あの事件が起きてから2日が過ぎた。
今、僕がいるのは…〈帝国軍事裁判施設〉。
理由は簡単、住民を撃ったから…でもあの時僕の身体は勝手に動いた。
僕は法廷の真ん中に立っている。もうすぐ始まる。
「これから帝国軍法会議を行う!」
そう宣言したのは帝国陸軍副司令、〈レア・ノーフィス〉。女性で髪は黒色で恐らくロング。顔つきは勇ましいって感じ。
「これより弁護人及び裁判官を読み上げる。弁護人、陸軍特務隊アルカディア所属、カムイ・リリン」
入ってきたのは髪は肩ぐらいまであるボブにも似た髪型で色は水色の少女…じゃなくて男性。
リリン型8号機〈カムイ・リリン〉。男の娘。僕と同じ……
カムイはユウが手配してくれた。本当はユウが弁護をしたかったみたいだけどもその場に居たから出来ないらしい…
カムイさんが敬礼して弁護台へ立つ。
「裁判官長任命、陸軍第一総師団司令、クルア・ナーフメイ」
最初に入ってきたのは短髪の黒髪、いかにも軍人という見た目の男の人。
「及び法務裁判官任命、陸軍法務局、
次に入ってきたのは白髪で耳にかかる程度には髪を伸ばした、小柄な人。
2人も敬礼して裁判官台へ立つ。
僕の前にはレア副司令、右には裁判官の2人、左にはカムイさん。
軍法会議が、始まる。
先手は裁判官。
赤波さんが言う。
「まず被告は敵性勢力に拘束され解放された後に臣民に対して18発もの銃弾を撃ちました。これは完全なる軍規違反と言えます。幸いにも低出力の為被害は微小で済みましたが事実は変わりません」
それに対してカムイさんが反論する。
「確かにそうですが一方で複数の物が投げられている事が判明しています。更にアリスの装甲は乙型、放置していれば生命システムへの被害が加わる事が予測可能です」
クルアさんが更に反論する。
「リリン型はそんなに脆いのか?アリス…被告人のダメージは承知している。その傷を押し通してまで軍法会議へ出された事、不幸だとは思う。だが維持システムは二つに分かれていると聞いたが」
「アリスは帝国製ではありません。維持システムに関してもまだ解析はなされておらず最悪の事態を予測するのが必要かと」
「つまり得体の知れない物を外に放したと?」
心もとないことを言うのは赤波さん。
「本官はあくまで法務官でありますが言わせて頂きます。私はリリン型を信用しておりません。このような事故、いや事故ではありません。臣民を殺そうとする機械、認められるはずもない」
「裁判官は本件に関係ない事について発言を慎め。」
「関係は大ありです!そもそも開発自体が間違っている!開発を押し通した結果がこれだ!」
「裁判官、発言を慎め!!」
「リリン型は即刻廃棄されるべきだ!人の脳を使って言おうと破棄すべき!ここで撃ってもすべきだ!」
なんと懐から拳銃を出した。
トリガーに指をかける……その前にクルアさんが赤波の拳銃をたたき落とし鎮圧する。
「貴様!ここは軍法会議の場だ!個人的な考えは捨てろ!」
クルアさんが叫ぶと同時にレアさんが宣言する。
「裁判官の職務放棄及び軍規違反、よってこの法廷において被告人、アリス・リリンを裁く権利無し!」
つまり……と思った時、レアさんは続けた。
「この審議は軍法会議法規に則り陸軍総司令の可否による裁決とする!」
カムイさんの顔が明るくなった。
「アリス、多分助かったよ!」
「弁護人、軍法会議自体は終了していない」
「採決について説明すべきと僕…いや私は考えますが」
「…確かにそうだが終了していないのも事実だ。口を慎んで欲しい」
その間、裁判官の方では憲兵と思われる人達が赤波を拘束していた。
「災厄を生むぞ!」
「黙れ!法務官の意識を持たぬ外道!」
そう言い争いをしているのを横目にレアさんは続ける。
「これより総司令へこの審議を委任する。要するにこの法廷は問題が発生したため更に上の役割へ全てを一任し被告人への処置を下すという事になる。総司令官が到着されるまで被告人及び弁護人は控え室にて待機。裁判官へは直ちに憲兵による取り調べを行う」
控え室に移動して数十分経った。
この数十分の間僕は考えていた。色々な事を…
