今回もお楽しみください!
三人称side
一夏とクラリッサとチェルシーが『PurgatoryKnights』で束とあれやこれやあった翌日。
今日は普通に平日である。
朝のSHR前の1年1組の教室には一夏が1人だけの状況で、一夏は自分の席でPCを使用し仕事をしていた。
机の上にはブラックコーヒーの500㎖のペットボトルが置いてあり、もう3分の2が飲まれていた。
「う~ん...如何したものかなぁ...?」
一夏は難しい表情を浮かべながらPCでの作業を進めていく。
そんな一夏の事を廊下から心配そうに見つめる人物が2人。
クラリッサとチェルシーである。
大切な恋人が朝早くから仕事をしている。
しかも以前吐血をしてぶっ倒れた人が。
そんなの心配しない方が嘘まである。
「一夏は大丈夫だろうか...?」
「大丈夫だとは思うけど...それでも心配...」
クラリッサとチェルシーはそう呟く。
しかし、何時までも一夏の事を見ている訳にもいかないので2人は1組の教室前から移動していった。
「...また心配かけさせてるのか、俺は」
そんなクラリッサとチェルシーの会話を聞いていた一夏はそう呟き視線を先程まで2人がいたところに視線を向けた。
一夏は暫くそうしていたが、直ぐに仕事を再開した。
それから時間は流れSHR開始の時間が迫って来ると同時に続々とクラスメイト達が教室にやって来る。
教室にやって来た生徒達は一夏が仕事をしている事を察して静かに席に向かっていく。
そうして時間が流れる事数十分。
SHRの開始時間となった。
キーンコーンカーンコーン
「全員席に着け!SHRを始める!」
チャイムが鳴ると同時に千冬と真耶が教室に入って来て、千冬がそう指示を出す。
それと同時に一夏はPCをスリープにすると机の上のペットボトルと同時に仕舞う。
クラス全員の準備が完了したのを確認した千冬は頷くと言葉を発する。
「今日は全員に連絡がある。1週間後、専用機持ち限定のタッグマッチが行われる事になった」
千冬のその言葉を聞いたクラスの全員は驚きの表情を浮かべる。
急にそんな事を言われたら驚くに決まっている。
「織斑先生、タッグマッチをする理由はなんですか?」
シャルロットが手を上げながらそう質問をする。
そんな質問が来ることは分かっていたかのように千冬は頷くとその質問に返答する。
「この間のキャノンボールが中止になった事、それにそもそも観戦出来なかった企業や国などから不満の連絡がかなりあってだな。その為専用機持ち達の戦闘を見せる事になったのだ」
そう説明する千冬の表情は凄い面倒くさそうなものだった。
千冬も納得している訳では無いという事だろう。
「その為、専用機持ちはそれぞれペアを作っておくように」
「「「「はい」」」」
「......はい」
千冬の言葉に一夏、シャルロット、セシリア、ラウラはしっかりと、深夜はボソッと反応する。
その後真耶が話し始め今日の予定を数点話した。
「それでは、今日のSHRはこれで終了す「織斑先生、1つ良いですか?」どうした織斑」
千冬の言葉を遮る形で一夏が手を上げながら発言をした。
その瞬間に一夏に視線が集まる。
「さっきのタッグマッチの話なのですが、1つ聞き忘れていた事がありまして」
「なんだ、言ってみろ」
「オルコスたちってどうなりますか?」
一夏の言葉を聞いた千冬は考えるような表情を浮かべ顎に手を置いた。
そして数秒後。
「分からないな...仕方が無い。あとで確認しておくからそれまではペアを組むな」
「了解」
千冬の言葉に一夏は頷く。
「改めて、これでSHRは終了する!次の授業の準備をしておけ!」
一夏が頷いたのを確認した千冬はそう言うと真耶と共に教室から出て行った。
そうしてクラスの全員が授業の準備をし始める。
「はぁ...仕事あるのになぁ...いろいろと面倒だなぁ......」
そう呟いた一夏に、深夜以外のクラスの全員から心配そうな視線を向けられた。
一夏はそれに気が付いていないのか、それとも気にしている余裕がないのかは分からないが特に反応することなくPCを取り出すと、かなりの速度でタイピングし始める。
カチャカチャカチャカチャカチャカチャ
そんなタイピングの音は、授業開始のチャイムが鳴るまで途切れる事は無かった。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
一夏side
......あ、れ?
