黄泉がえりの権利を掛けて、異世界の決闘者−終わった遊戯王GXへ 作:SOD
そんな自由な人に、私はなりたい。
迷いの森の夏至前夜。精霊たちは、踊り歌う。
世界を司る、4精霊。その中で最も苛烈な、熱を操る火の精が、今、俺達のいる森を焼く……。
「……おつかれさま、翔護。つかれたね…」
「……ああ、そうだな…俺、疲れたよ」
木を焼き、土を焼き、森を焼く業火。そんな中で水分と呼べるものは、俺達の血と、俺の零す涙だけ。
そして、横目にはついさっきまで命がけで決闘していた相手の焼死体。現在絶賛証拠隠滅中。
「痛くて…苦しくて…大変だったね。」
「ああ……怒り狂ったカードの神を降ろして、左眼斬られて、伝説の皇の後始末でカードに腕を焼かれて……そんで今、狂った宗教家に刺されて、森の中で火事に焼かれて死にかけて…バカみてえな5年間だったな。」
「……いっそ、弱虫のままの方が、良かった?」
「…………それは……無いな…………。俺は、お前を護ることが出来なかったろうから」
「…………そうか……………じゃあ、お前は満足して逝くんだな。」
「…………ああ。お前は、つまらん罪に身を焼くなよ?
男勝りな割に、心が弱いから、心配だ」
「うん………大丈夫だよ。お前を…………見、届けたら、ちゃんと……行くから……っっ」
「……………心配だな。ほんと、お前は…」
「だったら……行かないで…………帰って来て……一人に…………しないで」
「それが…………でき……た、ら……く、ろ…うは……………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………。」
燃え盛る森を見届けることも無く、俺の死を見届ける幼なじみの無事を知る術も無く、俺ーー
「………………………。」
「目を覚ましたようですね、鳴海翔護さん。」
「………」
目が覚めると、明るい青色の髪の女が、ゼロ距離で立っていた。
「誰だアンタ。」
「神です!!こんちゃー!」
「なんだこいつ」
神を名乗る女は、距離感という概念を知らない中学デビュー直後の陰キャのような無理矢理ハイテンションで勝手に話し出す。
「えーっとですねえ……はい!おめでとうございます鳴海翔護さん。
貴方は記念すべき今年天国へ渡った魂の丁度1万人目の人間となりました!!イエァ!!」
因みに俺の享年、即ち今日は3月3日なわけだが…。
「記念って言うなよ邪神」
「邪神ちーがぁーいまぁーすーー!!!神です!神聖ですから!!
そんなこと言うとこれから起こるとってもラッキーなご案内をして上げませんよ?良いんですか〜?後悔しますよ〜どんなラッキーかって言うと〜〜教えちゃおっかな〜どうしよっかな〜〜www」
小学生の頃の話なんだが、生理的に無理とかイジメられる方にも問題があるとかほざいてた、いじめっ子の腹田太の言が、今なら俺にも理解出来るな……。
5年前に
俺がここにいる時点で、天国の入国の選定基準が乱雑であることは決定的に明らかだ。森火事起こしたんだぞ、森火事。あと死体損壊罪と、大した罪じゃ無いがあの森は私有地なので、不法侵入と器物損壊罪。間違っても極楽で死後をゆったり過ごして良い経歴じゃない。閻魔帳は真っ黒だ。
「ーーーーーーーと、言うわけで鳴海翔護さんには、黄泉がえりの権利を賭けてGX世界で試練を受けて頂きます!!」
あの日始めてカードの精霊なんてもんに鉢合わせた俺は、聖獣セルケトに出会い、いじめっ子の腹田太がセルケトのあの口でゴリュゴリュポキポキと骨と肉がグシャグシャになる光景を見て気が触れてヤバいことに……
「それでは鳴海翔護さん!!夢と冒険の世界へ、レッツゴー!!」
うん、あの光景は今でも普通に気持ち悪い。良かった。俺の感性は今でも人間だ。
「受験番号10番、鳴海翔護さん。デュエルスペース7番へお越しください」
「………………あ?」
そんな昔の思い出に浸って瞳を閉じていた俺が、再び目を開けた時には、様々な種類の学生服姿の学生がデュエルディスクを付けている光景と、ソリッドビジョンで映し出された『レッグル』などのモンスターの姿が入ってきた。
「…………何処だ?ここ」
説明も禄に聞かず遊戯王GX世界へ送り込まれた主人公!!!
一体これからどうなるのか?それ以前に何をしろというのか!???