さて、如何なるか...
今回もお楽しみください!
三人称side
学園祭に関する全校集会の日から約1週間後。
IS学園は、学園祭に向けての盛り上がりを見せていた。
「それじゃあ、本格的にメニューを決めよう!」
それは、1年1組でも同じ事だ。
これから、メイド(男子は執事)喫茶に出すメニューの話し合いだ。
一夏にクラス代表の代理を頼まれたシャルロットが黒板前に立ち、クラスを仕切っている。
因みに件の一夏は今教室に...と言うより学園にいない。
一夏は今日学園を欠席し、朝から会社に向かっているからだ。
出発前に
「今日は9社との商談かぁ...しんどい...」
と呟いているのをマドカとシャルロットは聞いていた。
その為、シャルロットは一夏の負担を減らそうと気合いを入れていた。
「メイド喫茶だから、基本的にドリンクとオムライスとかの単品メニュー、そしてメイドか執事によるサービス付きのセットにしようと思うんだけど、如何かな?」
シャルロットがそうクラスに問いかけると、クラスメイトから
「賛成!」
「うんうん、それでいいと思う!」
という反応が帰って来る。
それを確認したシャルロットは頷き
「じゃあ、そろそろメニューを決めよう。周りの席の人と話し合って良いから、先ずはどんなドリンクを出すか考えて」
を指示を出す。
指示をされた生徒達はそのままみんなで相談をする。
そんなクラスメイトを見ながら、
(ふぅ...クラスを纏めるのは緊張するなぁ。でも、一夏は仕事が忙しいのにこれをやって来たんだもんね。僕も頑張るぞ!)
シャルロットはそんな事を考え、改めて気合いを入れる。
「そろそろ、意見を聞こうかな?じゃあ、話し合いで出た意見を教えて」
シャルロットがそう言うと、何人かが手を上げる。
「えっと...じゃあ谷本さん」
「はい!」
シャルロットは癒子を指名し、そのまま癒子は立ち上がる。
「定番ですけど、メロンクリームソーダが良いと思います!」
「なるほど、メロンクリームソーダ...」
そのままシャルロットはチョークを持って黒板にメロンクリームソーダと書き込んでいく。
「じゃあ、次は...相川さん」
「はい!」
シャルロットは次に清香を指名する。
そうして、そのまま何人かから意見を聞き、全員で投票をしてドリンクのメニューを決定する。
その後、オムライスを始めとした単品メニューも決まった。
「じゃあ、最後にサービス付きセットメニューを決めたいんだけど...」
そうして、遂にメイド喫茶をメイド喫茶たらしめるもの、サービス付きセットメニューを決める時がやって来た。
だが、シャルロットの表情は少し重いものになっている。
「...あまり一夏に注文が集中すると、一夏が過労死しちゃうから、そこを如何にかしないといけないね」
シャルロットがそう呟いた事で、何故重い表情になっていたのか全員が理解した。
そして、一斉に考え出す。
「一夏君が担当する執事サービスの値段を高めにするのは?」
「いや、それだけだったら普通に一夏に注文が集まるよ」
うーんと全員が考える。
そうして大体10分後、
「では、一夏さんには来店してくださった人の席案内と、単品メニューの運びだけをしてもらえばいいのでは?」
とセシリアが言葉を発する。
「確かに!」
「うん、それなら一夏君の負担にもならないよね!」
それを聞いた生徒達はそう肯定する。
「だが、それで単品メニューの注文が増えたら如何する?」
「そうなったら、もう席案内だけしてもらおう」
ラウラが口にした疑問に、シャルロットがそう返す。
1組殆どが...深夜以外がここまで真剣に一夏の体調を気遣えるのは、それ程までに一夏の事を想っているからだろう。
一夏は入学した時から全員と馴染めるように様々な事をしていたし、真剣にIS戦闘をしていたりクラスの事を纏めたりしている姿を、クラスメイト全員が見ているのだ。
一夏の事を心配するのは当然だ。
「じゃあ、一夏に関してはそれでいいかな?」
『うん!』
シャルロットがそう確認すると、しっかりとした返事が帰って来る。
それを聞いたシャルロットは頷き、
「それじゃあ、今度こそサービス付きセットメニューを考えよう!」
と笑顔になって声を発する。
そこから、時間ギリギリまでクラスで話し合い、メイド喫茶で出すメニューは決まった。
「じゃあ、僕はこの書類を織斑先生に提出してくるから」
「はーい」
シャルロットはそう言うと、メニューを書き込んだ書類を職員室に持っていくために教室を出る。
(あれ?そう言えば橘君何も喋らなかったな...体調悪かったのかな?)
