黄泉がえりの権利を掛けて、異世界の決闘者−終わった遊戯王GXへ 作:SOD
なおアンケートでヒカリが投票されなかったら闇落ちルートもあった。
追記
評価が3.8まで下がってました……(´・ω・`)ショボーン
カチン。
金属同士の摩擦音が生じて、誰もいない夜の灯台下に虚しく響く。
口元に加えられた巻煙草に熱を移し、役目を終えた銀色のライターが大人しく胸元の定位置に戻される。
「フゥーー」
暗く先の見えない海の先を眺めながら煙で肺を満たし、しばらくして吐き出す。
たったそれだけのことをするためだけに、わざわざイエロー寮を抜け出してきた鳴海翔護は、肌寒さによって誇張される孤独感と郷愁を肴に、カラダを犯す白い煙を摂り込み続ける。
元の世界に還る為に未来を夢見た学生達を配下に置いておきながら、その表情には生の感動も、行動に対する満足感も無ければ、それを成し遂げた自らの力に対する優越感も無い。
ただただ、その無表情には、虚無感と喪失感が滲むだけ。きっと誰にも理解されない気持ちが、封じ込め続けられるだけ。
特に隠すわけでもなく、誰にも気づかれない本心が……。
「…………………ここでなら、思い切り泣いても誰も分からないだろうな。」
翔護は自身の頬を撫でる。夕暮れに閻魔が撫でたラインが、正確になぞられる。そして--
「……………ああ。やっぱり涙なんて出てないじゃないか。」
手元の煙草を再度口元へ運び直そう。として、すっと腕が下る。重いなんて感じるはずもない紙と草だけの物が、何故か急に、とても重く感じた。
煙草の先端の煙が、僅かな風に運ばれていくのを、無感動に眺めることしかできない。
「……………………………。」
少し早いが、火を消してしまおうか。そう思った瞬間。
「げほっ--!げほっ--!!」
「………ん?」
自分でない誰かの、咳き込む音が聞こえる。高い声、少女の声だ。
ちょうど、煙が運ばれる先から聞こえる。
誰かいるのかと、足を運ぶ。見えてないはずの、空っぽな目だと言うのに。
「………あっ」
「何シてんだァ?お前。」
何故か翔護は、健常者でもそうそう簡単に人の顔など見分けが付かないはずの灯台下で、座りながら両手で口元を抑えて咳込む彩華ヒカリを完全に認識していた。
「……………」
「……………?」
「………………」
「………………金玉だけでなく…………--ついに言葉まで無くしたか?」
「………誰がオッコトヌシですか……」
「バカな返しができる程度には復活したか。」
「………………。」
「………………。」
「………………。」
「………何故また黙る。」
「………………タバコ。」
「欲しいのか?」
内ポケットに入れているものを取り出して差し出す。
箱も偽装すること無く、買った時のパッケージそのままだ。
「……………消して。………欲しいんです。」
「ああ…。」
ようやく理解すると、今度は携帯灰皿を取り出してもみ消した。
それでも、煙の残り香が気になるのか、しかめた顔のままで、口元も抑え気味だ。
「…………なにしに来たんですか。」
「見たとおりだ。寮で吸うわけにはいかねえだろ。壁とか黄ばむだろうし、仕事で注意しなきゃならねえ先公とかもいることだしな。生徒の喫煙で減給は、可哀想だろ」
「そうですか。人のカラダは好き放題変えるのに、寮の壁は配慮してくれるんですね。
人の気持ちには全然配慮してくれないのに、お給料のことは考えてくれてるんですね。」
「…………………ずいぶん言うようになったな。最初のアレはやはり猫かぶりか」
「あんな思いさせられて、恥ずかしい思いもさせられてるんです……刺激しないようにするのがおかしいですか?」
「ついでに、俺を何かしらに利用しようって思ってたから、胡麻剃ってたわけだ」
「…………閻魔さんも言ってたけど、本当に気付いてたんですね」
「俺を利用したいやつ……いや、
分からねえのは、お前が久しぶりに会った時に、既に俺にヘイトが貯まりまくってること。そしてソレを表面上繕う程度にしか隠し切れてなかったことだな。」
「………………………サイバー・エンド・ドラゴンが召喚出来ないのは、本当に貴方が何かしたんじゃ無いんですか?」
