無限の成層圏と煉獄騎士   作:ZZZ777

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前回の続き
いったいどうなるのか…

今回もお楽しみください!


煉獄騎士の異常

一夏side

 

 

IS学園を襲った襲撃。

篠ノ之を含めた襲撃者と交戦し、勝利した直後。

俺はドラゴンフォースを解放したまま宙に浮いていた。

 

 

…不思議な感覚だ。

凄い力が漲る。

解放するまで頭も痛かったのに、今は全然痛くない。

でも、それと同時に違和感もある。

なんだこの、胸が締め付けられるような変な感じは。

 

 

「…取り敢えず、襲撃者を拘束するか」

 

 

もうSEは全部0にしたが、万が一があると困るからな。

そう判断し、地面に着地しドラゴンフォースとディザスターフォースを解除する。

 

 

「う、ぐぅ…!!」

 

 

その瞬間に、途轍もない頭痛が襲ってくる。

立っていられず、思わずその場に膝をつき頭を押さえる。

 

痛い。

気持ち悪い。

止めてくれ。

 

 

《一夏!!》

 

 

《マスター!》

 

 

《マスター!大丈夫ですか!?》

 

 

SDになったオルコス、人間体になった白式と白騎士が駆け寄って来る。

 

 

「はぁ、はぁ、はぁ…俺は、大丈夫だ。取り敢えず、襲撃者を拘束してくれ…!」

 

 

《で、でも…!!》

 

 

「いいから!!」

 

 

《……了解した》

 

 

オルコス達はまだ何か言いたそうだったが、取り敢えず襲撃者達を拘束しに行ってくれる。

 

はぁ、はぁ、はぁ、はぁ…

 

ふぅ……少しはマシになってきた。

頭を押さえていた右手を離し、立ち上がる。

軽く伸びをすると、視界にとある人物写り込んだ。

 

 

「篠ノ之…」

 

 

篠ノ之箒。

さっきまで交戦していた襲撃者の1人。

そして、あまり認めたくはない事だが俺の顔見知り。

 

 

「気絶してるか…」

 

 

気絶している篠ノ之から強制解除され待機形態になっているISを取り上げる。

それと同時に、そこら辺に転がっているアクワルタ・グワルナフのレプリカ2本が視界に入る。

それに手を伸ばそうとした時、

 

 

《一夏、動いて大丈夫なのか?》

 

 

とオルコスが声を掛けて来た。

 

 

「ああ。取り敢えずは、な。ロープくれ。こいつも縛る」

 

 

《ほら》

 

 

「サンキュー」

 

 

オルコスからロープを受け取ったのでそのまま篠ノ之の事を拘束する。

この時、出来るだけ雑に扱われないように気を付ける。

 

 

《随分丁重に扱っているな。大嫌いなんじゃないのか?》

 

 

「……ああ、大嫌いだよ。でも、大嫌いだからって雑に扱っていい訳では無いだろ」

 

 

嫌いだからって雑に扱ってたら、それこそ篠ノ之と変わらない。

それに…

 

 

「……この馬鹿が俺に散々迷惑かけたり、テロリストになった事に間違いはない。それはコイツの罪だ。だけれども、この馬鹿が馬鹿のままだった原因は他にある」

 

 

《…ああ。この馬鹿は確かISが発表されてから何度も転校しているんだったか?》

 

 

「そうみたいだ。詳しい事は知らんがな。そんな状況だったら精神的に成長できない。だからコイツは小学生の時のままなんだ」

 

 

《つまるところ、コイツがテロリストになった原因は政府か》

 

 

「そういう事だ」

 

 

でも。

まぁ、でも。

 

 

「だからといってこの馬鹿を可哀想に思ったり嫌いって感情が無くなったり擁護する気は無いがな」

 

 

《ああ。コイツにはしっかりと罪を償ってもらう》

 

 

だってこの馬鹿、クラリッサとチェルシーの事殺すって言ってたんだぞ?

