まぁ、察した人もいると思いますが。
今回もお楽しみください!
三人称side
2学期が始まってから少しの日数が経過したある日。
IS学園の体育館には全校生徒が集まっていた。
理由は簡単。
9月の中旬にある学園祭の説明のための全校集会があるからだ。
学園祭が近いという事もあって、集まっている生徒の大多数はテンションが上がっていた。
その大多数ではない生徒、一夏はボーッと立ってステージの事を見ていた。
一夏は相も変わらず仕事まみれの生活を送っていながら、今日も朝からこの全校集会の為の準備をしていたのだ。
少し疲れている。
(...学園祭、本当に当日だけじゃないと参加できないぞ.....)
一夏は溜まっている仕事の量を考えて、一夏はため息をつく。
丁度そのタイミングで、
『それでは、これから全校集会を始めます』
と、司会進行役の真耶がマイクを使いそう言い、全校集会は始まった。
まず初めに学園長である十蔵が挨拶代わりに話をして、そこから他の教員が学園祭での注意事項などを話す。
注意事項は大事な事なのでテンションが上がっていても全員が集中して話を聞いていた。
ただ、準備段階の話だけは一夏は苦笑いで聞いていた。
自分が参加できない事を聞いても仕方が無いという事だろう。
それでも話をしっかり聞いているのは、一夏が真面目だからだろう。
『それでは、次に生徒会、お願いします』
教員の話が終了したので、真耶はそう指示を出す。
その指示に従い、生徒会長である楯無がステージ上に立つ。
『みなさん、今年はごたごたしていた為、こうやって挨拶するのは初めてですね。1年生のみなさんには私の顔を始めてみる人もいるのではないでしょうか。生徒会長の更識楯無です』
ステージ上に立った楯無は、マイクを使い全校生徒に向かって挨拶する。
(.....それは良いのか?)
一夏は、楯無が言った事に疑問を感じていた。
まぁ、生徒会長が2学期になって漸く全校生徒の前で挨拶というのは普通に考えたらおかしいだろう。
(原因は立て続けに起こってる事件と、俺と深夜だろうから、俺が言えることでは無いか)
一夏は1人で何となくの理由を察していた。
『それでは早速ですが、本日の目玉を発表します!!』
楯無がそう言うと、体育館内は一気にざわつく。
だが、楯無が咳ばらいをして静まらせる。
『みなさん、落ち着いて下さい。毎年我がIS学園では各部の出し物の売り上げに応じてその部の部費を増やしているのだけど、それじゃあつまらないと思い...』
楯無はそう言うと、バット右手を上げる。
その瞬間、プロジェクターが、スクリーンに一夏の顔写真を映す。
体育館にいる生徒達は一夏と深夜を除き一瞬でザワザワしだす。
『売上1位の部活に、織斑君を強制加入させます!』
楯無がそう言い切った瞬間、体育館内が歓声で揺れる。
みんなで頑張ろうと全員がやる気を見せる中、
『ほぉ...無許可でよくそんな事が言えましたねぇ...?』
といった声が体育館に響く。
騒がしかった体育館は一瞬で静かになり、その場にいた生徒達は一斉に1人の生徒の事を見る。
その生徒とは、マイクを手に持ちどう見ても怒っている表情の一夏だった。
『い、一夏君、如何してマイクを...』
『嫌な予感がしたので準備の時に接続済みのものを1つ拝借しました。ああ、榊原先生に許可は貰ってますよ』
一夏は笑顔になってゆっくりとステージに歩いている。
笑顔だが、怒気や殺気などか漏れ出ている。
『よくもまぁ、俺に無許可でそんな事出来ましたね』
『い、いいじゃないの!それくらい!』
『何開き直ってるんですか。仕事が忙しいので部活に入れるわけが無いんですよ』
一夏はマイクで楯無と会話しながらステージに移動し、ステージ上に上がる。
楯無はダラダラと冷や汗を流している。
『それで?何か言い残したことはありますか?』
『い、一夏君、落ち着いて落ち着いて...』
一夏がそう言うと、楯無は1歩下がりながらそう返す。
『い、一夏君!これは、一夏君にもメリットがあるのよ!』
『ほう?仕事の時間を奪われるというデメリットを上回るメリットがあるというんですか』
楯無の苦し紛れとも感じる発言を聞いて、一夏は嘲笑うような表情を浮かべながらそう返す。
チャンスだと思ったのか、楯無は口元に笑みを浮かべる。
『そうよ!私達みたいな可愛い女の子に囲まれる!』
『そんなものメリットでは無いのですが』
楯無が言った事を一夏がバッサリと切り捨てる。
『な、何でよ!男の子として嬉しい状況じゃないの!?』
楯無は、一夏の言った事に驚いたようにそう声を発する。
そう言われた一夏は
(如何する...言う?...言うか。名前さえ出さなければ迷惑は掛からないだろう)
と考え、口を開く。
『恋人がいるので特にそう思いません』
そう、一夏が言った瞬間。
体育館内の空気が一瞬にして凍り付いた。
(...ヤバい!)