その道中、そんな事を考えながら。
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時刻は進み、現在18:30。
「クソ!何なんだよ!何がどうなってるんだよ!!」
深夜は寮の自室でそんな事を叫んでいた。
「はぁ、はぁ...」
叫び終わった深夜はそのままベッドの縁に座って息を整える。
「なんだよ!一夏に恋人って!あの唐変木の朴念仁が、恋人を作れるわけが無いだろ!!」
深夜はそう叫んで、ベッドの事を殴る。
原作では、ヒロインたちの恋心に気が付かず、様々な不名誉なあだ名を付けられている一夏に恋人が出来ている事に納得が出来ていないようだ。
かなり前から原作とは異なる事が起こっているのに、何故そんな可能性も視野に言えていなかったのか不思議である。
「だが、一夏と付き合ってるのはヒロインズじゃない!ならば、ヒロインズは俺のハーレム要員だ!」
深夜は笑みを浮かべながらそう言う。
「そうだ、あの一夏をわざわざ排除する理由は無くなった!これで、ハーレムづくりに全力を注げる!」
未だにハーレムだなんてものを考えている深夜はそんな事を口にする。
ここまでくると狂気しか感じない程に深夜はハーレムに執着している。
だが、冷静に考えて深夜にハーレムが作れるだろうか?
臨海学校で一夏の事を刺しただけでは無く、それ以前に深夜は特にそれといった行動をしていない。
つまるところ、深夜は好かれる行動を何もしていないのだ。
そもそもハーレムを作ろうと考える事が浅はかなのだが、その上で何も行動をしていない。
そんな人物が、人に好かれる訳が無い。
「最近の一夏は、教室にいない事が多いから邪魔されない!!」
深夜は笑みを浮かべながらそう言う。
「あのまま過労死してくれると楽なんだがなぁ...」
人の過労死を望んでいる時点で、人として終わっている。
だが、深夜はその事を理解していない。
「学園祭で、一気に俺のハーレムを作ってやる!ハハハハハ、アッハハハハハ!!」
そこから暫く、深夜は笑い続けるのだった...
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一夏side
「つ、疲れた...」
『PurgatoryKnights』の応接室で。
俺は椅子の背もたれに身体を預けて板チョコを食べながらそう言葉を零す。
今日は朝から商談まみれで疲れた。
糖分を取らないともう頭が回転しない。
「クソ、オメガエンド社め。無理難題押し付けやがった」
俺はオメガエンドが渡してきた書類を見ながらため息をつく。
まぁ、オメガエンドとの取引は重要だからやるしかないけどさ...
俺はそんな事を考えながら営業部に向かう。
「すみません、織斑一夏ですけど。商談終わりました」
「あ、一夏さん。お疲れ様です」
俺が営業部の部屋に入ると、営業部部長の佐々木健さんが俺の元に来てくれた。
わざわざ来てくれなくてもいいのに。
「佐々木さん、これが今日商談をした9社からの書類です」
俺はそう言って、佐々木さんに書類を手渡す。
「お、おお...」
その書類を受け取った佐々木さんは、苦笑いを浮かべていた。
まぁ、仕方が無い。
通常の書類よりも文字やグラフがギッシリと書き込まれている書類が、大量にあるのだから。
「確かに受け取りました」
「はい、ではそろそろ私はIS学園に戻ります」
「分かりました。私もこれを確認したら帰ります。今日はお疲れ様でした」
「いえ、それでは...」
俺は佐々木さんとそう会話をして、営業部の部屋を出る。
そうして、駅に向かいながら俺は腕時計を確認する。
時刻は18:20。
もうガッツリ定時を過ぎていた。
佐々木さん、俺の為に残って...すみません。
そう考えているうちに駅に着いた。
俺はそのままIS学園方面の電車に乗り込む。
(...帰ったら、PCには日本政府か国際IS委員会か女性権利団体からの仕事が来てるんだろうな...)