怒ってない訳が無いだろ。

正直言うと殴る蹴るをしてやりたい。

だが、そんな事してる場合じゃない。

俺はもう1回視線をレプリカに向ける。

 

 

「なぁ、オルコス」

 

 

《なんだ?》

 

 

「1本くらいくすねて問題ないと思うか?」

 

 

《…確かに、博士とかにも調べて欲しいな》

 

 

流石我がバディ。

今の質問だけで何がしたいか察してくれたようだ。

 

 

《今までの襲撃者も1本だけしか使わなかった。1本くらいバレないだろう》

 

 

「良し。オープン・ザ・ゲート。ダークネスドラゴンW」

 

 

ゲートを開き、レプリカを持って上半身を突っ込む。

 

 

《…一夏、何をしている?》

 

 

繋がった先は煉獄騎士団本部。

丁度そこにいたデスシックルがジト目で俺の事を見ていた。

 

 

「デスシックル、悪いけどこれ博士の所に持って行ってくれないか?」

 

 

《なんだこれは。アクワルタ・グワルナフに似ているが…》

 

 

「その通り。これはこっちの世界で敵が使ってる武器なんだ。如何見てもアクワルタ・グワルナフのレプリカだろ?だから博士に調べてもらいたいんだ」

 

 

《了解した。任せろ》

 

 

「ああ、よろしく」

 

 

デスシックルとの会話を終了させ、俺はゲートから上半身を抜く。

 

 

「ふぅ…」

 

 

《マスター!拘束終わったよ!》

 

 

《こちらも終わりました!!》

 

 

すると、丁度そのタイミングで白式と白騎士がそう声を発した。

その方向に視線を向けると、確かに2人とも拘束を完了させていた。

 

 

「OK!こっちに持って来てくれ!」

 

 

《 《はい!》 》

 

 

俺の指示に従って、2人はそれぞれが拘束した襲撃者を引きずって来る。

そうして、オルコスが拘束した分も含めて計5人の拘束が完了した。

さて、千冬姉にでも連絡をしよう。

ダークコアデッキケースを取り出し、煉獄騎士の鎧を身に纏う。

そして、千冬姉に向かってプライベートチャネルで連絡する。

 

 

「…千冬姉、聞こえる?」

 

 

『一夏!そっちは無事なのか!?』

 

 

すると、その瞬間に千冬姉の心配したような声が聞こえてくる。

その必死そうな声についつい苦笑いを浮かべてしまう。

 

 

「ああ。交戦した襲撃者5人、全員気絶してはいるが拘束完了した」

 

 

『そうか…こちらも別部隊だと思われる潜入者に、更識達が交戦していた襲撃者も全て拘束してある』

 

 

流石は世界最強。

滅茶苦茶早い。

こっちは漸く自分担当の分終わらせたばっかりなのに。

 

 

「なるほど。それじゃあ、何処に拘束した襲撃者を連れていけばいい?」

 

 

『拘束室だ。場所は分かるか?』

 

 

「ああ。オルコス達と一緒に連れていく」

 

 

『良し。ならその後会議室に来てくれ』

 

 

「了解。それじゃあ」

 

 

『ああ、また後で』

 

 

ここで千冬姉との通話は終了した。

 

 

「オルコス、白式、白騎士、こいつ等を拘束室に連れて行くぞ」

 

 

《分かりました!》

 

 

白式の返事を聞いたので、煉獄騎士の鎧をダークコアデッキケースに戻す。

 

ア、レ?

足に、力が…

 

ドシャア!

 

その瞬間に足が入らなくなり、その場に倒れ込んでしまう。

 

 

「ガハッ!ゴホッ!」

 

 

《っ!マスター!!》

 

 

《マスター!しっかりしてください!》

 

 

《一夏!大丈夫か!?》

 

 

白式と白騎士とオルコスがそう言いながら駆け寄って来る。

あ、駄目だ。

鉄の味が……

 

 

「う、ゲホッ!ゴホッ!うっ!?ゲポッ!!」

 

 

ビチャア!!

 

 

視界に入るのは、赤い水たまり。

でも、この匂いは…血……

ああ、そうか……

俺、また吐血したのか……

 

 

《マスター!しっかりしてください!》

 

 

《くそっ!取り敢えず織斑千冬を…!!》

 

 

「いや、それはしなくて良い……」

 

 

千冬姉を呼びに行こうとするオルコスを止め、俺は上体を起こす。

 

 

《マスター!無理しないで下さい!!》

 

 

《そうですよ!》

 

 

「いや、大丈夫だ……」

 

 

正直足に力が入らん。

でも、それでも大丈夫だ。

 

 

《一夏、無理はしない方が…》

 

 

「そうじゃないんだ。白式と白騎士なら知ってるとは思うけど、前に吐血した時は直ぐに気絶したんだ。でも、今回は違う。確かに苦しいけど、それでも今は普通にしてられるんだ」

 

 