ルレアさんによって僕は機械になって記憶を失ったのか。
皆は僕らのことを信頼していないのか。
もしかすると僕らと人間は違うのか…
人間は信頼できないのか…
僕にとって、信頼出来るのはユウやカムイさん達だけなのか…
と、扉が開いた。憲兵だ。
「たった今総司令が到着した。よってこれより審議を再開する。」
僕は部屋を出た。
どうなるか不安を抱えながら…
もしも罪に問われるなら、兄さんを探しに行けないかもしれないから……
でもそんな心配は要らなかった。
イザナギ帝国陸軍総司令。
その名前は〈
ユウの、本当の、機械になる前のお母さん。そう私の前には表示されている。
法廷に入ると目の前にはレアさん、その隣には全て肩から5mmぐらい上に揃えた白色の髪で赤い目の優しそうだけど強そうな女性がいた。その人が莉愛さん。
まず事実の確認がされた。
「被告人アリスは臣民に対して発砲した。間違いないですか?」
とても優しい声だった。
「…はい」
「その理由は?」
「あっちが…兄弟がいたら悲しむって……僕は、怖かったんです…兄さん…今は姿も思い出せないけど、無くしたらダメな気がして…」
「…そう」
その後いくつかの質問に答え、そして莉愛さんは決定を下した。
「被告を2週間の謹慎処分とす。被告は本来してはならない事をした。しかしながら被害や被告の状態を鑑みるに情状酌量の余地あり。これにて審議を終了す。」
こうして軍法会議は終わった。
終了後、莉愛さんに呼び止められた。その時は僕は憲兵に護送されていた。
「司令!」
「ご苦労様です。」
憲兵が莉愛さんに敬礼し、莉愛さんは労いの言葉をかけると同時に、
「一回話をさせてください、五分のみでいいので」
「…はっ、但し監視は致します」
「それで大丈夫です」
僕の目の前に来る。
「アリス君…あれは災難でしたね…」
「は、はい…」
僕には一つ気になる事があった。
「あの、莉愛さ…司令は私のために軽くしたのですか…?」
莉愛さんは少し笑いながら答える。
「私はこう見えても軍人、それも結構上の立場ですよ?だからこそ軽くも重くも出来ません。公平な判断と公平な罰、それが大事なことですよ」
「…人を撃ったのにですか?」
「鎮圧用軽照射機…対暴徒用の武器もあのぐらいの威力ですし撃たなければ更に騒動が大きくなっていたかも知れません。あそこで撃つのは妥当ではないとしても仕方はなかったかもしれない…というのが考えです」
「…そう、なんですね」
ふと気になる事がもう一つ増える。
「あと…リリン型について司令はどう思いますか…?」
莉愛さんは真面目な顔になって言う。
「…はっきり言って帝国の恥だと思います。あ、アリス君達の事が恥じゃなくて!」
僕の表情に気づいたのだと思う。なら何が恥なのか…
と、莉愛さんは苦しそうに言う。
「恥なのは私達の方です…ユウからリリン型の成り立ちは聞きましたか?」
「あ…いえ皇帝陛下から聞きました…」
「そう…ならリリン型は民間人…私の子供が使われてるのも知っていますよね…?」
「…今さっき分かりました」
「そもそも私たち軍人の使命は民間人を護る事、それを出来ず、いえ、自分の子供さえ守れない…そんなの恥でしかないです、軍人としても、親としても…」
莉愛さんはリリン型を恥と思っているんじゃない。守れなかった自分が恥だ…と思って「恥」と言ったんだ…
「本当はリリン型の計画を白紙に戻すべきだったんです!でも、ユウ達が…私の子供が言ったんですよ…『誰かを守れる力、私はそれでお母さんとお父さんの力になって守りたい』って…止められる訳がないですよ…それで、私は許してしまったのです。リリン計画を…」
なんと莉愛さんは涙を見せ始めた。憲兵たちが駆け寄る。
「司令!」
「…大丈夫です」
そして憲兵は言った。
「…護送を再開します。よろしいですね?」
「ええ…最後に、アリス君」
僕は答えた。
「は、はい!」
「詳しいことは謹慎が終わってからお話しします。ユウを…頼みますね」
そして僕は連れていかれた。
僕の部屋で、謹慎が始まった。
次回!
アリスは絶望する!!多分。