空気の変化を察した一夏は咄嗟に耳を塞ぐ。
その直後、
『ええええええええ!?』
と、先程までとは桁違いの絶叫が体育館に響く。
「か、貫通した!?」
そのあまりの声量に、両耳を塞いでいたのにも関わらず一夏の耳がダメージを受けた。
『み、みんな落ち着いて!私が質問するわ!』
楯無がマイクを使ってそう叫ぶ。
その叫びによって徐々にだが体育館内が落ち着いてくる。
『い、一夏君。これから質問をするから正直に答えて』
『はぁ、分かりました』
一夏は何で質問されるのか良く分かってなさそうな表情でそう返事をする。
『えっと、一夏君、今恋人って言ってたけど...本当?』
『本当ですよ。わざわざ嘘ついて如何するんですか』
楯無の質問に一夏は素直に答える。
そうして一夏の答えを聞いた生徒達は、
『そ、そんなぁ~~』
と声を出す。
中にはその場に座り込んだり寝転がる生徒まで現れた。
『前にはいないって言ってたじゃない!』
『そんな事言いましたっけ?』
『学年別タッグトーナメントの時よ!』
楯無に言われ、一夏は学年別タッグトーナメントでの出来事を思い出す。
(そんな事あったっけ?トーナメントではみんなと戦って、クラリッサとチェルシーと付き合い始めて...あ、そう言えばインタビューの時そんな事を言ったな)
そうして、確かに言った事を思い出した。
『今思い出しました。確かにその時はそう言いましたけど、その後付き合い始めただけです』
『な、何で今までそんな事を黙ってたのよ!!』
『俺に恋人が出来た事なんてわざわざ報告することでは無いでしょう』
一夏は楯無の質問に淡々と答えていく。
表情も少し面倒くさいと思っているものになっている。
『あ、相手は!?』
『言いませんよ、相手のプライバシーもあるので。強いて言うならIS学園の生徒では無いです』
一夏がそう言うと、体育館内にいる全員が驚いていた。
特に専用機持ちや1組の生徒などの一夏と多少なりとも関わりのある人間は、大きく驚いていた。
過労死まっしぐらに感じるくらいには仕事をしている一夏が、学園外という殆ど関わりが無いように感じる人間と付き合っているとは思わなかったんだろう。
『そう...一夏君、その恋人さんのどんなところが好きなの?』
『全部です』
楯無の質問に、一夏は今までクラリッサとチェルシーにしか見せたことが無いような幸せそうな笑みを浮かべながらそう答える。
その表情を見て、全員が悟った。
一夏は本気で、そしてこれ以上ないくらいには恋人の事が好きなんだという事を。
『そ、そう...一夏君、ありがとう.....』
『別にいいですけど。それで?撤回はしてくれるんですか?』
『う、うん...撤回するから.....』
(なんだ?なんでこんなにテンションが低いんだ?)
一夏は、楯無のテンションがやけに低い事が気になっていた。
そこでふと、ステージ下の生徒達を見てみる。
全校生徒も、殆どの生徒が蹲っていたり天井を見つめていたりブツブツ何かを呟いたりしていた。
その光景を見て一夏は若干引く。
(取り敢えず戻ろう)
そう判断した一夏は、マイクを教員に返してから列に戻る。
『え~~....これで、今までの生徒会の発表は無かった事に.....それでは、生徒会の発表を終わります.....』
最後に楯無は消えそうな声でそう言うと、トボトボと戻っていった。
そんな楯無の事を、一夏は不思議そうな視線で見ている。
『えっとぉ...それでは、これで全校集会を終します。各学年の1組から順番に教室に戻って下さい』
ここで真耶がそう指示を出す。
その指示に従い、各学年の1組から順に教室に戻っていく。
だがその足取りはとても重いものだった。
(な、何だ何だ?何があった?)
一夏は困惑しながら教室に戻るのだった...
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一夏side
全校集会の後。
全クラスは各教室で学園祭の出し物についての話し合いをする事になっている。
俺はクラス代表の為、話し合いの司会進行をしないといけないので、俺は教壇に立っているのだが...
「.....如何した?」
俺はそう声を発する。
そう、何時もは元気な1組なのだが、何故か全員のテンションが異様に低かった。
机に突っ伏していたり、背もたれにもたれかかって天井を見ていたり、何かうわ言を呟いていたり...
本当に如何した?