[ええ、十中八九来ていると思いますよ]
俺が考えている事に同調する様に白騎士がそう返してくる。
(如何したら仕事来なくなると思う?)
[それは...如何もしようがないんじゃない?]
(そうだよなぁ...)
白式の言った事に、俺はため息をつきながら同調する。
(俺が何をしたってんだ!)
[男性なのにISを動かしました]
(...反論が出来ねぇ)
そうやって白式と白騎士と会話しながら移動し、電車からモノレールに乗り換える途中にコンビニでエナジードリンクを買ってからIS学園に向かう
「帰って来たぁ」
校門前に着いた俺は軽く伸びをしながらそう言葉を零す。
いやぁ、疲れたぜ。
「そう言えば、今日はメニュー決めだったな...どんなのになったのかな?」
当日は俺もいるんだから把握しておかないと...
シャル、まだ食堂にいるかな?
俺はそう思い時刻を確認する。
19:10...微妙だなぁ...
「まぁ、いいや。いなかったら寮に行けばいいし、取り敢えず食堂に行こう」
寮に入るなら許可を取る必要があるから、食堂にいてくれた方がありがたいけど。
俺はそんな事を考えながら食堂に向かう。
あ、そう言えば俺制服じゃなくてスーツだけど...いいや。
そんな事を考えていると、食堂前に着いた。
俺はそのまま食堂に入る。
その瞬間に、俺に視線が集まる。
そんなに俺に注目しなくても良いじゃないか。
「あ、お兄ちゃーん!!」
俺がそんな事を考えていると、俺にそんな声が掛けられる。
俺に声を掛けて来たのは、勿論マドカだ。
声が聞こえてきた方向を向くと、深夜を除く1年生の専用機持ちが全員集まっていた。
「みんな集まってるのか」
「うん、みんなで晩御飯食べてたんだ」
俺が近付きながらそう言うと、シャルがそう返してきた。
俺は近くの空いている席に座る。
「一夏、アンタ何で恋人の事黙ってたのよ!」
席に座った瞬間、鈴がそう詰め寄って来る。
チラッと周りを見ると、周りの生徒達も前のめりになって聞き耳を立てていた。
「わざわざ、俺彼女出来たんだ~~って言うか?男子の友達とかなら言うかもしれないけど、女子には言わない」
「お兄ちゃんが恋愛してて安心したよ。このままお兄ちゃん恋愛出来ないで青春終わると思ってたよぉ~~」
「...妹に恋愛出来るか如何かを心配されてたの、俺」
俺そんなに働いてる?
うん、働いてるわ。
「まぁ、許せ鈴。今度からなんかあったら報告するから」
「...分かったわよ。でも、私は諦めないからね!」
はぁ?
諦めない?
何で今その言葉が...
おいおい、何でラウラ達も頷く?
まさか.....ねぇ。
流石に俺の思い上がりか?