ああ、それが原因かと納得しながら、翔護は答える。
「多分な。俺に言わせれば、どうせ使えなくするんなら、わざわざそんな雑魚カード選ばない。
俺を倒す可能性があるカード『パワー・ボンド』を選ぶ。」
「…………なんで、サイバー・エンド・ドラゴンが雑魚なんですか…」
「攻撃力と貫通能力しか能がないのに対して、召喚条件が釣り合っていない。手札4枚も使って出したカードがソレじゃ、俺のいた世界じゃ鼻で笑われる。
サイバー・ツイン・ドラゴンの方がまだマシだ。あれならパワー・ボンドで出せばゲームエンドまで持っていける可能性もあるし、手札消費3ならリカバリーも出来る。
3回攻撃出来て墓地も肥やせるランページならなお良い。」
「…………」
「サイバー・エンド・ドラゴンにはそれが無い。
決定的な終戦力も、次の戦いに備える慎重さも。」
「……………。」
翔護の変わらない
さっきと違うのは、目元に溜めた涙が見えないことだけ。
いつの間にかこんな暗い場所にいた辺り、既に流し尽くしてしまったのかもしれない。
だからこそ、ヒカリは今度は遮らなかった。
あの時語ろうとした言葉の続きを……。
「あんな馬鹿力を真っ当に使いこなせるような奴を、俺は
「え……。」
「俺の世界でたったひとりだけ、あのカードを愛用して戦い、そして世界中の決闘者のデータを管理する協会に【力の象徴】として記録された最強のデュエリストがいる。」
「最強……のデュエリスト…」
「ああ。デュエルもケンカも間違いなくトップ。そんな位置にサイバー・エンド・ドラゴンと共に至った怪物だ。」
「ヒカリも--ヒカリもそうなりたいんです!教えて下さい!その人のことを!!」
『ソレはイケナイ…イケナイなァ……?』
「え…?」
「何だ、このヘリウムガス吸ったみたいな声は」
どこからか、唐突に声が聞こえる………。
『キヒヒヒ…。キミは好き勝手に暴レルねエ?いくら終わった世界だとしてモ、マダこの世界は止まっテはいないんだヨ?』
「な、なにこれ……怖いっ」
正体不明の声に怯え、ヒカリは翔護の背後に隠れるようにしながら、周囲を警戒する。
「人に話しかけるなら姿を見せろってカーチャンに教わんなかったのか陰キャ野郎。お話に混ぜて欲しいなら土産の一つも用意して地を舐めろやコラ」
『イッ…!?イヒヒ…オコトワリだね?大体、何も見えないキミに姿を見せても見せなくても一緒ダロ?』
「言ってることは正論だが、格下の態度としちゃ失格だ。
文句があるならかかってこい。俺はいつでも餓えてるぞコラ。」
「ひっ!?ちょ、ちょっと煽らないで下さい!!本当に来たらどうするんですか!」
「踏み潰して叩き潰して、すり潰してから魚のエサだ。目の前は海。死体の処分には困らねえ」
「こ、この人やっぱり頭おかしい!!!」
『イ…イヒヒ……な、なら特別にゲストを召喚してあげるよ……!終わった世界の忘れられた役者を招待すルから、勝手に遊んでいなヨ?イヒヒヒ…!!!!』
バシャン…海から、何かが飛び込んだような音が聞こえた。
「格下がいつまで有利取ったつもりでいるつもりだァ?」
バッと自身の左腕を伸ばし、何もない空間に入り込んだ。
「ヒッ?」
「身の程を弁えろや劣等種……!!」
「ヒャアアアアアアーー!???」
プチュリ……水の入った肉を裂く音が鳴り、それとほぼ同時に、翔護は差し込んだ腕を引き抜いた。
その左手はナニカを掴んでいた。閻魔を引き抜いたあの時のように。
だが、ソレがナニカを瞬時に把握した瞬間--翔護はソレを海に投げ捨てた。少しでも遠くへ飛ばすようにと。
『イイ!!イイイイイ!!!!痛いいいいいいいい!!!!!!?????』
「ちっ、
『殺セ!!!殺セ!!!ソイツ殺セエエエエエエエエエエーーーー!!!!!!』
プツン。と通信機器が途切れるような音がして声が聞こえなくった。
それからすぐにザバァ…と、海から何かが上がってきて、二人の前に現れた。
「に、人間……なの??」
「アカデミアのデュエルディスク…それにあの着ている服…壊れ放題だが…ラーイエローの制服じゃねえか?つか、機械付けてるのに海に放って召喚したのかあのトカゲ。脳みそ爬虫類かよ。」
