ったように霞んだ。
…本当は、涙を出したけども。
そして、僕は自分の言葉で気づいた。
本当の仲間は…守られ、守って、互いに協力して、生き延びて……
そうだ、一方的じゃない。
僕には仲間が出来た。
その仲間も守る……それが僕の、記憶の中の<アリス>の正義…だと思う。
僕と、記憶の中の<アリス>は同じじゃないのかもしれない。
でも、一つだけ分かることがある。
僕はここにいる。
ここで、<生きて>いる。
ここに、存在している。
それだけで十分。
僕はユウを背負った。
あの少女は心配そうに見ている。
「大丈夫、大丈夫だから…!!」
僕はそう言った。
その言葉は自分自身に向けた言葉だったのかもしれないし、ユウや少女に向けた言葉だったのかもしれない。
でもそれで良かったと思う。
少女はコクリと小さく頷き、僕が背負っているユウの足を心配そうに丁寧に掴んだ。
後ろなのに見えた理由はセンサー……でもそのセンサーのおかげでユウの表情が見えた。
その顔は、やっぱり心配そうだったけど、同時に僕への信頼も見えた気がした。
――
「アリス……ここ…だよ」
敵に見つからないように隠れながらとある建物の前に来た。
そこは巨大な建物で、上には球体のドーム……?とにかく球体があった。レーダーサイト、防空の要の基地の、要。レーダー……
これにはたった1つ、欠点があるらしい。
それは特定の場所に攻撃を与えると他のレーダーも同時に止まるというもの。
そしてその為に…
「ユウ、少しだけ我慢してね」
「…頑張って」
ユウを降ろして、僕の背面に内蔵されている長砲身魔力砲<リヴン>を肩の上に展開する。
大きい魔物ですら余裕で倒すこの武器、理論的にはレーダーの1箇所を狙撃できる。
魔導炉出力最大。
魔力装填、照準誤差測定および補正…右に0.06度修正、上に0.7度修正。
出力安定、収束率を最大、及び攻撃出力最大。
目標点最終捕捉…捉えた。
「あっ………たれええええええっっ!!!!」
こんな大きいもの、余裕で当たると思うかもしれない。
でも、その時の僕はそう思わなかった。理由は簡単、1箇所を狙わなきゃいけないから。
そしてそれは……成功した。
レーダーに取り付けられていた灯りが次々に消えた。
他のレーダーの灯りも。
あとは…!
「アリス、高空信号弾…赤、赤、青…!」
ユウの指示に合わせて装甲の中に隠していた信号弾をあげる。
赤2つに青1つ。
『攻撃開始セヨ』の信号。
そして上げて数分後に……!
「走るからね、ユウ……と君!」
すぐにユウを背負って少女の手を掴んですぐに走る。
同時に近づいてきた敵に対してユウは各部の小型レーザー砲で迎撃、攻撃をさせまいとする。
そしてついに基地の外に出た。
同時に、「キュュュュン」という音をあげて何かが基地に落ち、爆発を起こす。
レーダーが動いていたら迎撃されていたミサイルが次々に着弾していく。
僕たちが基地から離れた高台に移動した時には帝国軍の戦車や装甲車が基地目掛けて砲撃しつつ走っていた。
装甲車から沢山の兵士たちが降り、制圧を開始する。
僕たちは勝ったんだ……そう思った。
でも、片隅では…恐怖が出てきた。
銃撃によって敵も、味方も、平等に撃たれ、撃たれた人を後ろへ運ぼうとする人すら撃たれる様子を見て僕は…いやだと思った。
敵だから、それだけの理由で撃たれ、そして命を落とす。そんなのは…許されない気がした。
もう軍人なんだから思ったらいけないのかもしれない。
でも、そうなったら…機械になりそうで怖い。
僕はユウの腕を抱きしめた。
それでも、ユウなら……僕を認めてくれそうだから。
しばらくして1台の装甲車が僕たちのところに来た。
降りてきたのは…
「ユウ!!アリスも!無事か!?」
ロングの水色の髪…リリさんだった。
一言目にそう言い、二言目には
「…ってボロボロじゃねぇかよ!大丈夫だったのか…!?」
と心配そうに叫んだ。
ユウは力無さそうな声で返す。
「見ての通り…魔物にやられたよ」
「……フレームもボロボロ、中身も大変なことになってるだろうなー…ってその角、なんだ?」
そうだった、ユウに角が……
と、あの少女はユウの額に手を当てた。すると…その角は無くな…
「ってダメ!!!」
少女はすぐに手を引いた。角はそのまま。
僕がそう叫んだ理由は簡単、もし予想が当たってたら……
リリも頷く。
「魔力の影響を受けるとするなら生体部分だけだろう。なら……脳に直接繋がっているかもだから…中の液体がドバーって来るぞ!」
危ない危ない、とリリがつぶやく後ろから降りてきたのは…リアさんだ。陸軍司令だっけ……んでユウやリリさんの親。
「お疲れ様…というのはまだ先になりそうね」
この惨状を見てリアは、やっぱり心配そうに見る。
「とにかく乗って。ここからは私の番だから……リリ達は先に支援基地へ、その少女も保護ね」
「了解、母様」
リアさんは敵基地の方に向かった……そして、
「よし、乗れ!急いで色々直しにな!」
「乗るのを急ぐのか直すのを急ぐのか、ね?」
と、リリさんの言葉にユウは呟くけども…
「そう言える時じゃないだろうが…」
と真面目な顔で言ってきた……。
そして僕たちは装甲車に乗って後方にある前線基地…ここを攻撃するために作られた仮設の基地へ向かう事になった。
でも、この攻撃は、本当に良かったのか……
これに意味は、理由は……
撃たれたから撃つんじゃ、何も変わらない。
そう、車の中で1人思った。
本当はもう一人出したいのにそれがいつになるやら…