正常なの深夜だけじゃないか。
「山田先生、如何しましょう」
「え!?いやぁ~~、そのぉ....」
フム、山田先生でも如何することも出来ないようだ。
織斑先生はさっき面倒くさくなったのか
「それでは、決まり次第私に伝えてくれ...」
と職員室に戻ってしまった。
まぁ、織斑先生も何故か元気が無いように見えたし、別にいいか。
それよりもみんなだ。
意見を出してくれないと話し合いが進まない。
「と、取り敢えず話し合いをしてくれ。周りの席の人と自由に話し合って良いから!」
俺がそう言うと、みんなゆっくりと体の向きを正常な位置に戻してから、周りの席で話し合いを始める。
良かった、ここまでは正常だ。
そうして大体10分経ったくらいで
「メイド喫茶」
という意見が出た。
お?
この意見を出したのは...
「ラウラ。なかなかイメージにない事を言うじゃないか」
そう、ラウラだった。
俺がそう言うとみんなが一斉にラウラに視線を向ける。
その瞬間に、恥ずかしいのかラウラは顔を赤くする。
「流石に一夏にメイド服を着せる訳にはいかないから、執事服を着てもらえばいいかな?」
ラウラの言葉を補助するようにシャルがそう言う。
その瞬間に、さっきまでテンションが下がっていたみんなが一気に顔を上げる。
「一夏君の執事服!?.....あり!」
「うんうん、それは良いかも!」
おお、何か知らないが元気になって良かった。
「一夏君!何か執事口調で喋って!」
「急!」
何で俺が...
まぁ良いか。
「それにしても執事口調って如何すればいい?」
「それでしたら、我がオルコット家の執事の方を参考にすればいいのでは?」
俺の言った事に、セシリアがそう返す。
確かにな。
オルコット家のみなさんはそれが本職だからな。
.....チェルシーと一緒に働いてるんだよな。
良いなぁ。
って、それよりも今は...
「ん、んん」
俺はいったん咳ばらいをして喉の調子を整える。
そして、営業や挨拶回りの時に使う営業スマイルを浮かべながら
「お帰りなさいませ、お嬢様」
と、みんなに向かって言う。
その瞬間に
『はう!?』
とみんなが顔を赤くする。
「これは...良い.....」
「最高だ...」
な、何だ?
良く分からない。
「じゃあ、メイド喫茶で良いのかな?」
俺がそう確認すると、
『うん!』
と返事が返って来た。
俺は頷いてからさっき織斑先生から渡された用紙にメイド喫茶(男子は執事)と書き込む。
深夜が執事服という話題は出てなかったが、まぁ良いだろう。
俺だけなのは不公平だからな。
あ、そう言えば。
あれを伝えておかないと。
「そう言えば、俺は準備に殆ど参加できない。衣装合わせと...駄目だ、本当にそれくらいじゃないと無理だ」
「え!?何で!?」
俺がそう言うと、シャルが驚いた表情を浮かべながらそう言ってくる。
それに対して俺は苦笑いを浮かべながら
「仕事が大量に来てる。俺に過労死しろというのならば準備に参加するが...」
と言うと
『いや、休んで!参加しないで!!』
深夜以外の全員が必死そうな表情でそう言ってきた。
お、おう。
そこまで必死にならなくても...
「じゃあそういう訳だから、チョッと休ませて貰う。クラス代表の変わりは、シャルに任せた」
「うん、任せて!!」
俺がシャルにクラス代表代理を頼むと、シャルはやる気満々でそう返してくれる。
これで俺が抜けても問題ないな。
と、ここで
キーンコーンカーンコーン
とチャイムが鳴る。
「じゃあ、これで話し合いは終了ですね。山田先生、指示を」
「あ、はい。それでは、織斑君は用紙を織斑先生の所に持って行って下さい。その他のみなさんは休み時間です。次の授業の準備をしてください」
山田先生の指示に従い、みんなは机の上に教科書類を出している。
さて、俺も職員室に行かないと。
俺は教室を出て、職員室に向かって歩き出す。
授業に遅れるのはマズいから早くしないと。
そう思っていると
ピピピピピ
会社との通信用端末が着信音を鳴らした。
俺は迅速に他に人に聞こえない所に移動して端末を取り出し通話に応じる。
「はい、此方織斑一夏です」
『一夏さん、急な連絡申し訳ありません。企画課のクレステッドです』
「ああ、クレステッドさん。どうかしましたか?」
『それがですね...日本政府から企画課に仕事が来まして...』
「.....もしかしなくても私絡みですね?」
『は、はい、そうなんですよ』
「分かりました、対応するのでPCに送っておいてください」
『すみません』
「いえ、気にしないで下さい。では、やる事があるので失礼します」
『はい、失礼します』
ここで通話は終了した。
「...日本政府ぅ!!」
本当に怒るぞ!
はぁ...
取り敢えず職員室に行こう.....
一夏の恋人がいる事のカミングアウトでした!
それはそうと...一夏、倒れるぞ。
次回もいつになるか分かりませんが、楽しみにしていてください!
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