なんだ...?
身体が、熱いし、重たい...
昨日は、織斑先生から説明があって......
どうなったんだっけ?
「...今、何時だ?」
う、く...?
なんで、ベッドから時計を、簡単に、見れねぇんだ...!!
はぁ、はぁ、はぁ、はぁ...
「8:47...!?」
遅刻じゃねえか...!
早く、準備...!
そう思い、ベッドから降りようとした瞬間だった。
「う、あ...?」
ドサッ!!
足に力が入らず、そのままベッドから落ちてしまった。
「い、た...」
はぁ、はぁ、はぁ、はぁ...
くそ...!
上体が、起こせない。
せめて仰向けに、なりたいけど、それも出来ない...
「はぁ、はぁ...ゴホッ!ゴホッ!」
咳も出てる...
「オル、コス......」
声を出すのも難しい。
身体が重たい。
動けない。
《一夏、如何した!?》
さっきの俺の微かな呟きを聞いてオルコスSDが慌てて来てくれた。
う、く...
だけど、上手く説明できない...
「身体が、動かない...」
《なに!?取り敢えず、身体を起こさないと!!》
オルコスはそう呟くとSDを解除する。
スゲェな...
狭、い室内で、器用だな...
オルコスはそのまま俺の身体を支えると壁に背中を持たれかけることが出来るところにまで移動させてくれる。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ......」
呼吸は、しやすくなった。
それでも、意識が、はっきりしないし、身体は思うよう、に動かないし、熱い...
《一夏、大丈夫か!?》
「あ、あ...ヤバい......」
《......熱い。体温計!》
オルコスが俺の額に手を当ててからそう言うとSDに戻り体温計を取りに行ってくれる。
そんなオルコスの姿をボーッと見る。
壁に全体重を預けてるから少しは楽になって来た。
でも、だるいし、熱いし、動かないし、はっきりしない...
《体温測れ!》
「...あ、分かった」
はぁ、はぁ...
う、くぁ...
脇の熱気逃がすのも、一苦労...
そうして苦労しながら脇に体温計を挟む。
ピ――
ア、レ?
こんな音じゃなかった気が...
「エラー...?」
取り出した体温計は体温では無く、『ERROR』の表記をしていた。
「はぁ、はぁ...もう、1回...」
何度か試しても、全てがエラーだった。
《もしかすると、一夏の体温が高すぎてその体温計では測れないのかもしれない》
「それは、無いだろ。45℃ま、で、測れる、やつだ、ぞ」
《だが、現に測れていない》
そう、何だよなぁ...
はぁ、はぁ...
駄目だ。
上手く思考が出来ない。
「ゴホッ!ゴホッ!...はぁ、はぁ......」
《...一夏。博士の所に行くぞ》
?
なんで、博士のところなんだ...?
《ここ最近のお前の身体はおかしい。1度こちらの技術でも検査をしておいて損は無いだろう》
「確、かに...ゴホッ!」
《...早い方が良いな》
オルコスはそう言うと再びSDを解除する。
そうして俺の事を抱きかかえる。
う、おぇ、この浮遊感が、気持ち悪い...
《耐えろ》
「あ、ああ...学園、には...」
《我が誤魔化しておく》
「分かった...」
もう、駄目だ。
意識が...
「オルコス、もう、寝る...」
《ああ、寝ていろ。オープン・ザ・ゲート》
狭まる視界でオルコスがゲートを開けたのを視認して、俺は眠りに付いた...