《……つまり、吐血した筈なのに体力とかに問題は無いと?》

 

 

「ああ………そう、なんだ…前までと違って、異常に体力が……」

 

 

俺の言葉を聞いたオルコス、白式、白騎士の3人は難しそうな表情を浮かべる。

 

 

《それもこれも、マスターの身体がドンドンと…》

 

 

「ああ、進行しているからだろうな…」

 

 

白騎士の言葉に応対しながら立ち上がる。

う、少しフラフラする…

 

 

《…マスターの身体に関する事は未知数です。だから、何が正解かは分かりません。なので、マスターが大丈夫だと仰るのなら、もう何も言いません》

 

 

《でも!無理は絶対にしないでね、マスター。何か辛いことがあったらすぐに言ってね!》

 

 

「…ああ、そうさせてもらうよ」

 

 

俺の言葉に、白式と白騎士は満足したように頷いた。

だが、直ぐに白式が首を捻る。

 

 

《血痕はどうするんですか?》

 

 

「確かに…切り傷で誤魔化すかぁ…」

 

 

そう呟き、もう1本のレプリカを手に取る。

そしてそのまま左腕に切り傷を作る。

 

 

「っ!!」

 

 

やっべ、ミスった。

深く切り過ぎた。

 

 

《マスター何で急に!?包帯とか無いんだよ!?》

 

 

《それに深く切り過ぎです!こんなに血が出てるんですよ!?》

 

 

「あ、ああ、ごめん」

 

 

確かに滅茶苦茶深く傷が出来ちまった。

結構な量血がどくどく出てる。

 

 

《す、直ぐに消毒液と包帯持ってきます!!》

 

 

《吐血もして身体の血が減ってるんですから、安静にしててください!》

 

 

白式と白騎士はそう言うと走って行ってしまった。

取り敢えず言われた通り安静にする。

 

 

「なぁ、オルコス」

 

 

《どうした一夏?》

 

 

「……腕からこんなに血が出てるのに、全然痛くねぇや」

 

 

《っ…》

 

 

俺の言葉を聞いたオルコスは、悲しそうな表情を浮かべる。

 

 

《そう、か…》

 

 

「ああ…」

 

 

ここでオルコスとの会話は終わり、辺りに若干重苦しい雰囲気が漂う。

暫くしてから包帯を持ってきた白式と白騎士に腕を治療してもらってから、拘束してある襲撃者達を拘束室に連れて行くのだった。

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

三人称side

 

 

襲撃者全員を拘束室に入れた後、一夏達は会議室で事後会議をした。

そこでは、襲撃者達の身柄をどうするか、今後のIS学園の警備をどうするかなどが話し合われた。

 

 

先ず襲撃者に関してだが、今回の襲撃者は今までと異なり所属元の異なる2部隊が襲撃してきていた。

箒を含めた亡国企業からの襲撃者は国際裁判にかけるために身柄を国際IS委員会に引き渡すことが決定している。

それについては問題無いのだが、議論が難航したのはアンネイムド達だ。

アンネイムドはアメリカ軍特殊部隊。

下手に扱うとアメリカから報復として追加の襲撃だったりある事ない事の声明を言われる可能性がある。

その為扱いに悩んだのだ。

 

結局、アンネイムド達は特に何もせずアメリカに返すことにした。

何もせずとは言っても、流石に軍の上層部、並びに政府への伝言はした。

 

「IS学園に潜入しても特にいい事は無い。これ以上の潜入は無駄だ」

 

 

といった内容の伝言を。

そうして、それから暫くもしないうちにアンネイムド達は帰国した。

 

この時アンネイムド達の対応をしたのは千冬だったのだが、千冬は名前が無かった隊員たちにそれぞれ名前を付けた。

その事により、名前を得た元アンネイムド達は千冬に感銘を受け帰国後軍を辞める事になるのだが、それは今は分からない事である。

因みに、帰国する前に『カレン・カレリア』と名付けられた元隊長は千冬と連絡先を交換したのだが本人達の間以外では秘密である。

 

 

そして次に話し合われたのはIS学園の警備面に関して。

前回の襲撃では第一と第二アリーナが半壊したりしたが、今回の襲撃では校舎の破壊等の被害は出なかった。

専用機の数が減っているにも関わらず、だ。

これ以上警備面の充実をする必要は無いと判断された。

 

 