仮に本当だったとしても、俺はクラリッサとチェルシー以外と付き合うつもりはないけどな。
俺はそんな事を考えながらさっき買ったエナジードリンクを取り出し、プルタブを開ける。
炭酸特有のプシュッという音を聞いてから、俺はそのまま中身を呑む。
「お兄ちゃん!?遂にエナドリに手を出したの!?」
「言い方」
違法薬物じゃ無いんだぞ。
「シャル、メニュー決まったんだろ?教えてくれるか?」
「あ、それで食堂来たんだ。はい、これだよ」
俺がシャルにここに来た目的を尋ねると、シャルはスマホを渡してくれる。
その画面には、出すメニューがしっかりと載っていた。
おお、真面目だな。
流石はシャル。
「ありがとう、大体把握した」
「え、もういいの?」
「ああ、暗記は得意になったんだよ」
昔だったら無理だった。
仕事が多すぎて覚えておかないといけない事が多すぎて気が付いたら暗記が得意になってた。
俺はシャルにスマホを返してから、エナジードリンクの残りを飲み干す。
「ふぅ~~。仕事するか」
「...もう完全にただのサラリーマンですわ」
俺の呟きにセシリアがそう反応する。
ははは、こんなんでも高校生なんだぜ。
「あ、そうだ。仕事の前にこれだけ聞いておこう、みんな学園祭のチケット誰に渡すの?」
IS学園の学園祭。
これは通常の学校の文化祭等と異なり誰でも来れる訳では無い。
入場の為のチケットがいるのだ。
そしてこのチケットは、生徒1人に1枚配布され、生徒が招待という形でチケットを渡すのだ。
正直回りくどいやり方にしか感じないが、これも防犯上の都合だ。
仕方が無い。
「僕はお父さんに渡すよ」
「へぇ、デュノア社長...無礼の無いようにしないと」
「あはは、気にしなくていいと思うよ?お父さんも一夏に1度会いたいって言ってたし」
そうなの?
でも『PurgatoryKnights』の傘下企業とはいえ会社の社長なんだ。
緊張はする。
「私はチェルシーに送りますわ」
「私はクラリッサだ」
え、マジ!?
やったぁ!!
「えっと...誰ですか?」
「私の幼馴染で、私のメイドですわ。当日は私服で来させますけど」
「我がシュヴァルツェ・ハーゼの副隊長で、私の副官だでもあるんだ」
そして、俺の恋人!
それはテンション上がって来るなぁ...
「私は...如何しよう?何なら弾にでもあげようかしら」
「鈴、冗談でも言って良い事と悪い事がある」
「アハハ!それもそうね」
「あげるんだったら蘭にしておけ。IS学園受験するかどうか悩んでたから、一応学園祭に来ておいて損は無いだろう」
「あ、そうなの?なら蘭にあげようかしら」
弾はここに来ると暴走する可能性があるからな。
真面目な蘭なら間違いは無いだろう。
「私は...特にあげる人はいない」
簪は少し俯きながらそう言う。
その瞬間に、場の空気が少し気まずいものになる。
「あ、あ~~。簪、元気出しなさい」
「うん...」
鈴が簪を励ますと、簪はそのまま頷く。
えっと...如何しよう。
「それで、一夏とマドカは誰に渡すんだ?」
俺がこの空気を如何しようか悩んでいるとラウラがそう質問をしてくる。
おお、ありがてぇ。
「私はうちの社長に渡す予定だよ」
「俺はうちの人事部部長に渡す予定だ」
マドカと俺はそのまま質問に答える。
蓮子さんが来ればスカウトも出来るからな。
優秀な人材は他社に取られたくないのは何処も同じだ。
「じゃあ、そろそろ俺戻って仕事しないと納期に間に合わなくなるから戻るわ」
「お兄ちゃん、晩御飯は?」
「部屋に完全栄養食のパンがある。それを食べながら仕事する」
俺はそう言ってからエナジードリンクの空き缶を手に持って席を立つ。
「一夏...大丈夫なの?」
「なんだ簪、俺は元気だぞ。心配ないって」
俺は笑みを浮かべながらそう言うと、一応簪は納得してくれたようだ。
「じゃあな、また明日~~」
俺はそう言うと、食堂を出て教員寮の自室に向かう。
はぁ、絶対に今日も大量に仕事が来てるんだよなぁ...
まぁ、頑張りますか...
一夏が倒れそうという事以外は平和だった。
クラリッサとチェルシーの話題が出た瞬間だけ元気になる一夏。
次回もいつになるか分かりませんが、楽しみにしていてください!
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