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
三人称side
一夏がオルコスにヒーローWにまで搬送されているのと同時刻。
「...織斑は如何した?」
1年1組の教壇に立っている千冬はそう言葉を発した。
今現在は朝のSHR中。
何時もなら確実に一夏は自席にいるのである。
しかし、一夏の席である最前列中央席は空席のままだ。
千冬の言葉を聞いたクラス全員は一瞬一夏の席に視線を向けるも、誰も言葉を発しない。
「...誰も知らないのか?」
今度の千冬の言葉には、クラス全員が頷いた。
「デュノア、会社の方の予定で何か無いのか?」
「特に一夏に予定は入って無いですね...今日は会社で会議がありますけど新規の製品開発なので現段階では一夏は関係ない事ですし......」
「そうか...」
同じ会社のシャルロットなら何か知っているのではないかと思ったがそれも駄目だった。
千冬は暫く考えるように顎に手を置いた後、ラウラに視線を向ける。
「ボーデヴィッヒ、クラリッサに連絡を入れて確認してみてくれ」
「分かりました」
千冬に指示されたラウラはスマホを取り出しクラリッサに連絡を入れる。
恋人であるクラリッサなら何か知っているかもしれないと考えるのは普通だろう。
「クラリッサ、私だ。今一夏が教室にいないんだが何処にいるか知っているか?...ああ、そうか。邪魔をしてすまなかったな。......ああ、また後で」
通話を終了させたラウラはスマホを仕舞い千冬に視線を向ける。
「クラリッサも分からないとの事らしいです」
「そうか、ならオルコット」
「はい、チェルシーに確認しますわ」
今度はセシリアがスマホを取り出しチェルシーに連絡を入れる。
「チェルシー、私ですわ。一夏さんが何処にいるか知りませんこと?SHRですが教室におられなくて...ええ、ええ...分かりました。あとで連絡しますわ」
通話を終わらせたセシリアはスマホを仕舞う。
「チェルシーも知らないと言っていましたわ」
「フム...」
千冬がそう頷いたとき、職員室に連絡を確認しに行っていた真耶が教室に戻って来た。
「織斑先生、職員室にも何も連絡は無いです」
「そうか...仕方が無い。織斑の事は後で確認する。SHRを再開する」
真耶の言葉を聞いた千冬はそう反応する。
何時までも一夏の事に時間を割けないと判断したのだろう。
千冬のその言葉を聞いて、クラスの全員の視線が千冬に集まる。
その瞬間に
コンコンコンコン
そんなノックする音が
ガバッと全員が視線を窓の方に向けると、窓を叩いているオルコスがいた。
千冬は少し慌てた様子で窓の方に向かうと窓の鍵を開ける。
「オルコスソード!一夏は如何した!?」
一夏のバディで常に一緒に居るオルコスなら流石に一夏の居場所を知っている。
そう思った千冬は直ぐにオルコスにそう質問する。
一夏への呼び方が苗字から名前に変わっているあたり、内心で焦っていたことがうかがえる。
《一夏は今朝から発熱した》
「なっ!?」
『えっ!?』
オルコスの言葉を聞いた全員が驚きの声を浮かべる。
「い、一夏は無事なのか!?」
《それは分からない。だが、今は保健室でも会社でもなく、取り敢えず安全な場所で安静にしている》
オルコスの遠回しな言い方で千冬、セシリア、ラウラの3人は察した。
今一夏はバディワールドにいると。
「分かった...」
《ああ。だから一夏は欠席で頼む。それと、来週のタッグマッチは欠場で構わないな?》
「勿論だ。体調が悪いものを戦わせるわけには行かない」
《では我は一夏のもとに戻らさせてもらおう》
「ああ」
オルコスは最後にそう言うとそのまま窓の前から教員寮の方に飛んでいった。
そして誰も見ていない場所にまで移動したオルコスはゲートを開くとダークネスドラゴンWを経由してからヒーローWに向かった。
「......そういう訳なので、織斑は欠席だ」
オルコスが飛んでいったのを確認した千冬は窓を閉めてからそう呟いた。
「ボーデヴィッヒ、オルコット、後で連絡を入れておいてやれ」
「分かっております」
「了解しました」
千冬はセシリアとラウラに視線を向けながらそう言い、2人はすぐさまそう返事する。
「...もう時間だな。それでは今日のSHRを終了する。授業の準備をしておけ」
千冬はそう言うと、教室から出て職員室に向かっていく。
しかしその声色からは何時もの覇気は感じられなかった。
(一夏が熱を出した...やはりまた一夏に負担を掛けていたのか...?だがしかし、今は10月、寝冷え等の可能性も...いや、一夏だぞ。あの小学生のころから私より家事や体調管理が出来た一夏だぞ。そんなミスをする訳...いや、ここ最近の一夏はまた仕事で体調管理が疎かになっているのかも...)