それ以上に大事なのは、もうこれ以上襲撃が来ないようにする事。

先ず第一に、今回の襲撃の原因の半分は千冬が暮桜・明星の事を世界に発表していなかったからだ。

今後同じような事が起きないように千冬は世界に暮桜・明星の事を発表した。

この時女尊男卑主義者が『ブリュンヒルデ様の再誕』と騒いでいたのだが、その事に千冬は難色を示していた。

あまり自分が崇められるのは好きではないし、女尊男卑主義者が暴走する懸念があったからだろう。

 

 

一夏が押収した箒の使用していたISとアクワルタ・グワルナフのレプリカは学園で解析する為地下施設に今は置いてある。

そうしてそれ以外にも様々な話し合いをして会議は終了した。

 

 

会議が終了した後左腕に包帯を巻いている一夏にクラリッサとチェルシーが顔を真っ青にして駆け寄ったのだが、一夏は

 

 

「いやぁ、結構傷口が大きくて…でもこれは正直やり過ぎ感はある。でもせっかく白式と白騎士が治療してくれたから」

 

 

と笑顔を浮かべながらそう言った。

 

 

 

 

 

そうしてそんな会議から約1週間が経った。

各国や各企業に専用機を受け取りに行っていた専用機持ち達は続々とIS学園に戻ってきた。

そうして最後にラウラが帰って来た翌日、一夏、千冬、クラリッサ、チェルシー、楯無は他の専用機持ち達を放課後に会議室に集め襲撃事件の詳細の説明をしていた。

 

 

「そ、そんな事が…」

 

 

「ああ。これが実際にあった出来事だ」

 

 

全ての説明を聞き終えて呆然と呟いたシャルロットに千冬がそう反応する。

そして、声には出していないもののマドカ達もとても悔しそうな表情を浮かべていた。

自分たちがいなかった時にそんな大変な事になっていたのが、自分たちが何も出来なかったのが悔しいんだろう。

そんな表情のマドカ達を見て、一夏は口を開く。

 

 

「悔しく思わなくていい…とは言わない。実際に前回の襲撃時俺は居なかった訳だが、後で聞かされた時俺も悔しく思ったからな」

 

 

一夏のその言葉に、全員が視線を上げる。

 

 

「その上で大事なのは、悔しがることじゃない。次の行動を考える事だ。まぁもう2度と襲撃させるつもりは無いが、恐らくテロリストとの戦闘は避けれないだろう。だから、その時に備えて準備をする。それが今やるべき事さ」

 

 

一夏の言葉を聞いた全員はハッと表情を変えた。

 

 

「そっか…そうだよね、お兄ちゃん!」

 

 

「ああ、そうさ」

 

 

マドカの言葉に一夏は笑みを浮かべてそう返す。

 

 

「それにしても、篠ノ之は漸くまた捕まったんだな」

 

 

「ん、ああ。学園祭の時に脱走が判明してから1ヶ月とちょっと、漸く捕まったな」

 

 

話題を切り替えたラウラに対して、一夏がそう反応する。

箒の再逮捕に対して全員思うところが無いわけではない。

特に1年生達は同学年の生徒だった相手だ。

夏休み前に退学になり、その以前から一夏に迷惑を掛けている所しか見ていないとはいえ、だ。

だからといって箒に対して哀れに思ったりする感情は全員これっぽっちも無いのだが。

そんな中で、千冬だけが少し悲しそうな表情を浮かべていた。

 

 

「それにしても、柳韻さんが気の毒だ」

 

 

「柳韻さん…ああ、確かにそうだ…」

 

 

千冬が呟いた事に一夏がそう反応する。

しかし、柳韻という聞いたことが無い名前を聞いたマドカ達は首を捻る。

 

 

「えっと…その方はいったい?」

 

 

「…篠ノ之柳韻さん。あの馬鹿と束さんの父親で、千冬姉の師匠だ」

 

 

一夏の言葉にマドカ達は驚いた表情を浮かべるも、直ぐに千冬が悲しそうな表情を浮かべた理由を察した。

自分の師に当たる人物の娘で、自分の元教え子が逮捕された。

そりゃあ悲しくもなるだろう。

 

 

「なんとか、身柄送検前に1度面会出来たらな……」

 

 

「それは難しいと思いますけど、確かにそうですね……」

 

 

千冬とクラリッサがそう呟き、少し重たい空気があたりに漂う。

 

 

「んん!それより、もう直ぐ体育祭ね!!」

 

 

そんな空気を振り払うように楯無がそう声を発する。

そんな楯無に視線が集まる。

 

 

「確かにそうだけど、出来るんっスか?こんなに襲撃があって」

 

 

「出来ねぇ可能性の方が高くねぇか?」

 

 

「うっ!?」

 

 

フォルテとダリルの言葉に、楯無が胸を押さえる。

 

 

「……今までの襲撃で、向こうは相当数の人員を失った。その事を加味すれば出来るかもしれない」

 

 

「そう!そうですよね!」

 

 

千冬のその言葉を聞いた楯無が急に元気になった事で全員が

 

(なんか企んでるな…)

 

と察した。

 

 

「まぁ、それよりも前に中間テストが…」

 

 

ビシィ!!

