黄泉がえりの権利を掛けて、異世界の決闘者−終わった遊戯王GXへ 作:SOD
あらすじ。
オベリスクブルー女子寮。なんか真っ黒に。
ヒカリ「これ、よく見たらマジックで書かれた数式ですね…」
翔護「え?マジ?俺、数学とか無理なんだけど…」
ヒカリ「あれだけ効率うんぬん語ってたのに!??」
翔護「いや、デュエルモンスターズに数学の効率は関係ないから」
ヒカリ「えー……そうですけど。なんかショックなんですけど」
翔護「いや、他人に自分の理想押し付けるのよくないから」
ヒカリ「どの口が言ってるんですか!?」
などと、道中仲良くなった二人が楽しそうに漫才をしていると……
「うぎゃあああああーーーー!!!??」
翔護「おっと。」
ヒカリ「きゃっ!?」
空から誰かが降ってきて、ヒカリのズボンを掴んでから、回避余裕の翔護。手には折り詰めのように持たれているヒカリ。
「ふげっ!??」
そして地面に盛大にキスする人形の何か。顔面がしっかりめり込んでいる。
ヒカリ「ちょ、ちょっと翔護さん!??パンツを掴まないで!?あんまりちゃんと履けてる感じしてないんですから!!
脱げる!脱げちゃう!!ショーツ見えちゃうじゃないですか!」
翔護「ったく、頭蓋骨割れて脳みそ見えること考えたらパンツくらいどうってことねえだろ。」
ヒカリ「もう助かったんだから今はショーツのほうがだいじなんですー!」
「そんなことより私のこと少しは心配していただけませんかね!??」
めり込んだ顔面を陥没した大地から抜き放って抗議する落下物。
もとい
ヒカリ「ひゃあっ!?しし、死人が生き返ったー!?」
閻魔「わたしですよ!!代紋閻魔ですっ!!!」
翔護をこの世界に連れてきた存在。閻魔の代紋閻魔だった。
翔護「何遊んでんだお前。ひまか。」
閻魔「遊んでないですが!?屋根の上にいる人を連れ戻そうとしたら落っこちたんですよ!」
翔護「んー?誰かいんのかァ?」
閻魔「例のあの人ですよ!昨夜の被害者のひとです」
翔護「ふーん。で?なにやってん?」
閻魔「分かりませんよ!目が覚めたから昨夜のことを説明しようとしてたら、物凄い勢いで壁やら床やらマジックで書き始めたんです!!」
翔護「……アートか?」
ヒカリ「寮に数式を書くアートって何ですか?」
翔護「さあ?凡人に分からねえからアートなんじゃね?」
ヒカリ「ははぁ…なるほど〜。
さては翔護さん、人と話す時何にも考えてませんね?」
翔護「無論。」
ヒカリ「………はぁ。」
閻魔「あ!マズイです翔護さん!!
あの子書くのに夢中過ぎてもう屋根が残ってないことに気付いてません!あのままじゃ落下死ですよ!?」
翔護「あらま。かわいそーに」
閻魔「全然っ可哀想だと思ってない!助けて上げてくださいよ!!
なんか謎パワーで!!」
翔護「人間、いつか死ぬもんだぞ?」
閻魔「重い……って、そんな場合じゃないですって!
あの人、異世界からやってきてるんですよ!?何か【王の残滓】についての情報になるかもじゃないですか!」
「……へ?うわああああああああーーー!!!??」
タイムリミットを告げる悲鳴が上がり、上を見上げると、さっきまで屋根の上にいた少女は必死に屋根にしがみついていた。
閻魔「翔護さん!!落ちかけてますって!!」
翔護「あらほんと。」
閻魔「翔護さんー!!?」
ヒカリ「ちょ、マットとかないですか!!」
慌てるだけで糞の役にも立たない閻魔と、人事を尽くそうと動くヒカリ。
そして、ただ落ちそうな少女を見上げるだけの翔護。その心は何を思うのか?
「だ、誰か助けてくれえええええええーーーー!!!!!」
翔護「--。」
タンッ--。
助けを求める叫び声が上がった瞬間、翔護は地面を蹴る音と共に飛び上がった。
人蹴りで上がった高度は驚異の2メートル強。
「も、もう…ダメだ…っっ!--うわああああああああーー!!!!!」
翔護「ちっ…堪え性のない。」
神の決めた人類スペックの限界に唾を吐くようなジャンプをしてみせた翔護だが、アカデミアの1年から3年までの女子全員を詰め込むような屋敷の屋根が、たかが二メートルで届くはずもない。
少女を受け止めるか?否。翔護の体格は恵まれているとは言い難い。まして既に浮遊中。万全でも危ない落下した人間を受け止める動作を実行出来るはずがない。
翔護(こういう時は、境夜の出番なんだがな…)
周囲を見渡しても視界に入るのは木ぐらいのもの。
時間もない。なら、これがベターだろう。
翔護は、自身の拳を握りしめ、寮の壁を蹴り、木の生えている場所に目掛けて跳ぶ。
翔護「都合よく行けよ……
ドンッ!!!!
近くにあった一番枝の多そうな木を殴りつける。
メキメキと木の砕ける音がした。
閻魔「うぇっ!??人間が素手で木を潰した!?」
ヒカリ「折るつもり!?でも足りてないっ!!」
そんなことは翔護が一番分かっている。
自分では力が足りていない。だから既に、利き手と逆の手による第二撃目も放っている。
翔護「--
ズボッ!!!!
二撃目は、潰れた箇所を貫通させる為の抜き手。
それも、明らかに翔護の腕よりも広範囲を抉っている。
だが、不足。まだ足りない。まだ折れない。
そもそも人間の落下を受け止めるために折っているのだ。
だからこそ、簡単に折れても困る。事は一刻を争うが、ゆえにこそ、この理不尽を嘆く暇は許されていない。
木を貫通させた抜き手を戻し、両腕を大きく開き………。
翔護「ーーーー
挟み込む。
バキリ……!!!!!!
鈍く湿った樹木の折れる音と共に、長い年月を生きてきたであろう一本の木の生命は終わりを告げ、そして……
「うあっ!??」
終わるはずだった一人の人間の命を救った。
翔護「っと…痛えなぁ……ったく。筋肉が悲鳴上げてんぞ…。
オイ、無事かお前。」
「あ……ああ……。オレは、生きているのか…?」
翔護「ああ。運が良かったな。」
「あ、ありがとう。助かったよ……」
翔護「おう。んで、おめーあんなバカ高い屋根の上で何してたんだよ?」
「ああ。計算式を書いていたんだ……」
翔護「計算式…?なんの??」
「あ、ああ。その…なんて説明したら、いいのか。
おかしなことを言っていると思われるかもしれないが、実は……オレは男なんだ!!」
翔護「知ってる。」
「知ってる…??なんで…あっ!!よく見たらお前は、昨夜の少女の背後にいたデュエリストじゃないか!」
翔護「半分正解ってところか。
俺は鳴海翔護ってんだ。お前は?」
「翔護か。オレは--三沢大地。このデュエルアカデミアのラーイエロー主席だった男だ。」