千冬はそう悶々と1人で考えている。
別に千冬が今この場であれこれ考えても一夏の体調は改善しないという事が分かっていながらも考えてしまうのは、やはり一夏が大切な家族だからだろう。
「お、織斑先生早いですって!待って下さい~!!」
真耶が1人でスタスタ歩く千冬にそう声を掛けるが、1人で悶々と考え周りの声が聞こえていない千冬は真耶に気付くことなくそのまま職員室にたどり着くのだった。
そして千冬と真耶の去った教室ではすっごい重い空気になっていた。
一夏が発熱している。
そんな事を聞いて明るい雰囲気を保てるわけが無かった。
準備が終わった殆どの生徒が自分の席に座って待機している中、ラウラとセシリアだけはスマホを持ってそれぞれ人気のないところに移動した。
「クラリッサ、私だ」
『隊長、一夏は、一夏はどうなったんですか!?』
ラウラが通話をした瞬間にそう焦ったようなクラリッサの声が聞こえて来た。
恋人が教室にいないという事を急に聞かされたのだ。
焦るに決まっている。
「ああ。如何やら今朝に発熱をしてしまったようでな。今は安静にしているらしい」
『一夏が、発熱...!?』
「オルコスソードの言い方では、如何やら今はこっちの世界にいないらしい」
『そう、ですか......教えて下さりありがとうございました』
クラリッサの声色は誰が如何聞いても不安がっているものだった。
以前吐血してぶっ倒れた恋人が今度は発熱、しかも異世界に搬送されていると知ったら物凄く不安がるのは当然だろう。
クラリッサの声色が悪いまま、ラウラは通話を終了させた。
『お嬢様!一夏は何処にいるんですか!?』
「ええ、それが如何やら発熱をしてしまったようです」
セシリアと通話しているチェルシーも、クラリッサと同じような反応をしている。
「それで、今は如何やらあっちの世界で安静にしているようです」
『あっちの世界......そうですか。お嬢様、わざわざありがとうございました』
チェルシーの声は震えていた。
しかし、主人であるセシリアに無礼が無いように平静を取り繕うと、そのまま通話を終了させた。
そして、ラウラとセシリアはそのまま教室に戻っていった。
そんな2人の足取りは、やはり少し重たいものだった。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「う~ん...これはかなりひどいなぁ...」
ヒーローW、メンジョ―はかせの研究室。
この研究室の主であるメンジョ―はかせは手に持っているレポートを見ながら顎髭を撫でていた。
メンジョ―はかせがチラッと視線を移動させると、そこにはベッドで寝ている一夏の姿があった。
その腕には点滴の針が刺さっており、如何見ても重症といった見た目である。
《博士。一夏の状態を詳しく教えてくれ》
『そうです!早く!』
『マスターはいったいどうなっているのですか!?』
ベッドの隣にいたオルコスSD、そして以前メンジョ―はかせが開発した装置にはめられているダークコアデッキケース...つまり白式と白騎士がいた。
「取り敢えず一夏君の今の体温は47℃だ」
『47℃...!?』
『かなり危険じゃないですか!?』
メンジョ―はかせの言葉を聞いた白式と白騎士はそう驚きの声を発した。
「うん、そうだ。だけどオルコスが最初に持ってきたときよりも少し下がってる気がする。まぁ、これははかせの感覚だから何とも言えないが」
《そうか......それで、一夏の発熱の原因はなんだ?47℃なら、ただの風邪なんかじゃ無いんだろう?》
「ああ.........一夏君の体調不良の原因は............」
メンジョ―はかせがその次の言葉を発しようとした、その瞬間だった。
「え、う、あ.......」
ベッドの上から微かにそんな声が聞こえて来た。
がばっとメンジョ―はかせとオルコスが視線を向けると
「こ、こ、は......?」
辛そうな表情を浮かべる一夏が目を覚ましていた。
主人公の体調が安定していた小説内での期間、約1ヶ月(その間も異変はあった)。
次回も何時になるか分かりませんが、楽しみにしていてください!
評価や感想、誤字報告何時も本当にありがとうございます!!