「ハァ……ハァ………ハァ」
「ぴいっ!?あ、あの人なんか気持ち悪いですよ!?ハァハァしてるっ!!ヨダレがびちゃびちゃで目が普通じゃないっ!!」
(仮にも海に落とされて決して低くない灯台下に上がってくりゃ、そりゃ息も上がるし、ズブ濡れだろうな。だが……)
「目が正気じゃねえのは、間違いないみたいだな。
それでデュエルディスクはしっかり構えてるのが気色悪ぃ…」
ボヤきながら自身の翡翠の宝石で出来たジュエルディスクを腕に装着した…ところでふと、何かを思い立った翔護は、ヒカリを見つめた。
「………あ、あの…何ですか…?敵は向こうだと思うんですけど……」
少し考える素振りをしながら、ヒカリの方へ歩み寄り、そしてポンと肩を叩いて一言。
「お前がやれ。」
「………ほぇ?」
真っ青な顔をしながら、何を言われたのか分かりたくない表情しているヒカリに、さっさと自身のディスクを装着すると、スパンとケツを叩いて前にだす。
「行け。」
「ひやっ!??」
依然、何が起こっているのか全く把握したくない表情をしながら、目の前の黄色い制服の男の様子を見た。
「ハアアアア……ハアアアア……!」
ハアハアしている。
「む!!無理ですううううー!!!!」
ついに現実を認めたヒカリは、最速で行動に移す。即ち泣き入れである。
「何で!?何でヒカリなんですか!?貴方がやればいいじゃないですか!?」
「もう雑魚の相手すんの嫌だ。」
「雑魚じゃないかも知れないじゃないですかぁ!それにさっき餓えてるってゆってたじゃないですか!!餓えてるってゆった!!!絶対ゆってたあ!!!!
だいたいヒカリ、切り札が召喚出来ないんですよ!?無理ですよ!!」
「心配すんな。サイエンなんか使えなくたってサイバーデッキは戦力の低下は皆無そのものだ。」
「あああああー!!また!!またサイバー・エンド・ドラゴンのことバカにしましたね!?
ヒカリ、貴方のそういう所が大嫌いですっっ!!!!
何がマスターですか、この際一回くらい、けちょんけちょんに負けちゃえば良いんですよ!!
負ける悔しさとか!怖さとか!!そう言うことを知らないから、そんな優しさの欠片もない、無神経なこと言っちゃうんですよっ!!」
叫びながら、脳内にフラッシュバックされる、少女に変わってからの敗北の数々。
強さを認められて副主将を任された筈なのに、全く勝てなくなった自分を指さしてあざ笑う仲間たち。
カラダを触られることもしょっちゅうで、犯されそうになったことすらあった。
(どれとこれも……ヒカリが負け続けてから起こったことで……!!)
「俺は生涯のデュエルの勝数より、負け数の方が遥かに多い。
なんなら倍は違う。」
「……………………………え?????」
その翔護の一言に、ヒカリの脳内は思考を止めた。
(鳴海翔護が…負け数の方が多い…………倍違う………???)
「おら行け、敗北を恐れるな。」
「……………………………………。」
その後、ヒカリの脳みそが覚醒したのは、相手が第一ターンを終えた後だった。
「ターンエンド…。」
「…………………………………………………………………………あ。え?アレ……?」
後ろを振り向くと、ワタシナニモシテナイヨーな表情の翔護が、腕組みながら立っていて……………
「--ああああああああああああああああああああーー!!???」
彩華ヒカリの巻き込まれ初陣、デュエル開始!
サイバー・エンド・ドラゴン出さない縛りの、サイバー流デュエルとか言う地味&地味なデュエルをどうすれば面白くできるだろうか…………GXですらサイバー・ダーク使わない回は必ずサイバー・エンド・ドラゴン出たと言うのに。
あと同時並行でサイバー流デッキ使うことになってるの草なんだ
最初はヤンキーみたいな主人公にビクビクしていた病弱系娘が次第に心開いていってたのが、いつの間にか嫉妬心と独占欲が芽生えてくるの良くね?
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好き
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嫌い