 

 

一夏がそう呟いた瞬間に、会議室内の空気に亀裂が入った。

 

 

『わ、忘れてたぁ!!』

 

 

「おいおい…」

 

 

「隊長…」

 

 

「お嬢様…」

 

 

「お前たち…」

 

 

一夏、クラリッサ、チェルシー、千冬の順でそうジト目でそう呟く。

そうして試験勉強をするために各々解散となったのだった。

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

時間は流れ、現在時刻深夜の2:30。

教員寮、チェルシーの部屋。

ここでは、チェルシーと一夏が寄り添って寝ていた。

 

 

「ん、んぅ…」

 

 

唐突にチェルシーが目を覚ました。

チェルシーは眠そうに目を擦る。

 

 

「まだ暗いわね…寝直しましょう」

 

 

チェルシーはそう呟くと、再び枕に頭をのせる。

すると、当然ながらその場で寝ている一夏の事が視界に入る。

夏休みに一夏本人が言っていたように、一夏の寝顔を見る機会というのはかなりレアだ。

そんな一夏の寝顔を至近距離で見れるというのは、恋人であるチェルシーとクラリッサにしか出来ない事だ。

その事を思うと、自然とチェルシーから笑みが漏れる。

 

 

「……」

 

 

チェルシーは寝ている一夏を事をジッと見つめる。

暫くの間その顔を見ていたが、やがて少しだけ身体を一夏の方に近付け

 

ちゅ♡

 

と、一夏の頬にキスをする。

 

 

「おやすみ、一夏」

 

 

チェルシーはそう呟くと、寝るために瞼を閉じる。

その瞬間に、

 

 

「う、はぁ、はぁ、はぁ…」

 

 

と、一夏が荒い息遣いで目を覚ました。

一夏ははぁはぁと息をしながら上体を起こす。

 

 

(一夏?いったいどうし…)

 

 

「くっそ、ヤバいか…?」

 

 

チェルシーはそんな一夏に声を掛けようとした時、一夏は右手で心臓を押さえながらそう呟いた。

そうして、ちらりとチェルシーの方に視線を向ける。

 

 

「寝てる、か…」

 

 

ここで、普通に起きていると言い一夏に今の言葉について質問するという選択肢もあった。

だが、チェルシーは直感で寝たふりをした。

こっちの方が、何か重要な事が聞ける気がしたのだ。

 

 

「俺は、俺は…まだ、恋人で居れるのかなぁ……?」

 

 

「っ……」

 

 

一夏がそう不安そうに呟いた事に、チェルシーは思わず少し反応してしまう。

今の言葉はどういう意味か。

今すぐにでも聞きたかったが、聞いてはいけないような気もした。

 

 

「おやすみ、チェルシー…」

 

 

一夏はそう呟くと、再び横になる。

そこから間もなく、一夏は眠りに付いた。

寝息を聞いたチェルシーは、恐る恐る一夏に声を掛ける。

 

 

「一夏、起きてる?」

 

 

しかし、帰って来るのは穏やかな寝息。

その事にチェルシーは安堵の息を漏らす。

そうして上体を起こし、一夏の事を見つめる。

頭の中には、先程の一夏の言葉がぐるぐるとしていた。

 

 

「これは、後でクラリッサにも伝えておきましょう」

 

 

そう呟くと、チェルシーは横になり寝ている一夏に力強く抱き着く。

絶対に離さないという意思を感じられるほどに。

 

 

「一夏…あなたがどうなっても、私達はあなたの恋人で、あなたの味方だから」

 

 

一夏に、そして自分に言い聞かせるようにそう呟いた後、チェルシーも眠りに付くのだった……

 

 

 

 




もう一夏が完全に末期患者。
ヤバいぞ。

次回も何時になるか分かりませんが、楽しみにしていてください!

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